タニグチリウイチの出没!
TINAMIX
タニグチリウイチの出没!
タニグチリウイチ
「お金持ちになりたい」

お金持ちになりたーい! というのは多分、この世に生まれたほとんどの人が夢見ていることで、同時にこの世に生まれたほとんどの人が、夢だけで終わってしまうことでもある。宝くじで3億円をもらったり、サッカーくじの「toto」で1億円をゲットしたりと、幸運にめぐまれる人もいない訳ではないけれど、それとだってせいぜい1人の人間が、一生をそれなりなゆとりのある暮らしをすれば使い切ってしまえる金額だろう。あるいは東京の高級住宅街に猫の額よりも狭い土地を買っただけで、消えてしまうどころか借金だって残りそうな額でしかない。お金持ちっていうにはちょっともの足りない。

トイレじゃないよ。
1億円ならまだしも5万円ぽっちじゃ買う気も起こらなん。ギャンブラーなら1発勝負、ダブル、トリプルは卑怯と知れい!

「ITブーム」だなんて騒がれていたちょうど1年くらい前、「なんとかドットコム」だとか、「なんとかネット」だとかいった会社がワシワシと株式を公開しては、何10億円ものお金をガッポガッポと集めていたことがあった。20代とか30代の経営者の懐にも、サラリーマンでは100年働いたって手に入らないような金額が転がり込んで嫉妬と羨望を集めたけれど、これくらいあったって都心に高級マンションの1つでも買って、フェラーリの1台でも購入して、残り30年くらいの人生を悠々自適で暮らすくらいが関の山。真のお金持ちと言って良いのかどうか迷ってしまう。

いったいどれくらいあったら「お金持ち」と名乗れるんだろうか。世間が「お金持ち」だと認めてくれるんだろうか。田園調布に家を持ってる? 銀座で連夜豪遊ができる? うーんちょっと違う。ベストセラーになってる『金持ち父さん、貧乏父さん』(ロバート キヨサキ 著, 白根 美保子訳)を読めば、家なんて持ってたってローンなんかがある人は、お金持ちではないらしい。自分のために使うお金に困らない身分になって、仕事からリタイアできる人のことをお金持ちだと言うらしい。リタイアについては、仕事が趣味という人もいるから国とか人によってまちまちだけど、ともかく単純なモノ持ちのすごさなんかじゃない、別の要素があってはじめてお金持ちだと、自他ともに認められるんじゃないかと思う。

「世のため人のためセガのため」
故・大川功 前セガ会長兼社長
ガンだと言いながらも1時間以上熱弁をふるった在りし日の大川功・セガ前会長兼社長。この人がいたから僕たちは「サクラ大戦3」でエリカちゃんに萌えられるーぅ。

たとえば3月16日に亡くなった大川功・セガ会長兼社長。CSKというコンピューターソフト会社の創業者というのがビジネスの世界で知られるようになった始まりだけど、一般にはゲーム会社のセガのオーナーという方が通りが良いかも。むしろこの何年かはセガの方にかかりっきりで、何か発表会があれば自ら出席しては熱弁を振るって集まった人たちにセガの“すごさ”をアピールしていたほど。会長になったと思ったら今度は社長までも兼務するといった具合に、名実ともにセガの"顔"として大車輪の働きを見せていた。

もとより屈指のお金持ちとして知られていたけれど、世間がその財力のすさまじさに気づいたのは、セガが長年中心的な事業として展開して来た、家庭用ゲーム機の製造分野から撤退を発表した記者会見を聞いた時。赤字がふくらんで経営内容がいちだんと悪化したセガに、なんと自分の資産約850億円を寄付することを明らかにして、ちょっとやそっとのことでは驚かない記者たちの目を見張らせた。850億円。この金で何が買えるかは村上龍じゃないから調べる気もないけれど、250円の吉野屋の牛丼だったら実に3億4000万杯、日本中のすべての人に2杯ずつおごってもお釣りが来るくらいのすさまじい金額だということだけは確かだろう。卵だって付けられるかな。つゆだく希望? それはタダなんでご随意に。

それにしてもな大盤振る舞い。加えて伝えられる体調不良からいよいよ最期を覚悟して、家族以上の存在として考えていたセガにすべての財産をゆずって、傾きかけていたセガの“更正”を願ったんだと当時も思われていたけれど、1カ月半後の訃報に接するにつけ、あらためて大川功のセガへの惚れっぷりが浮かびあがって来た。と同時に、何千人もの社員を抱える会社のそれこそ生死を左右するくらいの金額を、フトコロからポンと出してしまったという事実に、本当のお金持ちだけが持つ凄みが見えたような気がした。>>次頁

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