No.899526

SAO~帰還者の回想録~ 第0想 プロローグ

本郷 刃さん

新章開幕
帰還者達の過去が明らかになる

2017-04-01 14:16:17 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:8769   閲覧ユーザー数:8205

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第0想 プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和人Side

 

「あぁ、悪い…だから、あとは頼む…。俺は、大丈夫だよ…菊岡さん」

 

取り敢えず、これで奴が逃げられることはなくなった。

これでいい、いつかはこんなことがあるとは思っていた。

それが今で、明日奈やユイ、みんなを巻き込まなかっただけマシなことだ……けど、けどさ…。

 

「まだ、死にたくない(・・・・・・)なぁ…」

 

頭、腕、脚、体、全身から血が流れる。

痛い、滅茶苦茶痛い、幸いほとんどの急所は避けることが出来た。

脳も心臓も動脈も大半は無事だが、全身の傷口から出血している。

加えて、少しとはいえ動脈が傷つけられたことで出血の量が多い、服を千切って止血しているがいつまで保つか…。

それになにより、やっぱりこれ(・・・)が不味いよな…。

 

「腹にナイフは、ヤバいって…」

 

腹に突き刺さる大型ナイフの痛みは明らかにおかしい、まぁ痛みを感じ難くなっているのは危ない証拠だろう。

とはいえ抜いてしまったら出血多量、さらにいまも十分に出血多の量が多い状態だ。

 

「いままでのツケが、全部返ってきたか…」

 

SAOで30人以上殺して、茅場も殺して、UWでも人間と闇の住人に限らず殺し過ぎた。

大切な人を守る為や誰かを守る為、理由は正当に適っていても所詮は殺人だ。

【解放の英雄】と呼ばれようとも、やってしまったことは人殺し。

だから、その分のツケが齎された。

 

死ぬつもりはない、死にたくもない、しかし意識がもう保てない、かも…。

 

「明日奈、電話に、出るか…?」

 

中々上がらない右腕を使い、再び端末を操作して明日奈の端末に通話を試みる。

一度目は菊岡へ救助の要請と報告を行い、これは二度目になる。

ただ、何度コールしても明日奈は出ず、ユイが応える様子も無い。

そういえば、今日はずっとALOにダイブしているのか。

でも、なんとか言葉を振り絞って留守電に言葉を残し、終わると力が抜ける。

 

「はぁ、がはっ……ははっ、吐血とか、内臓もやられているのかよ…。

 あ~あ、こんなことなら、明日奈と、喧嘩なんか、するんじゃ、なかった、な…」

 

ほんの偶にある小さなすれ違い、ちょっとした喧嘩状態がここで尾を引く形になるのか。

明日奈のことだ、きっと喧嘩などしなければ良かったと思ってしまうだろうし、俺もいまさらながらに後悔している。

だが、それでも決着はついた。

 

「く、はは…。だけど、これで……俺の勝ちだ…」

 

少し離れたところで倒れ伏す男女。女の方は気を失っているだけだが男の方は重傷だ。

勿論やったのは俺だが、殺しはしない。捕まえて終わらせると決めていたのだから。

 

「両腕も、両脚も、折って……神経も、斬り裂いた…。残ったのは、その口だけ、だ…。

 法の下で、裁かれた後…生きて、いようが……さぞ、惨め、だろうな…。

 お前を、生かして、いる……俺の、勝ちだろ…」

 

最早こいつは一人では生きていけない。

こいつのお国は蜥蜴の尻尾切りの如くコイツを切り離し、仲間ももう残っておらず、

一生四肢の自由が利かずに自身のプライドを穢されながら生きていくことになる。

 

「生き恥を晒して、生き地獄を、味わえ…」

 

この男は意識が落ちている以上聞こえてはいないだろうが、それでも言いきってやりたくなった。

これまでの仕返しというやつだ。

 

「それ、に……まだ、死ねない…! 明日奈と、ユイの、ために…も……夢も、叶えちゃ、いない……から、な…」

 

赤い光が見え始めた。近くで車が止まる音が聞こえ、足音が迫ってくる。

 

「キ…ト君! 聞……るか…!」

 

菊岡だろう、だが意識がもう落ちるのか、聞き取り難い。

 

「死なない、まだ…。でも、いまは……寝る…」

 

できれば、クリスマスまでには、起きたいな…。

 

和人Side Out

 

 

 

 

明日奈Side

 

嫌な予感がした……ううん、今日のお昼に和人くんと些細な喧嘩をしてしまった後から、ずっと嫌な予感はしていた。

それでも、きっと彼と喧嘩をしちゃったからだと思い込んで、なるべく気にしないようにした。

夜になってALOで里香達と話しをしたら気は紛れたけど、嫌な予感そのものは拭い去ることが出来なかった。

 

だから、いきなりアミュスフィアの強制ログアウトが起きて、眼を開けてみれば母さんが顔を真っ青にしていることに戸惑うしかない。

だけどそれだけで、何か良くないことが起きたのは分かる。

 

「母さん、どうしたの…?」

「明日奈。落ち着いて、聞いてちょうだいね…」

 

母さんのなんとか自分自身を落ち着けようとしている様子に良くないことどころか、只事じゃないことなのが解ってしまう。

それはきっと、彼のことなんだと思う。

 

「和人くんに、何かあったの…?」

「っ……いま、電話があったところよ。多分、明日奈の端末にも連絡が来ているはず…」

「連絡って…ねぇ、母さん、何が…」

「明日奈」

 

何を言うの? 和人くんに、何があったの?

 

「和人君が病院に運ばれたわ」

「病院、に…?」

 

それは、なんで…。言葉がそれ以上出なくて、それでも母さんは続けてきた。

 

「誰かに襲われたそうよ。全身に刺し傷と切り傷、出血多量で意識不明の重体、明日奈が前に言っていた菊岡さんという人からよ」

「え、ぁ…」

 

襲われて、刺し傷と切り傷、出血多量で意識不明の重体? まさか、犯人は…。

 

「は、犯人は…?」

「すぐそばで、外国人の男が血塗れで見つかったらしいの。その男も病院に搬送されているということよ」

 

アイツだ、逃げていったアイツが和人くんを…。でも、いまは、そんな場合じゃ…。

そう思って、病院に向かわないといけないと思った時、愛用している端末に視線が向く。

残された着信履歴にあったのはつい少し前の和人くんからの着信、そして留守電にはメッセージが残っている。

震える指でわたしは再生を押した。

 

『明日奈、SAOからの因縁、全部終わったよ。でも、今回は、ごふっ……ミスった…。

 迷惑を掛けるけど…ユイとか、みんなのこと、頼むよ。

 あと、昼間はごめんな。あまり、時間を作れ、なくて……必ず、起きる、から…起きたら、ちゃんと、話すよ…。

 だからいまは……おやすみ、愛してる…』

「か、あ、ぅ…」

 

和人くんの想いが伝わってきて、だけど彼が息苦しそうにしていて、最後の言葉を聞いたら、言葉にならない。

そこで再び目に付いた端末の画面、そこにあるアプリ。

和人くんの体温や脈拍を確認できるそれに触った。

 

いつもは男性の標準な脈拍である和人くんの脈拍が低下していて、体温も普段の彼のものじゃない。

示されている数字、脈拍は止まることなく減っていく。

 

「ま、まって、止まって…」

「明日奈、どうしたの?」

 

下がり続ける脈拍を見て、涙が止まらない。

 

「お願い、上がって…戻ってよ…」

 

そうじゃなきゃ、彼が…。

 

「あ、あぁ…」

 

一桁になった脈拍、これ以上は…。

 

「和人くん…!」

 

―――ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー………………

 

「ぅ、ぁ…」

「明日奈、これって…」

 

表示される0という数字、端末から鳴り響く音、嫌でも理解させられる。

 

「かずと、くん……やだ、やだよ…こんな、こんなの…。

 嫌、イヤ……っ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

 

わたしはSAOの時と同じ絶望を味わった…。

 

明日奈Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

皆さんお久しぶりでございます、ついに新章の開幕です。

 

いきなりシリアスからで物語の入り方は原作のアリシゼーションから肖っています。

 

本作ではアリシゼ編の入り方が違ったのはこっちで使う為のフラグです。

 

まぁいきなりの展開に皆さん困惑やら混乱しているでしょうがそこは物語を進めて明らかにするのでとりあえず納得してくださいw

 

この新章と言いますか新編はいままでと色々と違います、過去編というのもその一端です。

 

詳しいことは次回から分かっていくと思いますので一先ずは今後もお楽しみに・・・ということで。

 

それでは次回、来週4月9日の更新をお待ちください。

 

 

 

 

 


 
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