漫画的男子しばたの生涯一読者
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■ヤサシクナイニッポンノワタシ 〜単行本

今回は紹介する単行本がなぜか少なめ。個人的に6月に買ったのが、続き物の途中の巻とかだったりすることが多かったせいかと思われます。

家族のそれから/ヤサシイワタシ 1巻 ひぐちアサ (講談社) [bk1] [bk1]
みみチャンネル
ヤサシイワタシ
「家族のそれから」
ひぐちアサ
「ヤサシイワタシ」1巻
ひぐちアサ
今月の単行本でまず注目は、ひぐちアサの初単行本2冊(同時発売)。「家族のそれから」は、母親が死に残された兄妹と母の再婚相手である男の3人の、ぎくしゃくしながらも進む家族生活を優しく描いた表題作全4話がメイン。これに加えて、ホモの少年と彼の想い人であるクラスメートの青春物語「ゆくところ」を収録している。こちらのほうはそれぞれに不器用なキャラクターたちが、いろいろ失敗しつつもなんとかかんとか前に進んでいくさまが初々しくもあり、けっこう微笑ましく読める単行本である。

で、問題は「ヤサシイワタシ」のほうだ。こちらは現在「アフタヌーン」で連載中なのだが、これがけっこう読んでてキツい。基本的には大学で写真部に入った健康的な男子・芹生と、その先輩の弥恵の恋物語なんだけど、この弥恵がひとことでいって、たいへんに「面倒な女」。感情の浮き沈みが激しく、夢を語るわりに実力はついていかない。自分はルーズなのに他人には厳しく、甘やかすと調子に乗り、ほっとけばスネる。だけど、そういった甘えた姿勢が妙に可愛かったりするのがとても厄介。それだけにトラブルは絶えないわけだが、そのやり取りの間でお互いから発せられる言葉は非常にストレートで読んでいてツライ。それは、読んでいる側にも青春の怠惰・臆病などなどの後ろぐらいところがあるというのも多分に影響しているのだろう。読むのにエネルギーを使う作品であるし、とっつきやすい絵柄のわりに、おそらく好き嫌いは非常に激しく分かれる。なんにせよ読者を大いに刺激する、目が離せない作品であることは確かだ。

「夢使い」1巻 植芝理一 (講談社) [bk1]
夢使い
「夢使い」1巻
植芝理一
植芝理一の前作「ディスコミュニケーション」にもちょこちょこ出演していた三島塔子/燐子の姉妹が主役を張って、夢にまつわる不思議な事件をズバッと解決していくという新シリーズ。主人公の松笛/戸川がいまいち能動的でなかった「ディスコミュニケーション」とは打って変わって、こちらはいきなりエンジン全開。おもちゃを依代にして三島姉妹がアニメのロボットよろしく変形するシーンなんかは文句なしにダイナミックで気持ちがいいし、アクションも全般に楽しい。最初のエピソードでは、少女たちが次々と想像妊娠してしまう事件を姉妹が捜査することになるのだが、少女たちがお互いの体をまさぐりあったり、少年化して股間が膨らみ、それをお互いにこすり合わせたりするシーンなどはむやみにエロティック。前作に比べて刺激がよりストレートになってるし、植芝理一独特のごちゃごちゃした描き込み、遊び心がうまいこと物語の中で生きている。とにかく作者はノリノリみたいなんで、今後の展開もすごく楽しみ。
”徘徊老人”ドン・キホーテ しりあがり寿 (朝日新聞社) [bk1]
”徘徊老人”ドン・キホーテ
「”徘徊老人”ドン・キホーテ」
しりあがり寿
槍を携え紙兜をかぶった老人が都会をさまよい、現代日本のさまざまな事象に怒りの声を挙げるというお話。この老人が見ているものはおおむね幻だし、たかだか徘徊老人が叫んだところで何かが変わるわけでもない。その姿は滑稽であり哀しくもあるけれど、その哀しみは、「常識」「良識」といったものの前に多かれ少なかれ自分を殺して生きているいわゆる「一般人」にも跳ね返ってくる。深いところを抉られるような、身に染みる作品。
不死身探偵オルロック G=ヒコロウ (エンターブレイン) [Amazon]
不死身探偵オルロック
「不死身探偵オルロック」
G=ヒコロウ
「不死身探偵オルロック」と「プロフェッサーシャーボ」を収録。G=ヒコロウのこの手の作品の特徴は、とにかく散弾銃のように次から次へと繰り出されるギャグの嵐。ギャグの回転が早く、読者の予想の常に何歩か先を行き続ける。画面の端から端まで、オタク的な知識を駆使した変幻自在のギャグが詰まっていて、単行本の見た目の薄さに比べて、かなりの読みでがある。カチッとした造形の絵柄も見ていて単純に楽しく、絶妙なセンスの良さを感じる。作者にとってはたいへんコストパフォーマンスが悪いかもしれないけれど、読者にとっては満腹感はこのうえなく高い作風だ。
エヴァーグリーン 米倉けんご (ワニマガジン社) [bk1]
エヴァーグリーン
「エヴァーグリーン」
米倉けんご
最後はエロ漫画方面から一冊。著者の後書きによれば、2話以上の連載をきちんとした形で完結させたのは初めてとのこと。この物語の主人公たちは、姉二人弟一人の三姉弟と、弟の親友の4人。それぞれにすれ違う、四角関係の行方をセックスシーンを交えつつ描く姿勢は真摯そのもの。青臭く、テンションの高いラブ・ストーリー展開は読みごたえ十分である。 >>次頁
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