No.914852

ポケモンDPt 時空神風伝 06

フウイさん

夏でも関係なくこの長編は完結まで続きます。

2017-07-20 18:10:18 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:408   閲覧ユーザー数:408

第6話 ソノオの花伝説祭り

 

小さい抜け道を通ったクウヤは、花の町ソノオタウンに到着した。

 

「うわぁ・・・あちこち花だらけだ」

 

カラフルな花が草原に咲いているばかりではなく、民家の鉢植えや庭、プランターにも様々な種類の花がある。 その圧倒的な花の量にクウヤはぽかんとした。

 

「綺麗っちゃ綺麗だしいい香りもすっけど、花ありすぎだなぁ」

「まぁ、貴方は何も知らないみたいですね」

「え?」

 

彼に声をかけてきたのは上品な女性だった。 清楚なワンピースに唾の大きい帽子をかぶっていて、見るからにおとなしそうだ。

 

「ソノオタウン・・・というよりも、貴方はシンオウ地方自体が初めてなのかしら?」

「ああ、そうだけど」

 

嘘は言っていないのでクウヤは素直に答える。

 

「ならちょうどいいですわ、シンオウはソノオタウンに昔から伝わる花伝説をお聞きになって。」

「ソノオタウンの花伝説?」

 

女性はクウヤにソノオの花伝説を話し始めた。

 

ーーー

 

 

かつてこのソノオは草木一つはえていない荒れ地だった。

 

多くの人が草木の種を植えそれを生やし緑を増やそうとしたのだが

すぐに枯れて失敗を繰り返していた。

 

だが人々はあきらめなかった。

どうしてもここに緑を生やしたかった。

 

その姿を見て、誰かがありがとうという感謝の気持ちを抱き

この地に祈りを捧げると、

緑は少しずつ広がり花が咲き乱れていった。

 

やがてソノオの大地は花であふれ、

かつてそこが荒れ地だったことを忘れさせた。

 

そして、人々は感謝の気持ちを忘れないように

この地に咲く花を大切にしていこうと誓いをたて

緑を栄えさせていった・・・。

 

 

ーーー

 

「という伝説から始まった風習が、今のソノオタウンの姿なのです。 花で満ちたこの町はそんな言い伝えがあるからこそなんですよ」

「へぇー!」

 

難しい話は解らないクウヤだが、ソノオタウンが花にあふれている理由がその伝説にあるというのが解っただけでも彼にとっては十分だった。

 

「話してくれてありがとう、じゃあおれいくな!」

「ええ」

 

元気に笑って手を振り去っていくクウヤに対し、女性は穏やかにほほえみ小さく手を振った。

 

 

「出てこい、ヒーコ、ズーバ!」

 

広い場所でクウヤはヒーコとズーバを出した。 ボールからでた2匹は背伸びをする。

 

「お前たち、最初のジム戦はなんとかダイゴのおかげで勝てたけど、次はどんなポケモンを使ってくるかわかんないから、今からでもしっかりトレーニングして力を付けようぜ!」

「ヒッコヒコゥ!」

「ズバッ」

「そして次のジムのバッジも、ゲットだぜ!」

 

と、2匹に呼びかけ次のジムに向けての気合いを入れていた。 ヒーコとズーバも、そんなクウヤと同じ気持ちのようで気合いが十分だった。

 

「あら、ジム戦のご相談ですか」

「あれ? あんたさっきの・・・」

 

トレーニングを始めようとしたクウヤに声をかけてきたのは、先程クウヤに花伝説をはなしてくれたあの女性だった。

 

「申し遅れました、私の名前はモミです」

「モミさん、か? おれの名前はクウヤ!」

 

モミの自己紹介を受け、クウヤも名前を名乗り返した。

 

「ところでクウヤさんは先程ポケモンジムのお話しされてましたよね」

「ああ」

「どのジムに挑むんですか?」

「えぇっと、確かー・・・」

 

クウヤはタウンマップを取り出す。 コトブキシティにいく前に、ヒカリから次のポケモンジムの場所を教えてもらっていたのだ。

 

「ここ、ハクタイシティ、だったっけ」

「そうなんですか」

 

クウヤの次の目的地を聞いてシオリはぴくりと反応した。

 

「だったら一度、私とポケモンバトルしてみませんか?」

「え!?」

 

突然のモミからのポケモンバトルの申し出にクウヤは驚く。

 

「私もポケモンバトル、できるんですのよ。 つまり私はポケモントレーナー・・・目と目があったそのときから既に勝負は始まっていたも同然ですわ、だから、貴方もジム挑戦する立場のトレーナーなら私の挑戦を受けてくださいまし」

「そうかよ・・・わかった、それじゃあ頼むぜ」

 

クウヤの笑顔に、モミはにっこりと笑って返し、モンスターボールを構えた。

 

「それではお願いします、チェリンボ!」

 

彼女が出してきたのはサクランボにそっくりな姿をした、赤くて丸いからだの可愛らしいポケモン、くさタイプのチェリンボだった。

 

「いくぜ、ズーバ!」

 

クウヤが選んだのはズーバだった。

 

 

ポケモンバトルが始まった。 最初に動き出したのはモミのチェリンボだ。

 

「チェリンボ、たいあたり!」

「かわせっ」

 

突撃してきたチェリンボをうまく空中で回避し、そのままつばさでうつ攻撃を繰り出しチェリンボを攻撃した。

 

「ちょうおんぱ!」

「マジカルリーフ!」

「えっ!」

 

そこからさらにちょうおんぱを浴びせて混乱させようとしたが、そのちょうおんぱはマジカルリーフによってかき消された。

 

「そんなのアリかよっ!? だったらここからはがねのつばさ!」

 

クウヤは変化技を使うのをやめて攻撃技に専念することを決め、はがねのつばさで攻撃し体制を整えることを試みる。

 

「まもる!」

 

だがシオリの反応も早く、咄嗟にまもるで防御されてしまい、さらにウェザーボールがとんできてズーバはダメージを受けてしまう。

 

「大丈夫か、ズーバ!?」

「ズバッ!」

「よし、近づいてきゅうけつ攻撃で回復しろ!」

 

クウヤの指示に合わせてズーバはチェリンボに接近しかみつく。 だが本来指示したきゅうけつの技は発動されず強い毒の力がズーバの牙からあふれ出てそれがチェリンボに影響を与えた。

 

「えっ!?」

 

クウヤにも一瞬、なにがあったのかわからなかった。 チェリンボはどこか苦しそうな顔をしている。

 

「なにがあったんだ?」

「なんてこと、チェリンボがどく状態になってしまうなんて・・・!」

「えぇっ!?」

 

モミの言葉にクウヤは驚いた。 自分は確かにズーバにきゅうけつを指示した。 本来きゅうけつという技は相手の体力を奪う技のはず、どく状態になんてできない・・・そもそもズーバはどくタイプであってもどくの技を覚えていない。

 

「ズーバ、今のってなんだよ!?」

「ズバッ?」

 

どうやらズーバ自身、先程の技のことはなにも知らず無意識のうちにつかっていたようだ。

 

「・・・どくどくのキバ」

「へ?」

「もしかして、さっききゅうけつをつかった拍子に使えるようになったみたいですね。」

「・・・そうなのか?」

 

クウヤは目の前で起きたことが信じられないらしい、ズーバをじっと見る。 そんなクウヤの姿を見てモミはふぅ、と小さく笑うとチェリンボにお疲れ様、と声を掛けてボールに戻した。

 

「え、もうバトルおわりかよ?」

「ええ・・・あれ以上の試合続行は不可能ですわ。 第一私にとって重要なのは勝ち負けよりポケモンそのものですもの。」

「・・・」

 

今回の勝負はクウヤの勝利だ。

 

「お疲れズーバ」

 

クウヤはズーバを、自分の肩に乗せた。

 

 

「・・・でもモミさんもすげぇや」

「え?」

「だってあんたはチェリンボがおれの持ってるポケモンに不利だとわかってて勝負したんだろ?

それにポケモンのことを考えて降参するなんて、勝つより難しいことだよ・・・。」

 

クウヤは、アダンから聞いた話を思い出す。

過去に自分に挑戦し勝利を追求するあまりポケモンに負担をかけたまま戦い続けたポケモントレーナーのことを。

実力を見せつけトレーナーに勝利したが、ポケモンは重傷を負いトレーナーは勝つこと以外を考えられず降参する選択をだせなかったためにポケモンを傷付けたことを悔やんでいたという話を。

 

「私が強く胸を張れるのはポケモンがいるからですから。 私がこうして外で自由に遊べるのも・・・」

「そうなんだよな」

 

クウヤも同じ気持ちだ、ポケモンがいるから自由に旅ができる。

 

「あとクウヤさん」

「なに?」

「私がこうしてあなたに挑戦したのも理由があるんです」

「そうなの? それでその理由って?」

 

意外な理由にクウヤは驚くがとりあえずその理由を尋ねてみたかったので実行した。

 

「ハクタイシティのポケモンジム・・・そのジムリーダーは草ポケモンの使い手なんですよ」

「そうだったのか!」

「貴方のポケモンは2匹とも草ポケモンには有利ですけども、相手はジムリーダー。

必ず対策を持ってますわ」

「だろーな、と思ったぜ」

 

一つのタイプのエキスパートになるのだからその長所も短所も受け入れ、その対策を練るのは当然のことだ。

過去に戦ってきたジムリーダーも弱点となるタイプのポケモンにもひるまず戦い、相性など簡単に覆いつくしてしまっていた。

だから次のジムリーダーも同じだろう。

それはクウヤも覚悟していたことだ。

 

「・・・ホント、頑張らなきゃな」

「ええ、それを私は教えたかったんですのよ」

「?」

 

でもそこまでするなんて、この人は何者なんだろう。

クウヤはシオリに聞こうとしたが迎えの馬車がきたといって、モミはそっちへ向かった。

 

「それでは、また会ったら私にリベンジをさせてくださいね」

「ああ」

 

といってモミは馬車に乗ってそこを去っていった。

 

「おれももっと、気合いを入れなきゃ!」

 

今回のバトルを通して、クウヤはレベルアップへの思いを持ち直した。


 
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