No.962730

PokemonSM CosmosEpic 05:イリマとセイル

フウイさん

大試練の前に、二人についてすこし触れます。

2018-08-06 18:02:07 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:334   閲覧ユーザー数:334

 

 

イリマの試練を達成した翌日のこと。

今日はトレーナーズスクールも休みと言うことで、ヨウカは部屋でニャーくんやタツくんとふれ合っていた。

あのあと、洞窟から出てきたらイリマに試練達成の祝福の言葉をかけてもらったが、彼女の体の傷をみて驚き、すぐに手当をしてくれた。

その証拠に今彼女の肘と膝には絆創膏が貼られている。

ちなみにセイルは、彼女が洞窟からでる少し前に別のよう時ができてしまい、会うことはできなかった。

昨日の試練のことを部屋で思い返していると家のインターホンが鳴った。

 

「ヨウカ、ママはいま手を離せないから、かわりにでてくれる?」

「はーい!」

 

母の言葉を聞いたヨウカは部屋をでて玄関にたち、扉を開ける。

 

「ヨウカさん」

「あれっ・・・リーリエちゃん?」

 

するとそこには、ククイ博士の助手である少女リーリエが立っていた。

 

「どうしたのリーリエちゃん、あたしになんか用?」

「はい、博士に頼まれてきました」

「博士に?」

「ヨウカ」

 

するとそこに、家事をすました母が入り込んできた。

 

「あら、その子はヨウカのお友達?」

「あ、初めまして・・・私リーリエともうします・・・!」

「初めまして、私はヨウカの母です!

よろしくね、リーリエちゃん!」

「は、はい」

 

明るい態度で接してくる母にリーリエが安心した頃、リーリエは自分がここまできた経緯を話し始める。

 

「博士、ハラさんのところに先回りして待ってるぜ、って言ってました。

一緒に行きましょう」

「うん、いいよ!

じゃあお母さん、いってきます!」

「はい、行ってらっしゃい!」

 

母に見送られながらヨウカはリーリエとともに家を飛び出し、ククイ博士もいるリリィタウンを目指して歩き出す。

その途中でリーリエはヨウカと、ヨウカの母親について話していた。

 

「明るくて、優しそうなお母様ですね」

「え、そ・・・そうかな?」

「ええ・・・」

 

そこでヨウカはふと思った。

昨日ククイ博士の研究所を訪問したときにリーリエが彼の研究所のロフトで寝泊まりしていることを知ったが、肝心のリーリエの両親はどこにいるのだろうと。

だがなにか事情があるんだろうし自分からこういうのは聞けない、本人が話すのを待った方がいいなと思ったヨウカは尋ねることはしない。

そんな気持ちでリリィタウンへの道を歩いていると、リーリエのスポーツバッグからあのポケモンが飛び出してきた。

 

「きゃっ」

「あはは、元気だね!」

「ぴゅい!」

 

そのポケモンはヨウカに抱き留められ、楽しそうに笑っていた。

ヨウカもそのポケモンに対して笑い返していると、リーリエはそのポケモンについて話し出す。

 

「・・・あの、ヨウカさん」

「どうしたの?」

「この子のこと、あまり公にしないでください・・・。

ほしぐもちゃん・・・もとい、コスモッグはアローラでも珍しいポケモンさんだそうです。

この子がみんなに・・・特に悪い人に見つかったら大変なことになっちゃう・・・」

「・・・」

「この子に、私は助けてもらったんです・・・でも、力を使うとこの子ヒドく弱っちゃって・・・。

だから、あまり・・・力を使わせたくないんです・・・」

「・・・そっか、わかった!

あたし、この子の・・・ほしぐもちゃんのこと、秘密にするよ!」

 

本当の名前を聞きながらもヨウカはリーリエと同じように、コスモッグのことをほしぐもちゃんと呼んだ。

その光景にリーリエは静かにほほえむ。

 

「ほしぐもちゃんのことはククイ博士にも秘密にしてるの?」

「ククイ博士はもう知っています・・・私がこの子を見せるのは、信頼できる人のみですから。

あと知ってる人といえば、しまキングであるハラさんとお孫さんであるハウさんです」

「そうなんだ」

 

そんな会話をしているうちに、リリィタウンに到着した。

町に入る直前にコスモッグは、バッグの中に戻った。

 

 

「博士」

「おぉ、きたねリーリエ!」

 

ハラの家に行ってみるとそこにはリーリエの言うとおり、ククイ博士の姿があった。

だが、この家に本来いるはずの少年の姿がないことに気づいたヨウカは、そのことをククイ博士とハラに問いかける。

 

「あれ、ハウくんはいないんですか?」

「ハウなら今日はイリマの試練に挑むって言って今朝はやくにでていったよ」

「ほえー、そうなんですか!」

 

ハウもやる気満々なんだな、とこのときヨウカが思っているとハラは立ち上がりヨウカの前に立つ。

 

「さて・・・まずは君に渡すべきものがあります」

「うん?」

「これが、君から預かった鉱石から作ったZリングですぞ」

「Z、リング?」

 

ハラに渡されたのは、銀色の装飾にベルトが通った腕輪だった。

その銀色の装飾は、いつの間にかポケットに入っていたあの鉱石・・・カプ・コケコから貰ったあの鉱石だと一目で気付いた。

とりあえず、自分の手首にそれをつけてみる。

 

「きつくないですか?」

「うん、大丈夫だよ」

 

自分の手首のサイズにあわてそれをはめ、確認する。

初めてはめるにも関わらず、その腕輪は自分の手首にはめてかなりしっくりくるのを感じた。

 

「ところで、ハラさん。

さっきからZクリスタルとかZ技とかZリングって、全部Zがついとるけど・・・なにか関係があるんですか?」

「おっとそうでしたな、君にその話はまだしておりませんでした」

「僕から説明します」

 

そう言ってククイ博士はハラの代わりにZワザについてざっくりと説明した。

 

「簡単に説明すると!

そのZリングにZクリスタルをつけて、特別なポーズを決め、Z技を繰り出すんだ。

まぁクリスタルの技と同じタイプの技をそのポケモンが覚えてることが最低条件だけどな。

あと、ポケモンだけじゃなくてトレーナーもかなり精神力を使うから、一回のバトルに一回だけしか使えない。

ここぞというときに使うものだぜ」

「・・・はい、とりあえず覚えました」

 

あまりにもざっくりすぎる説明にヨウカは戸惑うが、とりあえず話は聞いてたし覚えたので、そのまま返事を返す。

 

「そのノーマルZなら、ひっかくを覚えてるニャビーとずつきを覚えてるタツベイがZ技を使えるな」

「この子たち、もうつかえるん!?」

「ああ、ノーマルタイプのワザが使えるしな」

 

彼女がZクリスタルを既に持っていることや、島巡りの証をバッグにつけているのをみたハラはふむ、とあることを告げる。

 

「ノーマルZ・・・それはすなわち、キャプテンであるイリマの試練を突破したということですな」

「はい!」

「・・・ふむ、よろしいでしょう。

この島のキャプテンが与えた試練に打ち勝った君には、このメレメレ島のしまキングであるハラに挑む権利を与えましょうぞ!」

「おお、いよいよ大試練のときだな!」

 

ハラのヨウカは目を丸くした。

 

「うわぁ・・・大試練に挑むってことは・・・あたし、ハラさんとバトルするん!?」

「そうなるな」

「うーん・・・」

「どうかしたんですか?」

 

大試練に挑める、と聞いたときにヨウカはうなり声をあげて悩み出し、しばらく唸った後でハラに宣言する。

 

「あたし、もうちょっと修行してきます!

あたし、まだまだやし・・・ちゃんと強くなってから、挑戦させてもらいます!」

「・・・うむ、それがよいのでしょう。

わしはいつでも、君の挑戦をここで待っておる故、準備ができたらまたいらっしゃい」

「はい!」

 

ヨウカは近いうちにハラと戦う約束をして、今日は帰ることにした。

 

 

ククイ博士とリーリエと別れたヨウカは、メレメレ島で一番大きい町であるハウオリシティの街を歩いていた。

その手にはアローラの名物であるマラサダが握られており、それを食べながら歩いている状態だ。

 

「うーん・・・どんなバトルすればええのやろ・・・?」

 

ヨウカがこの行動にでている理由は一つ。

それは、大試練に勝つためにどういう修行をして、どういう先方をとればいいか。

考え込むヨウカに、彼女の名前を呼ぶ声が届いた。

 

「ヨウカさん」

「あ、イリマさんにセイルさん!」

「・・・なにか唸ってたが、どうかしたのか?」

 

その声の主は、イリマとセイルだった。

2人にあったヨウカは、自分が唸っていた理由を2人に話す。

 

「・・・そうか、大試練に」

「はい・・・でもハラさんはしまキングだけあってすっごく強いって、学校でハウくんが言ってました。

おまけに、かくとうポケモンの使い手とも」

 

だがヨウカには、かくとうに有利なワザを覚えているポケモンも、かくとうに有利なタイプのポケモンもいない。

その中でどうやって勝てばいいかを考えていたのだ。

悩むヨウカを見たイリマは、ある提案をした。

 

「折角だし、これから僕の家にきてみませんか?

バトルやポケモンに関する資料もたくさんあるので、勉強になると思いますよ」

「いいんですか?」

「ええ」

 

イリマの厚意に甘えて、ヨウカは彼らとともにイリマの自宅に向かった。

ハウオリシティの街道をしばらく北西に進んだところに、彼の家はあった。

だが彼の家は家というよりも、屋敷と呼ぶ方がふさわしいのではないかと思うサイズだった。

 

「うわぁ、ここがイリマさんのおうちなん!?」

「そうですよ」

「おっきー!」

 

その家の大きさにヨウカは素直な感想を述べつつ、その豪邸に足を踏み入れる。

 

「では、入るか」

「はい、おじゃましまーす!」

 

門を開け、豪邸の中にはいると、外観に違わず内装も非常に広かった。

イリマの両親はいつも遊びに来るというセイルに加えて、ヨウカのことも迎え入れてくれた。

そのまま3人はイリマの自室に入っていき、その部屋の広さにヨウカはまた驚く。

 

「本がいっぱいあるよぉー!

おまけにトロフィーも!」

「本題、忘れるなよ」

「あ、はーい!」

 

部屋に置かれているものに興味津々だったヨウカは、イリマに許可をもらいポケモンバトルの技術書を手に取る。

だがその内容の細かさにヨウカは石化したように固まってしまった。

 

「・・・そうだヨウカさん、紅茶はお好きですか?」

「・・・あ・・・はい、大好きです!」

「そうですか、ではこのロズレイティーをどうぞ」

 

本が苦手なのかと気付いたイリマは苦笑しつつ、紅茶を勧める。

よくみると隣にいたセイルも苦笑しているようで、家政婦が持ってきた紅茶をティーカップに注ぐ。

渡された紅茶からは甘い香りがして、ヨウカはそれを受け取り口を付ける。

 

「美味しい!」

「よかった」

「・・・どうやら、勉強は苦手のようだな・・・」

「うぅ、はい・・・」

 

セイルに弱点を突かれて、ヨウカはうなだれる。

それをみたイリマとセイルは顔を合わせてうなずきあうと、自分達の経験や知識を彼女に語りアドバイスする方法をとる。

 

「もう知っているかとは思うが、ハラさんはかくとうポケモンの使い手だ。

だから有利な技を覚えさせるのが有効だろう」

「有利な技かぁ」

 

そう言ってヨウカはニャーくんとタツくんが入ったボールをみた。

するとロトムがあることを思いだし、ヨウカにそのことを告げる。

 

「タツベイなら、いいワザをおぼえられるロトよ!」

「ホントに?」

「ええ、そうですね・・・今からそれを覚えてみますか?」

「はい、やりたいです!」

 

3人は今度は、庭にあるバトルフィールドに向かいそこでポケモンのワザを特訓することにする。

 

「ではドーブル、お願いします!」

「いって、タツくん!」

 

イリマはドーブル、ヨウカはタツくんをそれぞれだした。

 

「まずはずつきを出してみてください!」

「はい、タツくんずつき!」

「たんべぇーーーっ!」

 

タツくんはドーブルにずつきを繰り出しつつつっこんでいき、ドーブルはそれをまもるで防御した。

その修行を彼らは延々と繰り返していた。

 

 

「いい感じに仕上がってきたな」

「あとはうまく命中させるだけ、ですよ」

「はい!」

 

特訓を始めてから数時間後。

ヨウカはイリマやセイルとともに、タツくんの新しいワザとニャーくんのパワーアップに挑みつづけた。

ふと、ヨウカはセイルのそばにいるジュナイパーに視線を向ける。

 

「にしても、セイルさんのそのポケモンもすごいんやねー・・・あたし初めてみます」

「ああ、モクローの最終進化系のジュナイパーだ」

「ほぇー」

 

あの丸っこいモクローがここまでスマートになるんだ、と思ってたらイリマがなにかを思い出したように口を開いた。

 

「そうだセイル、腕大丈夫ですか?」

「ああ・・・今日は問題ないぞ」

「腕?」

「・・・」

「セイル・・・?!」

 

腕とはどういうことなのか、とヨウカが思っているとセイルは左腕を覆っていたアームカバーをはずして、その下の包帯を見せる。

さらにその包帯を解きはじめたとき、イリマは驚きの表情を浮かべた。

 

「あっ・・・」

 

ヨウカはセイルの左腕を見て身体をふるわせた。

その腕には大きい痣が広がっていて、切り傷のような痕が腕のあちこちに残っている。

右腕と比べると少し細いその腕は・・・痛々しかった。

 

「どうしたんです、この腕・・・?」

「3年前、島巡りの途中でこうなったんだ・・・ちょっとした事故でな。

それで俺は、島巡りを諦めざるを得なかったんだ」

「そんな・・・」

「これでもよくなった方だ、怪我をして病院に運ばれたときはもっと酷くて、腕だけでなく指も動かせなかったんだからな」

「・・・」

 

ヨウカは思わずセイルの腕を凝視してしまったが、彼女の視線に気づいたセイルは見苦しかったなと言い、イリマの手を借りつつ包帯を巻き直しアームカバーをつけなおした。

 

「さて・・・俺はもう行く」

「ほえ、どこに?」

「・・・カーラエ湾の生態調査だ」

「そうですか」

 

セイルはジュナイパーを戻し、ヨウカの方を向く。

 

「・・・これから島巡りをするなら・・・俺の二の舞にはなるなよ。

旅先で会ったときはちゃんと、協力するからな」

 

それだけを言い残して、セイルは彼の両親に挨拶をしたあとで屋敷を出ていった。

彼が去った後、イリマは悲しげに眉を下げつつ、セイルについて語り出した。

 

「・・・実はあの傷を負うほどの事故は、スカル団によって起きたものなんです」

「スカル団が!?」

 

そこで出た予想外の名前にヨウカは驚く。

イリマはそのまま、話を続ける。

 

「セイルが乗っていた船が、スカル団にジャックされて・・・船の上でスカル団が暴れたことで船が壊されそのまま転覆、それにセイルは逃げ遅れてしまったんです。

セイルは数日行方不明になり、メレメレの海岸で満身創痍の状態で発見されました。

発見が早かったから命は助かりましたがギリギリで・・・あと1分でも発見が遅かったら・・・」

 

これ以上のことは想像したくないし、言いたくない。

そう思ったイリマは言葉を止める。

 

「その後も大変でした、命は助かったものの体はむち打ちに近い状況で、特に左腕の損傷がひどかったんです。

全く動かせないほどで・・・2年リハビリと治療を繰り返して、なんとかものをもてるくらいになって、今はやっと肩まであがるようになったんですよ。

最も、激しく動かすことはできないし、ドクターストップもかかっていますが・・・」

「そんな・・・」

 

セイルの身に起きた事故を知ったヨウカは戸惑いつつも、イリマがスカル団にたいしてどこか厳しい理由に納得がいった。

スカル団は彼の親友を傷つけた犯人だ、だから彼もスカル団に怒っていた。

すべてのつじつまが合い、眉を少し下げたヨウカにイリマはあの穏やかな笑みを浮かべつつも声をかける。

 

「ヨウカさん」

「はい?」

「今後セイルに会ったら、セイルは貴女やハウくんを助ける気でいます。

その分、セイルのことも助けてやってください」

「・・・」

「セイルは普段はちょっと不器用さもあって、あまり愛想もないし素直じゃないですが・・・。

でも、本当は誰よりも努力をしていて、人やポケモンのことを一番に考えている・・・とっても優しい人なんですよ」

「そうなんですね・・・」

「まぁ、そういう事を言われると彼、すぐ照れて乱暴な口調になりますけどね。

かなりの照れ屋ですから、そこは理解してやってください」

「はい」

 

イリマとセイル、2人の少年の話を聞き、ヨウカは島巡りへの気持ちを新たに持った。

 

「あたし・・・セイルさんの分まで、島巡りがんばります!」

「・・・ありがとう」

 

 


 
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