No.91942

恋姫†無双 真・北郷√03

flowenさん

恋姫†無双は、BaseSonの作品です。
自己解釈、崩壊作品です。
2009・10・30修正。

2009-08-27 22:22:27 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:78285   閲覧ユーザー数:52944

 読む前の注意事項です。

 

 袁紹の性格は私の設定です。ご都合主義です。

 

 ですが、もしかしたらこうだったかも? っていうのが外史ですよね?

 

 あと袁紹達の互いの呼び方ですけど、戦の時は袁紹、文醜、顔良。

 

 私的なとき(と咄嗟のとき)は真名ってかんじかなと?

 

 

 

恋姫†無双 真・北郷√03

 

 

 

真・北郷ルート序章 その二

 

 

 

/袁紹視点

 

「むっ! 袁紹様ぁ。怪しい二人連れが見えますよ?」

 

「わ、本当だ、姫、私達の後ろに下がってください!」

 

 文醜、(真名、猪々子)顔良、(真名、斗詩)古くからの可愛い部下である二人は、私的な時間の時等は親しげに私の真名を呼んでくれるのですが、ひとたび危険が迫れば武将の顔になり互いの呼び方を切り替える。それが私達の合図ですわ。

 

「文醜さん、すぐ確かめていらっしゃい。顔良さんは私と一緒にいなさいな」

 

 猪々子はさっきまでのダルそうな態度とはうって変わり、わくわくと今にも飛び出しそうに瞳を輝かせて、

 

「あらほらさっさー♪」

 

 と、掛け声を残して凄まじい速さで走り去っていきました。 斗詩は私の周りを警戒してくれています。

 

「こんな何もないところにいるなんて……。賊かもしれませんし、まだどこかに潜んでいるかも……姫、気をつけてください」

 

 ふふ、本当に頼りになる二人ですわ。

 

「ほえーーーーっ!」

「「!?」」

 

 猪々子が大声で叫んでいますわ! すぐに行かないと!

 

「姫、文ちゃんが心配ですっ! 行きましょう! あ、あれ?」

 

「顔良さん! 急ぎなさい!」

 

 もちろんですわ! 斗詩が言うよりも早く私は走り出していました。

 

「ひめぇ~! 待ってくださいよ~」

 

 

/一刀視点

 

 凄い勢いで走り寄ってきた顔を見て、俺は確信した。

 

「やっぱ、文醜さんか……。ってことは、袁紹さんと顔良さんも一緒かな」

 

 前の世界で行方知らずになっていた三人組を思い出していると。

 

「ほえーーーーっ!」

 

 文醜さんは瞳を大きく見開いて俺達を見ている。 ってしまった。また口に出しちゃってたか……。

 

「文醜さん! 大丈夫ですの?」

 

「文ちゃん~! 何があったのー?」

 

 予想通り少し遅れて袁紹さんと顔良さんも現れる。

 

「すげーんだよ! 斗詩。このにーちゃん名乗ってもいないのに、アタイの名前どころか麗羽様と斗詩の名前まで言い当てたんだ!」

 

「当然ですわね。おーっほっほっほ!(見たこともない方ですわね?)」

 

「姫はともかく私まで?(私って二人に比べて目立たないのに……少し嬉しい)」

 

 袁紹達三人は、俺達を置いてきぼりにして盛り上がっているようだ。

 

 あまり関わり合いになりたくないし……。

 

(逃げよう、愛紗)(はい、ご主人様)

 

 二人でアイコンタクトして逃げようとするが。

 

「……ごしゅじんさまぁ……おなかすいた」

 

 ちび恋の声に三人が気が付きこちらを見る。ちなみに、ちび恋も真上から俺を覗き込み、今にも泣きそうなつぶらな瞳で見つめている……。(さかさドアップ)

 

「まあ! なんて可愛らしい子ですの! お腹をすかせて可哀相に……。あなた達、行くところがないのなら私の城に来なさい! ええ、ええ。それがいいですわ! すぐに行きますわよ! 猪々子! 先に戻り食事をすぐに用意させるようになさい。それから、斗詩さん。あの子を馬に乗せて上げなさい。肩車のままでは大変でしょう?」

 

 凄まじい? 行動力で二人に指示を出す袁紹さん。少し暴走してるような? でも、さり気なく俺にも気を遣ってくれてるし、悪い人じゃないんだよなー。

 

 

 

「……れん。ごしゅじんさま、まもる。はなれると、まもれない」

 

「え、えっとぉ。姫があぁいってるし、馬で行ったほうが早くご飯が食べられるよ?」

 

 俺から全く離れようとしないちび恋に、一生懸命顔良さんが言い聞かせるが、

 

「……れん、がまんする。ごはんだいじ。でもごしゅじんさま、もっとだいじ」

 

 恋! 目から汗が……。なんていうか恋は小さくなってから表情もそうだけど、行動も積極的だ。もともと保護欲を刺激させられる存在だったんだけど、もはやすでに兵器?

 

 はっ!?

 

「!?」

 

 隣で愛紗が同じことに気がついた様子、互いに目も見合わせ。

 

(こくん)

 

 同時に頷く。俺達は慣れてるけど袁紹達三人は大丈夫だろうか……そんなことを思っていた時代がありました!

 

……

 

「(もきゅもきゅもきゅもきゅ)」

 

「「「ほぁぁぁ~♪」」」

 

「うわっ! 麗羽様と斗詩の目! おかしくなってるよ!」

 

 うっとりとちび恋の食事風景(頬に食べ物を詰める様子)を見守る袁紹さん、顔良さん。……そして、慣れてるはずの愛紗の三人と、わりと普通な文醜さん。

 

「文醜さんは平気なの?」

 

 疑問に思ったので聞いてみる。

 

「あー。斗詩がいなかったらやばかったかも? アタイは斗詩一筋だもんね」

 

 ふむ、曹操たちもそうだったけど。多いんだろうか……。

 

「おいおい、兄ちゃん。そうじゃないぜ。アタイは斗詩だから好きなんだ! 斗詩がたまたま女で、アタイも女だった……それだけさ!」

 

 

 やっぱり良い人達みたいで仲良くなれそうだ。あれ心読まれた?

 

「いいね、そういうの。俺は好きかな(そうゆう二人の関係が、という意味で)」

 

「おー、兄ちゃん理解してくれんだ? 気に入ったぜ! アタイの名前はっと……知ってたっけ? 真名は猪々子ってんだ。よろしくな!」

 

「真名を? いいの?」

 

「いいぜ!」

 

 にししという音がしそうな満面の笑みで猪々子が頷く。

 

「で、兄ちゃんは? って、麗羽様! この兄ちゃんがアタイたちの名前知ってたから忘れてましたけど、まだ名乗り合ってないですよ!」

 

「!? あら、そうでしたわ。この私としたことが、おーっほっほっほ! 三公を輩出した名家の出身である袁本初とは私のことですわ! まあ名乗らなくてもご存知のようでしたけれど? ……はふ、~っそれにしても本当に可愛いですわ♪」

 

 袁紹さんが我に返り、いつもの調子を取り戻す。耳が痛いなこの声……。だがその目はちび恋に釘付けのまま。 

 

「私は姓が顔、名が良、字はありません。文ちゃん、いきなり真名を許すなんてどういうつもり? まだこの人たちの名前も知らないのにぃ。……はい、あーん♪」

 

 ちび恋に餌付けしがら満面の笑みで文句を言う顔良さん。癒されるでしょ?

 

「いやー、なんていうか、流れ? でもさー、この兄ちゃん、絶対良いやつだって! このふたりも凄いみたいだしさぁ。それにこんだけ好かれてる兄ちゃんが悪いやつだとは、アタイには思えないなー」

 

 顔良さんの苦労がわかるな……。猪々子は俺を凄い評価してくれてるけど……愛紗が俺の横に控え、姿勢を正して名乗る。

 

「私は姓は関、名は羽、字は雲長と申します。こちらはある大陸をその御力で統一し、民達に平和をもたらした天の御遣い、北郷一刀様です!」

 

 どうだ凄いだろうと、その大きな胸をそらし自重しない愛紗。キャラちがくない?  そういえば正史の関羽もプライドが高すぎたのが珠に瑕だったっけ……。

 

 

――――。

 

 長い沈黙。

 

 あちゃー愛紗さん。あなたは嘘は言ってないんですが……今はまずい! 皆さん引いていらっしゃる……。

 

 っていうか愛紗さん! あなた、すこーし夏侯惇(春蘭)が混ざってきてない?(実は既にご主人様好き好き度&揺ぎ無い忠誠心で振り切ってます、100MAXで255位)

 

「す、素晴らしいですわ!」

「兄ちゃん、すげーやつだったんだな!」

 

「ちょ、ちょっと! 姫ぇ!? 文ちゃんっ!?」

 

 勢いよく立ち上がり感動する袁紹さんと猪々子、顔良さんは二人に困惑気味。

 

「あなたの目は節穴ですの? 斗詩さん。この三人の澄み切った瞳。一目見ただけで只者ではないとわかりますわ! そんな方々がすぐばれる様な大法螺を吹くはずがありません! ならば真実なのでしょう」

 

 顔良さんには悪いけど、結果良ければ全てよし……かな?

 

 そういえば南に楽園があるからって、信じきって冒険に出るような純粋な人だっけ……。って何でこんなこと知ってるんだろう?

 

「で、その統一した大陸というのはこの大陸より大きいんですの?」

 

「同じ大きさです!」

「……おなじ」

 

 俺さ、名乗り合いからしゃべってないよね? ね? 空気ですか? 愛紗とちび恋がよどみなく答えると、袁紹さんはしばらく考えた後、俺に向かって膝を折る。

 

「私には大きな力があるのにも拘らず、愛する民達にいらぬ負担をかけ、大勢が故に身内の無能な文官、武官を誅しきれず……。臣下達を導くべき存在として己の力不足を感じておりました……。最近では現実から逃げて心を許せるこの二人を連れ回しては、無能な君主と思われる事こそが当然と……」

 

 袁紹さんは静かに語りながら肩を震わせている。部屋の中は静まり返る。

 

「民を! 私の民達を救えるのなら私は何も要りませんわ! いままでは諦めておりました。ですが北郷様。貴方なら救ってくれる。そう感じましたの……。どうか、どうか……」

 

 

 いま目の前にいる袁紹さんには、前の世界のどうしようもない自信の塊だった彼女の面影など微塵もなく、目の前に垂らされた蜘蛛の糸を救いを求めるように見詰める儚い少女だった。

 

 もしかしたら前の外史の彼女も民を救うためと橋瑁の檄文に騙されて出兵し、俺や曹操たちに盟主に祭り上げられてはいても、心の中では彼女なりに世の中を良くしようとしていたのかもしれない。

 

 

 あのときのテンションはそうとしか思えない。檄文だって袁紹が送ってきたが出所は橋瑁かも知れない。多分、左慈か干吉あたりが暗躍したんだろうが……。

 

「ご主人様……」

 

 愛紗も見たことがない袁紹さんを見て何か感じたんだろう。 プライドが人の十倍は高い袁紹さんが肩を震わせて救いを求める姿に……。

 

「「麗羽様……」」

 

 顔良さんと猪々子も、俺を見て返事を待っているようだ。

 

「うん、俺でよかったら。いや、袁紹さんが認めてくれた俺が救って見せるよ! 但し、ここの民達だけじゃない! 大陸全ての民達をね!」

 

 自信を込めて、前の外史で学んだ皆の期待を全て背負う覚悟と誓いを。信じてくれた人達が勇気を出せるような精一杯の笑顔を全員に向ける。

 

 みんなが俺のその瞳を見つめて頷く。

 

 

 

「北郷様、私の手をとってくださってありがとうございます。お礼に私の真名をお預け致しますわ。麗羽とお呼びくださいませ」

(やはり思った通りの御方ですわ! 太陽のように全てを照らす自信に溢れた笑顔……。北郷様をお支えすることこそ、この袁本初の全て。今まで培ってきた財と武力はこのときの為にあったんですわ!)

 

「へへ、アニキィ、よろしく頼むな! アタイ難しいことは苦手だけど、麗羽様がアタイ達にも言えない悩みを持ってたなんて知らなかったぜ! これもアニキのお陰なんだな……もっと麗羽様に頼られるように心を入れ替えてがんばるぜ!」

(アニキってかっこいいなー。斗詩以外でこんなにドキドキしたのは初めてだぜ)

 

「ご主人様。麗羽様の願いをお聞き届け下さりありがとうございます。私の真名は斗詩と申します。私も文ちゃんと同じく麗羽様の苦悩に気付けませんでした。……ですがご主人様のお陰でもっと頑張ろうって、麗羽様がもっと頼ってくれるように、悲しい思いをしなくて済む様に。そう思えました。ご主人様はきっと相手を素直にさせてしまう力があるんだと思います。関羽さんには及ばないかもしれませんが、精一杯頑張りますね!」

 

 そう言って両の手のひらを胸の前でギュッと握る斗詩。可愛いです。

 

「(もきゅもきゅもきゅもきゅ)」

 

 まだ食べてたのか! あれ? でもいつもの三分の一も食べてないような?(量的に)

 

「……けぷっ。……おなかいっぱい」

 

 すこしお腹がぽんぽこりん? になったちび恋がやはりよぢよぢと俺の首に巻きつく。

 

(すこしコアラっぽい……)

 

「ふふっ、恋はかわいいなぁ」

 

 愛紗もさすがに小さな恋には嫉妬しないようだ、ほっぺをぷにぷに堪能している様子。

 

 

「れんは、りょふ。ごしゅじんさまのさいきょーのぶ(武)……れんってよんでいい」

 

 ちび恋が真名を許せば、

 

「わが真名は愛紗。そしてご主人様の一の家臣! 麗羽殿、猪々子、斗詩。貴方達のような心のまっすぐな仲間は大変心強い! 改めてよろしく頼む」

 

 そう言い放つ愛紗の脳裏には、かっての仲間である昇り竜が含み笑いをしていた……。

 

 どうやら、いつの間にか一の家臣について、恋との折衝はついたみたいだな……。

 

「改めて、俺は姓は北郷、名は一刀、字と真名はない。北郷でも一刀でも好きに呼んでくれてかまわない。あと、あまり畏まった話し方はかえって困るから、普通に話してくれると嬉しいかな? 一日でも早く大陸を統一するのが一番だけど、焦って足元をすくわれたら全てが台無しだ。まずは準備から始めようと思う!」

 

/語り視点

 

 北郷一刀。

 

 かって、始まりの外史で大陸を統一し、その限りない優しさで全ての武将と民を笑顔で包んだ稀代の英傑。

 

 大陸は力や智謀、運だけでは統一できない。その秘められた力は彼にだけはわからない。だからこそ、その力は湧き続ける。その力の源は彼の周りだけが彼をどれだけ稀有で大切なものであるかを知っているだけでいいのだから。

 

 新たな外史。真・北郷ルート。 

 

 この外史が始まる時、袁紹の牙門旗は城から降ろされた。

 

 そして本来ならば千年を経た後、東の小さな島国の薩摩とよばれる地の大名島津家が有力分家、北郷家の家紋。丸に十文字を模した牙門旗が今、昇る朝日のように静かに、ただ静かに、南皮の城にあがるのであった。

 

序章 了

 

 つづく

 

 

おまけ

 

拠点 愛紗01

 

南皮城内 一刀私室

 

『幸せ』

 

/一刀視点

 

 目を覚ますとまず愛しい人の顔、隣に暖かい感触、俺の体にかかる美しい黒髪。 愛紗が俺の体にしがみついて安らかな顔で寝ていた。その愛しい愛紗の頭を両手で支え、

 

「んっ」

 

 優しく短く唇を重ねる。

 

「……ご主人様、おはようございます」

 

 辺りを見れば昨日の跡。赤い染みに目を落とすと、

 

「ごっ、ご主人様っ! 寝具を片付けますのですぐに部屋を出てください!」

 

 この外史で初めて体を重ねて気がついたが、体の状態等も最初に戻っているようだった。

 

「愛紗は冷たいなぁ。昨夜はあんなに甘えてくれたのに……」

 

 そう言って少し拗ねてみる。

 

「あっ、いえっそうじゃないんです! あのあのご主人様は大好きですし、その今回も私の初……めてをもらって頂いて、幸せなわけで……でもでも、あー、ご主人様ー。機嫌をお直しください! ご主人様の笑顔が見れないと私は……わたしはぁ」

 

 クスクス、愛紗ってばあんなに慌てて……可愛すぎてもう一回押し倒したくなっちゃうじゃないか! ってイカンイカン。

 

「うん、わかった。愛紗が俺を大好きでたまらないのはね?」

 

 そう言って愛紗の頭にポンッと掌をのせてから綺麗な黒髪をゆっくりと何度も梳く。

 

「一緒に片付けよう? 素直な愛紗が好きだなー?」

 

 ぅーっと真っ赤な顔で愛紗は歯を食いしばっている。

 

 ピンときた! そうだ愛紗の嫉妬癖を何とか緩和できるかも?

 

 

 愛紗の嫉妬って素直になれないから暴力になるわけで……。なにか合図を決めればいいかも? よし試してみよう。

 

「愛紗、あのね?……」

 

……

 

 

 

 

 

時刻は昼過ぎ 政務室

 

「ご主人様、文ちゃんからの報告なんですけど……。なるほど! さすがご主人様です。やっぱり大陸を統一してたって話、本当だったんですねー。あ。襟が曲がってますよ?」

 

 斗詩が俺に近づいて襟を直してくれる。

 

「はい! できました」

 

 が、斗詩が書簡に目を戻した瞬間……。

 

「かぷっ♪」「いたっ!」

 

 小さな痛みが左の手に走る。

 

「どうしたんですか、ご主人様? 髪かなにか引っかかったとか?」

 

 斗詩が少し驚いて襟のほうを見る。

 

「いや、平気、平気。さっさと終わらせよう! 斗詩はいいお嫁さんになれるよ」

 

「はーい、えへへ「アニキー。斗詩はアタイのだかんなぁ」文ちゃん!」

 

 斗詩が照れ笑いした後、いつもの猪々子の決め台詞。

 

 髪じゃなくて『噛み』つかせたんだけどね? 左手は左に座る愛紗の手の中。痛みは愛紗が左手を噛んだから。

 

「ふふっ♪」

 

 俺に寄り添うように座り幸せそうに笑う愛紗。毎回、青龍刀で追われるのも芸がない。噛むのは愛紗の嫉妬の合図。

 

 そうしたほうが時間も取れるし(追い掛け回される+正座で説教+機嫌取りの時間)話し合って決めた二人だけの合図。

 

 さてと、後で愛紗の機嫌をとらないと。

 

(愛してるよっ!)

 

 と、目で合図すれば、可愛く舌を出してそっぽを向く愛紗。そんな遠慮なく俺に甘えてくれる愛紗を見て、その横顔を幸せに見つめるのだった。

 

 

おまけ

 

拠点 恋01

 

昼過ぎ 南皮城内 一刀私室

 

『儚い約束』

 

/語り視点

 

「(ピコピコ)」

 

 真っ赤な触角が、何かを探すように揺れている。

 

「(ピン!)」

 

 触角は何かを捕らえたようだ。風のような速さで城の中庭へ飛んでいく。そこには、木の根元に腰掛けて竹簡に何か書き込む人影が。彼の魂のように純白なその姿にちび恋は飛びつく。

 

/一刀視点

 

 飛びついてきて開口一番、ちび恋はおかんむり。

 

「……ごしゅじんさま。……ひとり、だめ」

 

 ほっぺを、むーっとふくらませ、口はV(ヴイ)の字形。(丸いほっぺの下のほう、作画的に顎のあたりに付きます)

 

 一人で出歩いちゃ駄目かー。でもここは城の中なんだけどな。

 

「……ごしゅじんさま、わるくないけど。わるく……おもわれてる」

 

 ふむ、麗羽がいってたやつらか。纏めて捕まえてやるさ。

 

「……ごしゅじんさま、すごい。れん、おとなしくする」

 

 恋はそう言っていつも通り俺の肩に。流石に鋭いな。俺の顔を直接見るだけで考えがわかるみたいだ……。

 

 

 そういえば小さくなった恋は非常に燃費がいい! それでも二人前くらいは食べるんだけど食べるのも遅いから、もきゅもきゅしてる姿が長く楽しめるのだ!

 

 とは言っても、今は皆、俺の策の為、彼方此方へと忙しく飛び回っている。

 

 愛紗は、

 

「恋がご主人様の近くにいるから、安心して出掛けられるのです!」

 

 って言ってたけど。あー、それで恋はいつにも増してコアラさんな訳か?

 

「……あいしゃとやくそくした。いまのれん……あいしゃとふたりぶん……つよい」

 

 恋は本当に愛紗が好きなんだな。

 

「恋、愛紗のどんなとこが好きなの?」

 

 ただ単純な興味。恋がどうして愛紗を好きなんだろうって思ったから。

 

「……あいしゃは……つよい……こころは……なにがあってもまがらない……しんでも。……れんは……みえてないと……ふあん」

 

 そうか、正史の関羽と呂布の生き様、忠義の関羽。裏切りの呂布。互いに持っていないもの。まっすぐな信義と自分に素直な欲望。束縛と自由。

 

 それはまぶしく見えるのかもしれない。外史にも正史の影響が少しはあるんだろうか。そういえば愛紗は呂蒙って名前聞いただけで怒り狂ってたっけ?

 

「……でも……もっとだいじなりゆう……あいしゃとごしゅじんさま……れんのかぞく。ずっと……ずっといっしょにいたいからっ」

 

 そう叫ぶ恋の顔は、俺の頭の上で見えなくて。でも頭にかかる暖かい涙は、きっと恋が流したもの。その頭を撫でてあげたいけど手は届かない。肩の上で震えている恋は俺の大切な女の子。ならば何の遠慮があるんだろう?

 

 スッと恋の脇に手を差し込めば、くすぐったいのか頭から手を離し、その隙にそのまま前に回して背中から抱きしめる。

 

「恋? いつまでも一緒だよ?」

 

 そう声をかけて頬に口づけする。

 

 少しでも少女の孤独が和らぎます様に、俺の腕の中の恋だけでも守れますようにと……。

 

/語り視点

 

 それは戦場でいつ死ぬかもわからない世界では儚い約束。それを痛いくらい見ている少女は、大好きな大好きなこの手を、どうか私から奪わないでください。と、天に祈るのだった。

 


 
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