No.916802

マイ「艦これ」「みほ2ん」第62話<艦娘の剛と柔>

しろっこさん

司令の実家を訪問した艦娘たちは浴衣で盆踊りへと繰り出すのだった。

2017-08-02 03:30:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:483   閲覧ユーザー数:482

 

(何だかんだ言っても日本人は浴衣だな)

 

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マイ「艦これ」「みほ2ん」

 第62話 <艦娘の剛と柔>(改2)

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『お母さん、行ってきまぁす』

 

 玄関先で母親に大声で挨拶をした美保の艦娘たちはゾロゾロと出発する。母親も嬉しそうに手を振っていた。

 

「あれ?」

さり気なく母の隣には父親まで出ていた。さすがに彼は手は振らずに腕を組んでいたが。

 

(まあ、良いか)

両親も嬉しいのだろうか? と思った。

 

 まだ私は独身なのだが親から見れば自分たちの孫世代の艦娘もいるわけだ。やっぱり親の世代から見れば小さい女の子は可愛いのだろうか。

 

 さて実家から境港の駅までは、のんびり歩いて20分も、かからない。艦娘たちは実家から持ち出したのだろうか? 手に団扇(うちわ)を持って、ゆっくり扇ぎながら歩いている。

 

 今回のように10人規模の艦娘たちが一斉に浴衣を着て歩く姿は他の鎮守府でも、めったに拝めないことだ。盛んにシャッターを切る青葉さんの写真は艦娘の歴史に残るものかも知れない。

 

 既に西の空は夕日で橙色に染まっている。町全体が紅くなる中で色とりどりの浴衣を着た艦娘たち。傾いた陽を浴びた彼女たちも薄っすらと紅く映える。

 

(何だかんだ言っても日本人は浴衣だな)

こればかりは譲れないと思える。

 

 夏の夕空は明るい部分から徐々に色調が変化している。

細長い海峡である境水道と、その向こう側に連なる高尾山へと向かって橙(だいだい)色から徐々に青い色へ移ろい行く空と雲。その光景は艦娘たちと相まって清々しい。

 

(この空気感は、この地域独特のものだ。失いたくないな)

別に詩人でもなんでもない私にも、そう思わせる自然の調和だった。

 

 青葉さんは美しい風景を背にした艦娘達の姿を盛んにシャッターを切っている。どうせ後で売りつけられるんだろうけど、それでも構わないと思わせる美しさだった。

 

 五月雨と寛代は、さっきから舞い上がって走り回っている。

 

「おい、車道に出るなよ。轢かれるぞ」

思わず注意した。

 

「はい……すみません」

はにかむ五月雨。緑と青の浴衣姿で、ちょっとしおれている姿は、まるで小学生だ。

 

「……」

一方の寛淑は舌を出している。こっちは赤い浴衣で、全てが対照的だな。

 

 私たちは水木しげるロードに入る路地まで来た。この辺りからは、もう屋台が立ち並び始めている。

 

「あれは何じゃ?」

「屋台ですね」

「お店ですか?」

「へぇ、ワンダフォーね」

艦娘たちは、お祭りの雰囲気そのものに興味津々だ。

 

「だいたい、お祭りの屋台はボッタクリだから嫌いだが……」

「ボッタクリって何?」

 

「そこの可愛いお姉ちゃん、金魚すくいしない?」

私が呟く側から早くも五月雨と寛代は屋台の売り子に捕まっていた。

 

「うふふ、この子達には間に合っているわよ」

「そうじゃ、この子等は雷のような魚(魚雷)も持って居(お)るしな」

直ぐに利根や龍田さんが適当にあしらいながら引き離してくれた。

 

「はぁ?」

この二人にかかると縁日の売り子もタジタジだな。

 

 そんな祭りの喧騒の中で私はフッと彼女たちから離れて、浴衣姿で散策する少女たちをボンヤリと眺めていた。

 

「なるほど」

艦娘とはいえ浴衣を着た彼女たちは屋台通りに自然に溶け込んでいた。

 

 それは浴衣の効果なのか、それとも彼女たちが元々持っている『和』という気配なのか、いずれなのかは正直分からない。

 

 ただ彼女たちを批判する輩(やから)がよく言う『艦娘は単なる機械』という表現は明らかに間違っていると感じる。

 

 墓参にしても最初は違和感を感じたのだが、いざ現地へ赴いたときの彼女たちの現場に溶け込む雰囲気。

 それは、うまく言葉にできないが意外なほど日本の伝統文化には馴染むのだ。あの奇抜な戦闘服ですら、そうあるべきと思わせるモノがある。

 

(不思議なものだ……艦娘か)

 

「テートク! 遅いね」

場をわきまえない金剛の叫びが響いて思わず赤面する。おい街角で『テートク』はやめろって。

 

 水木しげるロードから駅前へと入る大通りのは、お盆前に私たちが軍用車で敵襲を受けた通りだった。そこに面した民家には軒並みブルーシートが覆われていて、なぜか多少とも気が引けた。

 

 そんな私の気配を察したのか青葉が言う。

「気になりますか?」

 

私は頷いた。

「……まぁ、海軍の責任では、ないんだけどな」

 

「……」

フィルムを巻きながら彼女は苦笑していた。いつもは、おちゃらけて居る彼女も意外に繊細な面があるよな。

 

 西の空の日は、もうかなり暮れてきた。屋台の灯かりが黄色く輝き、艦娘たちのカラフルな浴衣と絶妙な調和を見せている。

 

 始めのうちは一緒に行動するようなことを言っていた艦娘たちも気がつけば好き勝手に屋台やお店を覗いたり各々グループ化して散らばって行った。

 

「まあ、そんなもんだな」

私は呟く。

 

 とはいえ私自身は背格好の小さい五月雨や寛代に変な連中が声をかけないか心配で保護者のようにくっついて動かざるを得ないし。

 

 ふと見れば日向と利根は射的(しゃてき)の屋台を荒らしている……当然、百発百中だから。

 

思わず声をかける。

「ダメだよ日向、お店の人を困らせたら」

 

「いえ、やる時はやります」

ホントに日向は何をするのも生真面目だよな。まあ、そこがお前らしさだけど。

 

「がはは、そうじゃのう。銃を構えると是が非でも当てたくなるのは癖じゃな」

腕をまくった利根も負けてはいない。

 

 射的の景品を群がる現地の子供たちに気前よくあげている日向と利根。

ほのぼのすると言うか、そんな彼女たちの、おおらかな態度は市街戦で迷惑をかけた境港市民への、せめてもの償いに感じられた。

 

「何か、お前たちの姿を見ているとホッとするな」

私が呟くように言うと日向がチラッとこちらを見て言った。

 

「はい、ここは司令の故郷ですから」

いや話をそっちに持って行かなくても良いんだけど。

 

「気遣いは嬉しいよ、ありがとう」

「はい……」

ちょっと恥ずかしそうな表情をした日向だった。

 

「そんなものかのう?」

利根には当然といった雰囲気だった。この辺のやり取りは彼女には疑問符が付くようだ。

 

 この二人の剛と柔の対比もまた艦娘らしさだ。私には杓子定規でない性格の多様さもまた彼女たちの魅力に思えるのだった。

 

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中~(^_^;)

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PS:「みほ2ん」とは

「美保鎮守府:第二部」の略称です。

 


 
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