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「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第18話

今回は物語の展開が少々早くなり、黄巾党討伐戦に入ります。

そしてこの物語でも問題児になる方が登場しますが…先にこの方のファンには扱い悪くてすいませんと謝っておきます。

では第18話どうぞ。

2017-04-01 16:58:03 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5939   閲覧ユーザー数:4596

~洛陽~

 

「あの無能な豚女め!誰のおかげでここまでの地位まで登ったと思っているのだ!!」

 

そう言いながら自分の部屋で今ここに居ない何進に対して怒りの声を上げていたのは、十常侍筆頭の張譲であった。

 

白湯(劉協)を一刀の元に追いやって漸く次期皇帝問題に一応の決着が付き、そして和睦を結んだことで後背を気にせずに黄巾党討伐に専念できるはずであったが、その肝心な官軍が各地で敗退を続けており、それに対して何進は安全な洛陽に居て何かと理由を付けて出陣する気配すら無かった。

 

それに対して張譲は何進に出陣する様に促したが、何進は

 

「私まで出陣すれば、この洛陽を護る人物が居ないではないか」

 

明らかに詭弁ではあるが主だった将軍は皆、各地の黄巾党討伐に当たっているため何進の主張が結果的に認められたが、張譲にとっては何進が居ない間に朝廷内での自分の勢力拡大を企んでいたので何進が居ればそれができないので腹を立てていた。

 

元々何進は宦官郭勝の紹介で異母妹の何太后を後宮に入れた事でそこから出世したので、張譲から見れば何進の出世した切っ掛けを作ったのは自分たちだと思っており、それに対抗するのは何事だと思っていた。

 

「ホホホ、荒れていますな。張譲殿」

 

そう言いながら部屋に入ってきたのは十常侍ナンバー2と言われている趙忠であった。

 

「ふん…趙忠か、私は見ての通り機嫌が悪い。要件なら早く言って帰ってくれ」

 

「おやおや、折角張譲殿の機嫌が少し良くなる案を持ってきたのですが、張譲殿が荒れている原因は黄巾党と何進の事でしょう。その黄巾党について1つ私から提案が」

 

「で、何じゃその案とは」

 

「黄巾党の討伐ですが、このままでは首魁を討伐できるのが何時になるか分かりませぬ。それでここは『毒を以て毒を制す』と言う故事がありまする。そこであの『天の御遣い』を利用して、あの者の力を持って黄巾党討伐を依頼すればいかかですかな」

 

「ちょっと待て趙忠。和睦したとは言えあの者は敵だぞ」

 

「ですが劉協様を妃として受け取ったという事は取りあえず今すぐ敵対することはありません。そこであの者が名乗っていると噂になっている『天の御遣い』については不問にするとし、そして貢物を渡すなど、こちらから腰を低くして黄巾党討伐を依頼すれば引き受けてくれるかもしれませんぞ」

 

「だがあの者が黄巾党討伐を引き受けるとは限らぬぞ。それにあの者が黄巾党を討伐できるか?」

 

「…ですが何進が腰を上げない以上、他に早急に討伐できる手段がありますかな。あの者が討伐に成功すれば何進の鼻をへし折ることができますし、それに失敗すればあの者の勢力が弱まるのでそれはそれで宜しいのでは?」

 

「ふむ…一理あるな。良かろう、使者を出そう」

 

趙忠の説明を聞いて漸く張譲も機嫌が直り、一刀に黄巾党討伐依頼の使者を送ることとした。

~涼州~

 

白湯(劉協)が涼州に来た翌日孫策は真剣な表情をして一刀の部屋に訪れた。

 

部屋には仕事の関係で一刀、紫苑と碧が居たが

 

「申し訳ないけど貴男と1対1で話をさせてくれないかしら」

 

孫策がそう申し向けると紫苑と碧は、以前に白湯の扱いを巡って一刀と孫策が口論となり関係が改善されていない事を危惧しており一刀自身も孫策との関係を改めたいと思っていたが中々時間が取れずにいたので、孫策からの申入れは歓迎であった。

 

紫苑と碧が席を離れると一刀と孫策の二人きりになると

 

「この間は大声を出してすまなかった」

 

「いいのよ。その事は私も失礼な事言ったし」

 

一刀は孫策に謝罪したが、一刀の目には今日の孫策は、先日とは打って変わっていて大人しく何か思い悩んでいる様に見えた。

 

「それで…話とは?」

 

「貴方に1つ聞きたいの、国や家とかの上に立つという事はどういう事かしら…」

 

先日孫策は一刀に対して、もし漢が再び涼州に軍を差し向けた場合、劉協の扱いを巡ってお互い口論となった。今まで孫策は孫堅の元で自分たちの力を示すため色々と戦い、そして他の豪族から侮りを受けない様にしてきた。だが豪族から畏怖される事があっても慕われるというのはほとんど無かった。

 

だが昨日一刀たちの白湯の扱いを見て、孫策は今までの自分は正しかったのか自問自答を行ったが答えが出なかった。そこで昨日碧が孫策に一刀との話し合いを勧められたので覚悟を決めて部屋に来たのであった。

 

「孫策さんは、上に立つ者の資質ってどう言ったものだと思っているの?」

 

「そうね…私が思い浮かぶのは国や家の主、指導者や中心人物……それに国や民に安らぎとかを与え、敵に侵略されない事や侮りを受けないことかな…」

 

「うん、それはそれで間違っていないと思うよ。俺自身、上に立つ者として仁・義・礼・智・信の心得を持つ事が大切だと思うんだ」

 

「儒教の五常の言葉ね、貴男、儒家なの?」

 

「別に儒家と言う訳じゃないよ。ただ上に立つというよりは人としての心構えかな。もし

人の上に立つ者が私情に駆られると、皆に示しがつかなくなると同時に人心は離れ、家や国の滅亡にも繋がるかもしれないからね。ただ俺自身がこれを出来ているかまだ自信はないけどね」

 

一刀の言葉を聞いて孫策は内心その通りだと思った。孫策の母孫堅が以前、不仲であった荊州刺史の王叡を口論の末殺害してしまった為、孫堅に言い分があるだろうが結果的には孫堅の私情による遺恨と取られ、このため孫家は滅亡こそ逃れたが無位無官となり現在も勢力が回復に至っていない状態である。

 

「それに…お互い上に立つという立場があるけど、領地の大小に違いがあってもそれぞれ人の命を預かっているという事に、何ら変わらないよ。だから孫策さんのやり方という物があるだろし、孫策さんの立場から見れば白湯を斬る発言したことも俺はしないけど言いたい事も分からない訳でもないよ。

 

「そう…」

 

孫策は一刀の言葉を聞いて外見と違って心が強いなと思った。

 

「貴方…面白いわね。改めて貴方に私の真名を渡すわ。じゃあ私の真名は雪蓮、これからよろしくね、一刀」

 

「ああこちらこそよろしく、雪蓮」

 

一刀がそう告げると雪蓮はいきなり一刀の口にキスをする。

 

「これから貴方の事、色々と見させて貰うわよ」

 

そう言いながら雪蓮は一刀に笑顔を見せて部屋から立ち去った。

 

その様子を紫苑と碧は微笑を浮かべながら、外の窓からじっくり見ていたのであった。

しばらくして洛陽から黄巾党討伐の依頼が一刀の元に届けられた。

 

今までの朝廷なら当たり前の事だが命令として討伐を命じるのであるが、やはり一度一刀たちに負けている事や白湯を降嫁させた事もあり刺激しない様に文面懇願する様に丁寧に書かれ、そして書状には様々な好餌が書かれていた。

 

その内容とは今まで一刀が無断で名乗っていたとされていた『天の御遣い』の言葉について不問とされ、更には出兵する際の軍資金や食料等を朝廷側から提供されるなど、今までは考えられない好待遇であった。

 

しかし朝廷が一刀に『天の御遣い』を名乗った事を不問するということは、一刀と劉宏が同一の存在となる事に朝廷側も流石に気付いてはいたが、黄巾党を制圧の為なら一刀にも出兵を求めるという朝廷側の形振り構わぬ行動に黄巾党を鎮圧できない焦りが伺えた。

 

一刀は全員集め出兵するか否か協議することにしたが、この協議には朝廷内の事情をよく知っている白湯は勿論、雪蓮も加わっていた。

 

一刀から話を聞いてまず翠が

 

「今まで散々、私たちを扱き使ってきた連中を何で助ける必要があるんだよ!」

 

今まで涼州は五胡の侵攻を何度も繰り返されて来たが、朝廷は殆ど援軍等を送らずに涼州の部族のみで戦い続けた。その苦難を翠は知っているから朝廷の勝手な都合と思い感情として言葉に出たのであった。

 

「すまぬ…涼州の事を分かっていたが朝廷内は権力闘争に明け暮れていて兵は出せなかったのじゃ」

 

翠の言葉に反応したのは白湯であった。白湯自身も涼州の事は分かっていたが、白湯自身は政治に口出しできる状況では無く我が身を護るのが精一杯であったが、皇族の1人として翠に謝罪をする。

 

「い、いや白湯様が悪い訳じゃないよ!わ、悪いのは何進や十常侍の連中だよ!!」

 

まさか白湯から謝罪されるとは思わなかった翠は焦りながら弁解する。

 

一刀は翠の純粋な気持ちから出た言葉なので翠の失言について何も言わず、白湯に質問する。

 

「それで白湯、今、中央の状況はどうなっているの?」

 

「……状況は良くはないな。何せ大将軍の何進が戦下手であるが、怖じ気ついているのか洛陽から出ようとせずに部下に任せっきり。その部下も使える者と使えぬ者の落差があり過ぎ、また各地の豪族たちも同じ様な状況じゃ。だから未だに乱が続くので朝廷も猫の手も借りたいのか一刀に応援を求めたのじゃろ。そこでじゃ…私の勝手な願いだが、漢の為とは言わぬ、民の為、兵を出して民を救ってくれぬか」

 

白湯は漢の為とは言わず、民の為に黄巾党を鎮圧して欲しいと懇願する。これには白湯が涼州に来る直前、父劉宏から託された言葉「民の事」を思う者かどうか試すものでもあった。

 

「ご主人様、白湯ちゃんの言葉では無いですが今回は出兵すべきかと。何れ私たちは中原へ兵を進める可能性があります。今回助けておけば何らかの形で力になるかもしれません」

 

「正直、朝廷側から褒賞を頂き食料等を供出してくるのであれば、今回の戦い新兵の訓練代わりとしてもいいかと、五胡の兵と比べても黄巾党の兵は弱いでしょう」

 

紫苑と真里は出兵に賛成な姿勢を見せ、

 

「今回兵を出して、孫堅様以外にも他の人たちにも私たちの顔を売り出した方がいいかもしれないよ」

 

璃々も賛成に回ると碧は

 

「正直……朝廷の連中だけの為なら兵は出したくないが、白湯様が今までの事を代わりに謝罪してくれているのだ。今までの事は水に流して、私たちは一刀様の指示に従う」

 

碧がそう告げると翠や鶸、蒼は母である碧の言葉に同意する。

 

そして一刀は出兵に同意する。

 

そうなると出兵する将の人選になるが

 

朝廷の有力者や有力豪族に顔を覚えてもらうという意味で一刀が総大将と出陣するのは当然として副将兼護衛として紫苑も加わる。

 

だが璃々については万が一備え、留守の大将として武威に留まる事に一刀から告げられると璃々は不服を申し述べるが

 

「璃々、俺たちにもしもの事があれば俺たちの代わりに『天の御遣い』として活動してもらわないといけないから、万が一に備えて今回は留守番して欲しい」

 

一刀からの説明を受けると璃々は一刀を困らせる事は本意ではないので渋々承諾する。

 

そして璃々の補佐として碧と真里、そして碧の副将という形で渚(龐徳)も留守番となる。

 

軍を動かす将として翠、そして真里が加わるまで馬家の兵站を担っていた鶸が今回は遠征軍の兵站を担いつつ翠の副将として加わる。蒼については白湯の護衛兼世話係として留まることなった。

 

「当然、私も付いて行くわよ」

 

雪蓮は一刀たち遠征軍に付いて行く事に当然の様に告げる。たしか一刀が居ない状態で雪蓮が武威に留まってもする事が無く正直邪魔になるだけなので、一緒に出陣した方が役に立つと判断され雪蓮も客将という形で参加することになった。

 

一刀たちは最大の兵力を有する黄巾党と戦っている豫州潁川へ援軍として派遣されることとなった。

 

「お初にお目に掛かります皇嵩甫将軍。私は北郷一刀と申します。此度は民の為と共に戦いに参りました。何卒宜しくお願いいたします」

 

一刀は先の戦いで一刀に敗れ、何進から名誉挽回の為、黄巾党討伐を命じられている皇甫嵩に着陣の挨拶を行うが、一刀は敢えて漢の為とは言わず民の為に戦いに来たと告げる。皇甫嵩は一刀の言葉を聞くと言葉については触れずに感謝の言葉を述べる。

 

「こちらこそよろしくお願いするわ。あなた方の強さはこの間の戦いで身に染みて分かっているから安心して決戦に臨めるわ」

 

皇甫嵩からそう言われると一刀は困惑した表情になるが皇甫嵩自身は別に一刀に嫌味を言っている訳では無く純粋に一刀たちの強さを称えたのであり、彼女は一刀に敗れたとは言え潰れ掛けている漢を支える百戦錬磨の良将であるのだから。

 

「あっ…ごめんなさい。別に貴方に謝罪をして欲しい訳ではないの。ただ武人として貴方を認めているの。敵として戦いたくないけど、今回は味方としてこれ程頼もしい物はないわ。それで到着して早々で申し訳ないけど、今から軍議を開くので出席して貰えるかしら」

 

皇甫嵩から謝罪の言葉を聞くと同時に軍議の出席要請があったので一刀は出席を了承し、一刀は一旦陣に引き返し副官に紫苑を付けて軍議に出席する。

 

そして軍議が開かれ、各諸侯の簡単な自己紹介が曹操や孫堅などの顔が見られ、一刀の自己紹介を行うと孫堅は楽しそうな目をしているのに対し、曹操は一刀と紫苑を見定める様に見ている。そんな中ある女性は一刀の名前を聞くと敵意を隠そうともせず一刀を睨み付けている。

 

一刀、それに紫苑は睨み付けている女性に気付いたが、一刀と紫苑は二人ともその女性には見覚えが無かったので疑問に感じていたが、その女性の背後を見ると二人の見覚えがある人物がいた。

 

それは嘗ての外史で一刀が愛していた女性の1人である愛紗こと関羽と朱里こと諸葛亮であった。この二人が睨み付けている女性の背後にいるということは、現在はこの女性に仕えているということであった。一刀と紫苑の中ではある人物が浮かんだが、直ぐにその女性の自己紹介となり

 

「私は義勇軍を率いています。劉玄徳と言います」

 

一刀と紫苑は内心ではやはりと思ったものの二人は劉備と今まで接点が無かったので、何故睨み付けているのか理解できなかった。

 

そして全員の自己紹介が終わり、軍議が開始されようとした時にいきなり劉備が立ち上がり

 

「お止めください!桃香様!!」

 

「離して朱里ちゃん!!」

 

劉備は諸葛亮の静止を振り払って

 

「皇甫嵩将軍!何故、漢に謀反を起こした人がここにいるのですか!私、納得できません!!」

 

劉備の声が軍議場に響き渡ったのであった。

 

 


 
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