タニグチリウイチの出没!
TINAMIX
タニグチリウイチの出没!
タニグチリウイチ

棲み分けるおたく

新宿にある「さくらやホビー館」(ほびー・やかた、とは読まない)にフラリと入って偶然見かけたモデルガンの「モーゼル シュネールフォイヤー M712」(定価29800円也)を衝動買いしてしまったのは、男の子だったら共通の鉄砲に対する関心が突き動かされたって理由もあるけれど、数ある拳銃の中で買ったのがどうして古くさく重たくBB弾も撃てない「モーゼル」のモデルガンだったかと言われると、ひとつにはマンガで愛読していてOVAシリーズも揃えている『ジオブリーダーズ』の中で、"紅の流れ星"こと梅崎真紀が使っていてカッコ良いと思ったことが背景にある、ような気がする。

この弾倉に憧れた少年時代
憧れの「モーゼル」を遂に入手、でもどこに置くんだよ、ガラクタで一杯の部屋の。

ちょっぴりもの言いが曖昧なのは、「モーゼル」が好きだったから『ジオブリ』も好きになったのか、それとも『ジオブリ』が面白いから出てくるミリタリー描写も気に入ったのかが判然としないからで、さらにややこしいことに、この作品、舞台が名古屋によく似た「綾金市」だということも気に入った理由になっていて、どこが関心の起点になっていたかが今となっては分からない。いずれにしても拳銃のわけても「モーゼル好き」と『ジオブリ』ファンとは、趣味のベクトルにおいて重なる可能性が高いということは言える。同様にアニメ版の『マイアミ・ガンズ』や押井守の最新作『アヴァロン』も、同じ“モーゼル物”ということで作品にどんな評判が立とうとも、また実際に立ちまくっていても敢然としてOKのサインを掲げる。こういう『アヴァロン』のほめ方は間違いかなあ。そもそも『アヴァロン』を誉めること自体が……(以下自粛)。

それはともかくここでひとつ気になることがあって、『フリクリ』が作品的にはセールス的には知らないけれど絶好調なガイナックスがかつて送り出した偉大にしてイタいOVA『おたくのビデオ1982』『続・おたくのビデオ1985』の中で、アニメおたくとミリタリーマニアとの間には容易には超えられない壁があるといった指摘がなされていたことに当てはめると、果たして「モーゼル好き」な「アニメファン」は存在として正しいのかという疑問が浮かび上がる。実際にいるんだから仕方がないし、『ジオブリ』のファンにはミリタリーファンも結構いてコスプレとかに完全武装で乗り込むといった話も聞いているから、それほど高い壁があるとはちょっとのところ思えない。

何しろおたくの総本山みたいな会社で今やメジャーなマスコミからも「オタキング」と呼ばれるまでになった人が作った作品。ことオタクの性向に関して間違いがあるはずもないだろうとは思っているけれど、現実のアニメファンとミリタリーマニアの混ざり具合を見るにつけ、あるいは文意には上っ面だけではない、深淵な意味でもあるのかもしれない。それは例えば『おたくのビデオ』の指摘にもあったように、空想に萌えるアニメおたくと現実主義者のミリタリーマニアとはひとつの拳銃を巡る程度では重なれても、道を究めれば極めるほど重なったベクトルの近辺では小さかった差異が広がって、相容れない関係になってそれぞれに棲み分けている、ということなのかもしれない。>>次頁

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