タニグチリウイチの出没!
TINAMIX

タニグチリウイチの出没!

「学園祭的、縁日的」

むしろ驚くのは、メジャーとマイナー、潔癖と変態、正常と異端、ヤングにオールドとことごとく正反対のキャラクターを持ったタレントが、ちょっとした空間をはさんだほとんど同じ場所で同時に、イベントを行いそれらがいずれも超満員となってしまう、観客たちが持っている感性の多様性、そしてそうした多様な感性を満足させるイベントを打ち出せる「東京ドーム」という場所の柔軟性だ。「TDR」で同じ様に両極端のイベントを、同時に開こうたって絶対に無理。等しく単一の思想に裏打ちされた空間だからこそ成立する心地よさがある以上は、前後左右上下のいずれにも開いた思想を持ったイベントを、そこで開催することはかなわない。

が、単一の思想に染め上げられた訳ではない「東京ドーム」周辺は、それが存分に可能だった。射的があり金魚すくいがあり見せ物小屋があり、りんご飴がありたこ焼きがあり綿菓子屋がある祭りの縁日のごとく、あるいは学校の学園祭のごとく、てんでばらばらの屋台や模擬店が軒を連ねた中に入って、それぞれに好きな店へと入って楽しめばいい。そんな、日本のイベント空間にありがちな思想のユルさが為し得たバラエティーに富んだテーマパークが、総体としての大晦日の「東京ドーム」周辺地区だったと言えるんじゃないかな、どうかな(無理矢理なんでちょっと弱気)。

完売御礼なのであります!
それにしてもな「完売御礼」。1年前はTBSに出 演して、その危なさに放送を打ちきられた芸人も、平場では着実に人気を上げて 来ている。今年こそ果たせるか「日本武道館」陥落!

こう言い出すと、「東京ドーム」周辺にお台場に浦安までをも含めた首都圏一円が、それぞれに思い思いのベクトルで新年を祝いたい人たちが参加した、巨大な「大晦日テーマパーク」ってことになりかねないんで、ムズかしい話はこのくらい。とりあえず「1231ジオポリス陥落!」について触れておくなら、やっぱり鳥肌実は鳥肌実だった、ってことで。スポットライトを浴びながらエスカレーターで降りて来て、殺到したファンにもみくちゃにされながらも、なんとか壇上に上がって語り始めたネタはまずまず面白く、1時間半のほとんどを結構楽しみながら立ちっ放しで見物できた。

午前零時にやるはずだったカウントダウンはすっ飛ばすし、やったと思ったらすでに午前1時5分。へっぴり腰で突いた餅は片栗粉にまぶしてから客席に放り投げるし、途中スーツをぬぎシャツを脱ぎパンツまで脱ぎ捨ててしまう暴走ぶりも披露。そのぶら下がり具合に目を背ける婦女子もいれば、じっくりと見入るギャルもいたりと、隣りのジャニーズ・タレントのイベントではまず見られない、女性の心理を垣間見れたのは勉強になった。

「キャラクター大激突・遊園地の陣」

ほかに登場したゲストの中では、鉄拳というタレントのアニメネタに大爆笑。「タイガーマスク」に「サザエさん」に「ルパン三世」に「仮面ライダー」に「ウルトラマン」に「アンパンマン」に「フランダースの犬」にエトセトラetc。例えば「アンパン」をする「アンパンマン」といったイラストの描かれた自筆のスケッチブックをめくりながら、ボソボソとした声で訥々をネタを語っていく芸風はアニメ世代には大受けで、デーモン小暮がロードウォリーアズしたようなコスチュームとのギャップも加わって、なかなかにシュールでキッチュな雰囲気を醸し出していた。これからが期待のタレントかも。

それにしてもな「後楽園ゆうえんち」が打つイベントの多彩ぶり。「1231ジオポリス陥落」に先立つ2001年12月8日から25日まで、「ジオポリス」も含めた遊園地全体を使って開催されていたのが「ぱーてぃ! パーティ! テディベア☆クリスマス」というイベント。誕生日ごとに異なるティディベアが用意されていることで、女性に話題となって買い占める人も出た、明治製菓の食玩製品「バースディベア」のベア、366日分366体を、園内のあちらこちらに飾って、来場した人に自分の誕生日ベアを見つけてもらおうというメルヘンチックな企画には、同じ場所で月末に開催される鳥肌実のアバンギャルドな企画との一貫性はとてもじゃないけど伺えない。企画を承認した人の頭の中の縁日ぶり、学園祭ぶりをちょっと見てみたい。

バースディベア
366個もあると自分のベアを見つけるのも一苦労、かと思ったらしっかりアンチョコが。人間こうやって堕落していくのですね。

期間中の園内は、菓子のおまけにつけられているあの小さいティディベアでは全然ない、体調でいうなら60センチはあろうかという大きなベアが、柱から階段から手すりから、ありとあらゆる場所に飾られていて実にきらびやか。若いカップルが手に一覧表を持って、自分の誕生日のテディベアを探して園内を歩いている姿を横目に、男がひとりで7月10日のテディベアを探す光景の悲惨さはそれとして、同じ様な柄、同じ様な色合いのベアから正解のベアを探し出す行為は、昔はやった絵本「ウォーリーを探せ」にも似た苦労とその後の楽しさを味わわせてくれる。

そのお洒落な雰囲気と、都心部ということもあって賑わっていた「後楽園ゆうえんち」に比べると、時期もほぼ同じだったにも関わらず、遊園地では大先輩の東京は浅草にある「花やしき」の方はいささか寂しい状況に。その名も「ゴジラvs花やしき」というイベントは、タイトルが現すように広さで言うなら5800平方メートル、高さもてっぺんが30メートルとなかなかに巨大な怪獣「花やしき」を相手に、50余年の時を越えて復活した怪獣王「ゴジラ」が戦う映画……という訳ではまったくない。早い話が公開されたばかりの映画「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」とタイアップした企画展。可愛さとは縁遠いそのイメージが祟ったか、週末の土曜日だというのにホールでプロップの展示や予告編の上映を見ている人は他に誰もいないという状況で、世界に冠たる怪獣王も地元・日本で危機に瀕していることが明らかになった。

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