No.923664

ウナギ博士とネクタイ

zuiziさん

オリジナル小説です

2017-09-24 22:22:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:497   閲覧ユーザー数:497

 ウナギが出るという川へ行き、ウナギを捕まえようと思って構えていた。今どきウナギは高級魚であるのでただで捕まえられるならそれにこしたことはないので、私は朝から川へ行き、ウナギを捕まえるべく頑張ったが駄目だった。

 ウナギはどこにもいないし、第一、ウナギの大好物のウナギクワレ虫(ウナギがよく食べる虫)もいない。ウナギが出るというのは嘘っぱちだったのかなと思っていると、ウナギのことをよく知るというウナギ博士が出てきて、ウナギが本当によく採れる川を知っていますかなどという。私が知らないというと、五百円もらえれば教えてあげますよというので、私は五百円とはずいぶん安いと思いながら五百円を払うと、ウナギ博士は近くにある川へ私を連れて行った。

 そこは川というか用水で、駅前を流れている小さい川で藻がたくさん生えているあまりきれいではない川だったが、本当にこんなところにウナギがいるんですかと聞くと、博士は胸を叩いて大船に乗った気持ちで私を信じなさいという。

 やむを得ず私は川へ入って、たも網で川底を掬い始めた。ウナギは川の底にいることが多く、そこを狙えば一網打尽なのだけれども、掬っても掬ってもウナギの採れる様子がないので、私は嘘ではありませんかと言って博士の方を見ると、博士は自作のウナギスカウター(ウナギを数えるスカウター)を取り出して、ウナギ戦闘力は500ですなどと言っている。ウナギがいるということのようだが、もうちっとも信頼がおけないので、私はいやになって、川を出てしまうことにした。

 ウナギが採れなかった悲しみから、私は近所の喫茶店に入って、麦ごはんを食べていると、後ろから博士がやってきて、もう一度チャレンジしませんかと言いながら、私の麦ごはんを勝手に食べる。私はもうウナギなんか見るのもこりごりですと言い(見ていないけれども)、ウナギ博士が着けているウナギ柄のネクタイなんかも見るのが嫌になってしまったのだけれども、博士がどうしてもどうしてもと言うので、やむなくもう一度汚れた川に入ることにした。上流から流れてきた泥が溜まってヌルヌルする水底に足を取られないように慎重に歩いていくと、はたせるかな、上流からウナギが流れてきて、私はおやっと思ったけれども反射的にたも網で掬って、無事にウナギを採ることができた。やりましたよとウナギ博士に言うと、ウナギ博士はもうどこにもいなくて、私はなんだと思ったけれども、でも本当にウナギが採れたのでうれしかった。

 家に帰ってウナギの腹をさばくと麦ごはんとウナギの絵柄のネクタイが出てきたけれども、雑食性のウナギなのだなあと思って、うな丼にして食べてしまう。うな丼の肝はタレだよなあと思いながら上からドバドバ良い味のするタレをひたひたにかけ、一味をかけてかっこむと、努力に見合った以上の味がして、私は感動のあまり泣いてしまい、ウナギ博士ありがとうと言っていつまでもこの恩を忘れなかった。


 
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