Yurigame!9 momo_naru2
【紅葉】
ぎゅーっ
「あの…もも?」
「…なに?」
「いつまでくっついてるのかな?」
なるは苦笑いを浮かべながら言われるも私を引きはがそうとはしなかった。
社員旅行から帰ってきてから自分でも不思議なくらいになるから離れるのが怖いと
感じていた。
「もしかして実家のこと?」
「わかんない…そうかも…」
「あはは、どっちだよ~」
戸惑ってる私を見てケラケラ笑うなる。一番大変だった本人はすっかり切り替えていた。
「旅行でのももは頼もしかったのにねぇ」
そんなこと言われても…。あの時は必死だったから、なるが辞めちゃうかもしれない
ことを覚悟していたつもりだったけど…。
その緊張と不安が今更になって私を襲ってきたのだ。
それを言葉にできず頭の中でぐるぐるしていると、なるはため息を一つ吐いて。
「まったく…しょうがないなぁ」
ぎゅっ
「なる…?」
なるは無言で抱きつく私に抱き返してきた。暖かくてなるのいい匂いがする…。
「私はここにいるでしょ」
「うん…」
柔らかい声と感触が心地いい…。ほどよく脱力してくる私は少しだけ眠くなった。
仕事の方も少しずつ忙しくなってきたからその疲れもあるのだろう。
「何でそんなに気にしてたの?」
「あの時は覚悟していたつもりだったけど…改めてなるがいない部屋を考えたら
怖くなった…」
「へぇ~。私のことそんなに好きなんだ」
ニヤニヤしながら聞いてくるなるに私はうなづいた。
「うん、なるのご飯食べられなくなるって考えたら怖かった」
「なるほどね~ってご飯のことかい!」
ノリツッコミみたいな感じに軽くペシッと私の頭を叩くなる。
でもちっとも痛くない上にちょっと嬉しく感じていた。
「だってなるがいないと食べられないし…。うん、なるは大事…」
「ご飯だけが目的みたいに聞こえて複雑だなぁ」
「もちろん、なるも大事だよ」
「そ、そう…」
私は真顔でついでのように言うとなるには不意打ちだったのか顔を赤くしながら
目を逸らして誤魔化すように呟く。そのやりとりでようやく私はなるから離れて
他愛のない話で盛り上がった。何気ないこのやりとりも愛しく感じられた。
旅館にいたあの時、なるの話を聞いて本当に私の前からなるがいなくなるんじゃないか
って、胸が詰まる思いだった。
でもこうして今は目の前にいる。なるにも言われて少しは安心できたのかもしれない。
「全くもう…ももったら」
「…ごめん」
「…。安心しなよ。これからもずっとおばあちゃんになるまでももにご飯作って
あげるからさ!」
少し間を空けてから気持ちのいいくらいの笑顔でなるは私に告げた。
その言葉で嬉しいとかそういう言葉で表現できないほど胸の辺りが満たされていた。
「なる…。それって…告白?」
「えぇっ…!? …そう受け取ってもらってもいいよ」
言ってお互いに見つめあって顔を赤くする。顔を見るのが照れ臭くなってきて、
二人で額をつけて両手の指を絡めあう。少し汗ばんだ手から温もりを感じる。
なるの吐息がかかるくらいに近い…。
すっごくドキドキしてる。私はなるを強く意識しているのがわかる。
「ずっと私にご飯作ってね…」
「うん」
「ずっとだからね…」
「わかってるって」
しばらくそうしてから私の方から手を離すと。
ぐぅぅぅ~。
「あはは、もうそんな時間か」
私のお腹の音に笑うなる。私もすっかりご飯を食べたい気持ちでいっぱいになっている。
さっきからご飯の話をしていたからだろうか。
「お腹すいた」
「何食べる?」
「肉なし回鍋肉!」
「や、給料も入ったし。肉いれようよ…!」
「肉ありも美味しいけど、なるの肉なし回鍋肉は私の元気の源」
「嬉しいけど複雑だなぁ」
色々厳しかった時期に二人で乗り切った肉なし回鍋肉を食べればこれから先も
二人で乗り越えられそうだと思えたから。そんな気持ちをなるは気づくだろうか。
「じゃあ、たくさん作るか!あぁ、でも…」
「どうしたの?」
「最近は野菜も高いんだよね」
「大丈夫、お金ならある」
「その費用を肉に回さないんだから、ももって面白いよね」
「肉入りはまた今度作ってもらうから」
私の言葉で笑うなるの表情がとても可愛くて。何でもない会話でもすごく楽しい。
二人の生活を守るためにも私もがんばってキャラデザの仕事もらえるようにしないとって
ハードルを高くして気持ちを強くした。
「ようし、待ってなよもも。とっておきの肉なし回鍋肉作ってあげるから」
「うん、楽しみ」
そしてその日食べた回鍋肉の味はいつもより美味しく感じられて、なるが驚くくらい
いっぱい食べて満足した私は食事の後になるの膝を枕にすると、なるはしょうがないな
っていう複雑そうな笑みを浮かべて私を見るから私も微笑んで返したのだった。
お終い。
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あまえんぼももになってしまった…。こういう二人もたまにはいいかと思います( ˘ω˘ *)