No.929915

双子物語81話

初音軍さん

目の前の幸せに満足しつつ、未来がぼんやりすら浮かんでこない春花は不安を抱くがそこに彩菜がちょっかいを出しにやってきた…!イチャイチャしながら模索していくまったり回♪

2017-11-13 23:02:32 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:537   閲覧ユーザー数:537

双子物語81話~春花と彩菜

 

【春花】

 

「春花~…」

 

 私はテーブルに教材を広げて勉強をしていると私の膝に彩菜が頭を乗せて

ごろごろしてきた。

 

「ちょっとぉ、邪魔しないでくれる?」

「え~…」

 

 彩菜から甘えてくることはそんなにないから私も一緒になってまったりしたいけれど

目の前の勉強から逃げるわけにはいかない。父にもちゃんとやってるってこと

見せてやらないと。

 

 ちゅっ

 

 反応の薄い私に彩菜は起き上がって私の頬にキスをしてきた。

 

「もう!」

 

 軽快に何度も口付けしてくる彩菜の顔を両手で挟んで顔を近づけた。

 

「私は忙しいんだけど」

「ら、らってぇ…きょうは甘えたい気分れぇ…」

 

 私の力で彩菜の柔らかい頬がぐにゅっと潰れて口から漏れる言葉が変だった。

 

「私もそうしていたいけどね…」

 

 手を離すと彩菜は軽く頬をさすると懲りずに私に抱きついてくる。

 

「たまには息抜きしないと」

「彩菜は息抜きしすぎなくらいでしょ」

 

 最近はほぼ毎日くっついてくるのだ。嬉しいような鬱陶しいような。

 

「春花って柔らかくて暖かくていい匂いするから、つい」

「…バカじゃないの」

 

「バカでーす」

 

 そう言って舌をちらっと出す彩菜。…可愛過ぎる…!でもそんな誘惑には負けない…!

 

「ふざけないの。彩菜、父に言ったでしょ。幸せにしてくれるって」

「うん」

 

「だったら自立できるように勉強なり、他の経験なりしないとダメじゃないの?」

「バイトは一応してるよ?」

 

 確かにコンビニで女性客を口説いてる姿なら見たことある。…何だか思い出したら

もやもやしてきた。

 

「仕事してるときに女の子を口説くのってどうなのよ」

「あれ、見られてた?」

 

「もー!」

「ごめんごめん!冗談だって」

 

 ぽかぽか叩く私をやや強引に抱きしめにかかる彩菜。

正面から抱かれて怒りと癒しを同時に受けて何だかふわふわした気持ちになる。

 

「彩菜はずるい!」

「ごめんって」

 

 そして勢いでソファにもたれかかってキスをした。でもそれで不安がなくなる

わけではなく、もやもやしている私に彩菜は耳元で囁いてきた。

 

「何とかなるさ。私頑張るからさ」

「うん…」

 

「まぁ、頑張りやな春花と比べたら怠けてるように見えるかもだけど。心配しないで」

 

 ちゅっ

 

「うん…」

 

 ちゅっ

 

 彩菜は笑みを浮かべながら何度も何度も私にキスをしてくれる。

次第に心から不安が取り除かれ、とろけるような気持ちになって彩菜を抱きしめた。

 

 

***

 

 しばらくしてから何か考え事をしている彩菜に食器を洗い終えてから声をかけると。

 

「どうしたの?」

「ん、そろそろ本格的にどういう仕事に就こうか考えてるんだけどね」

 

「うん」

「私の合う仕事って何だろう」

 

「え?」

「運転とか興味あるからトラックの運ちゃんとかいいなぁって思うんだけど」

 

 さっきまで頼もしかったのに一気に不安が蘇る言葉を呟いていたのであった…。

それに運転系の仕事は時間が安定してないから一緒にいられる時が少なくなりそうで

嫌だった。

 

「私は小さいお店でいいからパン屋さんとかしてみたいんだけど。力使うのとか苦手でね」

「私は頭使ったりするのめんどくさくて力仕事とかだったら割と平気だけどさ」

 

 だよね~って呟いてから溜息一つ吐くと「ん?」と何か引っかかった。

 

「じゃあ苦手な部分を補いながら一緒に仕事すればいいのでは?」

「あ、それいいね。春花と一緒に働きたーい」

 

「え、私と一緒でいいの?私は嬉しいけど」

「うん。むしろその話聞いてからだと一緒じゃないとしっくりこないっていうか。

どうせずっと一緒にいるんだからいいんじゃない?」

 

 彩菜の隣に座っていた私の手を彩菜が握ってきて嬉しそうに上下に振ってくる。

まるで子供のように無邪気な表情で。

 

 私は少し照れながらも彩菜につられて笑みを浮かべていた。

 

 何てことない普通の会話の中から意外なヒントを得ることもある。

今までそういう言葉はあまり信じていなかったけれどこの瞬間だけは共感できていた。

 

「で、パン屋にするの?」

「んー、何となく言っただけだからパンかどうかはわからないけれど」

 

 私はそう言いながら彩菜の額にこつんと軽く当ててから。

 

「一緒に二人のお店は作ってみたいなって」

「うん…いいね」

 

 くすぐったそうに二人で笑い、柔らかくて暖かい感覚に包まれながら、

その心地良さからしばらくの間は二人でそうしていた。

 

 結局この日は勉強はせず、二人でまったりと過ごしていた。父と会ってから最近は

根詰めることが多かったからちょうどよかったのかもしれない。

 

 それと、二人の目標が少しでも見えてきたのは大きな収穫だったと思えた。

そんな大事な日だった。

 

続く。

 


 
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