No.901340

「真・恋姫無双  君の隣に」 第64話

小次郎さん

一刀、華琳、麗羽。
乱世を制するのは誰か。

2017-04-15 17:23:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6179   閲覧ユーザー数:4755

どのような状況にも冷静に対応する事はとても大事な事です。

特に軍師である私は判断一つが兵の命に直結します。

さながら水の如く、思考を柔軟にしなければいけません。

臨機応変、軍師として心掛けて置く言葉の一つです。

ですが臨機応変と言えば聞こえは良いですが、対応に追われ後手としてならどうでしょうか?

相手に主導権を取られていては何にもなりません、只の負け惜しみです。

あくまで優勢の立場を取ってこそ意味がある言葉です。

「朱里さん、只今戻ったのです。御指示通りに探ってみましたが、気取られた様子も無く特に怪しい動きも見られません」

「ありがとうございます、明命さん」

戦が起こる前の準備段階こそ勝敗を決めると、孫子の教えを今更ながらに実感します。

惜しまぬ仕込みが多ければ多いほど選択肢が多岐に別れるのですから。

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 第64話

 

 

(鄴)

ガキーーーーンッッッ!!!

重い、速い。

恋の攻撃より先に届いた氣が込められた剣、危なかった。

本気で戦って初めて先手を取られた。

「お前、恋より強いかもしれない」

「フン、貴様こそ木偶にしては上出来だ。たかが二十年そこらで此処まで武を極めるとはな」

お爺ちゃんみたいな言い方。

目の前の敵は若い。

でも不思議、おかしくない。

その武は恋よりも長い長い時間で身に付けた強さ、磨きぬかれた刃、そう感じる。

「それでも、勝つ」

以前の恋なら負けてた。

でも、今の一刀を護る恋は絶対負けない。

 

まさか受け止めるとは、やはりこいつは別格か。

関羽や張飛、黄蓋に楽進、それに官渡で戦った夏侯惇、張遼、孫策。

万に匹敵する武を持つと言われている奴等ですら俺と一対一は無理だったものを、これが武神、呂布か。

敵陣の乱れをつき後少しで北郷まで届いたものを、こいつに止められ乱戦と化した。

最早こうなっては退くしかあるまい、だが黙って見逃すほどこいつも甘くは無い。

・・クソッ、腹立たしい。

こんなガキが長き時を経て磨かれた俺の武と互角だと?

俺にとって唯一と言っていい管理者として手にしたものを。

ああ、本当に腹立たしい、なのに何故、これほど心が高揚する?

呂布の動きは更に良くなり今迄にないダメージを受けるが、俺はその事を喜んでいる。

互いのあちこちから血が流れる。

もっとだ、もっと強くなれ!

教えてやる、誰が真の最強かを!

 

凄いな、本当に。

恋と左慈の一騎討ちは、間違いなく後の世に語り継がれると思う。

遠目とはいえ互いの武器が見えない。

おまけに戦中であるにも係わらず、周りの兵達は敵も味方も観戦モードになってる。

気持ちは分かる。

中身は全く分からないけど、俺に限らず誰もが夢見る至高の武が目の前にあるんだから。

この一騎討ちは、きっと死ぬまで忘れられない。

・・それでも、戦場はあの二人の為だけにある訳じゃない。

「敵後方から白蓮さんの軍が迫ってきてます、星さん、急ぎ恋さんの援護に。凪さん、鶴翼陣を敷いて敵を包囲殲滅します」

雛里の指示が飛んで止まっていた時が動き出す。

互いの兵が乱入し一騎討ちは終わり、包囲されるのを避けたのか仲軍はそのまま退いた。

戦が始まって一の激戦となった其の日を境に、以降の戦いは小競り合い程度になった。

「た、互いに侮る事の出来ない力を見せつけあいました。こ、こちらもそうですが無益な消耗戦を避けたいのは仲軍も同じですので」

「それじゃ当初の予定通りでいいんだね」

「は、はい。このまま敵を引き付けて置いて、後は他戦場の報告を待つだけです」

 

 

(官渡)

開戦から二十日が過ぎて、私はようやく光明を見つけた。

集まれる将の全てを呼んで地図を元に説明する。

「此処よ。この鳥巣に敵の食料基地があるわ。全てではないでしょうけど、あの大軍を維持出来なくなる位は蓄えられてる筈よ」

「冥琳、どう?私もすっごく怪しく思うんだけど」

「うむ。食料基地が一つという事は絶対に無いが、私も鳥巣で間違いないと思う。色々と探っていたが鳥巣方面の警戒が一番強かったからな」

決まりよ。

「秋蘭、霞、雪蓮、明日はそれぞれ騎兵五百を率いて戦場から離脱しなさい。明後日の深夜、鳥巣を急襲をするわ。進路は各自の判断に一任する」

「御意」

「了解や」

「まっかせなさい」

「冥琳、油断させる為に明日は故意に砦を陥とさせるわ。砦にいる春蘭と季衣に用意しておいた隠し通路から脱出するように伝えなさい」

「分かった」

「私も秋蘭達と共に鳥巣を攻めるわ、これで仲との戦を決める。但し忘れないように、まだ華との戦が残ってる事を」

私も騎兵一千を率いて戦場を離れる。

そして私達は鳥巣の食料基地を焼き払い、意気揚々と本陣に戻った。

仲軍はまだ撤退していないけど時間の問題。

既に鳥巣の事は末端の兵にまで伝わるように徹底的に流言している、上層部が戦を続けようとしても士気など上がる筈がない。

それに仲本国にも再度送るほどの食料が簡単に用意出来る訳が無いわ。

次は陳留。

陳留さえ守りきれば汝南は失っても防衛線の構築が可能よ。

正直言って三箇所全てを守りきるのは難しい、優先順位がどうしてもある。

汝南の稟と風には降る事も選択肢に入れるように伝えてあるわ。

先ずは滅ぼされない事、私は最後まで諦めない!

それが私を主として戦ってくれた者達への、王としての在り方。

曹孟徳としての生き方。

・・でもそんな私を嘲笑うかのように、時代は一刀を迎え入れようとしている。

私達が次の戦場に向かう最中、私は桂花と稟から最悪の報告を受ける。

 

 

私は今日も蓮華お姉ちゃんの執務室で勉強中。

たまに手伝いもしたり、邪魔にならない範囲で勉強を教えてもらったりしてる。

「・・お姉ちゃん、一刀って怖いよね」

「いきなりね。どうしてそう思ったの?」

言うまでもないと思うんだけど、勿論普段は怖いどころか優し過ぎる位だけど。

「だって楽勝の戦へ更に援軍を出したんだよ?敵の心を完全に圧し折りにいってるよ」

「ああ、祭達の事ね。入念に準備してあるから負ける事は万が一も無いでしょうね」

サラッと流すお姉ちゃんも怖いよ、寿春に攻められたの余程腹に据えかねてたんだね。

「あのさ、雪蓮お姉ちゃんは大丈夫なの?」

そりゃ化け物みたいに強いし獣みたいに勘が鋭いけど、あのお母さんだって戦で戦死した。

戦場に絶対なんて無い。

もうこれ以上、家族を失いたく無いよ。

「シャオは優しいわね。・・そうね、大丈夫、なんて気休めは言わないわ。戦場に立つ以上、死は隣り合わせよ」

「・・そうだよね」

お姉ちゃんは私が真剣に聞いてる時は子供扱いしない。

どんなに残酷で救いがない事でも暈さずに教えてくれる。

・・でも、大人って辛いよ。

「それでも、姉様じゃないけど私の勘は大丈夫だといってるわ。何の根拠もないけど、きっとね」

「うん!うん、そうだよね。大丈夫に決まってるよ」

あのお姉ちゃんだもん、死神の方が逆に逃げ出すよ。

「ただ問題はあるのよね」

「問題?」

「降ってくれるなら一刀は許してくれるけど、姉様が遣り過ぎてたら国としての体面もあるのよ。私達は一刀の臣、魏に奔って敵になった姉様を表立っては庇えないしね」

「そっか、幾らシャオが側室予定でも贔屓をし過ぎるのは拙いもんね」

困ったなあ、后として一刀を困らしたくないし。

でも雪蓮お姉ちゃんが自重なんてする訳ないよね、う~ん、どうしよう。

「・・シャオ、ちょっと手伝って貰いたい仕事があるんだけど」

「うん、いいよ、シャオに任せて」

今は考えても仕方ないよね、よし、気合入れ直して頑張ろう。

・・それから三日間、地獄を見たよ。

 

 

ようやく見えてきたのお、腕が鳴るわい。

どうやら向こうも気付いたか、動揺が手に取るように見えるわ。

じゃが悪く思うな、手を抜く気は無い。

「思春、準備は良いか?」

「ハッ、兵には多少の疲れも見えますが士気は充分です。休む必要は無いかと」

「よしっ、このまま突っ込むぞ。亞莎は後軍を整えておけ、陥とした後に即時次に出立してもらうからの」

相手に時間を与えぬ、そこが此度の戦の肝じゃ。

「分かりました。では祭様、御武運を」

「任せよ、皆の者、突撃じゃ!」

 

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あとがき

小次郎です、64話を投稿させて頂きます。

最近少しですが執筆速度が上がっています。

原作の次の革命が出ることが正式に決まったのを知ってから、それまでに終わらせたくなったのです。

話を中途半端な形にはしたくありませんので、あくまで納得できる内容の上ですが。

現実的に無理なのも分かってますし。

ただモチベーションが上がってまして、維持できるなら頑張ろうと思ってます。

では次回もよろしくお願いします、読んで頂きありがとうございます。


 
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