No.910261

真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第二十話


 お待たせしました!

 それでは今回よりしばらく拠点回を

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2017-06-15 21:58:46 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:1984   閲覧ユーザー数:1260

 

「それでは、新たな出発に向けて…乾杯!」

 

『乾杯!』

 

 俺が戦の功により参軍などという偉そうな肩書をもらってから一ヶ月程が過ぎ、部下と

 

 なってくれた白蓮の怪我が治ったこの日、俺は部下となってくれた人達を集めて、ささ

 

 やかな宴のようなものを開いていた。

 

「しかし、俺達の所も随分と大所帯になったものだな」

 

「さ、さ、最初は、お、お、俺と、こ、こ、公達の兄貴だけだったんだな!!」

 

「大所帯っていっても…俺達を入れてもまだ三十五人だけどな」

 

「それでも、お前さんと会った頃を考えたら十分大所帯だよ。まさか、誰かを指揮する立

 

 場になるなんて思いもよらなかったけどな」

 

「お、お、俺も、な、な、なんだな!!」

 

「…この一ヶ月、兵達の訓練をまともに身動きの取れない私に丸投げした割には、随分と

 

 苦労したような事を言うんだな」

 

 公達と胡車児がしみじみと感慨を述べていた横から白蓮がそうジト眼でツッコむと、二

 

 人はあさっての方を向いていた。

 

「…それでも、軍の指揮は白蓮様が執られるのが一番良いと私は思います。お二人は誰か

 

 に何かを指示するという事には甚だしく不適格のようですから。何せ、戦の無かったと

 

 いう国から来た一刀様の方が遥かに上な位なのですから」

 

「……輝(てる)は私を褒めてくれたのかな?」

 

「少なくとも、白蓮の事は褒めたって事で良いんじゃないか?昨日『…白蓮様がいなかっ

 

 たら、私が兵の指揮まで執る事になったかもしれなかったので、一刀様が白蓮様を召し

 

 抱えられたのは良い判断でした』とか言ってたから」

 

 

 

 ちなみにこの輝という少女…連合との戦の間、俺の補佐役としてついてくれた文官の李

 

 儒さんである。

 

 戦が終わり、俺が参軍という地位を与えられ、月様より『お金は用立てるから、自分の

 

 部隊を造るように』と言われた時に、真っ先に俺の部下になると手を挙げてくれたのが

 

 彼女であった。

 

 普通に考えて、月様の直臣という立場から俺の部下になるというのは一種の降格みたい

 

 なもののはずなのだが、彼女は『…私は北郷様の補佐を命じられて、それはまだ撤回さ

 

 れていませんからそれで良いのです』と言って、極々当たり前のように此処にいてくれ

 

 たりする。まあ、実際の話、兵達の給金とか、部隊の必要経費の計算とか全部やってく

 

 れてとても助かっているので、今更手放す気も無いのだが。

 

(言うまでも無い事だが、輝とは彼女の真名である)

 

 そして、公達と胡車児も立場的に俺の部下となってくれたのではあるが…公達は頭の回

 

 転も早く兵法にも通じているので、軍師的な立場にはなってもらっているのだが、彼の

 

 基本姿勢は『付いて来れない奴は置いていく』という物なので、公達より直接指示を受

 

 けても、相手の理解度にばらつきが出てしまうという難点があり、胡車児は『お、お、

 

 俺が、ひ、ひ、人に、な、な、何かをお、お、教えるなんて、む、む、無理なんだな!』

 

 と自分で言っている始末で、とてもじゃないが兵の指揮を…などというのには不向きな

 

 話であった。

 

 そして、俺は当然戦の事ながら素人に毛の生えた程度なので、輝にしてみれば『自分が

 

 やるしかないのか』とため息まじりに思っていたらしいのだが、そこに白蓮が加わって

 

 くれたので、彼女としては兵の指揮を任せられる人がいるので裏方業務に集中出来ると

 

 安堵している状況なのだそうだ。

 

(ちなみに胡車児は平時の俺の護衛及び戦の際に前線で暴れる係との事らしい)

 

 

 

 しかし、普通に考えるとなかなかな面子だよな…軍の指揮官に公孫賛、軍師に荀攸、文

 

 官に李儒、護衛の胡車児…俺なんかが主で良いんだろうか、マジで?

 

「この部隊は今回の戦でのお前の功に対して与えられた物、お前が主でなくてどうするっ

 

 て話だ…まあ、あんまり深く考えるなって事だな」

 

「…俺の心を読まないで欲しいのだけど」

 

「俺だって読みたくなかったけど、今完全に顔に出てたし」

 

「お、お、俺にも、わ、わ、わかったんだな!」

 

 …胡車児にまで分かるって余程俺不安そうな顔をしてたんだろうか?

 

「…一刀様は今まで通りで構いません」

 

「ああ、細かい事はこっちに任せてくれればな。月様だってお前に期待しているのはそっ

 

 ちじゃないのは分かってるだろう?」

 

「…それもそうか。そもそも戦の事とか政の事とか言われてもあまり分からないし」

 

「そういうこった。お前は国が豊かになるような絡繰をババンと考えろ」

 

「そういえば、とりあえずその事だけど…新たな物を考えるのももちろんとして、まずは

 

 今出来る物を普及させていこうと思うのだが、どうだろうか?」

 

「今出来る物って、何をだ?」

 

「まずは『無尽灯』かなと思ってる」

 

「なるほど…確かにあれは前に一個造ったきりだしな。あれなら、月様や詠からの予算の

 

 承認も受けやすいだろうな」

 

 俺と公達がそう話している横で輝と白蓮が頭に『?』マークを浮かべているような顔を

 

 している…そうか。

 

「そういえば、二人は無尽灯を見た事は無かったな」

 

「…はい、その言葉も今初めて聞きました」

 

 

 

「ならば、実物を見に行こうか」

 

「洛陽にあるのか?」

 

「ああ、俺も最近知ったんだけどね」

 

 ・・・・・・・

 

「おや、北郷殿。よくぞ参られた」

 

 次の日、俺達が来たのは橋玄様というお役人の屋敷であった。最近になって、前に無尽

 

 灯を買ってくれたこの人と再会して、定期的にメンテナンスをする約束をしていたのだ。

 

「こんにちは、橋玄様。実は、こちらの二人に無尽灯を見せたいと思って来たのですが…

 

 大丈夫ですか?」

 

「ほぅ…もしかして、あれを董卓様に売り込もうと?」

 

「はい、新たに何かをと思ってもまずは予算の確保からと思いまして」

 

「なるほど…私としてもあれが普及するのは良い事だと思いますからな。存分に見て行っ

 

 てください」

 

 俺達は橋玄様の案内で彼の自室に向かう。そして、着いたその部屋の机の横には無尽灯

 

 が存在感満載の状態で鎮座していたのである。

 

「…これが無尽灯」

 

「へぇ…これで夜でも部屋が明るくなるのか?」

 

「ああ、そろそろ夕刻近くで薄暗くなってきたから点検も兼ねて灯りを点してみようか」

 

 俺は無尽灯の下部の蓋を開け油を注ぎ、タイミングを見計らって素早く灯心に火を付け

 

 ると、薄暗かった部屋が一気に明るくなる。

 

「おおっ、凄いなこれ!!」

 

「…確かに。これなら月様からの予算もすぐ下りるかと」

 

 二人は無尽灯の明るさに感動すら覚えたかのように感嘆の意を洩らす。

 

 

 

「はい、これならばすぐにでも予算を出しましょう。とりあえずは百個作成を依頼するの

 

 で、必要な経費を私か詠ちゃんに知らせてください」

 

 その声に驚いて後ろを振り向くと、そこにいたのは月様であった。

 

「月様!?何故此処に!?」

 

「橋玄殿は私の学問の師匠ですので、今でも時々教えを乞いに来ているのです」

 

「…私の如き一役人風情が相国様になったお方にお教えする事など、何一つ無いと申してい

 

 るのですけどね」

 

「そのような事はございません。私は未だ浅学の身、橋玄殿の言葉や教えから学ぶ事はまだ

 

 まだ多うございます」

 

 なるほど…橋玄様は月様の学問の師匠なのか。あれ?という事は、もしかして…。

 

「ええ、ご名答。私も橋玄様の教え子よ」

 

 …そう俺の心の中を読むような発言と共に現れたのは華琳であった。

 

「ふふ、華琳さんは定時報告で今日洛陽に来たのです。折角なので二人で久しぶりに橋玄殿

 

 の所に行こうと誘ったんですよ」

 

「そうしたら、そこに一刀が無尽灯と一緒にいたってわけ。話が早くて良いわ」

 

「話が早いって?」

 

「私が洛陽に来たのは定時報告と同時に、一刀に無尽灯を注文する為でもあったからよ。月

 

 が百個造らせるっていうのならこっちにも何個か回してもらえるのかしら?」

 

「ダメですよ、華琳さん。こちらの分はあくまでも宮中で使用する為の物ですから。それに、

 

 これだけの物となれば、おいそれと造らせるわけにもいきません。今後は『相国』たる私

 

 の許可の上でのみの生産にさせていただきますので、悪しからず」

 

「あらあら『相国様』ともあろうお方が何とお心の狭い事を仰る。これだけの物であるから

 

 こそ、自由に造らせて大陸中に普及させた方が国の発展の為になるんじゃなくて?」

 

 

 

 …そう語る二人は顔こそ満面の笑みであるが、辺りに漂うオーラは半端なく黒い物が渦巻

 

 いているように感じる。白蓮はさすがに耐えているものの、輝はすっかり怯えて俺の後ろ

 

 に隠れてしまっている状態だ。

 

「二人とも、そこまでにしておきなさい。わざわざ此処にいがみ合いに来たわけでもないの

 

 だろう?」

 

 その空気を打ち破るかのように橋玄様が先生っぽい口調でそう言うと、二人は少々気まず

 

 そうな表情で場を治める。どうやら、そうなることを見越してわざとそういう口調にした

 

 ようだが…相手が相国様や州牧様であってもそういう風に出来るというのは純粋に凄い事

 

 ではある。そういう所が月様や華琳から慕われる要因なのかもしれないな。

 

 ・・・・・・・

 

「では、また一月後に来ます。それまでに何か不具合が出れば連絡ください」

 

「今後もよろしくお願いしますよ。相国様も州牧様もくれぐれもご自愛を」

 

 それから一刻後、無尽灯のメンテナンスを終えた俺は橋玄様の屋敷を辞し、月様を華琳も

 

 同じタイミングで屋敷を出たのであった。

 

「此処からでも灯りが見えるなんて、無尽灯って名前が付いているだけの事はあるな」

 

「…はい、これだけの物が普及すれば、多少夜遅くまで書類仕事が出来ます」

 

「そう、私も初めてあれを見た時にそれを思って一刀に必ず造らせるって決めたのよ。なの

 

 に…」

 

「便利なのは分かります。私もすぐにでも欲しい位ですし。ですが、だからこそ、自由に一

 

 刀さんに造らせる事を認めてしまうと、注文が殺到してしまって、一刀さんの負担が増大

 

 する事になります。それで一刀さんが倒れたりしたらそれこそ本末転倒な話ですから」

 

「だったら、その負担を軽減する為にも、真桜の常駐を認めて欲しいわね。彼女が一刀の片

 

 腕となれば一気に効率も上がるわよ」

 

 

 

「でも、それでは楽進さんと于禁さんの負担が増えてしまうのではありませんか?ひいては

 

 それが華琳さんの負担へとなるのであれば、相国としては認められません。この間もそう

 

 お話させていただいたはずですよね?あの時に華琳さんも納得されたはずですが?」

 

 …話の中にさりげなく自分の要求を入れてくる華琳もなかなかだけど、それを笑顔でかわ

 

 す月様もさすがだな。

 

 ちなみに今名前の出た真桜の話なのだが…戦の最中に押しかけ助手として俺と行動を共に

 

 していた真桜を、華琳が『そのまま連絡役兼俺の助手として洛陽に常駐させたい』と提案

 

 したのを、月様が『彼女は陳留において楽進・于禁と共に街の警備や新兵の鍛錬も行って

 

 いると聞いているので、洛陽に常駐させたら残りの二人の負担が増えるだけなのではない

 

 か?』と却下したという経緯があったのである。しかし、真桜本人は俺の所に行きたいと

 

 熱望し続けているらしく、楽進さんと于禁さんも『本人がそこまで希望するならこちらは

 

 何とかするから』と言って真桜を送り出そうとしてくれているらしいのだが、月様がまっ

 

 たく許可を出さないまま今に至るという状況であったりする。

 

「ふぅ…何度話してもこの件は平行線ね。こっちだって洛陽に連絡役がいれば、此処まで頻

 

 繁に報告に来なくても済むというのに」

 

「連絡役についても、葵様のような遠方の領土の方のみに認めただけです。陳留はそこまで

 

 遠方ではないのですから。それに、毎回華琳さん自ら来られなくても大丈夫だと言いまし

 

 たよね?」

 

「はいはい、分かってますって。もう…本当にこうと決めたらまったく退かないのは相変わ

 

 らずなんだから」

 

「そういうそちらこそ、諦めの悪さは相変わらずですよね」

 

 二人は最後にそう軽口を叩くと笑いあっていた。何だかんだといっても個人レベルでは二

 

 人はお友達である事に変わりはないようだな。

 

 

 

 そして次の日。

 

「こちらが無尽灯百個製作に必要な部材とその金額の見積もりの一覧になりますので、確認

 

 をお願いします」

 

 俺は無尽灯百個の見積書らしき物を書いて詠の所に持っていく。

 

「あら、随分早いのね。確認した上で正式の依頼を出すから、ちょっと待ってもらえるかし

 

 ら?明日中にはいけるとは思うから」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 ・・・・・・・

 

 その一刻後、詠は月の執務室で一刀からの見積書を月と二人で見ていた。

 

「詠ちゃん、意外と安くあがるみたいだね…あれだけの物だからこの倍はかかると思ってい

 

 たんだけど」

 

「ボクもそう思ってたから驚いたわ。書類を確認したけど、工程や品質で手を抜いた感じは

 

 しないし…これなら問題ないわね」

 

 月と詠はそう言うと、一刀の出した書類に『承認』という印と自署を入れる。

 

「でも、意外に手堅い所から来たわね。もっと『これならば戦の役に立ちます』とかいうの

 

 を持ってくると思っていたのに」

 

「戦だったから一刀さんはああいう物を造っただけで、普段は生活の役に立つ物や娯楽で使

 

 える物の方が良いって言ってたよ。私も、出来れば一刀さんにはそういう物だけを造って

 

 いてもらいたくはあるんだけど…」

 

「まだそうはいかないか…劉焉からはまだ何も返事は来てないのよね?」

 

「うん…それに葵様の話じゃ北方が少しきな臭いって」

 

「五胡か…ボク達も天水にいた頃は何度か小競り合いじみたのはやり合ったけど、大規模に

 

 動くとなったらね…防備は進めているけど、あまり役に立ってほしくは無いわね」

 

 

 

「出来れば、何事も無く行ってはほしいけど…もしもの為の備えは必要だし。一刀さんも、

 

 その辺りは分かってくれているから話が早くて助かったんだけどね」

 

「後は一刀の部下をもう少し増やしていければ…部下が四人と兵が三十人じゃまだまだ足り

 

 ないしね」

 

「うん、部下はそれでも良いけど、少なくとも兵は百人…出来れば二百人かな」

 

「一刀の絡繰製造を手伝う人員に、実際にそれを試験運用する人員…最初に月から『一刀を

 

 参軍に任じて部隊を預ける』って聞いた時には『何で参軍なのに部隊を?』って思ったけ

 

 ど、一刀の絡繰を国の為に軌道に乗せる為には一刀が自由に指揮出来る人員が必要よね」

 

 詠はそう言いながら一人納得の表情を浮かべる。

 

「本当は、こっちから兵の指揮とか出来る人材を送り込めれば良かったんだけど…」

 

「それも白蓮が一刀の部下になって万事解決だったし…しかし、あの公孫賛が生きていた上

 

 に何時の間にやら一刀の部下になるって、一体どういう奇跡よ、それ?」

 

「そうだよね…私も詠ちゃんも負傷者の中に公孫賛さんがいるなんてまったく気付かなった

 

 しね。一刀さんは一体どうやって見つけたんだろう…そういう絡繰でもあるのかな?」

 

 月と詠はそう言って首をかしげるが…負傷者リストの中に『公孫賛』の名前が普通に載っ

 

 ていて、自分達がそれに気付かなっただけだという事はさすが認識外の事であった。

 

 ・・・・・・・

 

「くしゅん!」

 

「どうした、白蓮?風邪でもひいたか?」

 

「いや、そうじゃないけど…誰か噂でもしたのかな?」

 

「…それは無いとはっきりと断言させていただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こら待て、輝!私にだって噂をしてくれる人の一人や二人位いるはずだ…多分。うん、き

 

 っと北平で銀蓮とか星とか朱里とかがちょっと位してくれるはずさ…うん、してくれるよ

 

 ね、きっと。でも、もう私の事なんか忘れてしまわれたり…ああ、きっとそうだ。皆忙し

 

 過ぎて、私の事なんか…畜生!一刀、頼むから私の事を見捨てないでくれ~~!一生懸命

 

 頑張るからさ~~~」

 

「ああ、大丈夫だから、うん。安心してくれ。白蓮がいなくなったら俺が困るから…多分」

 

「多分って言うなぁ~~~っ!!」

 

 白蓮の叫びは若干の虚しさを伴ないながら空へと消えていったのであった。

 

 

 

                                       続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回も投稿が遅くなりまして申し訳ございません。

 

 今回は、拠点第一弾という事で一刀部隊の船出をお送

 

 りしました。

 

 今でこそまだ兵は三十人ですが、作中での月と詠の会

 

 話の通り、もう少し増えますので。

 

 次回も拠点回です…何をするかは色々検討中です。

 

 

 それでは次回、第二十一話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 真桜が一刀の下へ行けるのは結構先になるかもし

 

    れません。

 

 

 

 


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