君はオヴァルを聞いたことがあるかい?
聞いたことがある君はこの文章をスキップ、先に進んで。聞いたことがない君、オヴァルについてきわめて簡単なレクチャーをするので読んでから進んでくれると嬉しく思う。
まずオヴァルとは何か。彼はドイツ人、マーカス・ポップのアーティストネーム。もしくは一人ユニット名。独特の作風、方法論をもち、それはオヴァルの音楽とつねにセットで語られている。
ではその独特な制作スタイル。一般的にいわれてるそれをまとめるとこうだ。
- 材料はCDとして流通する諸音源。
- それにフェルトペンで落書き。
- おもむろにプレイヤーにかける!
- プレイヤーが起こしたランダムなスキップ音をサンプリング。
- こうして採取した音をハードディスクにストック。
- デスクトップでそれら加工しつつ、彼の音楽を構築する。
そしてまたオヴァルは多様にカテゴライズされてもいる。たとえば、
- 音響派
- ポストテクノ
- ポスト電子音楽
- ポストミニマリズム
- ポストテクノロジー
- ポストサンプリング音楽
……といった具合に。マーカス・ポップの口真似をすれば、こんなカテゴライズは「どうでもよいこと」なんだけど、ここまで執拗に“ポスト”が付されるからには、きっとジャンルを越えた以後の地点に、オヴァルの音楽とその実践はあるのだろう。そして、実際そうなんだ。
オヴァルのすばらしさは、彼のディスコグラフィーを参照し、聞くことでも確認できる。具体的なタイトルでいうなら“94 diskont”『szenario EP』には、音楽/音響として端的に素敵な曲が揃っている。機会があれば試しに聞いてみて絶対に損はない。
しかしオヴァルの可能性はむろんそこにとどまらない。彼の決定的な新しさは、マーカス・ポップが発案、開発したソフトウェア「オヴァルプロセス」にこそあるんだ。今回のシンポジウムタイトルも同じでしょ?――「オヴァルプロセス」
本誌のような非音楽誌が彼をチェックしていた理由は、このソフトウェアがきわめて斬新なコンセプトのもとで開発され、グラフィック・ユーザー・インターフェイスにすぐれた、一種の「音楽ゲーム」でもあること、これがすべて。マーカス・ポップ自身の言葉を借りれば、
「これを使えば、誰もがオヴァルになることが可能なんだ」
さあ、そろそろレポートに移ろうか。
>>オヴァルプロセス・レポート 本文
取材/構成:編集部
マーカス・ポップによるレクチャーとシンポジウム
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日時:
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2001年5月25日(金)
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会場:
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ドイツ文化会館ホール
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パネリスト:
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マーカス・ポップ/クリストフ・シャルル(サウンドアーティスト)/東浩紀(哲学者)/桝山寛(評論家)/畠中実(ICC学芸員)
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司会:
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佐々木敦(HEADZ)
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企画協力:
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HEADZ
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協力:
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徳間ジャパンコミュニケーションズ
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主催:
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東京ドイツ文化センター
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