No.917428

マイ「艦これ」「みほ2ん」第64話<盆踊り会場>

しろっこさん

司令たちは水木しげるロードの屋台から駅前広場へ。そこで艦娘たちは盆踊りに興じていた。

2017-08-06 20:33:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:409   閲覧ユーザー数:408

 

「ちょっと、踊って良いですか?」

 

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マイ「艦これ」「みほ2ん」

 第64話 <盆踊り会場>(改2)

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「私……司令から、どう見えます?」

 

……と、山城さんのドスの利いた低い声。

 

突然、何を言い出すかと思えば!

 

「……」

ゆっくりと振り返ると、私の至近距離に長身の彼女。

 

夜の屋台の灯に照らされた山城さんの意外に情熱的な瞳が揺れていた。

 

(こりゃ、ヤバイ)

 

こういう状況では、何と答えたら良いのか? 参るな。

 

夜のお祭り会場で、屋台が立ち並ぶ喧騒の中と言う微妙な状況が彼女を舞い上がらせているのだろうか?

 

「ねぇ、何してるんですか? 早く行きましょう!」

 

焦る私を尻目に五月雨と寛代が私の両手をグイグイと引っ張る。

 

「あ、ちょっと待って!」

 

……このままだと、また山城さんを喧騒の中に置いてきぼりにしてしまう。私は慌てて二人を制止すると山城さんに向き直った。

 

「取り敢えず今は、お祭りの会場へ行こう……な?」

私は彼女に早く付いて来るように促した。

 

 その言葉で、ハッとしたような山城さんは再び私の帯を持った。

だがその機械的な反応に、私はホッとするのだった。

 

 私たちは再び盆踊りの会場を目指して人ごみの中を前進した。まるで艦隊行動である。

 

「奥さん……って」

私の背後では相変わらず凄みのある低音ボイスで墓場の亡者のように呟(つぶや)く山城さん。それは水木しげるロードの鬼太郎オブジェと相まって、もはや鳥肌モノだ。

 

 しかし五月雨に寛代が気を利かせてくれたのかどうか?

正直分からないが彼女たちが引っ張ってくれて助かった。

 

 やがて私たちは、ほどなく駅前の広場に到着した。さっきの屋台通りに比べると意外と、こっちは空いていた。

 

 広場の西側の駅に近い舞台の上では、和装で大柄の女性が民謡を歌っていた。

 

「あれは何の歌ですか?」

五月雨が不思議そうに聞いてくる。

 

「えっと、民謡」

「ミンヨウですか……」

そうか、艦娘には興味がなければ民謡なんて分からないよな。

 

 さらに少し歩いていくと少し離れた広場中央にある櫓(やぐら)では、和太鼓の演奏が拍子を取っていた。

 

最近は盆踊りといえども町中が総出で踊るって感じではない。

まして、ここは駅前だ。地元の人と、こういうのが好きな観光客が半々くらい。あとは全体的にはスカスカな感じ。

 

 でも改めて目を凝らしてみると暗闇に一際、目立つ女性たち……ああ、やっぱり。それは美保の艦娘たちだった。

 

 浴衣を着た日向が上手に踊っている。それを手本にして利根や赤城さんが合わせて踊って、自然に踊りの輪に加わっていた。

 

 別の場所には手馴れた感じで自然に踊っている祥高さんと龍田さんが居た。

 

 その輪から、さらに外側には青葉さんが居て撮影に専念していた。その横では浴衣を着た北上が踊らずに淡々と何か話しかけている。

 

「この二人は、何処に居ても行動パターンが変わらないな」

思わず苦笑した。

 

 さらに、その反対側の人の輪には比叡と金剛。この二人は長身でスタイルも抜群だから浴衣を着ても妙に目立つ。

 

特に金剛は『盆踊り』というよりは『ダンス』である。さすが英国からの帰国子女らしくクラシックバレエみたいな洗練された踊りだった。

 

「Hey! テートクぅ」

暗くても索敵能力は高いぞ。正直、少々恥ずかしかったが……さすがは盆踊り会場はお祭りだ。意外に奇天烈なことをしても違和感がなかった。

 

「おう!」

いつもの私なら返さないだろう、ややオーバーな反応をして大きく手を振った。

 

彼女は、ニッと笑って輪に戻った。

 

「あぁ、お姉さま! 待って」

その隣の比叡は、もはや盆踊りなのかダンスなのか良く分からない状態だ。ありゃ和洋折衷的なタコ踊りっぽいグニャグニャ踊りだな。

 

 そんな金剛姉妹は結果的に浮き気味だったが……まあ、良いか。皆、楽しそうだ。

 

 私は背後の山城さんを思い出した。彼女は大丈夫か?

 

……でもそれは杞憂(きゆう)だった。

 

彼女は踊っている艦娘や群集を見て急に、そわそわし始めていた。

 

いつの間にか私の帯から手を離してモジモジしながら言った。

「あの司令、済みません。ちょっと踊って良いですか?」

 

「ああ。構わないよ」

彼女は軽く頭を下げるとウキウキしたような軽い足取りで輪に向かった。

 

(そうか山城さんも、こういう古風で伝統的なものが大好きなんだな……)

 

私は妙に納得した。

 

 いつの間にか五月雨も浮き足立っていた。

 

彼女は踊りの輪の中に小学生の一群を見つけると「司令、私たちも行きますので!」と言った。

 

「ああ」

別に引き止める気はない。

 

彼女は、やや引き気味な寛代の手を握ると半ば強引に行ってしまった。

 

(へえ、五月雨も、こういうのが好きなんだな)

 

これまた意外で新しい発見だった。

 

 両の手と、背中の艦娘が『出撃』してくれたので私はようやく『解放』された。

 

「やれやれ」

大きくため息をつきながら両手を上に伸ばした。

 

それから私は広場の端まで行くとベンチに腰をかけた。

 

「やっぱり艦娘は伝統的なものに自然に馴染むんだな」

 

もともと私も浴衣だから開放感はあるのだが、改めて夏らしさを感じるのだった。

 

 

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中~(^_^;)

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PS:「みほ2ん」とは

「美保鎮守府:第二部」の略称です。

 


 
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