TINAMIX REVIEW
TINAMIX
青少年のための少女マンガ入門(12)太刀掛秀子

■加筆%修正

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図2:「6月のシロフォン」単行本コメント(c)太刀掛秀子
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図3:「ひとつの花もきみに」(c)太刀掛秀子より

図2に単行本で、「6月のシロフォン」内の余白に書かれた太刀掛先生のコメントを示します。ヒーローの六平の髪の毛の色を白から黒に加筆したことが書かれてあります。図3に、図1に示した「6月のシロフォン」の単行本での4ページ目を示します。(「ひとつの花もきみに」P138)図1と比較してみてください。微妙に加筆・修正されています。

図2で書いてあるように、六平の髪の色の変化はもちろんですが、3コマ目のみちる(ヒロインの名前です。)の手が、雑誌掲載時には髪をかきあげていたのに、単行本では、髪にふれるだけになっています。後者の方が、髪の毛の乱れと共に、みちるの驚きの一瞬を上手くとらえららているように感じます。

図4に、同じく「6月のシロフォン」内の2ページを示します。上は、雑誌掲載時のもので、下は、単行本に収録されたものです。広告スペースがあった、左のページだけでなく、右のページもかなり加筆・修正されていることが確認できると思います。(間違い探しで楽しめるくらいです。)

現在、少女マンガの単行本では、雑誌の時の広告スペースに作者のフリートークが書かれることが多くなっていますが、80年代の中盤までは、そのようなフリートークは珍しいものでした。太刀掛先生は、広告スペースをかなりの確率で、単行本化の段階において作品を加筆・修正されていらっしゃいます。比較していただければわかるように、いずれの場合もネーム上は変化は少ないので、読者としては違和感を感じることはほどんどないと思います。しかし、「6月のシロフォン」だけでなくどの作品でも、単行本化の際に加筆されるということは、読者によりよい作品を届けようという太刀掛先生の心意気なのではないかと感じます。

図4
図4:「6月のシロフォン」(c)太刀掛秀子より

■引き際

太刀掛先生は、『りぼん』1986年1月号に掲載された「星聖夜」(単行本未収録作品)を最後に、漫画家の第一線から引退されました。太刀掛先生が、『りぼん』を引退される前の最後の仕事が、「りぼん新人まんが傑作集【4】7色のクレヨン」(1986年4月20日初版発行)の解説でした。P195に以下のようなコメントがあります。

{出てくる人がいれば、消えてゆく人もある。このシリーズが続いてゆくかげには、こんなキビシーイ現実があるんだよ、とおどかしといて、作品紹介、いってみよーかな。}

すでに引退を考え始めていたのかなと今になってみると感じてしまいます。(太刀掛先生は、同年9月に双子の女の子を出産されていらっしゃいます。)

デビューから約11年間、太刀掛先生は『りぼん』で第一線で活躍し続けました。入選でデビューも空前絶後のことならば、『りぼん』の本誌掲載からいきなり漫画家引退というのも珍しいことです。(『りぼん』では、いきなり消える時は他誌へ移られる場合であり、引退される時は関連誌に作品を発表して徐々にというケースが普通です。)>>次頁

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