タニグチリウイチの出没!
TINAMIX
タニグチリウイチの出没!
「お金に魂こめました」

考えようによっては、経営者としての自分の失敗を尻拭いするためのお金で、美談仕立てにするにはちょっと無理もあるかもしれない。1年2年は息をつないでも、結果として及ばず、会社が消えてしまえばムダ金に終わってしまう。それでも、社員に140円とかのお金が入った袋を「大入り袋」と銘打って配って、その実リニューアルした自分のところが出しているスポーツ新聞をキオスクで買ってもらって、実売実績を上げようと涙ぐましい努力をする、どこかのメディアがやった振る舞いとは、金額の過多以上にスピリッツにおいて違いがある。使いどころの判断の差、そして使い道に対する想いの差、というやつだろうか。

セガは変わりました!変わった変わった!
右がセガの佐藤秀樹新社長、左がセガ会長に就任した福島吉治・CSK会長。2人に香山哲特別顧問を加えた3人がこれからのセガを引っ張って行く。「サクラ大戦4」もよろしく。

それだけに後に残された人たちには、託された遺産をどう使ってどうセガを立て直していくかに大きな責任と期待がのしかかる。「あのお金で何が買えたか」なんて言われてしまっては元も子もない。亡くなってしばらく経った3月21日に、前週末の新聞辞令をくつがえしてセガ生え抜きの副社長が社長に昇格する人事が発表されて、新聞で新社長かと書かれた人も残って、セガ立て直しの最前線で指揮を取り続ける旨発表されたけど、責任を果たして期待にちゃんと応えられるのか。安らかにお眠り下さいと言える日が来ることを、その業績に免じて今はひたすらに願っておこう。

もちろん世の中には、850億円ですらお小遣いていどに見えてしまうようなお金持ちがいたりする。自家用ジェット機が小型機からジャンボ機になってみたり、田園調布の猫の額ほどの豪邸が、門から車で10分走っても玄関にたどり着かない大豪邸になってみたりと、格の違うお金持ちが世界には確実に存在している。同じゲーム業界だったら、任天堂の山内溥社長はたぶん、そんな1人に入りそう。自家用機とか豪邸とかは無縁かもしれないけれど、セガよりはるかに儲かっている会社だし、佐々木にイチローを擁して日本のみならず本場アメリカのメディアからも注目を集めているシアトル・マリナーズの共同オーナーでもある人間が、お金持ちでないはずがない。

「金もちゲイツさん貧乏ライターさん」

そしてさらに、シアトルにだったらこの御方の上はもとより右にも下にだって、ちょっとやそっとじゃ出られないくらいの「超お金持ち」が存在している。経済誌の『フォーブス』によれば2000年の時点で660億ドル、日本円だと約8兆円という、天文学的というより他にないくらいの資産をわずか20年ほどで築き上げてしまった男が、「ウィンドウズ」で世界のパソコンOS(基本ソフト)市場を一手に握ったマイクロソフトのビル・ゲイツ会長だ。何年か前に結婚した時に、シアトル郊外の湖のほとりに建てたという家の建設費用が4000万ドル。これだけあれば地価の高い田園調布にだって巨大な豪邸が建てられる。

ゲイツといっしょ。
日米のお金持ちが帝国ホテルで握手。右は言わずとしれたマイクロフトのビル・ゲイツ会長。左はナムコの中村雅哉会長兼社長。このツーショットを財布にいれておくとお金貯まるかな。

カーネギーにロックフェラーにポール・ゲティにハワード・ヒューズと、アメリカの企業家たちの大富豪ぶりは夢の象徴のように語られているけれど、現代ただいまリアルタイムで聞こえて来るビル・ゲイツの稼ぎっぷり、そして使いっぷりは、地球レベルのお金持ちがいかに度はずれてお金持ちなのかを教えてくれる。ちょっとネットを漁るだけで出てくるわ出てくるわ。「子どもの予防接種を推進する国際キャンペーンに1億ドル寄付」「地域の図書館基金に2000万ドル寄付」「国連人口基金にビル・ゲイツ会長夫妻が22億ドル寄付」「アフリカの4ヵ国におけるエイズ撲滅のために5700万ドルを寄付」。セガだったら会社ごとまるまる買えてしまえるくらいのお金をあちらこちらに寄付している。

豪邸に自家用機なんて俗物ぶりを見せてくれるより、ここに並んだ数字と使い方の方が、よほどお金持ちっぷりを感じさせてくれる。もしもビル・ゲイツが今までに寄付したお金を道ばたで拾って警察に届けて御礼に1割もらえたら、いやいやたとえ1%でももらえたとした、カツカツの暮らしに悩む貧乏ライターも、1人だったら一生を徹夜で原稿書いたりしないで暮らせそう。仕事は金じゃないなんて心だなんて言うけれど、ベースになる金額がちょっと違い過ぎる。

そんなとてつもない世界一の大富豪を一目見たい、近寄りたい、名刺が欲しいなんて思う人は、一般人に限らず経済人の中にも結構いるらしく、3月29日に開催された「東京ゲームショウ2001春」の前夜祭に当たるパーティーにビル・ゲイツが現れると、挨拶にやって来る人の実に大勢で、名刺を差し出せば受け取り自分の名刺を返してそれから会話を一言、二言。でもってすぐさま次の人が名刺を差し出し受け取り返して挨拶といった具合の流れ作業的状況が、ゲイツの周辺に巻き起こっていた。本人といえばいたって気さくなアメリカン。ヤー、オーとか言いながら握手したり喋ったりで、服装とかもとても世界を揺るがす金持ちには見えなかったけど、モノにこだわらない所がまた金持ちらしいと言えば言える。>>次頁

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