漫画的男子しばたの生涯一読者
TINAMIX
漫画的男子しばたの生涯一読者

■単行本未収録の注目作品あれこれ

茄子
「茄子」
(c)黒田硫黄

・黒田硫黄「茄子」

「大日本天狗党絵詞」以来の「アフタヌーン」(講談社)における黒田硫黄の連載が11月号からスタートした。タイトルからしていきなり意表を衝いてくれるが、物語自体もつまり、茄子を作っている農家のおっさんが主人公だったりする。畑に出て働き、終わったら家に帰ったら茄子を食って風呂に入り、そして寝る。そんな生活の模様が描かれる。第1話、第2話が同時掲載で、ここではこのおっさんの元に転がり込んできたいわくありげな男女がお話にからんでくるのだが、だからといって彼らは別に世間を揺るがすような大事件を起こすわけではない。淡々とした日常描写をしているだけなのに、場面の切り出し方、セリフの妙、演出でそれを一つのドラマに仕立て上げてしまう黒田硫黄の筆力はさすがだ。飄々としていつつ落ち着いている。

そういえば、同じ号のアフタヌーンでは植芝理一「ディスコミュニケーション精霊編」もついに最終回を迎えた。次の連載の予告もあったけど、それはまた始まったときにでも詳しく。


ちぃ
「ちょびっツ」
(c)CLAMP

・CLAMP「ちょびっツ」

ついにCLAMPが青年漫画誌、しかもヤンマガに進出! 「ヤングマガジン」10/9 No.43から始まった「ちょびっツ」は、貧乏大学生が「パソコン」を拾うというところからスタート。ところがこの世界における「パソコン」は、なんと人型、しかもかわいい女の子形状なのだ!!……とまあなかなかすごい設定で物語はスタート。電源ボタンの位置、ねこみみなどなど、ものすごくなんか狙っているのだが、これだけぶっ飛んだ設定で、しかも男煩悩萌え萌えスイッチを的確に刺激してくるというのはかなり大したもの。CLAMP、いい仕事してますな。


岬君!上だ!!
「キャプテン翼2000」
(c)高橋陽一

・高橋陽一「キャプテン翼2000」

9月はオリンピックが開催され、全世界的におおいに盛り上がったけれども、集英社からはオリンピック特集号の「増刊ヤングジャンプ」が発売された。そこで掲載されたのがこの作品。翼、小次郎、若林(S.G.G.K)のおなじみの面々がオーバーエージ枠(!)を利用してオリンピックの日本代表に召集され、日本を引っ張る。そして決勝の舞台でブラジルと対決……というお話。「ロベルト・カロルスことロベカロ」「リベウド」「ロメウド」など、実在のブラジル代表を知っていたら思わず笑っちゃうような人名が続出したり、いちいち挙げるのが馬鹿馬鹿しいほどにツッコミどころ満載。ここで掲載している画像のシーンなんて、中田のパスが来ることを予想した翼が、オーバーヘッド体制をすでに作って空中で待ちかまえてたりするんですぜ。しかも翼ってば「生っ粋のオーバーヘッドシューター」らしいのだ。そんな選手、サッカーの歴史を全部見ても大空翼だけっす。そしてこの作品の最後では「キャプテン翼」の今年中の復活がほのめかされていたりして、隅から隅まで衝撃的だった。


いばら姫のおやつ
「いばら姫のおやつ」
(c)石田敦子

・石田敦子「いばら姫のおやつ」

「OURs LITE」(少年画報社)11月号にて最終回。この人は前作の「からくり変化あかりミックス!」でもそうだったが、優しくきれいな絵柄ながら、精神的にはハードな物語を描いてくる。このお話は、背がやたら小さいことをコンプレックスにしている少女が主役なのだが、彼女の姉、幼馴染みの男子も含めて、安易な結論に逃がすことはなく、しっかり障害を与え、そこから成長させている。ただのいい話にせず、痛いところまで掘り下げてくる真摯さに好感が持てる。アニメ方面でもすでに名のある人だが、漫画でもかなりいいモノを描いている。


はす向かいの真琴ちゃん
「はす向かいの真琴ちゃん」
(c)オオシマヒロユキ
猪原大介

・オオシマヒロユキ+猪原大介「はす向かいの真琴ちゃん」

こちらも「OURs LITE」11月号に掲載。自分の住む平凡な下町に飽き飽きして退屈していた少年が、忍者であるという少女と出会いトラブルに巻き込まれる。実際に生き死にが関わってくる忍者世界の争いに巻き込まれたことによって、少年はちょっとだけたくましくなる。オオシマヒロユキといえば、その美麗なイラスト、とくにカラーでの描画において美少女系を中心に定評のある人だが、モノクロ漫画でもなかなか面白い作品を描けることを示した。カチッとしているけれども伸びやかな線はもちろん、キャラクターも魅力的で、話的にも後味良く、楽しんで読めた。


サムライガン月光
「サムライガン月光」
(c)熊谷カズヒロ

・熊谷カズヒロ「サムライガン月光」

「ウルトラジャンプ」(集英社)10月号から連載開始。「サムライガン」シリーズは江戸時代が舞台だったが、今度は明治初期。新政府内の権力争いとともに二つに分かれ争うようになったサムライガンたちの物語になりそうだが、今回は主人公たちが少年少女になっていて、「ヤングジャンプ」系でやってたときと比べてより若いマニアックな読者層を意識している感じ。ちょっぴりエロティックなところも残しつつ、激しいアクションを駆使して出だしからなかなか期待させる出来になっている。「ウルトラジャンプ」は引き続き元気さをキープしているが、また一つ楽しみな作品が加わった。


柳生十兵衛死す
「柳生十兵衛死す」
(c)山田風太郎/石川賢

・作:山田風太郎+画:石川賢「柳生十兵衛死す」

「ビジネスジャンプ」(集英社)10/15 No.21からスタート。山田風太郎小説の漫画化で、石川賢との組み合わせは「魔界転生」のときと同様。この作品は、柳生十兵衛の死体が発見されるところから始まる、江戸時代、室町時代の二人の十兵衛がタイムスリップして相まみえたりする壮大なスケールを持った長編である。個人的にこの作品は、山田風太郎小説の中ではちと長すぎていまいちまとまりが悪い話という印象があるのだが、モチーフ的には魅力があるし、原作のほうにまだ良くする余地が大いに残っているので、うまくすれば原作をしのぐ面白さを漫画で呈示することができる可能性はあると思う。


複雑な彼女
「複雑な彼女」
(c)田中ユキ

・田中ユキ「複雑な彼女」

「ヤングマガジンUppers」(講談社)9/19 No.18に掲載。田中ユキについては連載第1回めで単行本「ストレンジラブ」(講談社・全1巻)を紹介したが、雑誌への登場は久しぶり。このお話は、教え子の女子高生と自分に向けてくるまっすぐな情熱、妖しい色気に誘惑させられる男性教師の姿を描く物語である。男の破滅を呼ぶ少女の視線にゾクゾクさせられ続ける50ページ。端々から喚起される性的イメージ、それを含めて美しく情景を描き出す繊細な筆致など、この人はすでに相当高い技量を持っている。あとはもっともっとたくさん作品を描いてくれるとうれしいのだけど。


ポストイディプス
「ポストイディプス」
(c)砂

・砂「ポストイディプス」

TINAMIX読者ならおなじみ、砂の新作が「MANGA F」(太田出版)11月号に掲載された。意外にもこれが初連載であり、漫画作品自体もかなり久しぶりの掲載である。まず第1回めは、1000人の子供を海外に売り飛ばした男・黒塗、そして彼を追う達人・涼子のコンビを中心にお話が推移。始まったばかりなので、何がどうなるのかまだ全然読めないのだが、なんかいろいろなことを企んでそうな気配がビンビン伝わってきてエキサイティングな出だしだった。いきなりこちらに向かって尻を突き出している女などポージングの妙、それから一つひとつは短いながらもビシッと決まったセリフなど、表現的にもかなり面白いものがある。これからいったいどんなことをしでかしてくれるのか、期待して読み続けていきたい。

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