No.945938

ゆりキャン△

初音軍さん

アニメと原作6巻しか見てないにわかですが(1~5巻はいずれ買おうかなと)
思いついた話を書き殴って満足しました。
なでリンは可愛いのう(*´﹃`*)イヌあきもふーふ感あって好きだけど♪

2018-03-21 16:35:10 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:639   閲覧ユーザー数:637

ゆりキャン△

 

【リン】

 

 図書室でまったり寛いでいると慌ただしい足音と共に騒がしいなでしこが

私の前に現れた。

 

「リンちゃん、キスキャンしよう!」

「キスキャンってなんだよ」

 

 と言いつつも言葉からして何となくわかるんだけど、唐突だったのとキスという

無縁の代物に実感がまったく持てなくて変に白けていた。

 

「キャンプしていい雰囲気の時にキスすることだよ!」

「普通にキャンプすればいいじゃん」

 

 ちょっとめんどくさいと思いながら言うと、少ししょんぼりしながら

私に聞いてくるなでしこ。

 

「私のこと好きじゃないのー!?」

「いや…嫌いではないけれど」

 

 おぉ…なでしこに垂れた耳と下がり切った尻尾の幻が見える。

そう見えるほど犬っぽくシュンとするなでしこ。そんな顔されると断りにくい…。

 

「まぁ、キャンプ自体はしたいと思ってたから場所探すか~」

「リンちゃん…!」

 

 さっきまでの曇った表情から一転、目をキラキラさせながら私を見るなでしこ。

この単純な感じ、わんこみたいで悪くはないぞ。

 

 そう思いながらなでしこを見ていたらこいつと会った本栖湖のことがふと脳裏に過った。

 

「本栖湖にするか」

「え、一度行ってるんじゃ」

 

「あの時は慌ただしかったからな。今度はちゃんと用意して二人で行こう」

 

 出会った時のことを思い出しながらそう切り出した。寒い中寝ていたり、

夜中すごい形相で追いかけられたり。あれは…怖かったな。

 

「リンちゃんなんだか嬉しそう?」

「ば、そんなことないよ…」

 

 言われて少し頬が緩んでいるのに気づいて私はいつもの表情に戻した。

それでも嬉しそうにしているなでしこを見てると小恥ずかしいやら少し嬉しいやら…。

 

「リンちゃんってけっこう思ってること顔に出るよね」

「まじか…」

 

 そんなつもりなかったから地味にショックなんですけど…。

 

「それとも私に心を許してるからかも!」

「自惚れるなよ…」

 

 確かにその通りかもしれんが、いざ目の前で言われるともやもやしてしまう。

私の一言で戸惑うなでしこが犬が飼い主の機嫌取りをしてるような仕草をしていて可愛い。

 

「ふふっ…」

「リンちゃん?」

 

「何でもないよ。じゃあ、お互いにしっかり準備してから本栖湖のキャンプ場に行こう」

「うん!」

 

 

***

 

「うぅ…寒い」

 

 口元まで覆ったマフラーの中から白い息が空へと吸い込まれるように昇っていく。

待ち合わせ場所で待っているとほどなくしてなでしこのお姉さんの車が到着して

どっちゃりと荷物を担ぐなでしこの姿が。

 

「すごいな」

「今日はとびっきりの鍋作りたかったから!」

 

 ふむ。この間、大垣達がなでしこのことを鍋しこと呼んでいたことを斉藤から聞いたが

まさにそんな風に見えてきた。思えばなでしこが作るのは基本鍋だしな。

だけど毎回すごく美味しいから楽しみにしていたりする。

 

「前にあきちゃん達が作るって言ってた『ごま豆乳きりたんぽ鍋』だよ!」

「おっ、いいな」

 

「きりたんぽをごま油で焼くと香りがいいんだぁ~」

 

 食事の話になるとすごく嬉しそうに笑うなでしこ。

その顔を見ていると微笑ましくてつい見入ってしまう。

 

 それから二人でテントを立てて焚火をつけて暖を取って時間がくるまで

のんびりしながら話をしたり景色を眺めたり本を読んだりしていた。

少し日も落ちてきて食事を作りながら楽しそうにおしゃべりをしているなでしこを

見つめながらこのまったりとした時間を楽しんだ。

 

 食事の時も出来上がった鍋を見て思わずテンションが上がってしまいそうなほど

いい香りで私よりテンション上がってるなでしこは私よりも多く頬張って

美味しそうに食べていた。実際すごく美味しかった。体も心も温かくなる。

 

 そんな姿を見ているとみんなが鍋しこと呼ぶのもわかる気がした。

 

「さすが鍋しこって言われるだけのことはあるね」

「え? なにそれ」

 

「え、知らなかったの?」

「ええ~、なにそれ。誰が言ってたの~?」

 

 まさか本人だけ知られていないとは思わなかった。鍋の妖精、鍋しこちゃん。

犬山さんが絵を描いて送ってきたのを見て面白かったから気になっているなでしこに

見せるとすごく喜んでいた。ちょっとしたゆるキャラのような感じになっていて良い。

 

 しばらくそうしてまったりして夜になった富士も楽しんだ後、さあ寝るかと思い

なでしこに声をかける。

 

「そろそろ寝ようか」

「ふぁ~…。そだね~」

 

 それぞれのテントに入り、寝袋に包まれて寝る。そう思っていたけどこの後

なでしこが入ってきそうな予感がしたから少し端にずれて目を閉じる。

 

『ねぇねぇ、リンちゃんキャンプ一緒にしよ~』

『リンちゃ~ん』

 

 普段は一人でいるのが好きな私だけど、不思議となでしこといるのは疲れない。

ここ最近、頭に浮かぶのはあいつのことばかりだ。眠れなくて顔だけ寒さを感じる中、

外から気配を感じられた。

 

「りーんちゃん」

「なんだよ」

 

「入っていい?」

「しょうがないなぁ」

 

 私の言葉を聞いて中に入ってくるなでしこ。寝袋に包まれた状態で私の隣に横になる。

…器用だな。えへへと笑いながら私の顔を見るなでしこ。

 

「なんだよ」

「ん、リンちゃんと一緒に寝られて嬉しいなって」

 

「無理やりだろ」

「でも私のスペース空けててくれたでしょ?」

 

「ん…まぁ。来ると思ってたから」

「私リンちゃんのそういうとこ好きだよ」

 

「…今から追い出してやろうか」

「わわっ、やめて寒いよ…!」

 

 私のこの言葉も照れ隠しで言ってるのがわかっているのか言葉の割に余裕の笑みが

浮かんでいる。ちょっと悔しいけど、まぁいいか。

 

「ねぇ、リンちゃん」

 

 言ってなでしこは寝袋から上半身だけ出して私の顔に近づいてくる。

 

「おい、脱ぐなよ。寒いだろ」

「ううん、何かリンちゃんの顔を見てたら火照ってきちゃって…」

 

「私の顔はカイロか」

「お願い…」

 

 暗くてわかりにくいがなでしこの吐息が強く熱く感じられた。

私もなでしこを意識してからずっと胸の辺りがざわついていた。

あぁ、好きなんだろうなって。だから何かされても抵抗はできない。

 

「リンちゃん…」

「なでしこ…」

 

 ちゅっ

 

 なでしこは両手で私の顔を挟むようにしてから私の唇に自分のを重ねてきた。

初めてのキスは暖かくて柔らかくて少し湿っぽい、そんな感想だった。

ただ胸のドキドキはどんどん強くなって顔が火照ってはいた。

 

「ちょっ…と…」

「嫌だった?」

 

「いや…私も…」

 

 身動き取れない状態は嫌だった私も寝袋を少し開けて両手を伸ばしてなでしこを

包み込むように抱きついた。寝袋とは違った柔らかさが手から、体から感じられる。

これは…気持ちいいな。

 

「えへへ」

「どうした?」

 

「こうして狭くて暗い中でリンちゃんとくっついていると気持ちよくて、嬉しくてね」

「変態か?」

 

 と言いつつも私も人のこと言えない状態になっている。

こうしてくっついていると、いつもの距離感では味わえない感覚がある。

例えば…匂いとか…。

 

「リンちゃん…」

 

 チュッ…チュッ…。

 

「なでしこ…」

 

 ジュルッ、チュゥゥゥッ。

 

「はぁ…はぁ…」

「ん…はぁ…ぁ…」

 

 暗さに目が慣れてきた今、なでしこの表情のとろけ具合がよくわかってより興奮する。

なでしこも同じように見えているだろう。お互い言葉が少なくなってきたけれど

その代わりに行為で二人の気持ちを伝えあう。

 

 どれだけしたのかわからないくらいキスをしていた。長い時間?それとも短い?

こんな狭くて暗くて時計もない空間で相手のことしか見えていないと

時間がどうなっているのかすらわからなかった。

 

 そして…。

 

「くぅ…」

「寝るのかよ」

 

 もう夜も遅いし疲れたのだろうか。目を閉じてゆっくりと首を振る姿は完全に寝ている。

 

「おい、その状態で寝ると風邪ひくぞ」

 

 私に絡みついていた手を離させ寝袋の中に詰め込んでから、

すっかり目が覚めてしまった私はコーヒーを淹れるのにお湯でも沸かそうと

外に出たらすっかり夜が明けていた。まだ暗いがもうすぐ太陽が顔を出しそうな感じだ。

 

「リンちゃ~ん?」

 

 寝ぼけ顔の状態で私の姿が見当たらなかったからかテントから顔だけ出す妖怪。

なでしこに私は言った。

 

「見てみなよ」

「わ~」

 

 太陽が顔を出す瞬間を見たなでしこはさっきまで眠そうだった顔が花が開くように

パッと笑顔が広がっていた。

 

 普段ならこんな時間帯に起きていないから貴重な経験だ。

ちゃんと見るために寝袋から抜け出してしっかり厚着をしたなでしこに私は淹れた

コーヒーを渡して二人でその景色を眺めながら暖かいコーヒーを飲んだ。

 

 ほ~っと吐くと白い息が空に吸い込まれていく、爽やかな朝だ。

振り返るとなでしこはコップを持ちながら頭を揺らして眠そうにしていた。

 

「ほら、寝るならちゃんとテントの中で寝なよ。風邪ひくよ」

「あ~い…」

 

 そんななでしこのだらしない表情を見て私はつい笑顔になっていた。

こんな日もたまには…悪くないと思えた。

 

 

***

 

 それから数日、学校の図書室で少しうとうとしているとやかましい声が

耳に飛び込んでくる。

 

「リンちゃん、リンちゃ~ん!また今度一緒にキャンプにいこう!」

「またかよ。そんなにしょっちゅう行けるほど金ないだろ。お互いに」

「あ、そうだった!」

 

「アホの子だったか」

「それだけこの間のが楽しかったんだよ~…」

 

 ちょっとしょんぼりするなでしこを見て私も聞こえるかどうかわからない声で

呟いた。

 

「まぁ、私も楽しかったけど…」

 

 しょっちゅう行けるほど余裕はないけど、好きな子と行くキャンプはたまには

良いものだと思えた。そして今日もなでしこの賑やかなキャンプ話を聞きながら

この時間を過ごすのであった。

 

お終い。

 


 
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