No.98092

恋姫†無双 真・北郷√11

flowenさん

恋姫†無双は、BaseSonの作品です。
自己解釈、崩壊作品です。
2009・11・07修正。

2009-09-30 03:15:06 投稿 / 全27ページ    総閲覧数:62992   閲覧ユーザー数:38142

 読む前の注意!

 

 前回、資料で大反響? だった、皆様に大人気の華琳様。

 

 その性格も、やっぱり私設定です。はい、全く懲りずに!

 

 麗羽様と同様、生暖かく見守ってくださいね。

 

 多分、彼女の二つの人格のせめぎ合いは、こうだったんじゃないかな?

 

 と、私なりに考えました! もう、驚きませんよね?

 

 また、この作者は……と、ニヤニヤしていってね!

 

 それではどうぞ!

 

 

 最初に見えたのは、夜空に寂しく浮かぶ月……それは、少女の夢の中……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗な月ね……」

 

 琥珀の月が映し出すのは静寂の闇に包まれていた二人。ひとりは男。もうひとりは……私?

 

 私に似た少女は男に顔を見せないように後ろを振り返らず、背を向けたまま話をしている。

 

 ――――。

 

 男の声は聞きとれない。見た事もない光景……なのに、胸が苦しい。男の気配が……、

 

 ――――。

 

 少しずつ消えていく……少女は必死に感情を押さえつける……別れの瞬間(とき)が近い事を確信して、

 

「……帰るの?」

 

「――――」

 

 声が震えないように淡々と話し続ける少女。私には分かる。少女もきっと……私と同じ、覇王だから。

 

「……なるほど、そういうことか」

 

 やっと彼の声が聞こえた。私が知らないはずの光景で、私の知っている優しい声が。

 

 そして、少女は空に浮かぶ月を見上げる……涙が零れそうだったから。少女は溢れ出す気持ちを押さえつける。これから逝く彼に、涙を見せる事は出来ないと。その想いに、私も胸が締め付けられる。

 

「けれど、私は後悔していないわ。私は私の欲しいものを求めて……歩むべき道を歩んだだけ。誰に恥じる事も、悔いる事もしない」

 

「……ああ、それでいい」

 

 歩むべき道。それは少女ではなく、覇王が選んだ道。少年が共に歩んでくれた道……。

 

「か__。あなたは? 後悔していない?」

 

「……前に華琳も言ってただろ? 役目を果たして死ねた人間は誇らしいって」

 

 それは少年が決意して選んだ……彼自身を滅ぼす道。

 

「ええ……」

 

「だから、華琳……君に会えて良かった」

 

 私も会えて良かった……少女になりかけた覇王は、己を律する。

 

「……当たり前でしょう。この私を誰だと思っているの?」

 

「曹孟徳。誇り高き、魏……いや、大陸の覇王」

 

 少女は彼が誇る王。彼という代償を払って手に入れた、誇り高き大陸の覇者なのだから。

 

「そうよ。それでいいわ」

 

「華琳。これからは俺の代わりに……もっと素晴らしい国を作ってくれ。……君ならそれが出来るだろ……?」

 

 手に入れたのは覇王が望んだ理想(ゆめ)……失うのは少女の最愛の人ただ一人。王として、犠牲は覚悟した筈。

 

「ええ……。あなたがその場にいない事を、死ぬほど悔しがるような国を作ってあげる」

 

「ははっ……そう聞くと、帰りたくなくなるな」

 

 その言葉に、覇王の心が少女へと揺れる。逝かないで、側にいて……。

 

「そう、そんなに言うなら……ずっと私の側にいなさい」

 

「そうしたいけど……もう無理……かな?」

 

 気配は更に薄れる……やっと言葉に出来たのに……。

 

「……どうして?」

 

「もう……俺の役目はこれでお終いだろうから」

 

 お終いなんて言うの……?

 

「……お終いにしなければ良いじゃない」

 

「それは無理だよ。華琳の夢が叶ったことで、華琳の物語は終端を迎えたんだ……。その物語を見ていた俺も、終端を迎えなくちゃいけない……」

 

 それは覇王も知っていた終端。それでも少女は、最愛の彼を失いたくなくて……。

 

「……ダメよ。そんなの認めないわ」

 

「認めたくないよ、俺も……」

 

 駄々をこねて優しい彼を困らせてしまう……もう……届かない。

 

「どうしても……逝くの?」

 

「ああ……もう終わりみたいだからね……」

 

 終わりが近い……少女の口元から笑みは消え、両眼に涙が滲む……。

 

「そう…………恨んでやるから」

 

「ははっ、それは怖いな……。けど、少し嬉しいって思える……」

 

 こんな時でも優しい彼の声……もう……取り戻せない。

 

「……逝かないで」

 

「ごめんよ……華琳」

 

 後ろを振り返るな! 私は覇王。こんな情け無い顔、彼には見せられない……。

 

「_ず_……」

 

「さよなら……誇り高き王……」

 

 彼の名が聞こえない。少女……私の口から出ているはずなのに。

 

「__と……」

 

「さよなら……寂しがり屋の女の子」

 

 その言葉で覇王は少女に戻る。

 

「かず_……!」

 

「さよなら……愛していたよ、華琳――――」

 

 すぅっと、私の背後から気配が消える。その瞬間、そこには何も無かった様に……夜風が吹き、彼の姿を隠すように月が翳る。

 

「…………_ずと?」

 

 ――――――――――――――――――――――――。

 

 辺りを包むのは暗闇と静寂。大切な彼が……消えてしまった……。

 

「か_と……? 一刀………!」

 

 激しい喪失感が私を襲う。一刀……北郷一刀。私の記憶、少女の想い……重なる面影。

 

「…………ばか。……ばかぁ…………っ!」

 

 堪えていた少女の涙が流れ落ちる。

 

「……ホントに消えるなんて……なんで、私の側にいてくれないの……っ!?」

 

 ぽつりぽつり。雫となって、言えなかった素直な気持ちと共に……。

 

「ずっといるって……言ったじゃない……!」

 

 それは彼の優しい嘘。皆が迷わないように、私が後ろを振り返らないように。

 

「ばか……ぁ……!」

 

 そんな嘘、気付いていた。もっと自分に素直になれば良かった。彼に優しく抱き締めてもらえば良かった。彼の最後を見届けてあげれば良かった……。

 

 それでも少女は、彼の前では覇王である事を選んだ。後悔なんてしていないと。貴方の望み通り、後ろは振り返らないと。

 

 でも、今だけ、誰も見ていないから、いまだけは……。

 

ひっく、うわぁぁぁぁん、ぃっく、うあああぁぁぁぁんっ、っく、うあああぁぁん……。

 

 少女は泣き崩れる。大切な彼が逝ってしまった。彼女の側には、もう、彼はいない。どんなに泣き叫んでも、この想いは届くことはない。大好きだった一刀には……もう。優しく少女を包んでくれていた腕は、この世界の何処を探しても……無いのだから。

 

 そして私は、私では無い誇り高き覇王の悲しい夢の中から目覚めた……。

 

「私の居場所……ずっと、側にいて欲しかった……」

 

 その瞳に『少女の涙』を受け継いで……。

 

 

 

 光よ。どうか、彼女に届きますように……。

 

 

 

 

 

恋姫†無双 真・北郷√11

 

 

 

乱世の奸雄、治世の能臣

 

 

時間は少し戻り 汜水関前

 

/一刀視点

 

 曹操との決戦後、しばらくして愛紗率いる本隊が合流してきた。

 

「ご主人様! ご無事で何よりです! そして、曹操打倒。おめでとうございます。私は、ご主人様の勝利を信じていました」

 

「おや? ご主人様が心配だから早く行こうと行軍を早めたのは誰でしたか?」

「り、稟!」

「ふふ♪」

 

 愛紗が俺の横に駆け寄り、満面の笑みでお祝いの言葉をかけてくれれば、稟が人差し指で眼鏡を掛け直しながら、愛紗の言葉の一部を否定しつつ、ニヤリと笑顔で近づいてくる。

 

「愛紗、ありがとう。稟、ご苦労様。恋や麗羽達が頑張ってくれたお陰だよ。来てもらったばかりで悪いけど、曹操達を連れて一旦鄴に戻ろう」

 

「「御意!」」「……すやすや」

 

……

 

「凄い大軍ね。連合より多いんじゃないかしら?」

 

「そうだな。あの質、あの数。これは、孫呉の独立を早めなければならぬかも知れん」

 

 孫策が圧倒的な本隊の数に驚けば、周瑜が対抗する為にはあまり時間がないと返す。

 

「(……こんな力だけのやり方なんて、絶対、間違ってる)」

 

「桃香様……?」

 

 一方、曹操の性格を知らない劉備は、話し合いで解決できたのではないかと思い、北郷に対して怒りを感じていた……義姉妹である星の呼びかけも聞こえないほどに。

 

 

鄴城(ギョウジョウ)玉座の間

 

「御遣い様。この度は、本当に有難う御座いました。皆で無事に西涼へと帰る事が出来ます」

 

「北郷様。我が太守、董卓様をお救いくださり、誠に有難う御座います。御礼として……」

 

 董卓と賈駆が、先日の反董卓連合で助けた事についての謝儀に訪れる。

 

 董卓達は念の為、しばらく鄴に滞在していたが、現在、安全を確認出来、そろそろ西涼に戻るとの事で、なにかお礼がしたいと言うのだが、

 

「お礼は何も要らないよ」

 

「なんですって!?」

「詠ちゃんっ!」

「ごめん、月。つい……」

 

 俺は俺で利が有ったし、連合と戦ったのは董卓達だ。俺達は曹操達と避けられない決着を付けただけ。それでも受け取らない訳にはいかないのが、謝儀ってやつだけど。

 

「それではこちらの気が収まりません。とは言いつつも何を差し上げれば良いのか」

 

 董卓達は、今回の大遠征や、張遼、華雄等の戦闘で使った軍資金など、決して損害が無い訳じゃない。だから要らないと言ったんだけど……困ったな。

 

「じゃあ、もし、北郷を信じてくれるなら降って欲しい。俺達はいずれ大陸を統一する。その時に董卓達とは戦いたくないから。考えて欲しい……返事は今じゃなくて良いから」

 

「な、何言ってんのよ! そんな事、認められるわけないじゃない」

 

「へぅ、分かりました」

「ゆ、月!」

「違うよ、詠ちゃん。少し落ち着いて。返事は今じゃなくて良いって、そう仰ったでしょ? だから帰ってから考えようよ」

 

「……うん」

 

 考えます。と、答える董卓に、賈駆が言葉を挟むものの、結論は西涼に帰ってからという事で決着する。

 

……

 

董卓達が西涼に戻る日

 

「それでは、色々お世話になりました。あのお話、真剣に考えてみます」

 

「月! ボクは反対なんだからね! そりゃ、感謝はしてるけど……」

 

「関羽! 今度は負けへんで! また手合わせしてなー♪」

 

「噂どうりの武勇だった。関羽殿のような武人と会えて楽しかったぞ。また逢おう」

 

「うぅ……呂布殿。お別れが悲しいですぞ。今度は是非、西涼に遊びに来てくだされ! ぐす……」

 

 そして董卓達は帰路につく。月と詠があの時戻りたいと望んだ西涼へと……。二人が幸せでありますように。俺は心からそう祈り彼女達を見送った。

 

 

時は戻り 玉座の間

 

 北郷の武将と知将が勢揃いしているのは玉座の間。曹操が目を覚ました事で、元曹魏の武将が集められる。

 

 曹操、夏侯惇、夏侯淵、許緒と、前外史にはいなかった典韋だ。

 

「抜け目のない貴方の事だから、もう私の領地には手を回してるんでしょう?」

 

「ああ、既に全てを掌握している。あと、陳留で段珪を発見して始末した。勝手に上がりこんで悪い」

 

 初めに曹操から領地についての確認がされる。俺は正直に答える。

 

「いいえ、私は敗者ですもの。文句はないわ。あの狸も私が殺したかったくらいよ」

 

 素っ気ない振りをしているが、俺には分かった……。彼女は華琳だ。恋に吹き飛ばされた時、最後に呟いた言葉と、この微妙に甘えるような雰囲気。

 

「曹操。今回の決戦『は』邪魔が入らなかったな」

 

「ええ……最高の刻だったわ。貴方も素晴らしい英傑『になった』じゃない……北郷」

 

 互いに確認をする。どちらも隠す事は無い。お互い命をかけて戦い、その勝敗を決したのだから。華琳は負ける事も覚悟して戦う一流の英傑。勝敗に悔いはないと……。

 

「華琳……」

「貴様ぁっ!」

 

 いきなり曹操の真名を呼んだ俺に夏侯惇が切りかかろうとするが、武器などある筈もなく縄で縛られている為、怒声で威嚇してくるものの、

 

「春蘭いいの……」

 

「で、ですが華琳様」

「春蘭」

 

「……はい」

 

 華琳によって静かに制される。

 

「ん、話を続けて良いかな?」

 

「……ええ、いいわ」

 

 華琳と向かい合い話を始める。そして俺は俺の願いを切り出す。

 

「君の力を貸して欲しい」

 

「……あら、領地や兵士だけでなく、私も? あの時のように捕虜にするのかと思ったわ」

 

 俺の願いを皮肉で返す華琳だけど……。

 

「華琳」

 

「……(私の真名を呼ぶ……この優しい声、懐かしい響き)」

 

 俺は彼女を寂しさから救いたい。

 

 

「もう一度頼む。俺に力を貸して欲しい」

 

「でも、私は乱世の奸雄、曹孟徳。貴方の邪魔にしかならないわ。部下に奸雄がいては軍にも影響が出るでしょう?(私は貴方の側に居られれば……それで良いの)」

 

 俺は前外史でずっと華琳を捕虜として城に閉じ込めていた。外出等はさせていたものの監視は絶対で、かなり窮屈な