タニグチリウイチの出没!
TINAMIX
タニグチリウイチの出没!

カードがつなぐ

写真3
「これポケモン?」「違うモンコレ」。うーんおじさんにはわからない……

カードを使って対戦するトレーディングカードゲームが、日本で急激に市場を拡大し始めたのはだいたい95、6年頃ということになるだろうか。きっかけになったのはアメリカから入って来たファンタジー調の絵が描かれたカードを使って相手を倒すゲーム、「マジック・ザ・ギャザリング」の大ヒット。いい歳をした大人たちがその面白さにハマり、カードを何箱も買っては"当たり"のカードを探して喜んだり、大会の後に自分のランキングがどれだけ上がったかに一喜一憂している姿がカードショップやネットの中で見受けられた。

そんな楽しさを子供達にも楽しんでもらうために作り出されたのが、当時ゲームとして、またテレビアニメーションとして超絶的な人気を見せていた「ポケモン」のトレーディングカード。売り出されると同時に子供達から圧倒的な支持を受けて完売する店が続出したし、昨年の全米での“ポケモンフィーバー”で、カード集めに熱狂する全米の子供達の姿がメディアを通じて報道されたのは記憶に新しい。家で一人で遊んでいてもつまらない、誰か友人がいて初めて楽しめるトレーディングカードがここまでヒットしている状況を見れば、子供たちは外で遊ばずひきこもってゲームばかりしているなんて発想は、どこからも出てくるはずがない。

「ポケモン」より上の世代もこれは同様。去年、東京ドームで開催された大会に5万人が集まって大混乱となって新聞の社会面で報道されたイベントは、「遊☆戯☆王」というマンガを題材にしたトレーディングカードゲームの全国大会だった。混乱が起こったのは、イベント限定で売り出されるカードを買い求めに来た人たちがあまりにも多かったから。中には沖縄・北海道からかけつけて来た親子もいたそうで、モノで釣っているような心苦しさは感じるものの、熱中している子供達の姿からは、家の中に閉じこもっているようなイメージはまるで感じない。子供たちはカードという媒介を通して、友人たちや社会としっかりつながっている。

子供から大人から老人から

7月に同じ幕張メッセで開催された「東京キャラクターショー2000」でも、トレーディングカードの人気ぶりがうかがえた。カードを販売したり、対戦コーナー(デュエルスペース)を儲けて実演や大会を開いているブースの実に多かったこと。1つのシリーズで何百枚もの種類のカードを作れば、それらを集めようとする人たちでとてつもない枚数が売れるというトレーディングカードの商品性に目をつけたメーカーも少なくはない。けれどもそれを置いてもファン層が育っていなければカード市場への参入はない訳で、各社の熱心さはそのままカードの市場性、成長性をあらわしていると言えそうだ。=写真3

「デ・ジ・キャラット」を送り出したブロッコリーが一方の主軸商品として掲げている「アクエリアンエイジ」というトレーディングカードゲームの販売コーナーには、「ポケモン」からも「遊戯王」からも抜け出た高校生から大学生から中には立派な社会人までも含めた大勢の人たちが、行列をつくってパックではなく箱でカードを購入している姿が見られ、表側の対戦スペース前には、エキスパートたちの対戦姿を人目みようとするファンが座り込んでいたほどだった。

イベントには展示していなかったものの、カード市場の潜在性に目を付けたハドソンでは、プロ野球の選手がプリントされたカードを使ったゲームを考案して、一般への定着を目指そうとしている。「ポケモン」「遊戯王」は子供向けだし「マジック」は覚えるのが難しい、というようなカード初心者でも、子供の頃から慣れ親しんだ野球というスポーツのルールを取り入れたカードゲームなら、比較的容易に入り込めるんじゃないかというのがハドソンの目算。お爺ちゃんでもこれなら孫を相手にカードゲームで遊んでやれるという寸法で、そこには親子の断絶などとは無縁の、3世代にわたる家族のコミュニケーションの姿が見えてくる。というとあまりに楽観的で美し過ぎる光景かもしれないけれど、そうなる可能性は皆無ではないし、そうなってくれれば世の中も少しは穏やかになるんじゃない?>>次頁

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