タニグチリウイチの出没!
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タニグチリウイチ

肉欲&物欲

「肉欲」そして「物欲」。字面だけ見るとどこどなく淫靡でヘンタイっぽい雰囲気がジワジワと漂っている言葉だけれど、決してイヤらしい意味で使おうとしているんじゃない。ゲームとか玩具とかいった娯楽のこれからを見た時に、キーワードになって来そうな言葉として挙げたいのがこの「肉欲」と「物欲」なのだ。なんだ、やっぱりエロゲーに大人の玩具じゃない? だから違うって。

にくよく!
淫靡な肉欲も悪くない……よなあ。

説明するなら例えば「肉欲」。それは肉体を駆使して楽しむゲーム、肉体の感覚に訴える玩具、肉体の範囲を拡張するツールといったものがこれからもてはやされるんじゃないか、といった想像から生まれたキーワード。バーチャルだ、ネットだと世界中が大騒ぎして、ゲームでもコミュニケーションでも仮想空間に快楽を求めるエンターテインメントが大流行した1990年代後半から、2000年へと移り変わった現在の世の中の関心が、人間の「肉」を満たす快楽へと変化して来ているんじゃないんだろうか、なんて印象を、ここ1カ月くらいの間に見たイベントで受けたことから思い浮かんだ。

それから「物欲」。これは分かりやすい。いわゆるキャラクターグッズの隆盛であり、コレクションすることへの欲望だ。物語の中で輝いてこそのキャラクターたちなのに、見た目の可愛さに惹かれてポスターでもグッズでもぬいぐるみでも買いあさる人が後を絶たないどころかどんどんと増え続けている。それからカードゲーム。巷の子供に流行るのは、「遊戯王」に「ポケモンカード」に「アクエリアンエイジ」に「ガンダムウォー」に「マジック・ザ・ギャザリング」といったトレーディングカードゲームばかり。勝負に勝つことも大切だけど、それ以上にカードを集めることが重要視されるこれらTCGの大流行は、子供たちがある種の「物欲」に浮かされていることの現れだろう。

どうして「肉欲」と「物欲」なのか。心理学者でも社会学者でも哲学者でもないから「人間のココロは隙間を埋めたがっている」とか「人間は群れる生き物だ」とかいったもっともらしい説明はつけられない。テレビゲームの隆盛が長く続き過ぎた結果、ガラスのモニターをはさんだ向こう側を手先のボタン1つで操作する快楽に人々が飽きて来ていることとか、テクノロジーの進歩がガラスのモニターを挟んだ向こうに仮想空間を構築しなくても楽しめる遊びを生みだしたこととかが、「肉欲」と「物欲」を昂進させているのかもしれない、なっていうことも可能かもしれない。けれどもここでは単純に、現場に出向いて見たゲームや玩具やグッズやカードゲームから、プレイする楽しさ、集める面白さを感じたからだといっておこう。

ゲーセン縁日化計画

それにしても、ゲームセンターなんかに置かれるゲーム機の「肉化」ぶりにはちょっとばかり驚くものがある。9月21日から3日間、「東京ビッグサイト」で開催された「アミューズメントマシンショー」の会場で見かけた最新型のゲーム機のなかに、人間の「肉感」を刺激するものが結構目立つようになっていた。

関係ないけど機動警察とかパトレイバーはやりすぎかと…。
「BB弾」という言葉をなぜかコナミが商標登録申請出願中。もし通ったらば別メーカーのこのゲーム機はどうなる?

入り口を入ってまず目についたのが、エアガンなんかで使われている「BB弾」を発射して的に当ててプライズ(景品)をゲットする一種のプライズマシン。縁日で使われていたコルク鉄砲が進化したのが、ビームなり赤外線なりを発射してテレビ画面の中の的を狙う、いわゆるシューティングゲームだったとしたら、BB弾という"実弾"に回帰するのは退化と言って言えなくもない。

けれどもビデオゲームの場合と違って、弾が発射される瞬間に手へと伝わる反動や、弾が的に当たって跳ね返る場面で浮かぶ感情は、ビデオゲームで架空のゾンビや空想の犯罪者を仮想の血祭りに上げていた感覚とは、微妙に違っていて背筋をチリチリと刺激する。業界では最大手のコナミも、同じようにBB弾を発射するゲームマシンを送り込んでいて、こちらはモニターに弾があたった衝撃がCG(コンピューターグラフィックス)画面に変化を与える形式ではあったけど、発射する際の衝撃が手から体へと及ぼす「肉感」は、これまでのシューティングゲームとはどこか違った種類の刺激となって気持に作用する。

キャッチしたイセエビは食べると生臭いらしいです。
食えるイセエビに比べると金魚はすくってもあんまり嬉しくないような。

“縁日系”とでもくくれそうなアイティムなら、ほかに「金魚すくい」をテーマにしたマシンを出しているメーカーが2社ほどあって、魚を釣り上げたりすくったりする楽しみをプレーヤーに味わわせてくれる。1つは玩具の金魚を釣り糸ですくう形式だったけど、1つは一時期流行した「イセエビキャッチャー」にも似てプールを本物の金魚が泳いでいるゲーム機。「イセエビキャッチャー」が動物愛護の団体から「残酷だ」と批判された時に「だったらどうして金魚すくいは良いんだ」と思ったけれど、本当に金魚すくい機を出してしまうあたりが、何ごとにもどん欲でチャレンジ精神旺盛なニッポン企業だ。いや、お見それしました。

金魚ではないけれど、実際の水を張ったプールに舟を走らせる競艇ゲームを出していたメーカーもあったし、本物そっくりのカメラを手に持ちモニターに向けてシャッターチャンスを競うマシンも2社ほどあって、業務用ゲーム機の特許をめぐってもめた去年の夏の再来をちょっとばかり心配した。本体に取り付けられた太鼓をドンドンと叩くマシーンだって「和製ドラムマニア」と言えないこともない。これは特許に影響するのか。考えてみればゲーム機の特許で問題となったいわゆる「音楽ゲーム」は、楽器を操作したりダンスを披露する「肉感」を大切にしたゲーム機。それを皮切りにして数年前から始まった「肉欲」への回帰が、2000年に来て1つの大きな華を咲かせつつあるといえるんだろう。

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