No.932974

艦隊 真・恋姫無双 131話目

いたさん

長々とお待たせしてしまい、ごめんなさい。

2017-12-11 19:07:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1053   閲覧ユーザー数:1006

【 憤怒 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

この後、貧乏くじを引き当てた赤城が加賀達に説教される……という事はなく、その様子を黙って見ていた一刀が、微笑みながら語りかけてきた。

 

ーー

 

一刀「………そうか。 いつの間にか……仲良くなっていたんだな。 赤城と桂花は……」

 

桂花「はあっ!? 誰と誰が仲良しなのよっ!!」

 

赤城「誤解しないで下さい!! 私と桂花さんは、そんな関係じゃ────」

 

一刀「喧嘩する程……仲が良いって言う事じゃないか。 ははは………」

 

桂花「わ、笑い事なんかじゃないっ!!」

 

ーー

 

桂花と赤城が椅子に座る一刀の前にまで来て、一所懸命に否定するのだが、一刀は笑って取り合わない。 

 

それどころか急に立ち上り、ニコニコと笑いながら両手を二人の頭に優しく乗せて、ユックリと撫で始めた。

 

ーー

 

桂花「あ、あのねぇ? こんな……子供騙しみたいなものでぇ……こ、この私が……納得するとでも……思っている……のぉ?」

 

赤城「桂花さん、は、恥ずかしそうに上目遣いで見られても……説得力なんか殆ど無きにも非ず……じゃないですか……」

 

桂花「あ、アンタだって………そうじゃ───あっ!!」

 

赤城「て、提督っ!!」

 

ーー

 

また些細な事で言い争いになる二人だが、そんな時に一刀の体勢が崩れた。 端から見れば、一刀の足が弱まり二人に倒れ掛かったように見えた。

 

当然、一刀を心配した桂花達は、その倒れ込む身体を支える為に手を伸ばした。 だが、そんな二人に更なるハプニングが起こる。

 

それは………倒れ込んだ一刀が、二人を包み込むように抱きしめたからだ。

 

ーー

 

一刀「…………………」

 

桂花「にゃ、にゃにぃを!?」

 

赤城「はわぁっ!?!?」

 

ーー

 

この突然の出来事により、顔を赤らめて慌てる二人。 

 

端から見れば、一刀が体調を崩し倒れたところを、二人が受け止めたと思われるような一連の流れ。 

 

しかし、本当の目的は別にあった。

 

ーー

 

一刀「(…………………赤城、桂花………静かに聞いて欲しい……)」

 

「「 ─────!! 」」

 

ーー

 

桂花達の間に一刀の顔が割りこみと、二人へ耳打ちを始めた。 

 

その声は静かで、二人にしか聞こえない程の声量だったが、桂花と赤城にはハッキリと聞こえる。

 

ーー

 

一刀「(───それで、だ。 もし……謝罪を受け入れられなかった時……俺の後ろで心配している加賀達、各地に散らばっている艦娘達を………どうか護ってくれ)」

 

桂花「はぁ!? 何を言ってるのよ! 華琳様や皆が、そんな事───えっ!?」

 

赤城「───っ!!」

 

ーー

 

一刀の思わぬ行動、そして発言に反論しようとした桂花だが、その直後、強烈な寒風が背後より襲い掛かる。 今し方、口を開いて出した名前の人物からの覇気。

 

桂花は思わず身体を動かし、その原因を解明するために振り返り、赤城も何か感じる事があったか、尋常ではない早さで、後ろへ身を翻す。

 

このとき、振り返り原因を探り当てた二人は、思わず絶句することになろうとは、流石に予想できなかった。

 

ーー 

 

冥琳「皆、下がれぇ! 下がれぇ!!」

 

春蘭「か、華琳様ぁぁぁ!!」

 

秋蘭「姉者、危ない!!」

 

詠「何をしてるのよっ! 巻き添いを食らいたいの!? は、早く! 早く下がりなさいっ!!」

 

ーー

 

とある者の半径10㍍程を空白地帯にすべく、大声で避難を呼び掛ける冥琳と詠。 

 

事態の異常を知り、慌てて退避する恋姫達。

 

ーー

 

菊月「……………な、なんだ? 司令官と同じく人の身で……あんな事が……起こるのか?」

 

如月「あの子って……何なの? まるで……深海棲──」

 

天津風「何をボケっとしてるのよ! 現状を把握して動くのが部屋に残留したあんた達の役目でしょ!?」

 

如月「はぅっ!」

 

菊月「す、すまない! 直ぐに警戒態勢をとる!」  

 

 

 

準鷹「んっ………お仕事ぉ~? うぅ~~ん、よぉーし、任せとけ! 商船改装空母、隼鷹、今から出撃する! 

 

 

あっ……と、その前に景気付けで……あと一杯~」

 

飛鷹「ほらっ、さっさと行きなさいよっ!!」

 

準鷹「うわぁ~、ば、馬鹿っ! だから、笑顔で艦載機を発艦準備させんなよぉ! 洒落にならないんだってばぁ!!」

 

ーー

 

異常なる気配に唖然とするも、直ちに(?)艤装を出現させ警戒態勢をとる艦娘達。

 

皆が皆、驚き警戒するのも無理はない。

 

周りの耳目を集めし者は、腕組みしつつ一刀達を睥睨し威風堂々と佇む、警戒対象となった少女──華琳。 

 

ーー

 

 

華琳「……………」

 

 

 

桂花「あ、あ…………か、華琳様!?」

 

赤城「───な、なっ!!」

 

ーー

 

華琳の周辺では猛る風が吹きすさび、華奢な身体を中心として部屋の空気が集束。 その強大な気を誇示するように、周囲の風景が陽炎のように揺らめいた。

 

まるで、どこぞの天の覇者のような高密度な覇気(オーラ)を身に纏う。 もし、取り押さえようなどと近付けば、無数の拳撃で阻まれることに……なるのかもしれない。

 

その威圧感溢れる態度に、華琳をよく知る筈の桂花さえも身体の震えが止まらない。 何時もと違う怒りの覇王を間近にして、王佐の才といえども何も手が打てない。

 

しかも、その過剰な覇気は、冥琳達と桂花の間に流れ出て、冥琳達の警告が間に合わず、恐れで立ち竦む桂花へと迫る。

 

もし、これが歴戦の武人であり、千軍万馬の強者であれば、多少は覇気に持ち堪えよう。 

 

だが、誰が見ても武人とは程遠い文官の桂花。 華琳の覇気に対抗など出来ず、昏倒するのは時間の問題だった。

 

しかし───

 

ーー

 

赤城「桂花さん! 早く、私の後ろに!!」 

 

桂花「───うぷぅ!! あ、赤城っ!?」

 

赤城「な、何これ…………し、信じられない! 人の身で、深海棲艦並みの……えっ!? う、うそ……鬼級!? ううん、違う! この重圧は……姫級!! ど、どうしてぇっ!?」

 

ーー

 

赤城が思わず前に出て桂花を庇うが、その赤城の顔にも驚きの表情が浮かび、冷や汗が数条に別れて頬を伝う。 

 

当然、一刀達の後ろにいた加賀達も騒ぎ出し始めた。

 

ーー

 

加賀「提督、直ぐに艦隊編成を!!」

 

一刀「……………」

 

陸奥「悩んでいる暇などないわ! 被害を未然に防ぐのも私達艦娘としての役目! 早く、命令を御願い!!」

 

一刀「……………」

 

ーー

 

加賀と陸奥が一刀に艦隊編成を進言する中、華琳は改めて鋭い殺気と高圧力の覇気を一刀達へと放つ。 

 

あまりにも強烈な覇気を叩き込まれ、思わず苦痛で歪む一刀。 そんな一刀を見て、加賀達は目を吊り上げ、鎧袖一触で叩きのめさんとばかりに、華琳へ怒気を放つ。

 

そんな中、一刀は静かに命令を下す。

 

それは、命令は命令でも………誰にも口を挟む事が許されない、至上命令という発令だった。

 

 

 

◆◇◆

 

【 孤立 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

 

冥琳「………ただの軍師である私が、荒れ狂うお前の傍に立てれるとは、なんとも不思議なものだな……」

 

華琳「……………」

 

ーー

 

冥琳は、被害が及ばないように素早く皆を退避させた後、自分だけは華琳の後ろに留まり、様子を窺っていた。

 

強烈な威圧、吹きすさぶ強風。 

 

前の世界で敵対していた時に、幾度も華琳の覇気を肌身へ感じていた冥琳だが、今の華琳に遠く及ばない。 あの頃に受けた覇気など、微風のような物だと感じていた。

 

現に、華琳の直臣で耐性がある筈の春蘭達さえも、華琳の覇気に苦悶を浮かべ何も対処ができないまま、断腸の思いで引き下がる術しかなかったのだ。 

 

勿論、他の将達も言うまでもない。

 

撤退を呼び掛けていた詠も、苦しげな表情をしながら最後まで居ると言っていたのだが、月の頼みで来た恋が無理矢理連れて行ってくれたので、周辺には二人しか居なかった。

 

ーー

 

冥琳「………雪蓮や祭殿さえ退いたのだがな。 ふふふ、実に興味深い事象だ」

 

華琳「………………そんな事、知らないわよ」

 

冥琳「ふっ、ただの独り言ゆえ返事は期待していなかったのだがな。 まあ、丁度いい。 一つ、聞かせてくれないか?」

 

華琳「…………」

 

冥琳「どうして………このような真似を?」

 

ーー

 

冥琳は、怒髪天を衝く華琳へと静かに語りかけた。 

 

未だに渦巻く覇気は華琳の身体に纏わり付き、少女以外の他人を寄せ付けない。 周辺にある円台や料理さえも、弾き飛ばされている始末。

 

だが、華琳の後ろに立つ冥琳には何も影響はなく、何時もと変わらない。 そんな自分に苦笑しながらも、冥琳は華琳に質問を投げていた。

 

ーー

 

華琳「………既に、理解しているんでしょ? 私へ語った一刀の謀の一部、あの話が私の中で全部の辻褄を合わさったの」

 

冥琳「………………」

 

華琳「一刀は………私達と………関わりたくない……って」

 

冥琳「………………」

 

華琳「一刀は、一刀は……………私達、ここに居る者達と関係を絶ちたがってる! 今、傍に居る……艦娘と呼んでいる子達と一緒になりたい、そう望んでいるのよっ!!」

 

ーー

 

後ろに振り向き、涙ながらに絶叫した華琳の言葉は、一刀達にも、他の者達にも聞こえなかった。 何故ならば、華琳の周囲で覇気が渦巻き、声を通さなかったからだ。

 

唯一、辛うじて聞こえていたのは……問い掛けた冥琳のみ。

 

しかし、その言葉を聞いて何度か頷いた冥琳の口にした言葉は、慰めでも叱咤でもなく───

 

ーー

 

冥琳「………ふむ、嫉妬……か? いや、寧ろ……弄り過ぎて癇癪を起こした子供……かもしれんな」

 

華琳「────!?」

 

ーー

 

なんと、戯れ言に似た感想だった。

 

その言葉を聞いて、華琳の泣き顔は唖然とした表情に変化し、少し経てから意味を理解した時は頬を膨らまし、憮然とした態度で『不愉快だ』と身体全体で示す。

 

だが、冥琳の話は続く。

 

ーー

 

冥琳「雪蓮もそうだが、上に立つ者には孤独が付きもの。 人が忙しい時に決まって、構って欲しいと駄々をこねるものだ。 全く、実に困ったことだよ」

 

華琳「あ、あのねぇ! 私の話を聞いてるの!?」

 

冥琳「聞いてるとも。 大事な男と………『親友』が離れたので、拗ねているのだろう? だから、北郷にかまって貰いたいと要求したい訳で───」

 

華琳「違うでしょ! 冥琳、貴女だって寂しくないの!? 一刀を取られたのよ!? あのままだと、私達は見向きもされないままで、終わる事になるのが何故わからないの!!」

 

ーー

 

華琳の覇気が、龍が天に昇天しようと蠢くように、更に強く更に激しく勢いを増した。 まるで、自分の意に反する言葉など聞きたくないとでもとれる行動である。

 

だが、それにも関わらず、空白地域内に深く入っている筈の冥琳の身体には、影響など全くない。

 

寧ろ、我が意を得たりと言わんばかりに澄ました顔で、前方を指差す。

 

ーー

 

冥琳「ならば、あの北郷の行動は……何だというのだ?」

 

華琳「───えっ?」

 

ーー

 

冥琳に指摘され、華琳は前方に目を見張る。 

 

その先には……弱った身体を鞭打ちながら毅然とした態度で艦娘達を説き伏せ、華琳に一人歩み寄る北郷一刀の姿が見えるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

【 懇願 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

 

今まで泰然自若としていた華琳に、一刀が踏み締めるように一歩、また一歩と近付く。 そして、華琳の周りで旋回する風の中に入ると、腰を落として膝を付いた。

 

別に臣下の礼をとった訳ではなく、弱まった一刀の身体では倒れてしまう為に行った防衛処置である。

 

そして、一刀は不自然にならないよう口角を上げ、顔を強張らせる華琳へ語り始める。

 

ーー

 

一刀「待たせた……ね」

 

華琳「ど、どうして………」

 

一刀「……………謝りに来たんだよ。 俺達は、いや、俺は……君達を利用した。 君達の想いを知りながらも───」

 

華琳「────ふん、白々しい真似は……止めてくれない?」

 

ーー

 

一刀が謝罪の言葉を語ると、先程まで動揺していた筈の華琳から表情が消え失せた。 

 

感情が抜け落ちたと思うほど、華琳の顔には表情がなかったのだ。 無表情な顔は、西洋人形の造形を思わせるほど、美しかったが、その両目の奥には怒りの炎が宿る。

 

ーー

 

華琳「冥琳達は貴方を持ち上げているけど、私は貴方の行動に幻滅したわ。 自分勝手に行動して私達を振り回し、挙げ句の果てには失敗し、それで許しを乞うなんて………」

 

一刀「…………」

 

華琳「あまりにも虫がいい話じゃないのかしら。 天の御遣い『北郷一刀』サマ?」

 

ーー

 

新たに発生する覇気に気流が変化を生じ、華琳達の周囲の圧が強まる。 ただ一人、傍に居る冥琳は心配そうな視線を示すだけで、手助けなどせず黙って見つめるだけ。

 

華琳達より距離を置いた者達は、華琳の態度と語る話に付いてこれず、黙って静観している。

 

ーー

 

華琳「昨夜、あの戦いで貴方達は……手を抜いていた。 本来なれば、あのくらいの敵など鎧袖一触で殲滅できた筈よ。 洛陽城での戦いを顧みれば、直ぐに理解できるわ」

 

一刀「あれは……」

 

華琳「自分達の力を抑えていたのは、私達に恩を売らせる為? それとも、王允達の目を欺く為?」

 

一刀「……………」

 

華琳「どちらにしても、私達は天の御遣いを援助した者として、名声を高く得られる事になるわ。 貴方の思惑は何処にあるかは知らないけど、私達の益になる事は確かよ」

 

ーー

 

一刀が途中で口を噤む(つぐむ)の見て、予想が正解だった事を喜び一笑する。 

 

しかし、この問いは前座でしかなく、次の瞬間には喜悦の表情は直ぐに消え、華琳からの言葉は更に舌鋒鋭くなり、一刀への詰問を厳しくする。

 

ーー

 

華琳「だけど、今回の宴席。 これは、祝勝の宴ではなく……別離の宴。 私達との関係を断ち切る……為の!!」

 

一刀「……………」

 

華琳「だって、そうでしょう? 私の信頼する春蘭や秋蘭達、そして私さえ……全く敵わない子達が一刀の傍に居るのに、私達と居る事は一刀にとって意味が無いもの」

 

一刀「……………」

 

華琳「───だったら、私達は必要ない! 人材としても、女としても……私達は!!」

 

ーー

 

ここまで言い切ると、華琳の顔が急に歪む。 険しかった顔から険が取れかかり、瞳は濡れていく。

 

まるで、幼子が親に置いて行かれたような表情が、一刀を見る度に現れては消える。 

 

ーー

 

華琳「だ、だか……らぁ! ぁ、だ、だぁ、だからぁ!!」

 

一刀「……………」

 

華琳「んぐぅ………ぅぅぅぅぅ!!」

 

ーー

 

言葉の続きを紡ごうと口を開くが、喉の奥より押される衝動が苦しいのか、幾度もなく唇を噛むしめ堪える。

 

横に居る冥琳は、哀しみの色を瞳に湛え、静かに佇む。 

 

後ろで華琳の様子を窺う仲間の中から、春蘭達が華琳の様子を泣きながら注視し、別の所では嗚咽の声が漏れ聞こえた。

 

ーー

 

華琳「………ん……ね……ぇ、そう意味……なんでしょう? 私達の……私のこ、と……いらないっ……て!!」

 

一刀「……………」

 

華琳「こ、答え、なさい………一刀」

 

一刀「………………」 

 

華琳「答え、なさい!!」

 

一刀「………………」

 

華琳「早く、私の問いに、答えなさいよ! お願いだから、答えてぇ!! ねぇ、早く───っ!!」

 

ーー

 

華琳の再三の命令が室内に響く。 だが、北郷一刀は答えない。 

 

ただ、静かに華琳を見つめるだけであった。

 

 

 

【 裏幕 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

一刀『待たせた……ね』

 

華琳『ど、どうして………』

 

ーー

 

一刀に止められた艦娘達は、ハラハラしながらも二人の様子を見ていた。 暴風雨のように荒々しい華琳の周りに、衰弱した一刀が行くなど死地に赴くものだった。

 

ーー

 

瑞穂「提督、どうか御無事で。 どうか、どうか…………」

「「「…………… 」」」

 

ーー

 

『瑞穂型 1番艦 水上機母艦 瑞穂』は、自分の所属する鎮守府の提督『北郷一刀』の様子を心配していた。 

 

一刀の居る方向に向かい、胸に手を組み両膝を地に付けて、ひたすらひたすらに熱心に祈りを捧げている。 

 

それはもう、端から見て気の毒な程に。

 

ーー

 

加賀「少しは落ち着きなさい。 私達の命令は待機とは言え、周辺の警戒を蔑ろにしては、逆に提督を不測の事態へ陥らせるわ」

 

瑞穂「は、はい………すいません」

 

陸奥「心配するのは判るけどねぇ、少しは余裕を持たないと気疲れして、いざって言うときに用立てないわよ?」

 

瑞穂「あ、ありがとございます。 ですが……いつもの提督でしたら、瑞穂が心配するなど余りにも不遜だと……重々承知しているのですが……今の提督は………その……」

 

加賀「……………」

 

陸奥「……………」

 

瑞穂「……あまりにも……痛々しく……思えて」

 

ーー

 

加賀と陸奥より注意されるが、瑞穂の心配は収まらない。

 

寧ろ、あの時の提督を顧みると、言い知れない不安しか出て来ない瑞穂は、改めて溜め息を吐き沈痛な面持ちで、一刀達の様子を見守った。

 

ーーー

ーーー

 

『全員、この場にて待機。 俺に……何があったとしても……専守防衛に努めてくれ。 これは……至上命令だ!』

 

『『 ───!? 』』

 

ーー

 

それを聞いた陸奥は唖然とし、加賀は何時もの泰然自若の態度を崩す程に驚き、至上命令という事を忘れ、一刀の決意に翻意を促すため言葉を尽くした。

 

ーー

 

『それは無理です! 提督を失えば、艦隊は統制を取れず各個撃破されるのは、古今東西の自明の理! せめて、誰か一隻、護衛艦を決めてお連れ下さい!』

 

『提督が良くても、残された私達はどうするの? もし、提督に万が一があれば……長門に何て言えばいいのよ!?』

 

『俺は……一人で向かう。 後事は……赤城に託してある。 何かあれば……赤城の指揮下に入れ』

 

『もし、俺に万が一があれば……《先に行く 後に残るも同じこと 連れて行けぬを別れぞと思う》……長門や皆に……そう伝えてくれ。 長門なら……理解してくれる……』

 

ーーー

ーーー

 

結局……加賀や陸奥の言葉は、一刀の決意を翻意させれなかった。 二人は悔しそうにしながらも、命令に従い警戒を行い、他の艦娘達にも知らしていた。

 

その後、様子を見ていた瑞穂の頭を優しく撫でると、『行ってくるよ』と一言だけ言い添え、向かって行ったのだ。

 

一刀が何を思って瑞穂の頭を撫でて行ったのか、その理由は判らない。 

 

だけど、瑞穂は一刀の無事を……ただ一心に祈り続けた。 

 

 

また、自分達の下へ戻って来て欲しい。

 

そして、あの優しい笑顔で『ただいま』と、再び頭を撫でて貰いたい。

 

そう、願ったのだ。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

あとがき

 

度重なり遅れての投稿、誠に申し訳ありません。

 

① 公私に渡り時間が取れなかった。

 

② スマホを変えたらデータが消えた。

 

③ 予想以上に、話の続きが難産だった。

 

───と、色々あったため、すっかり遅れてしまいました。

 

早ければ、今年の12月終わりにでも今年最後の作品を投稿したいと思いますが、どうなるか予定は未定です。

 

こんな作品でも気長に待って頂けるのなら、亀更新で頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

 

下の話は、最後の【 裏幕 の件 】の続きですが、些かキャラ崩壊しております。 

 

それでもよろしければ、どうぞ、お読み下さい。

 

ーー

 

 

 

【 暗転 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

華琳『冥琳達は貴方を持ち上げているけど、私は貴方の行動に幻滅したわ。 自分勝手に行動して私達を振り回し、挙げ句の果てには失敗し、それで許しを乞うなんて………』

 

一刀『…………』

 

華琳『あまりにも虫がいい話じゃないのかしら。 天の御遣い《北郷一刀》サマ?』

 

ーー

 

瑞穂の祈りを継続している最中、この言葉が聞こえた。

 

挑発と言えば判りやすい言葉であり、この世界に来る前は小規模とはいえ、鎮守府を預かった一刀である。

 

このような見え透いた行為に乗るわけがなかった。

 

しかし──────この華琳の発した言葉に、艦娘達の顔色が変わる。

 

ーー

 

加賀「……頭にきました。 今度は、流石に黙殺できません」

 

瑞穂「えっ?」

 

如月「ふぅーん。 幾ら如月の司令官が寛容でもぉ、こうもオイタが過ぎる子って、キチンと躾が必要よねぇ~?」

 

瑞穂「え、えぇっ、き、如月さん……?」

 

準鷹「ひゃっははははっ! 提督を馬鹿にされて黙って見てる奴なんてぇー艦娘が廃る(すたる)よっ! ここは皆でパーッと行ってやろうじゃないか~! パーッとな!!」

 

瑞穂「あ、あっ…………準鷹さんまで? ど、どうしましょう? どうしましょう!?」

ーー

 

血走る目で華琳を怨敵と定めつつ、冷静に艤装を展開する──乙女が二隻

 

『面白そうな出来事だ、もっと煽ってやれぇ!』と表情を赤ら顔に浮かべて盛り上げる───酔っぱらいが一隻。

 

そして───

 

ーー

 

瑞穂「や、やはり、ここは合戦用意!………なんですね、皆さん。 ですが、瑞穂では足を引っ張ることに……」

 

準鷹「大丈夫ぅ! いける、いけるって!!」

 

飛鷹「なに煽ってるのよ! 早く止めなさいっ!!」

 

陸奥「提督の命令なのよ! 瑞穂も聞いちゃ駄目──」

 

瑞穂「わかりました! 皆さんに及ばすながら、この水上機母艦、瑞穂───提督のため、精一杯頑張りますっ!!」

 

「「───瑞穂!?」」

 

ーー

 

押しに弱く、流されやすい純情な子が一隻、これに加わる。

 

ーー

 

準鷹「よぉおしぃ! そうと決まれば───ひゃっはー! 者共かかれー! かかれぇー!!」

 

陸奥「止めてって言ってるでしょ! ねぇ、聞いてる!?」

 

飛鷹「誰か援軍を呼ばなきゃ──あっ、菊月! こっちよ、こっち!!」

 

菊月「な、何だこれはっ!? ────はっ? おいっ! 馬鹿な事を止めろっ!!」

 

ーー

 

この騒動に菊月が加わり止めに入るが、戦力的にも人数的にも止める側が不利。 

 

ちなみに天津風は……我関せずとして警戒に従事している。

 

このままであれば、一刀と華琳の話し合いが潰されるのは時間の問題。 いや、下手をすれば──『この物語』が強制終了される可能性もあった。

 

ーー

 

港湾棲姫「鳳翔…………コッチ! コッチ!!」

 

鳳翔「港湾棲姫さん、教えてくれてありがとございます」

 

「「「 ────!! 」」」

 

鳳翔「………………皆さん、幾ら何でも……少し大袈裟では……ないでしょうか?」ニッコリ

 

「「「 ─────!!? 」」」ガクブル ガクブル

 

ーー

 

この後、関係者達は……鳳翔に尽く襟首を掴まれ、何処かに連れて行かれたという。

 

 


 
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