No.932149

恋姫夢想 白き才姫に仕えし道化

アリアさん

皆さんのおかげで祝10話目です!

支援、コメント、読んで下さった皆さんに感謝です!

2017-12-04 10:20:02 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2022   閲覧ユーザー数:1818

北郷一刀視点

 

「という訳で私と一刀は軍に入る事になった。」

 

「・・・はぁ〜全く星のメンマ好きには困ったものですね。」

 

「星ちゃんはいつかメンマで身を滅ぼしそうですよ〜。」

 

「もうすでに滅ぼしかけてますよ。」

 

俺たちは今、稟と風に軍に入ることを説明していたのだが軍に入る理由に2人とも呆れていた。・・・まぁこんな理由じゃ呆れられてもしょうがないか。

 

「それで、星達はどこの軍に所属しようと考えているのですか?」

 

「ああそれなのだが、近くで徴兵をしている公孫瓚軍に入ろうと思っている。」

 

「公孫瓚軍ですか・・・となると私達とは逆方向に進むことになりますね。」

 

「一緒に来ないんですか?」

 

「はい。公孫瓚殿を1度拝見させて頂いたのですが、私達が求める主ではありませんでしたので。」

 

「そう言えば稟達は自分達が仕える主を探して旅をしてるんでしたね。」

 

「はい、今まで見てきた中ですと、やはりこの街の曹操殿が我々の理想に近かったですね。」

 

「曹操さんですか。・・・い、いいんじゃないでしょうか。」

 

「ん〜?どうかしましたかお兄さん?」

 

「いえ!なんでもないですよ!はは〜。それより今から俺たちが行く公孫瓚って言う人はどんな人なんですか?」

 

俺は話題を変える為にそう聞いた。

 

「おお〜お兄さんが分かりやすく話題を変えてきましたね〜。まぁ風は優しいのでそれに付き合ってあげます。」

 

「は、はは。ありがとうございます。」

 

バレバレでした。

 

「そうですね〜風から見た印象は・・・普通の方でしたね〜。」

 

「普通、ですか?」

 

「はい。私の目から見ても失礼ながら、公孫瓚殿は普通の方という印象でした。」

 

「普通ですか。」

 

珍しいな。この時代の人たちって何かしら個性のようなものがある印象だからな。

 

「まぁ、一時的に雨宿りをするようなものですからあまり気にする必要もないでしょう。」

 

俺がそんな事を考えていると星がそう言ってきた。

 

「確かに俺たちがいくら悩んでいても仕方ないか。」

 

「その通りですよ一刀。なるようにしかなりませんからな。・・・それよりも早く昨日買ってきました至高のメンマを食べましょう!私は今その事が楽しみで仕方ない無いのです!」

 

「星〜ちょっと落ち着こうな。」

 

「一刀!何を言っているのですか!いいですかメンマというものは・・」

 

星のテンションがおかしい事になってしまった。メンマ講座は意外と面白いので良いのだが、なにぶん長いのでこの場面で行われるとやばい。

 

「せ、星、メンマについてもいいがこれからの事を話そう。」

 

「・・・ふむ、確かにそうですな。メンマの話はまた今度一刀とするとしましょう。」

 

「分かった了解。それで稟達はどこに向かうんですか?」

 

「そうですね、我々は今まで北の方向に進んできたので、次は南に進もうかと思っています。」

 

「南、という事はここでお別れという事ですね・・・。」

 

俺たちは今から北の方向にある公孫瓚軍に向かうため、反対方向に進むことになる。だからここで別れなければならない。一緒にいた時間は短かったが、いざ別れるとなるとやはり淋しい。

 

「・・・お兄さん、少し屈んでください。」

 

俺がそんな事を考えていると風がそう言ってきた。

 

「え、えっとこれでいいですか?」

 

俺が言われた通り屈むと

 

なでなで

 

「な!ふ、風一体何を!?」

 

風がいきなり頭を撫でてきた。

 

「いえいえ〜何やらお兄さんが淋しそうな顔をしていましたから、こうするべきかと思いまして〜。」

 

「べ、別にそんな顔なんか・・・」

 

「ふふ、では私も。」

 

そういい稟も頭を撫でてきた。

 

「り、稟まで!」

 

「それでは私も。」

 

「星は確実に悪意がやってるよな!」

 

「いえいえ、なんのことか分かりませぬな。」

 

ニヤニヤ笑いながら星も頭を撫でてきた。流石に3人の手が乗るほど頭はでかくないので、顔の方にも手が来ているが頭を撫でられている事実に代わりはない。

 

「くっ、恥ずかしいからやめて下さい!」

 

「いえいえお構いなく。」

 

「俺が構うんです!」

 

俺の抵抗により何とかやめてもらった。

 

「ふふ残念です。もう少し一刀の頭を撫でていたかったんですが。」

 

「恥ずかしいんでやめて下さい。」

 

全く俺をいじるのが好きな人達だな。

 

「・・・お兄さん大丈夫ですよ。」

 

「え!?」

 

俺がそうも思っていると風がいきなりそんな事を言い始めた。

 

「風達は別に2度と会えなくなるわけではないのです。」

 

「風・・・」

 

「風の言う通りです一刀殿。だからここでお別れではありません。」

 

「・・・一旦別の方向に進むだけですね。」

 

「はいその通りです。」

 

これでお別れじゃない。またいつの日かきっと会えるか・・・なら

 

「風、稟、そして星。皆で指切りげんまんをしたいんだけどあれいいかな?」

 

「指切りげんまんですか。何やら物騒な名前ですがどのようなもので?」

 

「俺の国で約束をする時にする行為なんだ。指切りげんまん〜嘘ついたら針千本飲〜ます、指切った!って感じでね。」

 

「おお〜!針千本飲ますとはお兄さんは鬼畜ですね〜。」

 

「いや実際には飲ませませんよ。それぐらいの覚悟で約束をするという事です。」

 

「なるほど、確かにそれほどの覚悟なら守らぬわけにはいきませんな。」

 

「では、早速皆でやりましょうか。一刀殿どうすれば良いのですか?」

 

「えっと、変則的になるんですけど・・・」

 

4人が丸くなるように固まり、その真ん中で4本の小指を繋いだ。正確に言うと俺と星が繋いでいる上から風と稟の小指が巻きついているような感じだ。

 

「じゃあ俺に続いて言ってください。いきますよ?せーの。」

 

指切りげんまん、嘘ついたら針千本の〜ます!指切った!

 

初めてとは思えないほど綺麗に指切りができた。

 

「ふふ、これで約束を破ったものは針千本を飲むのですな。」

 

「お兄さん、次会うときまでに用意しておきますね〜。」

 

「何故ですか!?」

 

「ふふ、・・・それでは名残惜しいですがそろそろ。」

 

「・・・そうですね。それでは稟、風、また必ず会いましょう!」

 

「ああ、次会う時を楽しみにしているぞ。」

 

「ええ一刀殿、そして星、私も会える日を楽しみにしています。」

 

「風も楽しみにしているのですよ〜。」

 

そう言い俺たちはお互いの進む方向に歩き出した。さっきまであった淋しい気持ちはもう無くなっていた。だってきっとまた会えるのだから。

 

北郷一刀視点

 

「一刀、そろそろ野宿をするところ見つけた方が良いのではないですか?」

 

「本気で野宿する気だったのか!流石にまずいから一旦街まで行こう。」

 

「おや?一刀は野宿が苦手なのですかな?」

 

「そういう事じゃなくて、女の子を野宿させるのが嫌なの!」

 

「・・・ふふ、全く貴方は。」

 

「?」

 

星はそう言うと黙ってしまった。

 

「お!街が見えてきたぞ!」

 

そんな事を話していると今日泊まる街が見えてきた。やはり曹操の街と比べると小さいが立派な街だ。

 

「まず街に行って金を稼ごう。もし無理だったら・・・」

 

ガタガタ震える手で小太刀を見せた。

 

「いえ、流石にそれは。」

 

「いいんだ!星に野宿をさせるよりは何倍もましだから!」

 

「はぁ〜。言いたい事はたくさんあるのですが、こ聞きそうにないのでやめておきましょう。」

 

「あはは。・・・ごめん。」

 

星の言う事を考えると自分でもそう思う。そんな事を話していると街にたどり着いた。

 

「よし着いた!さてと何か稼ぐ方法は・・・ん?」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、何か盛り上がってるからさ。」

 

門を抜けてすぐ人だかりが出来ていた。

 

「ふむ、行ってみますか。」

 

星がそう言ったので2人でその人だかりの方へ歩いた。人だかりに着くと

 

「みんな〜盛り上がってる〜!?」

 

「「「ほぁ〜〜〜!!!」」」

 

「まだまだこれからよ!」

 

「「「ほぁ〜〜〜!!!」」」

 

「みなさん、私達についてきてください!」

 

「「「ほぁ〜〜〜!!!」」」

 

3人の女の子を中心に人だかり、主に男性が集まっていた。

 

「ふむ、どうやら旅芸人のようですな。」

 

「それにしても盛り上がってるね〜。」

 

俺と星が話している間にも女の子達の舞台は続いていた。

 

「それじゃあいつものいくよ!み〜んな大好き!」

 

「「「天和ちゃ〜ん!!!」」」

 

「みんなの妹!」

 

「「「地和ちゃ〜ん!!!」」」

 

「とっても可愛い!」

 

「「「人和ちゃ〜ん!!!」」」

 

何やら合いの手のような事をし始めた。

 

「何か日本のアイドルみたいだな。」

 

「あいどる?ですか?」

 

「ああ、アイドルって言うのは簡単に言うとこんな感じで歌って踊って、お客さん達を楽しませる人達の事を言うんだ。」

 

「ほぉ〜そんな者もいるのですな。」

 

それにしてもこの時代でアイドル活動が行われてるとは、ますますこの時代のことが分からなくなったぞ。

 

「それにしてもこの歓声・・・やってみるか。」

 

「ん?何か思いつきましたかな?」

 

「星、ちょっとこっちきて

 

 

人和視点

 

「ありがとうみんな〜!」

 

「「「ほぁ〜〜〜!!!」」」

 

天和姉さんがそう言うと観客は更に盛り上がった。やっぱりあの本の内容は正しいようだ。

 

「いい感じね天和姉さん、地和姉さん。」

 

「そうだね!お客さん達も盛り上がってくれてるし。」

 

「あの本の事は本当みたいね!」

 

天和姉さんも地和姉さんも嬉しそうだ。今までの下積み時代が長かった分余計に嬉しいのだろう。

 

「よし!次行くわよ!次は!」

 

地和姉さんが次の歌に行こうとした時、

 

わぁぁぁー!!

 

私達のいる所よりも少し離れた所から歓声が聞こえてきた。

 

「何かしら?」

 

「私達じゃないよね?」

 

「誰よ!私達の歌の邪魔してるの!」

 

姉さん達も歓声の方が気になり始めたようだ。

 

「みんな〜ちょっと休憩!」

 

「「「え〜〜〜!!!」」」

 

「少し休んだら再開するから待ってなさい!」

 

「「「ほぁ〜〜〜!!!」」」

 

そう言うと3人は歓声の上がった方に向かった。

 

「何やってるのかな〜少し楽しみだな〜。」

 

「天和姉さん呑気すぎ!私達の舞台が邪魔されたのよ!文句言ってやらなきゃ!」

 

「地和姉さん落ち着いて。意図的にやってるならまだしも普通に披露しているだけなら、こっちも同じ事を言われるわよ。」

 

「うっ!で、でも人和!」

 

「分かってる。何とかして違う所でやってもらわなきゃ。」

ここでやられたら自分達につくはずだったお客を取られるかもしれない。幸い今は私達を応援してくれる人がいるがそれもいつまで続くか分からない。何としても場所を変えてもらわなければ!

 

「それにしてもあんなに盛り上がってるなんて何してるんだろうね?」

 

「さあね、歌ではない事は確かね。私達の歌が負けるはずないんだから!」

 

「行ってみれば分かるわよ。」

 

そんな事を話していると人混みが見えてきた。

 

「あ!あそこみたいだよ!」

 

天和姉さんがそう言った。私もその方向を見てみると白い服の男性と白くきわどい服装をした女性がいた。

 

「わ〜美人さんだね!それに男の子の方もかっこいいし!」

 

「ふ、ふん!ちー達の方が可愛いんもんね!」

 

「でも、見た目だけであんなに盛り上がらないでしょ?一体何をしたのかしら?」

 

そんな事を話していると2人が動き始めた。

 

「何か始まるみたいだよ!」

 

「えっと、2人とも向き合って・・・え!?武器を構え始めたわよ!?」

 

「・・・」

 

一体何を始めるつもりなの?そう考えた瞬間

 

「しっ!」

 

女性の方が手に持っていた槍で男性を突き始めた。

 

「「「あぶないっ!」」」

 

咄嗟に3人ともそう言った。3人とも男性が槍で刺されると思っていた。しかし

 

「ふっ!」

 

男性はその槍を舞を踊るかのように軽やかに避けた。3人とも安堵の溜息が出た。すると

 

「しっしっしっ!」

 

今度は女性が連続で目で追えないほど速く動いた。すると男性はまたも軽やかな動きで何かを避け始めた。

 

「な、な、何が起こってるの?」

 

「ち、ちーにも分からないよ!」

 

「・・・おそらくだけど、女性の方が目で追えないほど速く突いていて、それを男性の方が避けてるんだと思う。けど・・・」

 

槍の速度はどんどん上がっていく。そして避ける男性の速度も速くなっていく。もはや男性の動きも見えなくなってきた。

 

「わ!わ!わ!もう何も見えないよ!」

 

その速度のまましばらく続くと、突然ぴたっと止まった。

 

「お、終わったみたいね。ま、まぁそこそこ凄いんじゃないかしら。」

 

「・・・何か変じゃない?」

 

「ん?・・・あー!男の子の方が槍持ってる!」

 

天和姉さんに言われ気づいたが、元々女性が持っていた槍を男性が持っている。

 

「うそ、でしょ。あの速度の中、持ち手を交換したっていうの!?」

 

わぁぁぁ!!!っと観客達が歓声を上げ、当の本人達は頭を下げていた。

 

観客たちは我先にと演舞の見物料を投げ入れていた。

 

「わ〜すごい量のお金だね!」

 

「額の低いものが多いけど、この数だと相当の額はいきそうね。」

 

「やっぱりこの人達が近くにいるとちー達の観客をとられちゃう!」

 

「・・・そうね、ちー姉さん。いきましょう。」

 

そう言い私達はその2人の方に歩き始めた。

 

 

北郷一刀視点

 

「ありがとございました!」

 

俺のその言葉をきっかけに俺たちの周りにいた人達はばらけ始めた。

 

「いや〜思ったよりもらえたね。」

 

「・・・ふぅ、一刀の頼みとはいえ気が乗りませんでしたな。」

 

「本当にごめん!宿代を稼ぐ為とはいえ星の武を見世物にして!」

 

「まぁ、今度一刀が最高級メンマを買ってくれるというのであれば、この事は水に流しましょう。」

 

「うっ!・・・分かりました。」

 

「ふふ、ではこの件はこれで終わりですな。宿に向かいましょうか。」

 

「そうだね。結構あるしちょっと贅沢出来るかもね。」

 

「では、やはりメンマを!」

 

「まだあるでしょうが!」

 

星とそんな話をしていると、

 

「・・・あの、すみません。」

 

話しかけられたのでそちらを向くと黄色を基調とした3人の女の子がいた。というかさっき歌っていた子達だ。

 

「えっと、何でしょうか?」

 

「どうもこうもないわよ!誰に許可とってここで見世物なんてしてるのよ!」

 

「許可とか必要だったんですか?」

 

それは知らなかった。

 

「ちー姉さんちょっと黙ってて。すみませんうちの姉がいきなり失礼な事を言ってしまって。」

 

「全くだ。いきなり怒鳴り散らすなど失礼にも程があろう。大方我々がここで何かされるのが迷惑なのだろう?」

 

星がそう言った瞬間、3人のうち2人がまさにギクッという擬音がつきそうな顔をした。なるほど図星ということか。

 

「安心してください。俺たちははもうここから移動しますから。」

 

「本当!?」

 

俺がそう言うと青い髪の女の子が嬉しそうにそう言った。

 

「ええ、ですから3人は安心して戻ってください。3人の歌、とってもいい歌でしたから早く戻らないとお客さん可哀想ですよ?」

 

俺は笑顔で素直な感想を言った。

 

「わ〜やっぱりかっこいいなぁ〜。」

 

「何だか少し罪悪感が・・・。」

 

「はぁ〜まったく。すみませんでしたいきなり押しかけてしまって。私の名前は人和と言います。」

 

「私は天和って言うの!よろしくね〜。」

 

「わ、私は地和。その、よろしく。」

 

3人が自己紹介をしてきた。しかしこの名前は

 

「あの、それって貴女達の真名では?」

 

「ああ気にしないでください。我々は活動の時は真名を使っていますので。」

 

そう言えばあの観客たちも真名を言っていたな。

 

「まぁそういう事でしたらありがたく頂きます。俺の名前は北郷一刀と言います。好きなように呼んでもらって構いません。」

 

「私は超雲子龍と言う。好きなように呼んでもらって構わない。」」

 

「では北郷さんと趙雲さんと呼ばせてもらいますがよろしいですか?」

 

「はい、構いません。」

 

天和さん、地和さん、人和さんか・・・あれ、今一瞬何か思い浮かんだような?・・・まぁいいか。

 

「それにしてもさっきの凄かったね!」

 

俺が少し考え込んでいると天和さんがそう言ってきた。

 

「ありがとうございます。」

 

「あれって事前にどこを突くか話し合ってたの?」

 

「いえ、別に話してなんていませんよ。ただ星、趙雲に当てるつもりで突いてくれと頼んでいただけです。」

 

「えっ!当てるつもりって本当に!?」

 

「はい。そっちの方が鍛錬にもなるので。」

「あれ以上凄くなる必要あるの〜?」

 

「俺なんてまだまだですよ。それに最近鍛錬をしてなかったので身体を慣らす事も必要でしたから。」

 

「あれが身体を慣らす程度なの・・・」

 

青い髪の子が眉をぴくぴくさせていた。

 

「それはそうと歌の方は大丈夫なんですか?」

 

「「「あっ!」」」

 

どうやら大丈夫じゃないらしい。

 

「ま、まずいよ〜!」

 

「早く戻らないと!」

 

「そ、それでは失礼します一刀さん、趙雲さん!」

 

そう言うと3人は来た道を走って行った。

 

「・・・何だったんだろうか。」

 

「さぁ?・・・ところで一刀。この後、時間はありますかな?」

 

「あるけど・・・ああなるほどね、いいよ。いつやる?」

 

「ふふ、理解が早くて助かります。それではこの後すぐにでもお願いしたい。」

 

「分かった。じゃあ行こうか。」

 

そう言うと俺たちは人気の無い所へと向かった。

 

天和さん達大丈夫だったかな?まぁ観客の人達はあの子達のファンみたいなものだから大丈夫だと思うけど。・・・そう言えばさっきの人たち黄色い布着けてたな。あの布、この前の盗賊たちが着けていたものと似ているけど・・・一応気にしておくか。

 

そこで俺はその事について気に留めておくことにした。着々と歴史の渦に飲み込まれている事に気付かないまま。

 

北郷一刀視点

 

「星、あとどれくらいで着くか分かる?」

 

「そうですな・・・あと少し歩けば公孫瓚殿が居られる街が見えてくると思います。」

 

「じゃあ、あと少し頑張ろう!」

 

日の傾き方からみても明るいうちに着くことが出来そうだ。朝早くから歩いた甲斐があったな。・・・まぁ寝てないけど。理由としては昨日星と一緒に鍛錬や手合わせをしていたのだが、思った以上に星も俺も盛り上がってしまって日が昇ってくるまで続けてしまったからだ。・・・いやだってね隠れて鍛錬していたのか星の動きが、数日前より遥かに良くなっていてこちらとしても負けたく無いという気持ちがあったもんですから、はい。・・・ふぅ。

 

「・・・星、眠くない?」

 

「ふふ、・・・答える必要がありますか?」

 

「・・・ごめん。」

 

よく見るとうっすら目の下に隈が出来ている。まぁそれもそうかただ寝なかっただけなら、ここまで疲れてないけど休みなしでずっと手合わせしてたからな。それは疲れるよ。

 

「しかし、やはり一刀にはこちらの攻撃は当たりませぬな。・・・思い出したら悔しくなってきました。一刀!今すぐ再戦を!」

 

「ここでやったら昨日と同じ結果になっちゃうでしょうが!やるとしても街についてからね!」

 

「では行きましょう!すぐにでも街に行きましょう!」

 

そう言うとさっきまでの足取りが嘘のようにダーッと走っていった。

 

「ちょ!ちょっと待ってよ星!」

 

俺は走っていった星の後を追いかけた。そして、

 

「ふぅ、よし着いたな。」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、今のは、私の、勝ちですな。」

 

「はぁ〜分かった分かった俺の負けでいいから息整えて。」

 

「分かれば、いいんですよ。すぅ〜はぁー。」

 

何故星がこんなにも息が切れているのかというと、俺が星に追いつくと星が勝負と言い始めて門まで競争をする事になったからだ。結果はほぼ同着だが、ここで食い下がるともう一度勝負と言いかねないので悔しいが俺の負けにしておくことにした。

 

「それで星、公孫瓚軍はどこにいるの?」

 

「ふぅ、・・・そう言えば言っていませんでしたな。公孫瓚軍はあの城に駐留しています。」

 

星はそう言い俺の後ろを指差した。そちらをみるとまさに城というべき立派な建物が建っていた。

 

「はぁ〜すごいな!これが公孫瓚の城か!」

 

「確かに立派ですが、今まで見てきた中ですと中ぐらいの大きさと言ったところでしょうか。」

 

「この大きさで中ぐらい!?」

 

やっぱり王様は規模が違うな〜。

 

「さぁ遅くなるわけにも行きませんし早速城の方に向かいましょう。」

 

「とっ、そうだね。じゃあ行こうか、」

 

そう言うと俺たちは城に向かって歩き始めた

 

「街は結構活気付いてるね。」

 

「そうですな。これも王の統治による成果と言ったところでしょう。」

 

俺と星がそんな事を思っていると

 

「おぉい!何だこの料理は!?食えたもんじやねぇーぞ!」

 

気分が悪くなるような声がしてきた。

 

「・・・はぁ〜どこの街にもいるんだなあんな奴。星・・・」

 

「当然でしょう。」

 

そう言うと俺たちは声のする方に向かった。

 

「す、すみません!」

 

「おいおい!すみませんじゃすまないよな!?この俺様がわざわざ食べに来たっていうのにこんな料理出しやがって!どうしてくれるんだよ!?」

 

「すみません!お代は結構ですので!」

 

「当然だろ!」

 

声の所に着くと大男がそんな事を言っていた。

 

「無茶苦茶だな全く。星はここで周りの人達に被害が及ばないようにしておいて。」

 

「承知した。それで一刀は?」

 

「ちょっと悪党を懲らしめに行ってくるよ。」

 

「私も途中で参加してもよろしいかな?あのような輩を見ると無性に懲らしめたくなるので。」

 

「分かった。詰めは任せるよ。」

 

そう言うと俺は大男に話しかけた。

 

「どうかしたんですか?」

 

「ああ!?誰だお前!?」

 

そう言うと男はガタッと立ち上がった。立ってみると身長は2メートルくらいあるだろうか。かなりな高身長だった。

 

「私はたまたま通りかかったものです。何やら揉めてるようでしたので何事かと思いまして。」

 

「はん、そのことか。それについてはもうこの店の料理が不味いってことで話は終わってるんだよ!」

 

「不味いね・・・それにしては机の上の皿は空ですが?」

 

みると机の上の料理がのっていたであろう皿は綺麗に空になっている。

 

「これじゃあまるで美味しかったのに代金払いたくが無いために嘘をついているみたいですね〜。」

 

俺はニコニコしながらそう言った。

 

「・・・あ?」

 

ガシッと俺の服の掴み持ち上げた。お〜見た目通りの力持ち。

 

「俺の聞き間違いだと思うが今なんて言いやがった?」

 

「代金、ちょろまかす、お前、かっこ悪い。」

 

俺はさっき言ってもいないような事を合わせて言った。

 

「っ!てめー!!」

 

男はそう言うと掴んでいる手とは逆の手で殴ろうとしてきた。

 

さてと、ここで顎を蹴り上げてもいいがもう少しきつい方がいいよな。

 

俺はある案が思いつき殴ってくるのを待っていると

 

「そこまでしなさい王門!」

 

凛々しい女の人の声がした。そちらを向くと銀髪でポニーテールのような髪型をした女性がいた。

 

「うるさいぞ関靖!俺は今こいつを殺さないと気が済まないんだよ!」

 

あら、殺す気だったの?

 

「貴方は公孫瓚軍の将軍でしょう!?そんな者が何を言っているのです!?」

 

こいつ将軍なのか!?あー今から軍に入るのが憂鬱になってきた。

 

「・・・はん!いいのか?俺にそんなこと言ってお前の隊の奴らの安全を保障してやってるのは何処の誰だったかな?」

 

「っ!それは・・・」

 

男がそういうと女性は悔しそうに俯いてしまった。

 

「そういえば今回の分の金がまだ来てないぞ?」

 

「も、もう少し待ってくれれば必ず!」

 

「まぁいいだろう俺とお前の仲だしな〜。」

 

男は俺を離すと女の人の方に行き、肩を組み始めた。

 

「でも、もし払えなかった場合は・・・分かってるよな?」

 

「・・・ええ。」

 

「ならいい!今日のところはこれで帰ろう!」

 

男はそう言うと俺の方を向き

 

「おい小僧!次、俺の視界に入りやがったらただじゃおかないからな!」

 

そう言うと男は去って行った。お〜こわこわ。

 

「あの、大丈夫でしたか?」

 

俺がそんなことを考えていると女の人が声をかけてきた。

 

「あ、はい。危ないところをありがとうございました。」

自分で何とか出来たとはいえ、助けてくれた人には感謝しなきゃな。それに・・

 

「あの、さっきの男と何かあったんですか?」

 

「っ!」

 

俺がそう言うと女の人は一瞬顔が強張った。やっぱり何かあるみたいだな。

 

「・・・貴方には関係のない事です。」

 

「まぁ確かにそうですね。」

 

「・・・それでは私はこれで。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」

 

そう言い頭を下げると女性は歩いて行った。

 

「何やら訳ありなようですな。」

 

「そうだね。・・・とりあえず城に行こうか。」

 

そう言うと今度こそ城に向かって歩いた。

 

そして しばらく歩くと城の入り口らしき門の前に着いた。

 

「ここか・・・やっぱりでかいな!」

 

遠くから見てもデカイ城はやっぱり近くで見ても大きかった、

 

「一刀の時代ではこのようなものはないのですか?」

 

「う〜ん、あるにはあるんだけど昔のものばかりだね。」

 

「なるほど、そういう事ですか。今日からここが我々の住処になるのですから慣れてくださいね。」

 

「難しいかも。」

 

そんな事を話しながら門をくぐると兵らしき人に止められた。

 

「そこの者止まれ!ここが公孫瓚 伯珪様の城と知っておいでか!?」

 

「我は常山の登り龍、趙雲 子龍である!本日、公孫瓚 伯珪殿の軍に所属する為に参った!今すぐ己が主に伝えよ!」

 

「っ!常山の!?これは失礼しました!どうぞお通り下さい。」

 

そう言うと兵士の人は頭を下げると走って何処かへ行ってしまった。

 

「星って有名人なんだね。」

 

「まぁ、そこそこと言った所でしょうか。」

 

そこそこで兵士の人があんなに驚かないと思うけどな。

 

そんな事を思いながら歩いていると一際豪華な扉の前に着いた。

 

「もしかしてここが?」

 

「ええ、謁見の間でしょうな。それでは参りましょうか。」

そう言うと星は躊躇わず扉を開けた。手慣れてるな〜。やっぱりこういうの慣れてるのかな?

 

扉を開けると広い部屋が広がっており、奥の方に台座がある。そして中に入ると

 

「趙雲殿、お目にかかれ光栄です。私は公孫瓚軍特殊遊撃隊隊長、関靖と申します。」

 

女性が挨拶をしてきた。やっぱり星は有名人・・・って!さっき会った人じゃないか!

 

「貴方は先程の!何故ここに!?」

 

どうやらあちらも俺の事に気付いたようだ。

 

「おお、やはり貴女は先程弟を助けて下さった方か。先程は弟を助けていただき感謝します。」

 

・・・ん!?弟!?

 

「ちょ、ちょっと星!」

 

俺は星を呼ぶと小声で話し始めた。

 

「一体どういうこと?」

 

「良い案があると言ったでしょう?それを実践したまでです。」

 

「いい案ってこれのことだったの!?確かに身内なら連れていてもおかしくは無いけど、こんなにも見た目が違って信じてくれるわけ。」

 

「いいえ、気にしないでください。それよりも弟殿をもっと早く助けられず申し訳ありません。」

 

いたよ信じてる人!しかも謝られてるし!

 

「いいや、貴女はしっかりと弟を助けてくれた。だから謝られる覚えなどありませぬ。どうか顔を上げてください。」

 

「ありがとうございます。そう言っていただけるだけで救われます。そろそろ公孫瓚様が参りますので今しばらくお待ちを。」

 

そう言うと関靖さんは去って行った。

 

「・・・というわけですので、今から一刀は私の弟となりましたので御了承を。」

 

「・・・分かった。もう何も言わないよ。」

 

すでに1人被害者を出してしまったしな。

 

俺が星の弟になってしまったその時、奥の方で扉が開く音がした。

 

「来たようですな。」

 

カツン、カツンと靴を鳴らしてやってきたのは、紅い髪でこれまたポニーテールのような髪型をした女性だった。女性は台座の前に来ると一旦止まりこちらをみると少し不思議そうな顔をし、台座に座った。

 

「待たせてすまなかったな。私が公孫瓚 伯珪だ。」

 

どうやらあの人が公孫瓚のようだ。予想していたがやはり女性だったか。

 

「趙雲殿が来ているのは聞いていたが・・・その隣の者は一体?」

 

「公孫瓚様、あちらの方は趙雲殿の弟君のようです。」

 

「ほぉ弟とな。それは失礼した。」

 

公孫瓚さんも信じてる。意外と大丈夫なのかな?

 

「して趙雲殿、今回は我が軍に入軍してくれるとの事だが本当か?」

 

「まことにございます。」

 

「そうかそうか!私としては大歓迎だ!」

 

「ありがとうございます。・・・そして公孫瓚殿、私の弟も軍に入らせたいのですが。」

 

「弟もか。その方、名をなんという?」

 

公孫瓚さんが俺に名前を聞いてきた。儀礼なんてわからないから星がやっていたようにやろう。

 

「私の名は北郷一刀と申します。公孫瓚殿、お目にかかれ光栄です。」

 

「ああ、私も嬉しく思うぞ北郷。それにしても姉弟だと言うのにあまり名前が似ていないのだな?」

 

やっぱり突っ込まれるよな。星はどうするんだ?

 

「ああその事ですか。実は我々は腹違いの姉弟なのです。」

 

「そうなのか。変なことを聞いてすまなかったな。」

 

「いえ、気にしていませんので。」

 

なるほど、そう乗り切るのか。

 

「そうか。それはそうと弟の武の方はどうなのだ?」

 

「私からみてもかなりのものです。」

 

「それは姉弟としての贔屓目無しにか?」

 

「勿論です。」

 

「ふむ。・・・趙雲はまだしも北郷を将軍にするのは難しいか。」

 

「・・・それは何故でございますか?」

 

「それは・・・」

 

「兵達の不満、ですよね?」

 

俺は公孫瓚が言いたい事を先に言った。

 

「あ、ああそうだ。趙雲のように名が通っているものがいきなり将軍に着いたのなら、兵達の不満も最低限のものになるだろう。だが名前も聞いたことのない、しかも趙雲の弟と知られるとそれが理由で将軍になったと思われてしまう。そんなことになってしまえば最悪、兵達による暴動が起こってしまう。それはどうしても避けなければならないんだ。だから北郷すまぬ。」

 

そういうと公孫瓚さんは頭を下げた。王様なのに俺たちみたいな一般人に頭を下げられる人なんだな。

 

「公孫瓚さん、頭をあげて下さい。勝手ですが公孫瓚さんの気持ちは分かるつもりです。」

 

「そう言ってもらえるとこちらとしても助かる。しかし北郷の扱いをどうしたものか。・・・そうだ!北郷、料理はできるか?」

 

「料理ですか?まぁある程度は出来ますが。」

 

「そうか!なら早速で悪いが一品作ってもらえないか?」

 

唐突にそう言ってきた。つまりは・・・

 

「えっと、それはつまり俺に厨房係なれという事ですか?」

 

「ああ、実は今料理を作っている者がいなくてな、ちょうど募集をかけようとしていたところなんだ。」

 

「なるほどそういう事でしたか。」

 

まぁ名前も売れてないしそこから這い上がって行くしか無いか。

 

「公孫瓚殿少々お待ちを!」

 

俺がそう考えていると星がそう言った。

 

「何だ趙雲?」

 

「恐れながら申しますが一刀をただの食事係にするのはあまりに愚策かと思われます。ですのでどうか一刀を将軍にしていただけないでしょうか!お願い致しまする!」」

 

星がそういい頭を下げた。・・・星がここまでやってくれてるだ!俺もやれるだけやってやる!

 

「私からもお願いします!星と共に頑張っていきたいのです!どうか!どうか!」

 

「・・・そこまで言われてはな。しかしどうしたものか・・・。」

 

俺達の頼みを公孫瓚さんは聞いてくれるようだが、うまい方法が見つからないようだ。すると

 

「・・・趙雲、北郷は腕が立つのだな?」

 

「それは間違いなく。」

 

「ならば数日後に我らの軍のある将軍と戦ってもらい、もし勝ったのなら将軍として取立てよう。」

 

「公孫瓚様!?彼にあの男の相手をさせるのですか」

 

公孫瓚さんがそう提案すると関靖さんが慌てた声でそう言った。

 

「雪音、そうは言ってもな。」

 

「あの男の子のなら私自身で解決しますので大丈夫です!あっ・・・も、申し訳ありません。少し頭を冷やしてきます。」

 

そういうと関靖さんは謁見の間から出て行ってしまった。

 

「はぁ全く・・・すまないな、この件はまた後日話そう。今はまず!」

 

パンパンと手を叩くと女の人達が出てきて、俺の前に服を置いた。

 

「これは?」

 

「城の厨房での服だ。その不思議な服でもいいんだが、なにぶん目立つのでな。それに着替えたら厨房に行き料理を一品作ってもらいたい。」

 

「了解しました。着替えはどこですればいいですか?」

 

「それは侍女達に案内させよう。頼むぞ。」

 

公孫瓚さんがそういうと女性達が一礼し、俺に後についてくるように言った。

 

「じゃあ星、行ってくるよ。」

 

「ええ、楽しみにしています。」

 

そう言い、俺は着替えに向かった。

 

関靖視点

 

「・・・はぁ、全く私は何をしてるんだ。」

 

先程のことを思い出し、そう思った。自分の主に声を荒げるなどあってはならない事だ。公孫瓚様はお優しい方だから気にするなと言うだろうが、後で改めて謝罪に向かわなければ。

 

「・・・北郷 一刀。」

 

気がつくと私はそう呟いていた。つい先程、あの男から助けた者が将軍になりたいと志願してきた。あの時私は咄嗟に助けてしまったが、もしあのままでいたらどうなっていたのだろう。もしかしたら・・・

 

「・・・まさかな。」

 

「なにがまさかなんだ関靖ちゃ〜ん。」

 

「っ!」

 

2度と聞きたくない声が聞こえてしまった。そちらを向くとやはりそこにいた。

 

「よぅ、どうしたそんな顔して?」

 

そういうとこの男はまた私の肩を組み出した。

 

「・・・お金はもう少し待つと。」

 

「それはいいんだけどよ。やっぱり待つからには前金が欲しくてよ。」

 

そう言うと男は私の胸元に手を伸ばしてきた。

 

「っ!」

 

ぱん!咄嗟にその手をはたき落した。

 

「痛っ!・・・おいおい、いいのかよこんな事して。お前の部隊の奴らどうなってもいいんだな?」

 

「くっ!」

 

私はそう言われると身体の力を抜いた。

 

「へへ、最初からそうしてればいいんだよ。」

 

男がまた私に手を伸ばしてくる。くそ!こんな男に!

 

私が飽きられかけたその時、

 

「あ〜手が滑った!」

 

バシャ!何かが溢れる音がした。

 

「熱ッ!熱ッ!熱ッ!」

 

すると目の前の王門が悶え始めた。どうやら頭からお湯を被ってしまったようだ。

 

「も、申し訳ありません!大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫なわけねーだろ!舐めてるのか!?」

 

「すみません!手が滑ってしまって!」

 

謝っている人物を見ると侍女のようだが、頭巾を目元まで深く被っているため顔がよく見えない。

 

「謝って済む問題じゃないだろ!?」

 

そう言うと、その侍女の胸倉を掴み持ち上げた。

 

「なっ!?やめろ!」

 

「うるせぇー!こういう奴にはちゃんと教育してやるのも将軍の仕事だろうが!」

 

そういうと思いっきり腕を引き、その腕を顔面に向けて放った。

 

「っ!」

 

このあと起こることを考え思わず目を閉じてしまった。その瞬間

 

バシンッ!

 

大きな音がなった。私は目を閉じてしまった罪悪感とともち目を開けると驚いた。

 

「・・・え」

 

何故なら王門がうつ伏せに倒れていたからだ。一体何故?

 

「ふぅ、全くいきなり殴ってくるなんてな。」

 

聞いたことのある声がした。まさか!?

 

目の前の侍女が頭巾を取ると

 

「大丈夫でしたか関靖さん?」

 

「北郷殿?」

 

さきほどまで謁見の間に居た北郷殿がそこにいた。

 

 

北郷一刀視点

 

「北郷殿?」

 

関靖さんが驚いたようにそう言った。いきなり出てきたら驚くよな。

 

「はは、すみませんいきなり出てきて。っと、今はそれよりも」

パシッと関靖さんの手を掴み、走り出した。

「ほ、北郷殿!?一体何を?」

 

「このままあそこにいたら、いつあいつが目を冷ますか分からないのでとりあえず場所を移動しようかと。」

 

「そ、そういう事でしたか。」

 

俺がそういうと関靖さんは納得してくれたようだ。

 

そしてしばらく走ると立ち止まった。

 

「ここまでくれば大丈夫でしょう。」

 

そう言い着いた場所は厨房前だった。

 

「北郷殿、何故厨房に?」

 

「ああ、さっき味噌汁をこぼしてしまったのでその代わりを作ろうかと思いまして。」

 

「味噌汁?一体何故味噌汁を?」

 

「ふふ、さっきから質問ばかりですね関靖さん。」

 

「あ、す、すみません。」

 

「ふふ、別に構いませんよ。ではまず質問に答えましょう。」

 

そういうと俺は関靖さんが出て行ってしまった後の話をした。

 

「そんな事になっていたのですね。・・・これにしても何故女性の服を?」

 

「あ〜え〜と・・・別に好きできているわけではないんですからね!」

 

「?えっと、北郷殿?」

 

「・・・すみません。えっとこの服装のことですね、これはその男性用の服が無かったので仕方なく着たんです。」

 

「なるほどそういう事でしたか。」

 

「はい。・・・それでは今度はこちらの質問に答えてもらえますか?」

 

「何でしょう?」

 

「あの男とは一体どんな関係なんですか?」

 

「っ!?」

 

関靖さんが息をのむ音が聞こえた。やっぱりそういう反応か。でもここは無理にも聞くべきだ。

 

「・・・貴方には関係ない事です。」

 

「まぁ確かにそうですね。でも、もう時間がないんでしょう?」

 

「・・・何のことですか。」

 

「言いたくないのは分かります。でも何か力になれるかもしれないんです。」

 

俺がそう言うと関靖さんはちらっとさっきまでいた方を向いた。

 

「確かに先程は助けていただきました。ですが力だけでどうにかなる話では・・それに先程はあの男も油断をしていたからこそあのようなことが出来たのです。もし本気だったのならあのように簡単に倒れるわけがありません。ですからこれ以上私に関わらない方がいいです。」

 

そう言うと関靖さんはうつむいてしまった。

 

「・・・なら俺はこれからもずっと付きまといますよ。食事中だろうと就寝中だろうと、関靖さんが話してくれるまでずっと。それでもいいんですか?」

 

俺はそうニコニコしながら言った。

 

「・・・はぁ、全くお節介な人ですね。」

 

関靖さんは諦めたようにそう言うと説明をしてくれた。

 

「あの男・・王門は公孫瓚軍の将軍であり問題児です。」

 

「問題児というと?」

 

「あの男は以前、侍女達や女の兵士達に手を出していたんです。それも毎日のように。そのせいで公孫瓚軍にいた将軍や兵たちが離れて行ってしまったんです。」

 

「なるほど。でも公孫瓚さんはそんな奴を追い出さなかったんですか?」

 

「実力と支配力ゆえです。王門は素行に問題がありましたが戦においてはかなりの功績を出しています。それにこの城の男兵士の殆どは王門に従っています。だから白蓮さまは王門を追い出す事が出来なかったのです。」

 

「・・・なるほどそういう事でしたか。では何故関靖さんはあの男に従っているんですか?」

 

「・・・私の隊が特殊百人隊というのは知っていますか?」

 

「はい、前にそう言っていましたから。」

 

「その特殊というのは後方支援と工作をするという以外に隊員全員が女という事も含まれているんです。」

 

「隊員全員がですか。珍しいですね?」

 

「はい、他の軍にはない事だと思います。そうなった理由としては隊員達全員が何かしらの事情を抱えてここに集まった故です。・・・ですがそれ故に軍内部での立ち位置が低いんです。あ、もちろん白蓮様は平等に扱ってくれます!しかし他の者たちは女だから後方支援だからと我々の事を陰では蔑んでいます。」

 

グッと関靖さんの拳が握られる音がした。それだけで悔しさが伝わってくる。

 

「私はそんな現状を打破するために様々な事をしました。そして・・・あの男の力を借りてしまったのです。あの男は最初百人隊の地位を上げる代わりに金品を要求してきました。それについては私の給料の殆どを渡す事で済んでいました。しかし最近では更に金品を要求してきて払えなければ百人隊の隊員達に手を出すと言ってきました。それでも何とか借金などをして支払ってきたのですが今回の額はもう用意できませんでした。私はその事をあの男に言いました。するとあの男は笑いながら私を見てきて・・・」

 

関靖さんはそう言うと自分の身体を抱きしめた。・・・まぁそうだよな関靖さんくらい綺麗な人ならそう言われるよな。

 

「先程も一刀殿が助けて下さらなければ今頃・・・」

 

「関靖さん・・・」

 

「・・・一刀殿、やはりこの話は忘れて下さい。大丈夫です自分でなんとかしてみますから。」

 

関靖さんはスッと立ち上がるとそう行って立ち去って行った。無理した笑顔を浮かべて。

 

「・・・そんな顔したら余計に心配になるじゃないですか。」

 

全く関靖さんのいう通りお節介だな俺。

 

こんにちはこんばんはアリアです!

 

白き才姫10話を見ていただきありがとうございます!投稿がかなり遅れてしまい申し訳ありません。

 

さて今回はオリキャラに出てきてもらいました。私も詳しい事は知りませんが公孫瓚にゆかりのある部下たちなようなので出してみました。歴史上とは違う働きをするかもしれませんがご承知ください。

 

次回は一刀が本気を出します!お楽しみに!

 

それでは今回はここまでそれでは再見!

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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