No.972300

艦隊 真・恋姫無双 135話目

いたさん

やっと一刀の思惑の部分まで書けましたが、まだ途中の状態。続きは未だに考え中です。

2018-10-31 23:58:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1178   閲覧ユーザー数:1065

【 童話 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

童話を聞き終えると、開口一番、不機嫌そうな華琳が磯風に問う。 如何にも当てが外れたと言わんばかりに。

 

ーー

 

華琳「………興味深い話だったけど、それがなに? 結局のところ、貴女は何が言いたいの?」

 

磯風「なるべく、理解し易いように話をしたつもりだったのだが? ふむ、仕方がないな。 この磯風が今一度、話を語るとしようか。 次こそは、耳を傾けて話を聞くがいい」

 

ーー

 

悪びれた様子もなく、飄々とした物言いで童話を再度語ろうとする磯風。

 

その態度を見て華琳は、自分の臣下である春蘭達さえも戦慄する雰囲気を漂わせ始める。 そして、磯風へ刺すような視線を向けると、底冷えする低い声で呟いた。

 

ーー

 

華琳「───止めなさい」 

 

磯風「ん?」

 

華琳「聞こえなかったの? その話を繰り返すのを止めなさいって、言ったのよ!」

 

ーー

 

直前まで冷静に接していた華琳だが、磯風より再度傾聴するように言われると、これを語気荒く止めようとした。

 

上級深海棲艦の気を含む覇気を当てられれば、艦娘と言えども苦痛を伴う程のが衝撃を浴びるのが常。 

 

だが、そんな凶悪な覇気を磯風は表情も変えず、真っ向から仁王立ちで受け止めていた。

 

ーー

 

磯風「…………どうかしたか? 幼子が癇癪を起こすような真似をして。 天の国に伝わる物語を傾聴したいと、熱心に願う貴殿の御希望に沿い、こうして再度語るのだが?」

 

華琳「白々しい。 よりにもよって、そんな痴れ言の話を聞かせると知れば……」

 

磯風「他の者にも聞いて貰えば判るが、この話は実際、天に伝わる幼子達に読み聞かせる有名な物語だ。 何をどう思うのかは知らないが、磯風に苦情を言われても非常に困る」

 

ーー

 

磯風の言葉に嘘はない。 かの物語は国語の教科書にも掲載された話であり、今も世の老若男女へと著聞されている。 

 

しかし、かの物語が如何にして華琳と関わるのか。 何故、磯風へ再度の朗読を中止させたのか。

 

どうして、数多ある童話の中で、この物語を磯風は好んで読み聞かせたのか。 

 

この回答を知る者は、当事者と他数人以外、知る者は居なかったのである。

 

 

◆◇◆

 

【 追及 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

何も疚しい(やましい)事など無いと言わんばかりに、磯風は威風堂々とした態度で華琳の追及に答えた。

 

されど、華琳には……三國志の英傑『曹孟徳』には通じない。

 

ーー

 

華琳「磯風、貴女は知って……いえ、敢えて問うわ。 かの出来事を貴女に伝えたのは……誰?」 

 

磯風「……………」

 

華琳「あの出来事を知っているのは、実際に体験した当事者のみ。 その当事者が語らなければ、貴女が知る事などなかった!」

 

磯風「……………」

 

ーー

 

脳裏に浮かぶは───闇夜に現れる曇りなき真円の月。 

虚空へと消えた白服の少年、その居た場所で泣き伏す少女。

 

磯風の語った童話は、そんな哀しき別れに重なる。

 

去る者は相手を思いやり信念に基づき結果を表し、残された者の幸せを切に願いながら………今まで居た場所から消えた。

 

残された者は、去る者の力により自身の願いが叶えられた事を知るが、それと引き換えに……大切な者を失った。

 

かの童話と重なる、二人の心情。 

 

あまりに似すぎる状況は、偶然というより必然といえる。 

 

ーー

 

華琳「当事者である私さえ、あの出来事を伝えたのは桂花だけよ。 だけど、あの子は簡単に話す訳がない。 私と長年に渡り、愛した男を待ち続けた……友だったから」

 

磯風「……………」

 

 

 

桂花「………華琳様……」

 

ーー

 

磯風を一気に理屈攻めにした後、情報を与えた人物を定めていく。

 

二人のうち、一人は判明。 答えは、残りの一人。

 

ーー

 

華琳「そうなれば、知る者は………ただ、一人」

 

磯風「……………」

 

華琳「貴女が敬愛する司令………北郷一刀!」

 

ーー

 

そう断言し、嘘は許さないと言わんばかりに、華琳は磯風を睨み付ける視線を更に強めた。

 

すると、磯風が簡単に情報提供者の名を出した。

 

ーー

 

磯風「………ああ、確かに司令より話を伺った。 別件で司令に確認した時、胡蝶の夢とやらを話されたのだ。 そして、とある……男女の別れも……な」

 

華琳「───なら、何故、話す必要があるの!? あの忌まわしい記憶を、あの月夜の別れを……痛ぅ!!」

 

ーー

 

磯風へ両手を伸ばし肩を掴もうとする華琳だが、頭に小さくない痛みが走り、思わず伸ばした手を引っ込める。

 

我慢は出来るが、無視するまでとはいかない厄介な頭痛。

 

記憶を思い出して間もない華琳の頭脳には、些か負担が大きかったようだ。

 

そんな華琳の様子に……悲しそうな顔で磯風は言葉を紡ぐ。 

 

諭すような申し訳なさそうな、いつもの自信に満ちた表情ではない、弱々しい表情で。

 

ーー

 

磯風「すまんな。 磯風のような武骨者が、機知に富む英傑を前にして、上手く説明が出来なかった。 本当は……ここまで追い詰めるつもりなど、なかったんだがな」

 

華琳「………はっ? き、急に……何を言い出すかと……思えば……?」

 

磯風「先程、言っただろう。 別件で司令に話をしたと」 

 

華琳「確かに、痛ぅ……い、言ったわねぇ。 だけど……それが、さっきの話と──」

 

磯風「司令より、今回の内容を説明する許可を頂いたのさ」 

 

華琳「なら、早く───話しなさい!!」 

 

ーー

 

顔を痛みでしかめながら、磯風の話を黙って聞く華琳に、磯風は静かに語りだした。

 

 

 

◆◇◆

 

【 露呈の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

磯風「司令はな……常々憂いていた。 この大陸の者達を……自分達の戦いに巻き込む事を……」

 

華琳「今更、何を言い出すのよ。 敵がなんであれ、私達の治める国、そして民達を害しようとするなら、死ぬまで戦うわ。 例え、勝てなくても最後の最後まで──」

 

ーー

 

──抗う、と続けて言おうとする華琳に、磯風の声が割り込み、その発言を聞いて押し黙る。 

 

『昨夜の攻撃を受けて、まだ与太話を言うのか?』と。

 

ーー

 

華琳「…………………」

 

磯風「不思議か? 確かに、この磯風は現地に居なかった。 だが、詳細は鳳翔より聞いている。 情報収集、意見交換は、戦を行う者にとっては、欠かせない大事だからな」 

 

華琳「……………そうね」

 

磯風「…………で、深海棲艦の攻撃を前にして、何も出来なかったそうではないか?」

 

華琳「それを言われると………反論の余地が無いわ。 鳳翔が防いでくれなければ……私達は………」

 

磯風「それが当然の反応だ。 人が深海棲艦に勝とうと思うのが間違いなんだが。 ………司令と同じ、轍を踏むなよ 」

 

華琳「……………?」

 

ーー

 

華琳が首を傾げる中で、第三者側と話を聞いていた冥琳が、口を挟む。 于吉より話を聞いた故に、その凶悪さを知識で覚え、昨夜は実際に体験した身の上だからこそ。 

 

だから、磯風の言いたい事が理解できた。

 

ーー

 

冥琳「昔、史記を読んだ際に目にしたが、姜子牙(太公望)が封神を行う際、宝貝なる未知の兵器を使ったとある」

 

華琳「その記述なら読んだ事があるわ。 どう足掻こうと私達の技術では完成できない、強力な兵器類。 もし、一つでも所持すれば大陸統一なんて簡、単………ま、まさか!?」

 

冥琳「まあ、私も直に体験せねば信じられなかった。 だが、御遣いの操る兵器も、敵対する深海棲艦の凶器も……伝説上の宝貝と同質としか言い様がない」

 

華琳「それじゃ………」

 

冥琳「たとえ、私が策を巡らし華琳に陣頭指揮を任せ、数万数十万の精鋭で参戦しても、だ。 どちらかの何気ない攻撃数発でも当たれば、私達は瞬時に壊滅させられるだろう」 

 

華琳「………………………」

 

磯風「そういう事だ。 普通の人間が深海棲艦が挑んだとしても、傷一つも付けれず破滅するだけ。 だから、司令としては、華琳達を遠ざけたかったのさ」

 

ーー

 

双方の紛争に巻き込まれれば、流れ弾が来るのは必定。 そして、受けた場合の惨事も、極めて正確に予想できた。

 

それと同時に、冥琳の言外には『足手まとい』という意味合いも込められているのを、華琳は敏感に気付く……のだが。 

 

ーー

 

華琳「……………ふん、甘く見られたものね。 この私を、この大陸に住まう者の覚悟を」

 

冥琳「それは、私も華琳に同意する」

 

磯風「………………」

 

冥琳「この大陸では命のやり取りなど日常茶飯事。 死は間近な物であり、恐れる物ではない。 寧ろ、一期一会の出逢いを失う方が、遥かに……怖いと、私は思うのだがな」

 

磯風「………………」

 

ーー

 

華琳達にとって、いや……此処で前世の記憶持ちなら、誰でも言うのだろう。 直ぐ傍に死が待ち受けていようとも、彼女達は離れるという選択を拒否するだろう。 

 

 

────『北郷一刀の傍に居たい』と。

 

 

それに、他の国に属する彼女達も、元々、戦場往来の身の上。 死は日常茶飯事だったのだから。

 

特に、元魏に属していた者達の想いは……強い。

 

生木が裂かれるような別れの後、生あるまで彼を待ち続けた。 そして、ようやく来世にて逢えたのに、また離れ離れになろうとしているのだ。

 

そんな彼女達が、この千載一遇の機会を逃す筈がなかった。

 

ーー

 

磯風「……まったく、面倒な……」

 

華琳「…………何よ?」

 

磯風「いや、何でもない」

 

華琳「?」

 

ーー

 

華琳達の話を黙って聞き終えた磯風は、何気なく呟くと、そのまま説明を続けた。

 

華琳と冥琳、そして、二人の発言に賛同する意思を視線に込め、真っ直ぐ磯風を見る恋姫達に、一刀の行動を説明する。

 

ーー

 

磯風「そんな覚悟を持つ者だから、司令は一計を案じたんだ。 あの童話を元にした計略を……」

 

華琳「それって…………まさか……」

.

磯風「司令はな、自分の死を偽装して、その存在を大陸から完全に消し去るつもりだった。 大陸の表舞台から『北郷一刀』という役者を……降りようとしたんだ」 

 

 

 

◆◇◆

 

【 混乱 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

磯風の言葉を聞き、大半の者が驚愕した。 

 

まだ記憶が忘却したままの者は、ただただ唖然と立ち尽くす者。 記憶がある者は絶叫、嗚咽、怒号等の声が渦巻く。

 

華琳も一瞬の硬直した後、頭痛の痛みも忘れて磯風へ掴み掛かろうとした。

 

ーー

 

??「落ち着かないかっ! この馬鹿者共がっ!!」

 

華琳「────ッ!?」

 

「「「 ─────!!! 」」」

 

ーー

 

────唐突なる大音声。

 

室内に反響し谺が返る程の怒声が、乱れ狂う精神に強烈な衝撃を与え、多くの者が耳を塞ぎ踞る。

 

それは、自国の者ではなく、他国の王や将にさえ、容赦なく怒鳴りつけた叱咤。 武官ではなく、文官として動いていたのに関わらず、武官顔負けの痛烈無比な大喝が響く。

 

聞き覚えがある声。 だが、いつも冷静沈着で礼儀正しい彼女が、こんな事ができるとは……誰も思いはしなかった。 

 

ーー

 

??「兵や民の上に立つ者が、何を私情で騒ぎ立てるか! 磯風は私達の為に説明してくれている最中だ! 即刻、その態度を改めよっ!!」

 

華琳「……………くっ! そ、その通りだわ。 皆、控えなさい! 騒ぎを働く者は、部屋から即退室なさいっ!!」

 

「「「 ……………… 」」」

 

ーー

 

その発声場所は、ずれた眼鏡を指で直しながら騒ぎたてた者を睨み付ける、孫家に仕えし将『周公瑾』である。

 

周公瑾……冥琳は溜め息を吐くと、静かに磯風へ歩みより深々と腰を曲げて頭を下げた。

 

ーー

 

磯風「………ほう、立場を弁えている者も居るようだな」

 

冥琳「無礼な態度、誠に申し訳なく。 皆も理解しているので……どうか、怒りを収めてもらいたい」

 

磯風「別に構わない。 血気に逸って喧嘩を吹っ掛けて来ようなら、その精根を容赦なく叩き直してやるだけだ」

 

ーー

 

あの騒ぎの際、徒ならぬ気配を感じ取った冥琳は、いち早く不穏な磯風に気付いた。

 

…………怒りの気配を漂わす、鬼が存在していた事を。

 

華琳達の様子を見る磯風の表情は、例えるなら、有名な金剛力士の吽形そのもの。 カッと目を見開き、口をへの字に閉じ、顔全体が引きつらせていた。

 

その表情を見て、孫呉で苦労人として蓮華と双璧を誇る冥琳は、直ぐに己が何を行うべきか確信、迅速に行動を移して、今の平穏な状況を現出させたのだ。 

 

もし、冥琳が成り代わって華琳達を怒鳴り、磯風へ謝罪しなければ、怒りに狂う磯風の逆鱗に触れ、悉く地に平伏した事になったであろう。

 

ーー

 

磯風「司令の心は、如何なる時も慈愛を忘れず、必ず何かしら準備を仕込み、皆を不幸にせぬよう心掛ける。 貴様らのように、自分だけの都合で動く御人では無い!」

 

「「「 ……………… 」」」

 

ーー

 

磯風が言い放った言葉を要約すれば…………絶対の信頼。

 

その言葉に皆が皆、『北郷一刀』という存在を思い直すのであった。

 

 

 

★☆★

 

 

大変長らくお待たせしています、作者のいたです。

 

昨年から続きを考えていますが、上手く話が作れず更新が止まったまま。気が付けば半年近く経過してしまいました。前回、前々回と引き続き、このような結果に申し訳ありません。

 

作者としては、更新を諦めずに、いつか続きを載せようと頑張りますので、気長にお待ち下さい。

 

 

下の話は、一応続きとして書きましたが、これで続きを書き上げるか、別の話を考えるか決めかねていますが、更新を楽しみにされていた方の為に、載せておきます。

 

 

◆◇◆

 

 

【 ? の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

磯風「…………で、だ。 なぜ、お前達まで説明に加わろうとする?」

 

「「「「 …………… 」」」」

 

 

そんな問いが始まったのは、一刀の事を説明する直前、磯風の目前に集まった、艦娘達の存在があった。

 

ーー

 

鳳翔「まあ、賑やかですね。 こんな大勢の前に出て説明するなんて……少し、気恥ずかしいのですが……」

 

瑞穂「だ、大丈夫です! 不肖ながら瑞穂も、この艦隊の末席へと連なる身。 提督の為でしたら、どのような辱しめにも耐える準備も覚悟も出来ています!」

 

磯風「おい………」

 

 

 

 

菊月「………………」

 

陸奥「あら、あらあら。 もしかして………緊張してる?」

 

菊月「べ、別に…………き、緊張しているんじゃない。 ただ……注目を浴びて……戸惑っているだけ……」

 

陸奥「ふふっ、人に弱味を見せたくないから強がるなんて……まるで長門を小さくしたみたい。 ほんと菊月ちゃんたら可愛いわよねぇ♪」 

 

磯風「………おいっ!」

 

 

 

鳳翔「瑞穂さん、あの………少し、大袈裟ではないでしょうか? 別に、そこまで気合いを入れる程でも───」

 

瑞穂「お気を使って頂いて嬉しいです。 されど、その優しさに甘えてしまえば、瑞穂の糧へとなりません! 遠慮など無用、瑞穂も後へ続きます! 何時でも仰って下さい!」

 

磯風「おい、いい加減に………」

 

 

 

陸奥「…………あっ、そうだ。 お姉さんが凝り固まった身体、やさしく解してあ・げ・る♪」

 

菊月「うっぷ! ────こ、こらっ! 止めぇっ!!」 

 

陸奥「遠慮なんて無用よ。 リラックス、リラックス~♪」

 

菊月「う、うわぁ~! ほ、ほっ、頬っぺを、うっ! ぷ、ぷにぷになど……す、すっ、するなぁぁぁ!」 

 

 

 

磯風「…………………ふっ、いいだろう。 そこまで磯風を虚仮にするなら───覚悟を決めろ!」

 

「「「「 ────!? 」」」」

 

 

磯風「たとえ味方であろうが、容赦なぞせん!」

 

「「「「 ────ごめんなさい!! 」」」」

 

 


 
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