出没!
TINAMIX
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「キャラクター大国ニッポン」

そこかしこにキャラクターが氾濫しているこの日本。文房具でも携帯ストラップでも、グッズはキャラがついているかいないかで値段が倍は違うのに、人はその高い方を1つどころか2つ、3つと買いだめするくらいだし、街を歩けば薬屋の前には像とウサギとカエルが並び、チキン屋には白服のおやじの笑顔の人形、工事現場にはお辞儀する作業員の肖像が張り付けられては行き交う人にアピールしている。

テレビをつければ渋谷にあるお堅いことで知られたテレビ局までもが、四角いタワシか黒板消しのようなキャラクターに「どーも」なんて言わせている。イベントを開けば限定グッズを買い求めるために徹夜覚悟の大行列。その際たるものがガレージキットの祭典広告3+4月号「ワンダーフェスティバル」だったり同人誌即売会の老舗「コミックマーケット」だったりする訳で、かたやフィギュアでこなた同人誌といった形になった、マンガやアニメーションのキャラクターを使ったグッズを求めて、何万人、何十万人が真夏と真冬の極悪な気象条件をものともせずに、東京・有明の「東京ビッグサイト」へとやって来る。

「日本人はどうしてこんなにキャラクターを愛するようになったのか」――と、ここで大上段から振りかぶって理論をぶつけるだけの知識と根性があれば、今ごろは象牙の塔の壇上で講釈の1つもぶってヤンヤと喝采を浴びていただろうけれど、首を突っ込みたがる割には飽きっぽい、浅学非才な身から言えるのは「そこにキャラクターがあったからだ」という乱暴きわまりない一言くらい。そりゃあかん、ちゃんとした答えを教えんかいという人は、博報堂から隔月で出ている広告業界誌「広告」の2000年3+4月号で特集された「キャラクター言論」を探して読んで下さい、偉い人頭の良い人有名な人の優れた「キャラクター論」が載っててとても勉強になりますから。

「勝てば官軍、負ければ斬首…」

とは言っても、一応は経済関係を取材する仕事なんかをしている人間が、少しは真面目な分析をしないと「何だいそんな野郎に真っ当な記事が書けるのかい」なんて話にもなるから、ない知恵を絞って昨今のキャラクターブームを考えれば、「キャラクターは商売になるから」という、キャラクターの作り手サイド、送り手サイドから見た理由くらいなら上げられる。

ウブラブ今や懐かしさが先に立つ「新世紀エヴァンゲリオン」の大ブームの時、劇場版の製作発表で関係者が出した数字が「200億円」という関連マーケットの規模だった。後に修正されたのかブームの拡大ぶりを見てまわりが足したのか、300億円という数字も出てきたけれど、どっちにしたって立派に大企業と言って良いだけの売り上げ規模を1つのキャラクターが叩き出すことになる。

もちろんこれは希有な例で、便乗して関連グッズの人気を当て込んで山ほど制作されたアニメのほとんどが、グッズもろとも討ち死にしたのはアニメファンなら記憶に新しいところ。「スーパードール・リカちゃん」「ミクロマン」「ビーストウォーズ」に「ドンキーコング」「キョロちゃん」と、キャラクターグッズの宣伝を半ば目的にアニメシリーズへのスポンサードを行っていたタカラは、玩具が売れずビデオも今ひとつのまま、経営悪化の泥沼に陥り、長男から父親を経て次男へと社長が代わり、ついには後発のゲームメーカー、コナミの出資を仰ぐ羽目になった。

TOMY一方では、「ポケットモンスター」「スター・ウォーズ」のグッズを一手に引き受けるトミーが、アニメや映画の大人気にあやかて快調に売り上げを伸ばし、2001年3月期のグループ連結での売り上げで、1000億円企業の仲間入りを目指す。「当たればでかい」市場な訳で、だからこそどの企業も売れるキャラクターを探して出版社を、アニメ制作会社を歩き回り、あるいは自らが企画してキャラクターを送り出してはヒットを狙おうとする。

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