TINAMIX REVIEW
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青少年のための少女マンガ入門(2)新條まゆ

■で、快感なフレーズとは、どういう調べなのか?

とまぁ、おおよそストーリー展開はわかってもらえたかと思う。要は、愛音ピンチ!が、この話の基本である。なお、ヒロインのピンチが少女漫画で描かれることについては、ミニコラムで考察されているので読んでいただきたい。

「なるほど、この漫画って突っ込みがいがあるバカ漫画なんですね」と考える人も多いかもしれない。まぁ突っ込みがいある漫画なんで、そう読んでも楽しめます。事実、インターネット上には、そういう突っ込みしてあげつらってるページが幾つかあるしね。

取っ掛かりは、突っ込み気分でもいい。とりあえず、手にしてもらいたい。多分読み進むにつれ、突っ込む気力すら失せてくるから。後に残るのは、デタラメに翻弄される快感だろう。

そう、新條まゆはデタラメを恐れていない。普通の漫画家なら「これやっちゃ嘘くさくなるよね」と意識的にリミッターをかけるものだ。しかし「快感・フレーズ」には、そういうリミッターをかけた形跡は見受けられない。「デタラメかどうかなんて構わない。とにかくおもしろい漫画を描きたい」という思い切りの良さに満ちているのだ。

その結果、この作品には少女漫画のクリシェが散在している。「運命の人」「有名芸能人と一般人の恋愛」「遊び慣れた男の純愛」「強引な人に弱いの」「実は金持ちの息子」「お姫様だっこ」etc...派手なセックスシーンに目を奪われがちだが、基本的には伝統的な少女漫画を踏襲している作品だ。そしてこの作品の成功は、少女漫画のクリシェがいまだ有効であることを証明した。こんな作品を90年代デビューの作家が描いてるってのは、ほんと奇跡である。

これって何だろう。そう思うと、ガレージパンクみたいなものかな?って気がしてきた。曲はありふれた3コードでいい、ガンガンにディストーションかけろ、とにかく大音量!!なんだか、「快感・フレーズ」の豪快さ加減に似てるぞ。でも、ビジュアル系バンドの漫画をガレージパンクに例えていいんだろうか!?

ええい、いいのだ。ガレージパンクのプリミティブな演奏からくる快感、それこそ快感のフレーズじゃないか!! 少女漫画のプリミティブな魅力が十二分に出てる作品、それこそ「快感・フレーズ」だ!! 決めた、今日から俺にとってリュシフェルはガレージパンク・バンド!!

デタラメを避けクリシェを避け、結果こじんまりとした漫画もいいだろう。ガラスのような繊細さに彩られた漫画だって悪いことない。でも人に薦めるなら、こういうガレージパンクのような豪快な漫画だ。人からどう突っ込まれても揺るぎようのない、泰然自若とした漫画だぞ、これ。

まぁとにかく読んだら叫べよ、濡れていこうぜ!!

文:もとむら ひとし


なんで少女マンガってレイプが好きなのかしら?

新條まゆの短編集、『あなたに繋がれたい』は全四編のうち二作がレイプもの…おいおい〜。新條作品は今サイコーにエッチな少女マンガとして女子高生に大人気らしいんですが、それでいーのか女子高生。

しかし、最高級ホテルのスイートを常宿とする若い実力者に、娼婦と間違われて部屋に監禁され好きなようにされる(表題作)とか、二重人格の生徒会長に弱みを握られやっぱり好きなようにされる(『悪魔の仮面』)とか、荒唐無稽でありながら、実は女の子は好きかもしれない、こーゆーシチュエーションは。そーいえば川原泉の『悪魔を知る者』は、二重人格の生徒会長にヒロインがいいようにされる(ただしエロなし)という話だったし、新條作品は少女マンガとしては性描写が過激なだけで特に新味のある設定ではないのかも。

あなたに繋がれたい
「あなたに繋がれたい」
(c)新條まゆ/小学館
小コミCheese!フラワーコミックス

代表作『快感フレーズ』も、ヒロインが強引なヒーローに振り回されたり、ヒーローのライバルである他の男たちに狙われたりといった、黄金のパターンを二十年以上繰り返している『王家の紋章』をそのまま踏襲しているな、よく考えると。ヒロインは「マゾの白痴美襲われ専門」(BY青池保子)なわけです。要は新條作品のレイプものは、少女マンガの王道パターン、襲われ専門ヒロインの一バリエーションに過ぎないのではないかと。だって無理やりヤられた相手を好きになんかなんないよ、フツー。

襲われ専門はラクなのよ、新條作品に出て来る男たちはヒロインに向かって、「お前を汚したい」「壊しちまうかもしれない」などとヌケヌケとヌカす。じゃあヤメロ、今すぐその一物をしまえ、とはヒロインは言わない。あなたの色に染まりたい、あなたに繋がれたい…もちろん前述したようにこれは単なる強姦ごっこ、一種のファンタジーなわけなんですが、自分は純真なままで、男の方が「ムリヤリ」求めて来るシチュエーションが、女の子達になんでオイシイのか。この短編集片手に考えてみるのも面白いかも。正直に白状すると、新條作品に出て来る大変強引な殿方どもがみんなメガネをかけていたら…わたしも新條まゆにはまっていましたとも。おそるべし新條、そして少女マンガ。(シボンちゃん)

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