No.902550

恋姫†夢想×三極姫 ~選ばれし英雄達~

アインさん

恋姫シリーズ復活記念として投稿。
今回は三極姫シリーズのキャラ達も交えての物語。

物語は『銀河』『北郷』『暁人』の3主人公を軸を展開した三国志物語です。
メインは銀河。

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2017-04-24 08:27:12 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1439   閲覧ユーザー数:1385

 この世界は混沌に渦巻いていた。

 飢饉、略奪、横領など。

 弱き人間はその犠牲になって、力ある者にいいように扱われ、人が人を喰らいつく醜い時代だった。

 

『蒼天すでに死す 黄天まさに立つべし 歳はこう甲子にありて 天下大吉ならん』

 

 そんな弱き人間達はこれを流布した人間『張角』という者に同調した。

 張角と同じ服装の黄色い服と頭巾を着て、この世界を納める王に戦争を仕掛けた。

 

 この戦争は全土に広がり、今まで影に埋もれていた各地の諸侯達にも火が灯って、功績を残し次にこの世界を納める王となることを望ませる。

 だが、誰しもがその望みを叶えることは出来ない。

 

 数多の犠牲を払い、絆と強運が備わった人間以外は。

黄巾の乱編 前章 『銀河と北郷』

 黄色い頭巾を被った人間、通称『黄巾』の戦は全土へと広まったことにより『穴』が生まれた。

 その穴とは指揮系統である。

 

 最初の決起した頃は、張角の指揮や腐敗した国の情勢のために、連戦連勝だった。

 だが、巨大化した組織は各部隊の隊長達が独自の判断によって行動し、守るべき人々を傷つけたり、村を壊滅か略奪して、私有地化にしてしまう。

 

 この行動により黄巾達に同調していた人々は絶望し離反、国が募集する義勇軍に加担して反撃へと移行した。

 その一人『銀河』という男も義勇軍に参加していた。

 

「俺は子供の頃から、戦場に出入りし、生き倒れた連中から武器や甲武を奪い売りさばいて生きてきた」

 

「そして、いつしか剣技を覚え、自身の力のみで生きてきた」

 

 ちなみに銀河というこの男の生き方は珍しくもない。誰もがしているような時代でもあり、『それしか』彼には生きる道がなかった。

 

「戦は徐々にこっちの義勇軍が傾いてきた。しかし・・・」

 

 銀河は確信していた。

 この戦の先には新たなる戦が待っていることに。

 

 ここまで拡大した黄巾との戦。

 そして、それをすぐに鎮圧出来ない国やこれを後押しにのし上がろうとする諸侯達。

 

 そんな戦がまだ、延々と続くことに自身は何が出来るのだろうか、と。

 

「いや、今は生き残ることだけを考えよう」

 

 自分はこれからもこうして、生きていくしかない。

 銀河はそう割り切りって、一人眺めていた荒野を後に自身の義勇軍陣地へと戻るよう足を向けた。

 

「・・っ!」

 

 激しい強風が銀河を襲った。

 

「な、なんだ!?」

 

 さっきまで風一つなかった荒野は、砂塵舞う大地へと変わり全体を暗くする。

 

「く、くそ、前が・・・っ!」

 

 砂塵により目も開けていられない状態の中、声が聞こえた。

 

「選ばれた人形よ。お前はこの世界をどうしたい?」

 

「誰だ!?」

 

「答えろ、お前はこの世界をどうしたい?」

 

 銀河の返答に応える気はなく、謎の声は同じ質問をしてきた。

 

「お、俺は・・・」

 

 銀河は自身の過去を思い返す。

 

 物心についた時には身内も頼れる者もなく、生きていくために血に染めた人生。

 殺戮と飢饉や餓死、自分と同じ人々をどうすることも出来ずに眺めるだけの日々。

 助けたいと願ったこともあった。でも、自分は『自分』を助けることしか出来なかった。

 

「俺は・・・俺は・・・」

 

「答えろ!!」

 

 砂塵から聞こえる声の怒声に後押しするように銀河は答えた。

 

「この世界に希望が欲しい! 人々が笑顔で暮らせられる、そんな希望を!!」

 

 瞬間、左右に舞っていた砂塵は上空へと移動した。

 

「・・・いいだろう、その望みの種をくれてやる」

 

 その答えと共に砂塵は止んだ。

 

「・・・一体、さっきのは?」

 

 先ほどの現象に疑問が残る中、銀河の目の前に人が寝ていることに気が付いた。

 

「・・・人?」

 

 ゆっくりと近づき、その人間を観察して見る。

 人間は自分と同じくらいの年頃の男であり、見たこともない真っ白な服を着ていた。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 男は気持ちよさそうな寝息をたてている。

 銀河は先ほどの謎の声が言った言葉を思い返した。

 

『望みの種をくれてやる』

 

 望みの種。

 銀河が望んだ希望に満ちた世界を叶えてくれる種。

 

「この男が種だって・・・?」

 

 確かにこれまでの流れで考えれば、この男こそが銀河が望みを叶えてくれる人間となる。

 しかし、これを鵜呑みにしていいのかどうか悩んでいた。

 こんな時代である。嘘や狂言などいくらでも飛び交っている。

 

「・・・どちらにしても、コイツをこのままにすることは出来ない、か」

 

 銀河はこの男を連れて帰ることにするのだった。

 黄巾賊を各地で打ち破る義勇軍の中で、特に活躍している部隊がいくつかあった。

 

 曹操、孫権、劉備。

 

 のちにこの三人は魏、呉、蜀を建国して世界をまとめる英雄達である。

 ただし、それは未来の話であり、今の三人はまだまだ他者にののしられる時代を送っていた。

 この銀河もいずれはその三国のうちどれかに属するが彼も同じ状態である。

 今の彼は、謎の声に願い導きのままに、そこで出会った謎の男を保護していた。

 

「俺は北郷一刀。聖フランチェスカ学園の学生だ」

 

「聖フラン・・・チェスカがく・・・えん?」

 

 表向きは義勇軍の参加者として、連れてきたこの北郷一刀と名乗る男はどうやら異国の人間だった。

 彼が語る出来事はとても信じがたく夢物語のような話ばかりだったからだ。

 しかし、そんな異国の人間である北郷もある一言で変わる。

 

「三国志・・・」

 

「ん?」

 

「いや、この世界って俺が知っている歴史と似た感じなんだなーって」

 

 似ていると言われるこの世界。

 もし、それが本当なら北郷は知っていることになる。

 この世界の『行く末』を。

 

「なぁ、教えてくれ北郷。お前の知る歴史を」

 

 銀河のその質問に、北郷は困った顔をしてしまった。

 

「いや、銀河から聞いた話では全部が全部、俺の知っている歴史ではないし、それに・・・」

 

 どうやら北郷は話すことに意味を考えている。

 答えを知り過ぎた先を恐れているのか、信憑性を疑っているのか。

 

「・・・」

 

 銀河自身もまだ、半ば彼を信頼はしていない。

 あんな出会いで会ったのだから、何かしらの悪意があるのは間違いない。

 それはあの砂塵の声の主か北郷なのかは分からないが。

 

「わかった、今はいいよ。でも、いつかは話してくれよ?」

 

「ああ、わかった約束するよ」

 

 だから今は保留として、次にするべきことに行動を移した。

 黄巾賊を討伐することに。

 銀河は自身の置かれている状況を見せるために、北郷を前線に近づけてしまったことに後悔した。

 戦場立った北郷は役立たずだった。

 生きるか死ぬかわからぬ状態の中で、北郷は衰弱していた。

 理由は簡単。

 北郷は『戦争』を知らないから。

 

「おい、北郷! おい!!」

 

「はぁ、はぁ・・・はぁ!!」

 

 北郷のこともあり、後方に下がっていた銀河だったが黄巾賊の攻勢は凄まじく、とうとう銀河の所にも押し寄せてしまっていた。

 

「義勇軍など恐れに足りず!」

 

「我らに天あり!!」

 

 黄巾賊は勢いのままに、次々と義勇軍の兵を倒していった。

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

「北郷・・・!」

 

 銀河は今の北郷の状態を知っている。いや、誰しもがきっと戦場に行けば味わう。

 『死』と『殺戮』の恐怖だ。

 だから初めてである北郷には荷が重かった。

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

 ガキンと剣と剣を交じり合う。

 そして、次の振りには相手の体を斬り捨てた。

 

「ぎゃぁ!!」

 

 しかし、これは乗り越えてもらわないといけない試練だと銀河は思っていた。

 これが自分が今いる世界。

 今、目の前に起きていることであり、自身が置かれている状況なんだと。

 

「もらったぁ!!」

 

「!!」

 

 黄巾賊の一人が北郷に向かって行った。

 北郷はこの惨劇に絶望して動けない。

 

「北郷―――!!」

 

 北郷を呼ぶ声は戦の叫びにかき消されて聞こえない。

 もうダメだ、と思った瞬間。

 

「ぎゃぁ!!」

 

 叫んだのは敵の声だった。

 敵は倒れ、北郷を庇うように刀を振るう。

 

「あれは・・・」

 

 それは義勇軍として何度か見たことがある人物。

 両肩に鬼の鎧を装着し、額に宝石を埋め込んだ白銀の女性。

 銀河自身も何度も助けられ、己がいつか武において到達したいと願う人間。

 

「呂布・・・奉先・・・」

 

 武の覇王と言われる呂布奉先だった。

 

「義母上・・・大丈夫?」

 

 すぐにその呂布の横に紅髪をした女性が現れた。

 彼女は北郷をチラッと見るが、すぐに呂布へと視野に戻す。

 

「行くぞ呂玲綺、遅れるな」

 

「・・・うん」

 

 二人の合図と共に、そこは一気に呂布達の独断戦場化になるのだった。

 


 
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