No.896807

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY 39 焦りと企み

やぎすけさん

ようやく投稿です
リハビリも兼ねてなので少し短いかもしれません。

2017-03-11 10:55:35 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1351   閲覧ユーザー数:1325

 

前回のあらすじ

倒れたデュオを救うために現れたキリトとアスナ。2人はデュオを庇いながらも奮戦するが、

セリアとシリカが捕らえられた上にディフォアたちの強さの前に押されて彼らを逃がしてしまう。

さらにはギラスの放った技によって追い詰められ、ジリ貧になろうとしていた。

そこへ突如として鳴り響いた銃声が火の鳥を撃ち抜きキリトとアスナを救った

キリトとアスナはデュオを背負い、自分たちを火の鳥から救った銃声の主のことを気にかけながら共に村へと歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

STORY ⅩⅩⅩⅨ 焦りと企み

 

 

 

 

 

デュオ視点

目を覚ました時、最初に感じたのはどうしようもない気怠さと自分が眠っていたことへの疑問だった。見渡せば周りは薄暗く、背中に触れる感覚が布団のそれであることから、今が真夜中で自分がベッドの上に横たわっているということはすぐにわかる。だが、自分がここに横たわっている理由はわからなかった。

 

「俺はどうして・・・?」

 

ぼんやりとしていた意識が言葉を発したことによって引き戻され、徐々に回復していく感覚が失われていた情報を復活させていく。それを意識した時には、俺の身体は弾かれるようにして上体を起こしていた。

 

「起きたみたいだな・・・」

 

「キリトか・・・」

 

俺が起き上がると部屋の反対側、ベッドとは逆の壁に置かれたソファの上から相棒がゆっくり顔をこちらに向けてくる。その顔には悔しさを堪えるような苦々しさと、どこか申し訳なさが浮かんでいることが暗い中でもはっきりとわかった。それだけで状況は良くないということと、彼がそれを話したくないであろうことも察することが出来る。だが、あれだけのことがあった後で正確な情報が必要な欲しい俺はそれを聞かないわけにはいかなかった。それが外れていて欲しい予想と一致することや更なる焦燥感に駆られる原因になるとも知らない俺には・・・

 

「どうなったんだ・・・?」

 

「奴らは逃げた・・・」

 

「だろうな・・・」

 

予想通りの回答。だが、これだけであれば俺はまだ冷静でいられただろう。次の情報を聞かなければ・・・

 

「それから・・・シリカとセリアが攫われた・・・」

 

「っ・・・!?」

 

思わず近くに置いてあった剣に手を掛け、反対の手をその隣のロングコートに伸ばそうとするが、まだ敵の居場所も2人を攫った目的もわかっていない。現状を考えるとしっかりと情報を集めてから行動では遅いが、少なくても情報を集めてからの方が闇雲に動くよりは圧倒的に効率が良いはずだ。

再構築したばかりの思考をそこまで回し、危うく飛び出しそうになるのをどうにか抑えつける。そうして俺は再びベッドに腰を下ろしたが、座りながらもコートに袖を通して剣を背中に固定していく。————たとえキリトが静止してきても振り切って飛び出せるように・・・

 

「悪い、少し取り乱した・・・」

 

「いや、俺の方こそすまない・・・何もできなくて・・・」

 

「シリカのことはお前のせいじゃない・・・俺が迂闊だったんだ」

 

そう、俺が彼女を1人にさせなければ・・・それが無理でも、せめてもっと注意を促していれば・・・

頭をよぎるネガティブな考えが心に負の感情を生み、俺は自然と力が入る手をきつく握り締めた。

 

「デュオ・・・」

 

そんな俺を見て悲しそうな顔をするキリトだが、今はこんなことをしている場合ではない。まずはシリカたちを攫った奴らの居場所を探さなければ。そのためにまずは・・・

俺はベッドから立ち上がると、

 

「どうするつもりだ・・・?」

 

静かな問い。それは止めるべきかそうでないかという迷いからキリトが選んだ答えでもあるように思えた。それに対して感謝と謝罪が入り交じった思いを感じながらも、俺は振り返らずに答える。

 

「とにかく外に出て情報を集めてみる。闇雲に動いても仕方ないとは思うが、何もしないよりはいい。それに今はじっとしていられない」

 

「なら俺も行く。1人より2人の方が効率はいいだろ?」

 

どうやら俺の意見に賛同してくれるらしいキリトは、自分も剣を取り出して一緒に行く準備を始める。だが俺はそれを制した。

 

「いやお前は村を守ってくれ。またいつ襲撃されるかわからないし、それに病み上がりのアスナに無理はさせない方がいい」

 

そう。先ほどの連中がまた襲って来ないとも思えないからだ。NPCだからと村を完全に度外視した考え方をしてしまえばそれまでだが、どうもこの世界のNPCは単なるアルゴリズムで動いているとは思えないほどリアルで今までのVRMMOとは何かが違っているように思える。それに、キリトにはNPCだとしてもそれをただ切り捨てることが出来ない男だ。

 

「けど、それじゃお前は・・・」

 

「別に戦闘に行くわけじゃない。情報が集まり次第戻ってくるさ」

 

今にも飛び出したい気持ちを鎮めながら、出来るだけ普段通りの口調で話す。それを察してか、キリトもそれ以上は言及することはなかった。

 

「んじゃ、行ってくる」

 

ドアノブに手をかけ、ガチャリと音を立てながら捻ると、部屋の外へと踏み出す。

 

「いい結果を待ってるぞ?」

 

駆け出そうと力を込めた脚を止めた。その言葉の意味が、相棒の顔を見なくてもすぐにわかったからである。こいつは俺に必ず一度帰って来いと言っている。

 

〈さすがに長いこと一緒にやってきた相棒だ。平静を装っているつもりでもこいつには隠せないらしい〉

 

内心で苦笑しながら俺は振り返る。

 

「行ってくる」

 

ただ一言それだけ言い残し、俺は今度こそ宿屋の外へと駆け出した。

通常視点

時間を少し遡り、デュオが宿を出る少し前、

 

「マジで言ってんのカ?」

 

「あぁ、それが一番手っ取り早い」

 

デュオたちの泊まる宿屋から少し離れた建物の影で、1組の男女が話していた。1人は人目を避けるかのようにフードを深々と被った顔に左右3本ずつのペイントが入った小柄な少女で、もう1人は特に周りを気にする様子もなく壁に背中を預けている銀色の仮面で顔の上半分を隠したやや背の高い青い外套の男だ。外見からして対照的な2人は、その表情までも同じそれであった。少女が怪訝な表情をする傍ら、男の方は不敵に口元を歪めている。

 

「でもナ・・・この情報教えたらデューくん絶対に先走るゼ?」

 

「だろうな」

 

少女が心配そうに懸念を口にするが、男はまるで面白いことでも話すかのように口元を歪めたまま返す。だがその不敵な微笑とは裏腹に、男の姿は聞き分けの無い子供をなだめているようでもあり、ある意味では微笑ましく少女を見ているようでもあった。

 

「いいのカ?」

 

「心配ならついて行ってやったらどうだ?」

 

男の言葉に少女は両手を軽く広げて肩を竦め、小さく首を横に振った。

 

「オレっちの力じゃたぶんあいつらに挑むのは無謀ダ。足手まといにはなりたくないしナ。てカ、あんなに強いんだから、ベリっちがいけヨ」

 

「俺はこれから一仕事してくるところでな。子守までしてる時間はねぇよ」

 

今度は男の方が同じ動作で手を広げると、肩を竦めて見せる。「仕方ないだろ?」とでも言いたげな態度に、少女はこのままでは埒が明かないと思い、軽く両手を上げて今度は降参のポーズをとった。

 

「わかったヨ。そんかし、あとできっちり取り立ててやるからナ」

 

そう言うと、物陰から歩き出す。すれ違いざまに男が差し出した小さめの金袋を受け取ってポーチに詰め、そこから何事もなかったかのように歩き去っていった。

残された男は

 

「可愛い娘にそんな不安たっぷりの表情(かお)されちゃ、俺も頑張りたくなっちゃうじゃないか」

 

心なしか先ほどより低くなった声が誰に言うわけでもなくそう呟き、少女とは反対方向に歩き出す。その後ろ姿は明らかに今までと違う気配を纏っており、仮面越しで見えないはずの眼には獰猛そうな光が宿っているのが素人でも分かるほどはっきりと感じられる。

 

「子供たちが安心できるようにするのも、大人の仕事だからな」

 

男は一瞬、身に纏うその荒々しく凶暴な雰囲気に似合わない優しげな表情を浮かべ、ゆっくりと森の中へと消えていった。

 

 

 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択