No.99829

連載小説17

水希さん

第17回

2009-10-09 09:08:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:368   閲覧ユーザー数:368

帰りの電車にて。

 

それは質問攻めから始まった。

「二人って、いつ知り合ったの?」

「小五の頃だっけ」

「うむ」

 小五で同じクラスになって、当然同じ中学に進んで、同じ高校に進んだ。

ま、それだけの仲なのは事実だけど。

「第一印象どうだったの?」

「う~ん。楓、覚えてる?」

「忘れた」

 だよねぇ。

「ただ、話が合ったよね。楓とはいつも無意識に話題が合うから」

「そりゃねぇ。んで、確か、どこに住んでるかとか、どこの幼稚園出身か、

みたいな話しなかった?」

 そういえば…したような…しないような…

「ごめん、楓。全然覚えてない…」

「ひっどー! ちょっと木谷さん、聞いた? えりか友達甲斐がなくない?」

「う~ん、何年も前でしょ? 覚えてなくても当然じゃないかなぁ…」

 お、木谷さんが私の側に回ってくれたぞ。よぉ~し。

「だよね! 普通覚えてないよねっ!」

「まぁ、全部が全部とは言わないけどね」

「むむむ…私不利? というか、覚えてなくても仕方ないのか…」

 仕方ないかどうかはともかく、こっちだけ忘れてると悪い気もするんだよなぁ。

「とはいえ、住んでる所も結構離れてて、遊ぶの苦労したよね」

「あぁ~、それはねー」

「駅でさよならって事は、お互いが駅向こうか。それは苦労するね」

 木谷さんにもその辺は伝わるはず。

「駅が真ん中って分けじゃないんだけど、分かりやすいから駅で待ち合わせて、

小学校の頃はカラオケとかお店とかも行かないし、公園に行くでしょ?

そうすると、駅の近所になくってさぁ」

「うんうん。学校の近くの公園に行こう、て時はよかったんだけど、

それ以外の時はお互い自分の公園に行きたがるから、バトルだったよねー」

「ほうほう、倉橋さんと楓さんのバトルか」

 ん、なんか、心のメモ帳にメモってる。な、なんだかなぁ。

「バトルって言っても、じゃんけんで決めてたけどね」

「そうそう。えりかって、大体グーから出すから、パー出してれば勝てて。

でも、それじゃ勝ちすぎて怪しまれるから、時々わざと負けてねー」

 そ、そんな事になってたのか…

「わ、私…たまに勝てるのが嬉しかったんだけど…」

「それが、実は全部出来レース。ぷぷっ!」

 ~~~~~~~~っ!

「わ、笑うなぁっ! ちょっと楓、ここで暴露する事?」

「だって、木谷さんもせっかく友達になったんだから、それくらい出さないと」

 ちょ!

「そんな情報いらないでしょ。全く…」

 これは困った。なんとか仕返ししてやりたいなぁ…

「くっそー!」

 

私は少しの間、考え込む事となった。

 

 

~つづく~


 
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