No.935851

こんとん物語 7

スクジョさん

殺人ミステリー

2018-01-02 19:52:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:210   閲覧ユーザー数:209

イザベルは自分の家で比較的くつろいでいた。

なぜか、書き物をしながら、情報屋(特殊な職業柄、取材をする)アニスの取材を待っていた。

 

その内容はこうだ。

”神は知っておられる。現実をば。神は知っておられる。人間をば。なれば、神の奇跡は地上にきっとある。”

 

”そして”・・・

そう書きつづったところをベルが鳴る。来客のようだ。

 

イザベルが受話器を取ると、

 

「おはようございます。クリスティーンです。今日は取材に来ました。上がってもよろしいでしょうか。」

 

情報屋アニスの情報屋のようだ。

 

「今、ドアをお開けしますから、もう少しお待ちください」

 

落ち着いた調子で話すイザベル。

 

予告通り”ドアをお開け”したイザベルに、クリスとこんとんの両名が反応して彼女を見る。

 

「どうぞお上がりください。イザベルと申します。」

 

と、彼女は二人を家へ上げようとする。

 

家へ上がった二人は、意表を突かれたようにしばらくたたずむ。

 

自分達が何をされたのか、理解できないようだった。

 

「どうぞ奥の部屋へ。いかがしましたでしょうか?」

 

「い、いえ。今行きます。」

 

と、かろうじてクリスが反応する。

 

「こんとん様、大丈夫ですか。」

 

「かろうじて。動けます。」

 

ぎこちない言葉遣いでこんとんが答える。

 

 

 

「では、取材をお受けいたします。」

 

と、イザベルが申し出る。

 

「まずは、こんとん様。お願いしますね。」

 

ちょっと卑近な笑みをクリスは浮かべる。

 

「え? えっと、まずは・・・。」

 

「・・・シリル! ・・・そう、シリルさんはご存知ですよね?」

 

クリスに振られて、こんとんはちょっと挙動不審になりかけたが、なんとか質問する。

 

「はい。あなたの知っているシリルと私は友人です。」

 

彼女・・・イザベルはそう反応する。

 

「漢字はお得意ですか?」

 

「はい。”中学漢字”くらいは分かります。」

 

”そう、この人は丁寧すぎるだけなのだ。”

 

と、こんとんは違和感の謎に気付く。

 

「クラスメート・・・そう、シリルさんとはクラスメートでしたか?」

 

「いいえ。」

 

こんとんはよくよく、イザベルを観察する。

 

”若い。二十台、ひょっとすると十台かもしれない。”

 

と、こんとんは思う。

 

「お若いようですが、’いくつ’か聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

”いくつ”と聞かれてイザベルは、

 

「失礼ですが、それは取材に関係することなのでしょうか? ・・・ちなみに19です。」

 

「あぁ、失礼しました。では、彼の妻のコンスタンスさんはご存知でしょうか?」

 

「そのお方は、取材内容に関係するお方ですね。彼に奥様がいることは存じております。」

 

”彼”とはシリルの事だ。

 

「あぁ・・・、えと・・・・。」

 

言葉に詰まるこんとん。

 

「コンスタンスが失踪しました。」

 

それを見てクリスが助け舟を出す。

 

「・・・そうなのですか?」

 

と、イザベルが驚く。

 

「”そうなのです”。」

 

まるで、イザベルの台詞をくりぬいたかのような言葉で追随を許さない。

 

”この女が厄介なのは、文と文の間を読ませる能力だ。・・・そして、話し相手の頭をオーバーヒートさせる。”

 

と、クリスは話し方の特徴について考察する。

 

”この女と積極的に関わっていたとすれば、シリルは相当に頭が良かったに違いない。”

 

と、またもクリスは推理脳を働かせる。取材対象イザベルに対して。

 

「さて、次のご質問は無いでしょうか?」

 

と、調子を変えるイザベル。

 

「では、えーっと。なんでしたっけ、クリス?」

 

馬鹿みたいな質問を(取材対象を差し置いて)するこんとん。

 

「目的は取材です。そして、カーチス夫妻の娘カミラに関する事ですよ。こんとん?」

 

こんとんに対して、そう返すクリス。

 

「そのお方は、”こんとん”とおっしゃられるお方ですか?」

 

「はい、こんとんと言います。」

 

こんとんは彼女のしゃべり方を真似してみるが、丁寧にも知的にも聞こえない。

 

「そのお方、”カミラ”でしたか。そのお方も存じております。」

 

ここで、こんとんは確信した。この人が絶対に犯人だと。


 
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