No.948279

「真・恋姫無双  君の隣に」 外伝第4話

小次郎さん

北の地の戦が終結。
両国の今後の繋がりは。

2018-04-09 21:45:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4874   閲覧ユーザー数:3529

私達が北郷一刀に敗れ此の北の大地に足を踏み入り戦い続けて、早二十年が経ちました。

相対しますは軻比能軍二十万、遂に最終局面です。

不思議なものですね、管理者でありました時は時の流れなど有って無いようなものでしたのに、今の私の身体と心には確かな時が刻まれています。

「于吉の旦那、全兵が配置に就きやしたぜ」

「伏兵が居ないのも間違いないっす」

「も、問題ないんだな」

共に戦ってきました戦友、ヒゲさん、チビさん、デブさんの最終報告を受けます。

準備は全て整い、私は総大将である左慈に告げます。

力に重きを置く北方異民族にすら武の化身と畏怖されている我等が王に。

「左慈、お待たせ致しました」

「フン、いつもの事だ」

変わりませんねえ、素直に褒めてくれてもいいのですよ?

尤も左慈の性格は既に周知の事ですので今更ですが。

左慈が剣を掲げ、振り下ろされます!

「全軍、俺に続け!!!」

堰が崩壊し溜め込まれていた怒涛の激流が戦場を満たします。

流れる血によって大地が隠れるほどの戦いは三日間に亘り、四日目の日の出と共に、此の北の地に新たな王が誕生したのです。

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 外伝 第4話

 

 

ようやく終わったか。

北の地に於いて騒乱が終結したとの報告が届いた、勝者は左慈、戦前の予想通りではある。

華琳が問いかけてきた。

「一刀、どう対応するつもりなの?」

「うん、他の諸外国と同じ友好でいくよ。先ずは祝事の使者と食糧等を贈ろう、白蓮、任せていいかい?」

「分かった、任せてくれ」

左慈の奴がどう反応するかに一抹の不安はあるけど、おそらくは大丈夫だろう。

普通に考えて国内統治の為に戦どころじゃない筈だしな。

「出来れば早急に通商条約を結びたいわね、彼等の本拠地である遼東は大きな市場となるわ。終戦を商人達も手ぐすね引いて待ってたでしょうし」

「蓮華さんの言う通りですね。戦時中に介入していればそれこそ途方も無い利を得れたでしょうから。ですが一刀さんの何処にも肩入れしない方針と商取引の売値規制徹底で、官僚や商人の不満を宥めるのに本当に苦労しましたよ」

まあね、でも嫌だったんだよ、戦争特需。

「私は一刀様の判断が正しいって今でも思ってるよ。戦争でお金儲けなんて絶対間違ってるから!」

「桃香、落ち着いて。私だってそう思ってるし、それに七乃も、でしょ」

「まあ、そうですけどね」

「それに政としても明確な理由があるわ。目先の利に飛びついて先の事を考えられない為政者なんて華国には不要よ」

華琳の言う政としての理由、それは需要と供給の釣り合いを崩さない事と、なにより軍需産業が過分に大きくならない様にだ。

事実、かなりの数の官僚と商人が結託して水面下で動いていた、下手を打っていたら内乱に発展しかねなかった程に。

・・そもそも彼等の考えこそ寧ろ普通なんだろう、軍需産業が力を持つのは人の歴史と二人三脚だ。

正味、俺が掛けてる歯止めも一時的なものにしかならないだろう。

それでも此の事を場所や時代が違えども誰かの知識や心に残せるものがあるのなら、きっと意味があったと思う。

「桃香、可能な限りでいいけど医師や看護師も派遣したい。準備だけしておいてくれ」

「分かりました。何時でも派遣できるように華佗さんと相談しておきます」

ふう、一先ずこれでいいか。

二十年の騒乱か、左慈の奴、大変だったろうな。

俺も俺で大変だったけど、皆のお陰でどうにか大過なく国を治めてこれた。

即位して二十年以上が経って、正確にはもう判らないけど俺も五十を越えた。

・・そろそろ、いいかな。

「皆、話したい事がある。聞いて欲しい」

遣らなくてはいけない事が無くなるなんて、おそらく無い。

どんなに小さな事でも時と共に変わる、だからこそ自分の意志で決断しておきたい、後悔しないように。

「俺は、王を次代に譲る」

終わらない物語なんて、無いのだから。

 

 

ここからは絹の道と呼ばれてる西へと続く道や。

商人の格好をして二人して馬を並べてても、未だに実感があらへんなあ。

「一刀、ホンマにええのか?」

「ああ、やっと約束が果たせるよ。すまない、霞、本当に待たせたね」

羅馬へ一緒に行こうとしてた約束を、一刀はホンマに叶えてくれたんや。

正直無理や思てたし、気持ちだけでも充分やったのに。

なんか涙が出てくるわ、ウチも年とったなあ。

「それにしても皆もよう認めてくれたな、なんぼ王を降りたゆうたかて普通無理やろ」

一刀は華国民にとって大きすぎる存在や、何かあったら洒落にならん、それこそ二人だけで国外へ出るなんて絶対ありえへん。

一体どうやって認めさせたんや?

「うん?別に普通に言っただけだよ、俺が居ないだけで傾くような国じゃないだろ、って」

・・そりゃ脅迫と変わらんわ、何も言い返せるかいな。

否定したら自分達と一刀の否定になるやんか!

「でも護衛は付けるって言うたやろ?」

「ああ、霞と二人がいいからって断ったよ」

・・皆、ウチが絶対に護るから堪忍な。

道理で先に西平で待たされた訳や、寿春におったら妬みの視線に晒されとったで。

帰った時の事を考えたら背筋が寒なるわ、よし、忘れよ。

「さ、行こう。俺もずっと楽しみにしてたんだ」

「ああ、行こか」

 

史書華伝 第四章 張遼伝より抜粋

 

董卓、曹操に仕え魏国降服後に華国臣となる。

武勇、馬術、用兵術と何れも非凡な才を持ち、戦場に於いて神速とも言われた将軍。

北郷王の后が一人。

二男二女の母。

晩年は将軍職を辞した後、西欧の造酒に入れ込んだという。

 

 

 

 

 

 

ふう、最近疲れが取れねえんだよなあ。

でも無理もねえよな、国を建てるまでに二十年、それから国を豊かにするのに二十年、もう完璧に爺なんだからよ。

正直もう引退してえんだけど、左慈と于吉の旦那が辞めねえ限りはなあ。

「ヒゲさん、どうでしたか、市場の様子は?」

「大変な盛況でしたぜ、なにしろ南蛮はおろか天竺から来てる商人までいやしたから」

華が船を使って色んな国と交易してんのは知ってたけど、船を使えばこんな北の地でも来れるんだな。

「チビさん、デブさんはどうでした?」

「そうっすね、華の商人を介してるからか、おかしなのは見なかったすよ」

「め、珍しい物が一杯あって、みんな楽しそうだったんだな」

値段交渉で揉めてるのも見かけなかったしな。

「フン。俺の国で馬鹿な真似が出来るならやってみろ、相応の報いをくれてやる」

「ハハ、そんな命知らずはもういないでしょう」

・・だよなあ、俺もそう思ってたんだけどよ。

「・・アニキ、やっぱ言っとかねえと拙いっすよ」

「んだ」

「俺が言うのかよ、見つけたのはお前等が先だろ!」

「いやいや、こういうのはアニキが言うのが筋っすよ」

「んだんだ」

「ふざけんな!俺に押し付けんじゃねえよ!」

互いに嫌な役目を小声で必死に押し付けあっていたら、当然旦那たちに見咎められた。

「どうしました?」

チビ、デブ、後ろに下がるんじゃねえよ!

訝しげな于吉の旦那の問いに、俺は何て言ったらいいのか分からず必死に言葉を捜すが何も出てこねえ。

「おいっ、何を隠している、とっとと話せ!」

畜生、もう知らねえぞ。

「・・実は、市場でお嬢たちを見かけたんすよ、・・・男連れで」

左慈と于吉の旦那の一人娘、つまり王と宰相の跡継ぎ。

「ほう、あのじゃじゃ馬がか?」

「なんと、あの娘が男と?」

そりゃ驚くよな、結構いい年なのに浮いた話が一切無かったんだからよ。

その理由も片や自分より弱い奴は嫌といって求婚者をぶちのめすし、片や同姓との恋愛しか興味ないって公言してたんだぜ。

「成程、確かに少々複雑ではありますが、父親としては喜ぶところでしょうね」

「そうだな、あいつも娘の事は気にしてたしな」

お后様はどっちかってえと于吉の旦那を気にしてるけどな、左慈の旦那にべた惚れだから未だに于吉の旦那を警戒してるしよ。

そのお后様の親友である于吉の旦那の奥方様は、よりにもよって男同士の恋愛を布教してるんだよ。

大体よ、同姓恋愛を両方とも主張してんのに、あの二人は何で結婚したのか今でも分からねえ。

娘にもしっかりと受け継がれてるしよ。

・・とにかく穏便に済んで良かったぜ、んじゃ帰るか。

「それで、相手は誰だ?」

・・おかしいぜ、冬なのに汗が止まらねえ。

「そうですね、相手は誰なんですか?私達が知っている者でしょうか?」

俺は下がっていたチビとデブの襟首を掴んで前に突き出す。

「ちょっ、アニキ!?」

「ひ、ひどいんだな」

「うるせい、お前らが言いやがれ!」

再び嫌な役目を押し付けあう俺達、左慈の旦那が切れる。

「おいっ!一体誰だ!さっさと言え!」

「もしや私達が滅ぼした者達の生き残りですか?」

そんな奴なら俺達も躊躇しねえよ。

チビが観念したか、遂に口にしちまう。

「・・御遣い様と袁紹様の御孫さんっす。もう一人も御遣い様と公孫賛さんの御孫さんっす」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

お、重え、滅茶苦茶空気が重え!

「・・全軍、戦の用意をしろ」

「直ちに」

待って下せええええええええええええ!!!

 

 

いい月だ、酒や肴も美味い。

気温も程良くて、贅沢な時間だ。

それなのに、何なんだろうな、この重苦しい空気は。

「一刀、孫の婚姻が決まってめでたい事なのに、どうしてそんな仏頂面なんだ?」

「・・何でだろうな」

長い付き合いだが、こんな一刀は初めて見るな。

「左慈、気持ちは分かりますが非公式とはいえ国交の場です、少しは口を開いてください」

「・・・・・・・・」

あちらも同様か、だが此の四人での集まりは一刀や左慈王も納得済みな筈だろう?

一刀の政で華国は身分制が全面廃止され、政略結婚も行なわれなくなった。

子供達は自身で相手を見つけ、己が思うままに生きている。

むしろ他国の王族と結ばれる今回の事は例外中の例外で、青天の霹靂と言ってもよくて随分揉めたらしい。

一刀の孫は何があっても国の継承権を持たない事でどうにか落着した、一刀も左慈王も別れろとは一度も口にしなかったと聞いている。

だからこそ交流を更に深めようという事で、人数の釣り合いを取る為に俺が呼ばれたんだが。

「すまない、華陀。孫の事は素直に喜んではいるんだ」

「于吉。娘が自分で選んだんだ、俺からどうこう言う気は無い」

ふむ、では何故だ?

 

「「よりによって何でコイツが親族になるんだっっ!!」」

 

・・成程、仲が悪いという噂は本当だったんだな、于吉宰相が大仰に溜息を吐いている。

結局、一言も交わさず終わりの時間を迎えた。

だが最後に、二人が杯を月に掲げ同時に飲み干す姿。

それは確かに若者達の未来を祝う、不器用な二人の気持ちだったのだろう。

 

------------------------------------------------------------------------

あとがき

小次郎です。

今回は統一後から先の時代を二回に分けての話と為ったので女性陣の出番は殆んど無しです。

何しろ年齢の問題で、特に口調を若い時と一緒にするのは違和感がありすぎるので。

あと、次回より話の雰囲気を変える予定です。

ご支援、ご感想、ありがとうございます。

次回も読んでいただけたら嬉しいです。


0
このエントリーをはてなブックマークに追加
0
1
23
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択