No.972592

紫閃の軌跡

kelvinさん

第135話 覆す力で何かを成すために

2018-11-03 21:25:17 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1484   閲覧ユーザー数:1355

~エレボニア帝国 ???~

 

 時は<百日戦役>の前にまで遡る。

 当時8歳だったアスベルはハーメルでの一件を工作し、その際に『聖痕』に目覚めて第三位の位階に命ぜられた。その最初の仕事はエレボニア帝国において教会の反逆者である<白面>の行方の調査、ならびにその痕跡の有無の確認。

 

 それでも他の守護騎士と比べればかなり自由であったため、アスベルはその仕事を引き受けた。この一件が『福音計画』だけでなくその後の様々な事件につながる盤面を見極めるために。相手は流石に博識であったため、調査は難航を極めていた。

 

 調査から数日経ったある日のこと。アスベルはとある雑貨店で買い物をしていたところ、見るからに重そうな荷物を抱えている女性が目に入った。あまり声をかけるべきではなかったのだろうが、転生前の親友のお節介さが移ったのか、気が付けばその人に話しかけていた。

 

「すみません、大丈夫ですか? 見るからに重そうですが」

「あら、ここらでは見ない子だけれど…親御さんのお使いかしら?」

 

 こうやって言われるとまだ8歳なのだろうと思う。でも、このまま放っておくのも癪だと思い、アスベルは重い荷物を軽々と持ち上げた。これには女性も驚いていた。

 

「え、その、大丈夫?」

「これぐらいは大丈夫です。家の前まで手伝いますよ」

「そう。なら、お願いしようかしら」

 

 そうしてその女性と店を出て、家の前にたどり着く。見るからにかなり大きい邸宅で、どうやら帝国軍の軍人宅のようだ。ここなら大丈夫だと女性が言ったので、アスベルは荷物を地面にゆっくり降ろした。

 

「えと、ありがとうね。何だったら、家に上がっていく?」

「いえ、お気遣いなく。……これも何かのご縁ですし、これをプレゼントします」

「これは……ペンダント? 星杯のマークが入っているけれど……」

「アルテリアに友人がいまして。その人から渡されたのですが、女性用みたいなのでどうしようか迷ってたんです。慌ただしい時期でもありますので、家内安全のお守り程度みたいなものですし……そしたら、人を待たせておりますので。失礼いたします」

 

 そう言ってアスベルはそこから走って去っていく。それを見送ることしかできなかった女性の近くに一台の車が止まり、確りとした体格の人間が降り立って女性に近づく。

 

「まったく、まだ起き上がったばかりだというのに無茶をしないでくれ。言ってくれればお使いぐらい行くというのに」

「あら、おかえりなさい。近々戦争が始まるというのに、よろしいのですか?」

「戦争とは呼べぬだろうがな。……それは?」

「さっき、荷物持ちを手伝ってくれた子がいたのです。その子からくれたプレゼントです……小さい子に焼きもちですか?」

「そんなことはない……荷物は持っていくからな」

「ふふっ、任せましたよ」

 

 この時のアスベルは知らなかったのだ。その女性の夫と子どもが誰であるかを……その夜、女性の住んでいる邸宅が炎を上げた。なお、その犯人は……アスベルが秘密裏に処理した。痕跡を消したうえでその邸宅に向かうと、倒れている数人の人影。その中に荷物持ちを手伝った女性の姿もあった。

 

(……機能はしているか。皮肉というか何というか、この女性の命を辛うじて繋ぐことには成功したか)

 

 そのペンダントには特殊な法術が掛けられており、人体に一定以上のダメージを負うとセーフティが発動して一時的な仮死状態になるアーティファクトクラスの代物。アスベルが『聖痕』の力を注ぎ込んだらどうなるか試した産物である。実験で作ったものが命を救うというのは皮肉が効き過ぎている気もするが。

 

 アスベルはそれ以外の生存者がいないことを確認したうえで、法術で彼女の現身となるものを生成。なぜ出来るのかと言われてしまうと、可能だからとしか言いようがない。まだアーティファクトの効果が生きているうちに、彼女を抱えてその場を離れた。

 

「ここは……えと、ごめんなさい。何も思い出せないの……」

「もしかして、記憶喪失では?」

「だろうな。訳あって、倒れていた貴女を助けた者です。貴女の処遇については、ひとまずアルテリア法国にて保護いたしますので安心してください」

 

 その後、彼女の身柄は<百日戦役>前にアルテリア法国へと移送され、後日リベール王国のエイフェリア島にて軍人として働いていた。その後、記憶を取り戻したが身の安全のことも考えてリベール王国に留まることを決めた。エレボニア帝国では既に鬼籍扱いとなっていたため、身分も国籍もすべて捨てる……辛い決断であることには違いなかった。

 

 

~エレボニア帝国 帝都ヘイムダル~

 

 時は戻り、アスベルは七耀教会の特殊作戦艇『メルカバ』参号機のブリッジにて、モニターに映る人物―――守護騎士のトップである星杯騎士団総長<紅耀石>アイン・セルナートと話していた。

 

『―――そうか。教会というか法国のほうは相変わらずの権力闘争だ。帰ってこない方が身のためだろう。妹にもそう伝えてある』

「解りました。といいますか、世界の終りの危機だというのに目の前の権力にぶら下がる時点で情けないといいますか……いっそのこと、連中を生贄にして世界存続の礎にでもしたい気分です」

『私も同意見だが、ああいう連中は煉獄からでも這い上がってきそうだ。第二位―――ライサンダーにも伝えたが、<騎神>についての扱いは以後第三位であるお前に一任する。王太子殿下の持つイクスヴェリアのこともあるからな』

「……かなり温情が入った判断ですね。裏絡みで動けと?」

『現状動いてくれているお前に今更言うのもおかしいことだが。<千の護手>のほうも上手くやったようだ。<黒の史書>のこともあるゆえ、エレボニア方面の主体はお前というわけだ<京紫の瞬光>』

「副長が表に出ないってことは逃げましたね。まったくあの人は……解りました」

 

 通信が終わり、モニターの光が消えるとアスベルは一息吐く。結社の動きを追いかけるのも一筋縄ではいかないのに、更なる苦労とは面倒なことだと思う。まあ、今回の内戦だけでケリがつくだなんて思ってもいないが……帝国の数々の出来事の根底にある“元凶”を取り除かない限り続くことも。

 すると、部下である騎士の一人が声を掛けてきた。

 

「その、お疲れ様です。フォストレイト卿」

「まあ、あの人の無茶ぶりは今に始まったことじゃないけど。参号機は周辺警戒を厳に。場合によっては合流ポイント変更もするので、臨機応変に頼む」

「了解しました」

 

 あまり長居させれば露呈する可能性もある。そうやって飛び立つ参号機を見送ると、先行したルドガー達に追いつくために先を急いだ。帝都ヘイムダルへと潜入したアスベル達。無論目立たないように色んな恰好をしている。髪と瞳の色は法術で変えているので、髪形を少し弄れば解りにくいだろう。

 その帝都の様子なのだが、ラマール領邦軍の兵士が巡回しており、駅やバルフレイム宮への道はかなり制限されている印象であった。一応情報収集のために帝国時報も買ったのだが、かなり検閲が入っているためか、目ぼしい情報は少ない。その中で皇族が貴族連合の持つ飛行戦艦『パンタグリュエル』に乗って帝国西部を巡回されるという情報が記載されていた。

 

(皇族……候補が結構いるから難しいですね)

(そうだな……こうなったら、ばれるのも覚悟の上であそこに行くべきじゃないか?)

 

 ルドガーが提案したのは帝都西側にあるヴァンダール家。流石にバルフレイム宮に忍び込んで騒ぎを起こすのは拙いが、彼らは皇族守護職を与る軍務系の貴族。それにセリカの実家でもあるので、少なくとも顔を出したほうがよいと判断した。これにはセリカも戸惑ったが

 

「まあ、大丈夫かな。少なからず協力を取り付ければそれでいい。可能ならオリビエに……」

「アスベル?」

「いや、完全に忘れていた……ひとまず、西部に行くか。トラムは使えないだろうから、徒歩での移動になるが」

 

 徒歩とは言っても隠密行動なので屋上伝いの行動になる。流石にリーゼロッテにはその心得がないので、ルドガーにお姫様ごっこして貰っていた。完全な役得のご様子に、『黄昏』による世界消滅より色恋沙汰による世界消滅のほうが早いような気もしてきた……アスベルはそんな風に思えた。セリカに視線を送ると、彼女も苦笑を浮かべたほどだった。

 

 そうしてヴァンダール家の屋敷に到着する。帝都がこんな状況なので、ヴァンダール流の道場も静まり返っていた。どうしたものかと思慮しているアスベル達に女性の声が聞こえてきた。

 

「あら……セリカ?」

「え……その声、母様?」

「ふふ、やっぱり……事情はそれとなく。皆様もお入りください」

 

 セリカの母親であるカレン・ヴァンダールの招きで屋敷の中に入った。ひとまず変装を解き、これまでの状況をカレンに説明した。

 

「そうですか……そう考えると、あの人が第七の師団長を降りたのはある意味運がよかったのでしょうね。クルトには会いましたか? あの子は今リベールの方に行っているそうですが」

「えと、一応は。彼も元気そうでしたよ。にしても、母様はなぜ屋敷に?」

「帝都に何やら嫌な予感がしたのです。里にいる<長>にはその手紙を送りましたが……あの子は一体何を考えているのやら」

 

 口ぶりからするにカレンは<蒼の深淵>ヴィータ・クロチルダと知己であることを察した。すると、カレンはこう話した。

 

「ええ。尤も、私の魔力では強すぎてグリアノスやセリーヌを逆に消滅させかねなかった。だから、私が契約しているのはあの人なの」

「人間と契約って……色々滅茶苦茶な気もしますが」

「そこは魔女のあれこれってことで……でも、こうして娘と妹弟子の婿の顔を見られるなんて役得ものね」

「か、母様!!」

 

 貴族連合がヴァンダール家を下手に罰しないのは、皇族守護という重鎮であることが最大の理由であった。あの鉄血宰相ですら重罰を避けた以上、それ以上の踏み込みは『鉄血に負けた』という恥に繋がるとカレンはそう見ている。

 

「貴族としてのプライドが命を救う……可笑しな話もあったものね。さて、貴方たちを帝都の郊外に送るわ。少なくとも、貴方たちの探し物は帝都にないってことを伝えておくわね」

 

 彼女はそう言って転移魔法を発動させ、アスベルらが飛ばされた先は帝都の南にある森林の中。ソフィア・シュバルツァーは帝都にいない……その情報を鵜呑みにするのは難しいが、今はそれだけでも十分だろうと結論付けた。

 

「そうなると選択肢は限られるが。だとすると、連中をいかにして引き剥がすかだが……」

「あえて引き付けるしかないだろうな。どの道オルディスは論外として、ラマール州の街あたりで戦闘が散発しているところは……ここだな」

 

 アスベルがALTIAのモニターで表示した場所は歓楽街ラクウェル。この周辺では数個の機甲師団と貴族連合が散発的な戦闘を繰り広げている。そして幸か不幸か第七機甲師団がその北東部にあるアルスターの町郊外を拠点に奮戦しているようだ。それと、街の若者を中心に自警団なるものまで形成されている……優位に立てない以上どちらもあまり信用できない、というのが本音なのだろう。

 

「そうなると、俺らというよりアレを内戦で実戦投入するってわけか。お前の『焔』に俺の『大地』を」

「先日の<鋼>との一件で本気を出すと自然破壊になるのが解ってしまったからな……それこそ高位次元などの異世界でないと周囲への被害で味方に被害が出る。おそらく、ルドガーもそのあたりを危惧してるんだろ?」

「力を縛るために別の力を使う……皮肉としか言えねえけど」

 

 もはや埒外とも思える話にセリカとリーゼロッテは揃って苦笑をこぼす。たかが一人で戦況を覆すなど不可能という常識をこの二人なら可能とする、と言ったフィーの言葉を思い出していた。

 ルドガーも先日の戦いでカンパネルラごと鐘を破壊していた。そのカンパネルラは崖下へと降下していったためと、その後の作戦のこともあったので生死の詳細は不明だと言っていたが、多分生きていると推測できる。一応落下予測地点を調査したが、死体はなかったらしい。

 

 

~エレボニア帝国 ラマール州 歓楽街ラクウェル~

 

 その街の郊外では、貴族連合軍2個師団が第七機甲師団とは別の正規軍を相手に完全なる優位に立っていた。

 

「賊軍の状況は?」

「連中の拠点にまで追い込みましたが……いかがいたします?」

「無論、叩き潰せ! 再び勢いづかせるようなことなど……ふむ、こんな時に。もしや、吉報でも届いたのか? こちら総司令部、状況……な、なんだとっ!?」

 

 一度勢力を落とした相手とはいえ、れっきとした賊軍。ここで徹底的に叩かなければ後の憂いとなる。そう檄を飛ばす部隊長のもとに、通信機の受信音が鳴って手に取る。正規軍を無事に壊滅した報告でも聞けるのかと思った部隊長から聞かされた情報は……彼を愕然とさせた。

 それは街の自警団の連中も今起きたことがまるで夢でも見ているかのような心境だった。

 

「お、おい……何が起きたんだ?」

「俺に聞くなよ! いきなり綺麗な機械人形が出てきたと思ったら、連中の機甲兵や戦車が瞬く間に壊滅しちまったんだぜ? なあ、これって錯覚なのか?」

「……目の前で見えてる機甲兵や戦車は紛れもなく本物だろう。ブラッド、他のツレをまとめとけ。ちっと街の外を見てくる」

「って、アッシュ!?」

 

 金色の乱雑な短髪の少年は、ブラッドと呼んだ自警団の少年にそう告げると、機甲兵や戦車が燃える街の外へと消えていった。

 そして、そんな不可解な光景はアルスターの町の南側でも起きていた。その情報は直ちにアルスターの北に臨時拠点を作っている第七機甲師団へと届けられ、その近くに停泊しているファルブラント級巡洋戦艦Ⅶ番艦『リヴァイアス』へと届けられた。

 

 

~エレボニア帝国西部 アルスターの町郊外~

 

 貴族連合軍の2個師団が瞬く間に壊滅。そしてアルスターの南に展開していた貴族連合軍の壊滅。ラマール領邦軍はかなりの精鋭部隊であり、それを壊滅したのは見慣れない機械人形のようなものであるという報告。これには些か疑問がある……オリヴァルト・ライゼ・アルノール皇子とこの艦の艦長であるリューノレンス・ヴァンダールは揃って首をかしげていた。その光景には第七機甲師団に所属しているミュラー・ヴァンダールも同意見であった。

 

「親友、この報告に虚偽や誇張はないという認識で構わないかな?」

「ああ。先程この目で確かに見てきた……相当鋭利な斬れ味の業物と、そこまで出来るほどの技量なくして成し得ないだろう。兵からの目撃情報では、機甲兵とはフォルムが異なる大型の機械人形を目撃した兵士もいた」

「そうなると可能性は『騎神』になるけれど……現状は<蒼の騎神>オルディーネ、<灰の騎神>ヴァリマール、それとリベール方面では<幻の騎神>というのも聞いているが……」

「<蒼の騎神>は貴族連合側にいると聞く。<幻の騎神>についてその詳細は不明だが、リベールが所有しているものとみていい。残る<灰の騎神>については、先日ガレリア要塞方面にいたと連絡があった。その3機が一堂に会したとは、流石に思えないね」

 

 情報から整理すると、貴族連合軍を壊滅させた『騎神』のようなものは3機。しかし、それほど少数で物量に勝る軍隊を相手にできるのか……その思考の渦を断ち切るように、オペレーターが声をかけた。

 

「殿下、お話の最中申し訳ありませんが、皇子殿下に通信を繋げたいという者が……」

「いかがします?」

「今は少しでも情報がほしい。傍受も覚悟の上だ……繋いでくれ」

 

 『リヴァイアス』のモニターが稼働して光が灯ると、そこにはアスベルの顔が表示された。これには三人も少し驚いたような表情を見せていた。

 

『突然の連絡、失礼いたします。皇子殿下、お元気そうで何よりです。侯爵閣下とミュラー少佐もお変わりないようで安心いたしました』

「ああ。久しぶりだね、アスベル君」

「そちらも元気そうで何よりだ。セリカは元気でやっているか?」

『ええ。彼女の助力には助けられております』

「まあ、世辞はこんなところにしてだ……率直に聞こう。貴族連合軍を壊滅させたのは、君達の仕業かな?」

 

 ひとしきり挨拶も済ませたところで、オリヴァルト皇子は回りくどいことをせずに率直な質問をぶつけた。これにはミュラーも驚くが、逆にリューノレンスはある意味納得していたような表情だったので、アスベルは静かに首を縦に振る。

 

『ああ。どちらかに加担ということは現状の俺の所属上無理な話だ。第七を助けたのは身内の温情とでも思ってくれ。その方法についても今話すことはできない。強力な抑止力は下手な争いの諍いになるからな』

「それは承知している。ただでさえ君には世話になりっぱなしの身だからね。それで、連絡を取ったのは僕に何かしてほしいと思ったからじゃないのかな?」

『―――オリビエ。いや、エレボニア帝国第一皇子オリヴァルト・ライゼ・アルノール殿下への要請をしたい。トールズ士官学院への交換留学条件として提示した追加案、一度きり使うことができる皇族への強制命令権を以て、『リヴァイアス』をリベール王国に接収する……というのは建前だが、状況はそれほど逼迫していると思ってくれ』

 

 アスベルの言葉。それはリベール王国とエレボニア帝国の両国間の緊張が戦争直前の状態に移行しつつあるということを意味する。それを理解した上で、オリヴァルト皇子は以前言っていた『リヴァイアス』の識別コードの話を思い出す。

 

「この状況でリベール王国へ出向け、ということか。いや、おそらく戦争状態に入るからこそリベール行きを提案したわけだ。貴族連合軍の壊滅はその警戒に穴を空けるためでもある……そんな無茶を平気でやれる君達には脱帽ものだよ」

『代わりに改装作業が完了した『カレイジャス』を引き渡す。武装面はラッセル博士に押し切られて<百日事変>で使用した『アルセイユ』をベースに搭載しているから、多少の荒事は乗り切れるだろう……この要請を受けるなら、ラクウェルの南220セルジュに来てくれ。リミットは明日の未明まで……検討を祈る』

 

 モニターの光が消えると、オリヴァルト皇子は考え込む。細かいことを言わなかったが、恐らくはリベール王国も動くことが想定される。とはいえ、ここに第七機甲師団を残しても大丈夫なのかと思ったが、ミュラー少佐はこう述べた。

 

「オリビエ。第七にはナイトハルトもいてくれている。それに当面の危機が去った以上、立て直しは遥かに容易だろう」

「殿下、ここは彼の……いえ、リベールの提案に乗るべきかと。第七機甲師団は古巣ですから、私も説得に協力しましょう。今は迅速にこの内戦を終結させること。それを第一に考えるべきでしょう」

「そうだな。期限は明日の未明と言っていたから、彼らから整理する時間をくれたということだろう。師団長には僕から話そう……その方が彼らも理解してくれるはずだ」

 

 この混迷を極めたエレボニア帝国の内戦。これを止めるためには小石程度の波紋で揺らぐこともない。それこそ誰もが無視できないぐらいの巨石を投じなければ、この戦いに終わりは見えない。少なくともオリヴァルト皇子はそう感じていた。

 

 

―――七耀暦1204年12月5日。実質的なタイムリミットまで、あと2日を切った。

 

 

 現状色々変わっていますが、ルドガーが発言した内容もネタバレになりかねないので今は伏せておきます。裏でその辺の執筆も暇があれば進めていますが、よく見ている人がそちらの執筆を始めたので、流れに乗ってしまうような感じになりそうなので今は控えておきます。Ⅱ編が完結次第、裏Ⅱ編として書く予定です。

 

 次々と新Ⅶ組の面々も登場していますが、残る一人についても登場予定です。どこで出てくるかはお楽しみということで。前作の特務支援課のような生温さはありませんが。

 

 次回。リィン・シュバルツァー、高原の戦乱を知る(軽いネタバレ)


 
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