タニグチリウイチの出没!
TINAMIX
タニグチリウイチの出没!
タニグチリウイチ

盛者必衰

ニューヨークのシンボル、かの「ロックフェラーセンター」を日本企業が買ったと聞いた時には、もしかすると日本、このまま世界中の資産を買い占めて地球に大帝国でも築き上げるんじゃないかとかすかに思ったりもしたけれど、西洋人から反感を買って裏で手を回され袋叩きにされたのか、それともはじめっから実力なんてないのに浮かれ騒いでいただけなのか、バブル経済が崩壊して海外に持ってた資産は次々と取り上げられあるいは台頭して来た別の勢力によって引き継がれ、世界に君臨していたように見えた日本経済の面影は今はない。

いえいえどうして。日本にはゲームにアニメにコミックっていう切り札があるじゃないかという指摘もある。なるほどこの10年ほど、「パワーレンジャー」に「セーラームーン」が世界市場を席巻し、続いて登場の「新世紀エヴァンゲリオン」の騒動が社会現象にまでなった96年ごろからこっち、自動車だハイテクだ金融だ証券といったちょっぴり陰りの見えていた産業に対して、新しい経済を引っ張り世界を相手に戦える産業として、これらゲームやアニメやコミックへの注目が高まった。

けれどもだ。潰れるなんて絶対にないと思われていた一流証券会社が潰れ、お高くとまっていた銀行も潰れたり他の銀行と手を組まざるを得なかったりして昔日の面影はないように、ゲームだアニメだコミックだと騒いでいてもそれがいつまであるとは限らない。「いつまでもあると思うな親と金」とか「おごれるものもひさしからず」とか「ローマは1日にしてならず」……おっとこれは違う、ともかく永遠の存在を約束されているものなんてこの激動する世の中にはないんだってことを、見る機会が最近多くなって来ていて気分は諦念の域に達している。

セガはたおれたままだったのか。

セガガガっ………!
右から2番目がco-cooの香山哲さん。 「鉄甲機ミカヅキ」も作ったすごい人。

その最たるものの1つが例の「セガ騒動」。1月末頃から新聞各紙がバンバンと書き始めて当方も書いた「家庭用ゲーム機事業からの撤退」は、セガへのシンパシーもゲーム業界への思い入れも全然ない人間にとっては客観的に見て「足かせになっている事業だったら止めて当然」としか見ようのない、なかば必然ともいえる行動だった。けれども例えば『SG-1000』からスタートして、『メガドライブ』とか『セガサターン』とか新型機を出しては任天堂の牙城に挑んで行った構図を目の当たりにして育って来た世代とか、ゲームセンターで「バーチャファイター」の熱気にハマった世代なんかには、安易に撤退とか敗北とか書いたメディアの人間たちとは違った感慨が、胸に去来したことだろーし、容易には信じられないことだっただろー。

1月末になってようやく発表された再建計画によれば、家庭用ゲーム機からは撤退するけど「ソニック」とか「バーチャ」とか「サクラ大戦」とか行ったゲームはこれからも出し続ける予定で、「ファンタシースターオンライン」の大ヒットなんかからも分かるように、元々が定評のあるセガソフトをもってすれば、どこかの証券会社のようには名前も消えて無くなる事態にはならない、とは思う。思うけれども「ゲーム機をやらないセガ」がどれだけ「セガ」なのか、といった感覚は古手のファンの人なんかにはあると思う。あって当然のものがなくなる感覚を味わう人がいる、それが日本にとってはお家芸ともいえたゲームの世界で起こったという事実がちょっと気分を滅入らせる。

代わって台頭したのが同じく日本のソニー・コンピュータエンタテインメントだったりした訳だから単純に同じパイを同じテーブルで譲り合っただけだと言えなくもない。後に控えし軍団も1つは確かに海の彼方、シアトルから舞い降りる超能力軍団「X-MEN」、じゃなくって黒いボディにグリーンのランプが輝く巨大な箱「Xbox」だったりするけれど、それよりはむしろ京都が送り出す新しい立方体「ゲームキューブ」に軍配が上がりそうだから日本はまだまだ強いと言っていい。ただ、あの「セガ」が脱落したという事実はやっぱり事実として重くおもーく受け止め脳髄に刻んでおく必要があるんだろう。だとしたらもしかして再び復活する日も? それは……ない……かなあ、やっぱり。>>次頁

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