No.954744

「真・恋姫無双  君の隣に」 外伝第6話

小次郎さん

荊州・合肥・漢中にて開戦
もう、後戻りは出来ない。

2018-06-02 16:51:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5151   閲覧ユーザー数:3476

(荊州)

「ようやく、ようやく来たのだ、董卓様の御役に立つ時が。詠、次も私に任せよ」

「五月蝿いわね、言われなくても働いて貰うに決まってるでしょ」

全く、過去の事を完全に棚に上げてるわね。

いきなり現れて戦わせろって、どの面下げてだけど、今はこんなのを使ってでも功績を上げないと、全ては月の為に。

所領と官位を桃香と孫権に約束を取り付けて皇帝からも認を貰えた。

絶対に此の機会を逃せない。

「華雄、次は恋殿の番なのです。江陵攻略は譲ってやったのだから引っ込んでるのです」

「断る、私が全て倒す!」

華雄とねねの言い争いを他所に、恋がじっと何処かを見ている。

「恋、何か見えるの?」

「・・月が心配、一人で留守番」

やっぱり恋はいい娘ね、でも桃香と一緒に成都にいるから、むしろ此処より安全よ。

「大丈夫よ、でも僕も心配だから早く戻れるように頑張りましょ」

「・・・・・」

恋?

 

我等蜀と呉の連合軍で形成されている荊州侵攻軍、江陵を陥落させ次は襄陽へと進軍するも、急報によって足を止められる。

魏軍十五万が現れたと。

・・流石と言おうか、これ程に早く軍勢を整えてこようとは。

だが魏軍は陣を構築するのみ、攻め寄せては来ない。

「雛里、何故に曹操殿は攻めては来ないのだろうか?」

此方は総兵十万弱で向こうは十五万、数で上回っているのに何故だ?

「か、確約は出来ませんが、他戦場の結果を待っているのではないかと」

呉の合肥方面軍、蜀の漢中方面軍のか。

しかし、相対する魏軍には曹操殿が出陣していると知らせが入っている。

あの曹操殿が此度の蜀呉の進軍に怒りを持たぬ筈が無い、それなのに呉の行った舌戦にも応じず沈黙を貫いている、此の静けさは何なのか。

・・・烏滸がましいが、曹操殿の心中は察するに余りある。

こんな信義にもとる、弾劾されるべき恥知らずな行いをとる蜀呉に、私は怒りが抑えられぬ。

桃香様の苦しみは如何程のものか。

・・・いや、止める事の出来なかった私に非難する資格は無い。

そして正直恐ろしかった、良心を解さない、どこまでも己本意になれる人の強欲さを。

本当に自分と同じ人なのかと。

「あ、愛紗さん。もう私達に出来る事は本当の三国鼎立を為す事しかありません。そ、そうするしかないんです」

魏国を滅ぼすのではなく国力の均等化を目標とし、そして漢帝国の権威を戻し三国の中心とする為の戦い。

これが桃香様や私達が暴走する者達を制御する為に、侵攻を正当化させる為に掲げた吐き気を催す大義名分。

「ぎ、魏国を滅ぼさないで、そして何より蜀を滅ぼさない為に、私達は洛陽まで軍を進めなくてはいけません」

そこで和議を結ぶ、か。

勝手きわまる考えに自嘲が止まらず、我が身の薄汚さを再確認する。

・・・どうしてこんな事になってしまったのだ、私達はこんな事の為に戦ってきたというのか。

戦を無くし平和を築く為ではなかったのか!

「愛紗よ、戦場に立つ以上は我等に迷いは許されぬだろう」

「鈴々は正直帰りたいのだ、でも皆を置いていけないのだ」

星と鈴々も、そして雛里も私と同じ気持ちなのだろう。

 

・・・絶望しかない戦いは、既に始まってしまったのだ。

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 外伝 第6話

 

 

(合肥)

報告によると合肥城の駐屯兵は五千。

魏の援軍が到着するまでに陥落させ我等の拠点とせねば、此度の遠征は失敗に終わるだろう、何としても合肥城を短期で陥とさねばならん。

此方は十万、力攻めは愚策だが幸い士気は高い、雪蓮ならばいけるだろう。

うっ、ゴホッゴホッ!

慌てて咳を抑え、吐血した血を布で拭き取る。

戦術を考案中の為と天幕から雪蓮や他の者は外させている、気付かれてはいない。

・・もう、時は無いか。

これも天が下した私への罰なのかもしれぬな、無謀な戦を止められなかった私への。

呉は豪族の力が強く、あくまで孫家は代表に過ぎない。

自分達の事を棚に上げ先の戦で敗れた孫家への不満を挙げ、此度の戦に踏み切らせた。

失ったものからの心情は理解できぬ訳ではない、だが余りにも短慮だ。

確かに現状では大きな国力差がある、だが蜀とは違い呉には大きな可能性がある。

既にほぼ開発されている魏領に比べ、呉領には広大な未開発の土地があり外海にも面して、発展の余地はそれこそ算出できない程あるというのに。

人口とて平和なれば大きく増えるのは自明の理だ、だからこそ今は耐え、臥薪嘗胆すべき時なのだ。

ゴホッゴホッゴホッ!

血と共に私から流れていくもの。

・・・最早、無益な考えか。

これが奪う事や勝つ事しか考えぬ、そうやって国を成した私達への末路なのか。

 

静かね、包囲されている城とは思えないほどに。

こっちを恐れてると確信してるみたいで味方は意気揚々だけど、・・幸せよね、これに気付けないのって。

・・この凍て付くほどの怒りを感じられないなんて。

とはいえ始めるしかないわね、私と冥琳の武名を当てにしといて早く戦わせろって先から参戦豪族の伝者たちが煩いし。

はいはい、分かったわよ、やるわよ。

私の号令に全軍が突撃を開始する。

ま、少しは痛い目に合えば大人しくなるでしょ、と思ってたけど、・・私自身も甘かったのね。

・・・魏の怒りを、見誤っていた。

 

 

(漢中)

桔梗様を大将に進軍する漢中への侵攻、私にとって一日千秋の思いだったゆえ感慨深い。

魏に対し特に恨みがある訳では無いが、桃香様が下と見られる現状は私の様な忠臣には耐え難い事であったからな。

たかが数度の敗戦くらいで愚かしい話だったのだ。

だが遂に桃香様は我等の思いに応え立ち上がって下された、ならば私は剣となり魏を薙ぎ払おうぞ。

「紫苑よ、補給は大丈夫か?漢中へは険しい道のりだが」

「ええ、木牛流馬のお陰で問題無いわ」

木牛流馬?ああ、確か朱里が作ったという輸送用の押し車か。

桔梗様たちは随分評価されているようだが軍師は現場では役に立たぬからな、それ位はして貰わねば無駄飯食いだ。

武こそ桃香様に最も貢献出来るのだからな。

それなのに先陣出来ないのは無念だ、御優しい桃香様が翠たちに気遣われて決定してしまった。

まあ、共に戦う仲間だ、仕方がない。

せめてものだ、激励に行って私の気持ちを共にして貰おうか。

 

「栄えある先陣は私がしたかったのだが、翠、蒲公英、譲った以上は頼んだぞ。桃香様の為に早々に漢中を陥とさねば為らんからな」

焔耶なりの激励なんだろうけど、正直鬱陶しい。

「・・ああ、そうだな」

姉様の返事に満足したのか、更に言葉を重ねて焔耶は本陣に戻って行った。

たんぽぽの無言は緊張と取ったみたいで、「元気を出していけ」って言ってたけど、的外れだよ。

・・こんな戦、意味あるの?

どう取り繕ったところで魏に対しての僻みじゃない!

この戦に勝てば涼州を取り戻せるって、でもそんなの益州の人に言われる筋合いじゃないよ!

・・大体とっくの前に曹操さんから話は来てたんだよ、臣下にはならなくていいから涼州に戻るなら便宜を図るって。

考える時間が欲しいって姉様は受けなかったけど。

でも今回の戦には直ぐに参戦を了承して先陣まで嘆願した。

譲られるのじゃなくて、力で取り戻したかったのかな。

姉様が行軍の足を速めた。

その気持ちは分かるけど、でもさ、なんか違う気がするんだよね。

 

 

(許)

処刑場に引っ立てられるのは、皇家親族の筆頭である董承様、他に吉本、伏完、魏諷、以下主だった漢臣。

許にて烽火を上げ、魏国を倒そうと企てた人達。

・・そして、姫様、文ちゃん、私。

入念に準備が行なわれて姫様ですら大人しくしていたのに、いざ実行という時に一斉の摘発を受けて誰も逃れられなかった。

抗議の声を挙げた者は即で斬り捨てられて、以降誰も口を開かなくなった。

取調べすら行なわれない。

姫様でも余りの重々しい空気に口を閉ざしている。

おそらく分かったんだと思う、・・もう、終わりなんだって。

蜀で御世話になってた私達に乱の話が持ちかけられて、私は止めたけど姫様と文ちゃんが乗ってしまった。

諸葛亮さん達からも援助が約束されて、実際上手くいくと思えるほど順調だった。

それに万が一の逃げる手段も用意しておいた。

でも、それすら見破られていて捕らえられた。

 

 

 

「これより処刑を開始する、三族悉く執行せよ、魏王の命である」

 

 

 

陣頭指揮を執っている荀彧さんの非情な宣言。

その日、処刑場に於いて地は全て血によって覆いつくされたそうです。


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