読む前の注意!
前回、資料で大反響? だった、皆様に大人気の華琳様。
その性格も、やっぱり私設定です。はい、全く懲りずに!
麗羽様と同様、生暖かく見守ってくださいね。
多分、彼女の二つの人格のせめぎ合いは、こうだったんじゃないかな?
と、私なりに考えました! もう、驚きませんよね?
また、この作者は……と、ニヤニヤしていってね!
それではどうぞ!
最初に見えたのは、夜空に寂しく浮かぶ月……それは、少女の夢の中……。
「綺麗な月ね……」
琥珀の月が映し出すのは静寂の闇に包まれていた二人。ひとりは男。もうひとりは……私?
私に似た少女は男に顔を見せないように後ろを振り返らず、背を向けたまま話をしている。
――――。
男の声は聞きとれない。見た事もない光景……なのに、胸が苦しい。男の気配が……、
――――。
少しずつ消えていく……少女は必死に感情を押さえつける……別れの瞬間(とき)が近い事を確信して、
「……帰るの?」
「――――」
声が震えないように淡々と話し続ける少女。私には分かる。少女もきっと……私と同じ、覇王だから。
「……なるほど、そういうことか」
やっと彼の声が聞こえた。私が知らないはずの光景で、私の知っている優しい声が。
そして、少女は空に浮かぶ月を見上げる……涙が零れそうだったから。少女は溢れ出す気持ちを押さえつける。これから逝く彼に、涙を見せる事は出来ないと。その想いに、私も胸が締め付けられる。
「けれど、私は後悔していないわ。私は私の欲しいものを求めて……歩むべき道を歩んだだけ。誰に恥じる事も、悔いる事もしない」
「……ああ、それでいい」
歩むべき道。それは少女ではなく、覇王が選んだ道。少年が共に歩んでくれた道……。
「か__。あなたは? 後悔していない?」
「……前に華琳も言ってただろ? 役目を果たして死ねた人間は誇らしいって」
それは少年が決意して選んだ……彼自身を滅ぼす道。
「ええ……」
「だから、華琳……君に会えて良かった」
私も会えて良かった……少女になりかけた覇王は、己を律する。
「……当たり前でしょう。この私を誰だと思っているの?」
「曹孟徳。誇り高き、魏……いや、大陸の覇王」
少女は彼が誇る王。彼という代償を払って手に入れた、誇り高き大陸の覇者なのだから。
「そうよ。それでいいわ」
「華琳。これからは俺の代わりに……もっと素晴らしい国を作ってくれ。……君ならそれが出来るだろ……?」
手に入れたのは覇王が望んだ理想(ゆめ)……失うのは少女の最愛の人ただ一人。王として、犠牲は覚悟した筈。
「ええ……。あなたがその場にいない事を、死ぬほど悔しがるような国を作ってあげる」
「ははっ……そう聞くと、帰りたくなくなるな」
その言葉に、覇王の心が少女へと揺れる。逝かないで、側にいて……。
「そう、そんなに言うなら……ずっと私の側にいなさい」
「そうしたいけど……もう無理……かな?」
気配は更に薄れる……やっと言葉に出来たのに……。
「……どうして?」
「もう……俺の役目はこれでお終いだろうから」
お終いなんて言うの……?
「……お終いにしなければ良いじゃない」
「それは無理だよ。華琳の夢が叶ったことで、華琳の物語は終端を迎えたんだ……。その物語を見ていた俺も、終端を迎えなくちゃいけない……」
それは覇王も知っていた終端。それでも少女は、最愛の彼を失いたくなくて……。
「……ダメよ。そんなの認めないわ」
「認めたくないよ、俺も……」
駄々をこねて優しい彼を困らせてしまう……もう……届かない。
「どうしても……逝くの?」
「ああ……もう終わりみたいだからね……」
終わりが近い……少女の口元から笑みは消え、両眼に涙が滲む……。
「そう…………恨んでやるから」
「ははっ、それは怖いな……。けど、少し嬉しいって思える……」
こんな時でも優しい彼の声……もう……取り戻せない。
「……逝かないで」
「ごめんよ……華琳」
後ろを振り返るな! 私は覇王。こんな情け無い顔、彼には見せられない……。
「_ず_……」
「さよなら……誇り高き王……」
彼の名が聞こえない。少女……私の口から出ているはずなのに。
「__と……」
「さよなら……寂しがり屋の女の子」
その言葉で覇王は少女に戻る。
「かず_……!」
「さよなら……愛していたよ、華琳――――」
すぅっと、私の背後から気配が消える。その瞬間、そこには何も無かった様に……夜風が吹き、彼の姿を隠すように月が翳る。
「…………_ずと?」
――――――――――――――――――――――――。
辺りを包むのは暗闇と静寂。大切な彼が……消えてしまった……。
「か_と……? 一刀………!」
激しい喪失感が私を襲う。一刀……北郷一刀。私の記憶、少女の想い……重なる面影。
「…………ばか。……ばかぁ…………っ!」
堪えていた少女の涙が流れ落ちる。
「……ホントに消えるなんて……なんで、私の側にいてくれないの……っ!?」
ぽつりぽつり。雫となって、言えなかった素直な気持ちと共に……。
「ずっといるって……言ったじゃない……!」
それは彼の優しい嘘。皆が迷わないように、私が後ろを振り返らないように。
「ばか……ぁ……!」
そんな嘘、気付いていた。もっと自分に素直になれば良かった。彼に優しく抱き締めてもらえば良かった。彼の最後を見届けてあげれば良かった……。
それでも少女は、彼の前では覇王である事を選んだ。後悔なんてしていないと。貴方の望み通り、後ろは振り返らないと。
でも、今だけ、誰も見ていないから、いまだけは……。
ひっく、うわぁぁぁぁん、ぃっく、うあああぁぁぁぁんっ、っく、うあああぁぁん……。
少女は泣き崩れる。大切な彼が逝ってしまった。彼女の側には、もう、彼はいない。どんなに泣き叫んでも、この想いは届くことはない。大好きだった一刀には……もう。優しく少女を包んでくれていた腕は、この世界の何処を探しても……無いのだから。
そして私は、私では無い誇り高き覇王の悲しい夢の中から目覚めた……。
「私の居場所……ずっと、側にいて欲しかった……」
その瞳に『少女の涙』を受け継いで……。
光よ。どうか、彼女に届きますように……。
恋姫†無双 真・北郷√11
乱世の奸雄、治世の能臣
時間は少し戻り 汜水関前
/一刀視点
曹操との決戦後、しばらくして愛紗率いる本隊が合流してきた。
「ご主人様! ご無事で何よりです! そして、曹操打倒。おめでとうございます。私は、ご主人様の勝利を信じていました」
「おや? ご主人様が心配だから早く行こうと行軍を早めたのは誰でしたか?」
「り、稟!」
「ふふ♪」
愛紗が俺の横に駆け寄り、満面の笑みでお祝いの言葉をかけてくれれば、稟が人差し指で眼鏡を掛け直しながら、愛紗の言葉の一部を否定しつつ、ニヤリと笑顔で近づいてくる。
「愛紗、ありがとう。稟、ご苦労様。恋や麗羽達が頑張ってくれたお陰だよ。来てもらったばかりで悪いけど、曹操達を連れて一旦鄴に戻ろう」
「「御意!」」「……すやすや」
……
「凄い大軍ね。連合より多いんじゃないかしら?」
「そうだな。あの質、あの数。これは、孫呉の独立を早めなければならぬかも知れん」
孫策が圧倒的な本隊の数に驚けば、周瑜が対抗する為にはあまり時間がないと返す。
「(……こんな力だけのやり方なんて、絶対、間違ってる)」
「桃香様……?」
一方、曹操の性格を知らない劉備は、話し合いで解決できたのではないかと思い、北郷に対して怒りを感じていた……義姉妹である星の呼びかけも聞こえないほどに。
鄴城(ギョウジョウ)玉座の間
「御遣い様。この度は、本当に有難う御座いました。皆で無事に西涼へと帰る事が出来ます」
「北郷様。我が太守、董卓様をお救いくださり、誠に有難う御座います。御礼として……」
董卓と賈駆が、先日の反董卓連合で助けた事についての謝儀に訪れる。
董卓達は念の為、しばらく鄴に滞在していたが、現在、安全を確認出来、そろそろ西涼に戻るとの事で、なにかお礼がしたいと言うのだが、
「お礼は何も要らないよ」
「なんですって!?」
「詠ちゃんっ!」
「ごめん、月。つい……」
俺は俺で利が有ったし、連合と戦ったのは董卓達だ。俺達は曹操達と避けられない決着を付けただけ。それでも受け取らない訳にはいかないのが、謝儀ってやつだけど。
「それではこちらの気が収まりません。とは言いつつも何を差し上げれば良いのか」
董卓達は、今回の大遠征や、張遼、華雄等の戦闘で使った軍資金など、決して損害が無い訳じゃない。だから要らないと言ったんだけど……困ったな。
「じゃあ、もし、北郷を信じてくれるなら降って欲しい。俺達はいずれ大陸を統一する。その時に董卓達とは戦いたくないから。考えて欲しい……返事は今じゃなくて良いから」
「な、何言ってんのよ! そんな事、認められるわけないじゃない」
「へぅ、分かりました」
「ゆ、月!」
「違うよ、詠ちゃん。少し落ち着いて。返事は今じゃなくて良いって、そう仰ったでしょ? だから帰ってから考えようよ」
「……うん」
考えます。と、答える董卓に、賈駆が言葉を挟むものの、結論は西涼に帰ってからという事で決着する。
……
董卓達が西涼に戻る日
「それでは、色々お世話になりました。あのお話、真剣に考えてみます」
「月! ボクは反対なんだからね! そりゃ、感謝はしてるけど……」
「関羽! 今度は負けへんで! また手合わせしてなー♪」
「噂どうりの武勇だった。関羽殿のような武人と会えて楽しかったぞ。また逢おう」
「うぅ……呂布殿。お別れが悲しいですぞ。今度は是非、西涼に遊びに来てくだされ! ぐす……」
そして董卓達は帰路につく。月と詠があの時戻りたいと望んだ西涼へと……。二人が幸せでありますように。俺は心からそう祈り彼女達を見送った。
時は戻り 玉座の間
北郷の武将と知将が勢揃いしているのは玉座の間。曹操が目を覚ました事で、元曹魏の武将が集められる。
曹操、夏侯惇、夏侯淵、許緒と、前外史にはいなかった典韋だ。
「抜け目のない貴方の事だから、もう私の領地には手を回してるんでしょう?」
「ああ、既に全てを掌握している。あと、陳留で段珪を発見して始末した。勝手に上がりこんで悪い」
初めに曹操から領地についての確認がされる。俺は正直に答える。
「いいえ、私は敗者ですもの。文句はないわ。あの狸も私が殺したかったくらいよ」
素っ気ない振りをしているが、俺には分かった……。彼女は華琳だ。恋に吹き飛ばされた時、最後に呟いた言葉と、この微妙に甘えるような雰囲気。
「曹操。今回の決戦『は』邪魔が入らなかったな」
「ええ……最高の刻だったわ。貴方も素晴らしい英傑『になった』じゃない……北郷」
互いに確認をする。どちらも隠す事は無い。お互い命をかけて戦い、その勝敗を決したのだから。華琳は負ける事も覚悟して戦う一流の英傑。勝敗に悔いはないと……。
「華琳……」
「貴様ぁっ!」
いきなり曹操の真名を呼んだ俺に夏侯惇が切りかかろうとするが、武器などある筈もなく縄で縛られている為、怒声で威嚇してくるものの、
「春蘭いいの……」
「で、ですが華琳様」
「春蘭」
「……はい」
華琳によって静かに制される。
「ん、話を続けて良いかな?」
「……ええ、いいわ」
華琳と向かい合い話を始める。そして俺は俺の願いを切り出す。
「君の力を貸して欲しい」
「……あら、領地や兵士だけでなく、私も? あの時のように捕虜にするのかと思ったわ」
俺の願いを皮肉で返す華琳だけど……。
「華琳」
「……(私の真名を呼ぶ……この優しい声、懐かしい響き)」
俺は彼女を寂しさから救いたい。
「もう一度頼む。俺に力を貸して欲しい」
「でも、私は乱世の奸雄、曹孟徳。貴方の邪魔にしかならないわ。部下に奸雄がいては軍にも影響が出るでしょう?(私は貴方の側に居られれば……それで良いの)」
俺は前外史でずっと華琳を捕虜として城に閉じ込めていた。外出等はさせていたものの監視は絶対で、かなり窮屈な
恋姫†無双は、BaseSonの作品です。
自己解釈、崩壊作品です。
2009・11・07修正。