No.878067

真・恋姫無双 新約・外史演義 第07話「陳留を離れ」

koiwaitomatoさん

【月・初登場回・今回は百合があります】
お馬さんに乗ります。
※地の文と台詞の間を一行開けに変更。
ただし、一人称の心情文は連続で書く。

2016-11-07 01:49:57 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2214   閲覧ユーザー数:2067

 

 朝焼けに照らし出される洛陽の街。

 中心にそびえ建つ王宮を囲むように居並ぶ宮廷。その一室で一仕事を終えて一息を付く少女がいた。不眠不休―― 目の下にくっきりと浮かび上がったくま、そして、油っけを増した髪の毛がそれを物語っていた。

 

 「終わった…………後は、事が公になる前に全て片付けばそれで良いのよ」

 

 そう呟くのは漢王朝三公が一席、賈詡文和だった。

 机の上にはあるのは、一晩中使い通していた愛用の筆と中の墨が乾ききったであろう ( すずり)。彼女が一晩掛けて書き続けた“書簡”は既に各地の領主たちに発送済みである。

 事の発端は昨晩の事だった。宮廷内に入り込んだ賊がこの国の権力者たちと繋がっていることが発覚した。王朝転覆……言葉にすればなんとも幼稚な響きだが、実際にそれを目論む勢力と繋がっている者たちが内部にいるというのだからたまったものではない。

 

 「一番早いのは陳留あたりかしら。はあ…………洛陽からも兵を動かして対応しないとね」

 

 そう呟いて、椅子から立ち上がり一晩中書簡を書きとおしていた部屋から気だるそうに退出する。いや、気だるそうではなく気だるいのだ。夜通し働いたのは何も今日に限った話ではない。

 

 ああ、朝焼けか……。みょうにまぶしいと思ったらもうこんな時間ね。今日こそは寝られると思ったのに。

 

 最後に睡眠を取ったのはいつだろう? 漢王朝太尉とは名ばかり。本当に機能しているのか分からない、司空、司徒の仕事までこちらに回って来ている。まったく……真面目に仕事をしているのが馬鹿らしくなる。

 

 「だけど、僕がやらなくちゃ。国のためじゃない。あの子のためにも僕が―― 」

 「詠ちゃん?」

 

 渡り廊下に向おうとした矢先だった。後ろから聞こえてくる声が賈詡の耳に飛び込んできた。そう、僕を“詠ちゃん”と呼ぶのは一人だけ――

 

 「月! どうしてこんな時間に……もしかして、また徹夜して仕事をしていたの!?」

 「えへへ……、一区切りついたから詠ちゃんに会いに来たの。もしかして、今忙しいの?」

 「そんな事はどうでもいいわよ! やっぱり…………っ、ちゃんと睡眠を取るように言ったのに。身体壊しちゃうじゃない」

 そう、月も最近はあまり眠る暇が無い。元々、身体が弱いほうで無理なんて出来ないのに……っく!

 

 董卓仲穎。今にも壊れそうで『月』という彼女の真名の様におぼろげで儚げな少女の名前。そんな華奢な外見とは裏腹に彼女は漢王朝において丞相という位を持っている。帝の全権代理。すなわち実質NO.2と言うほぼ最高権力に等しい少女。

 

 「へうぅ~……ゴメンね、詠ちゃん。でも、まだまだやらなくちゃいけないことが沢山あるから……」

 

 丞相の地位を使えばおそらくは何でも出来るのだ。民に暴政を強いて税を不当に奪い、世俗にまみれ、金を溜め込み、宝物を手に入れ、美しい女たちを侍らす、上手く立ち回れば帝に成り代わって国を掌握する事だって可能だ。それは歴史が証明している事実。

 だが、月はそれをしなかった。

 

 「やらなくちゃいけないって…………っ! わかってるよ。でもお願いだから身体を大事にしてよ。今の月を見てると僕が耐えられないんだ」

 

 かつて、身を削って善政を敷こうとした為政家が居なかったわけではない。それはとても尊い行いだと思うし、賢人や賢王という存在は民たちの願いにも等しい。だけど自分の大切な人が願いの礎に、不幸な結果を生み出すのならば善政なんていらない。はっきり言おう。クソ喰らえだ!

 

 「……うん、今日はこのまま眠るから」

 「ありがとう、月。何なら今日はこのまま休ん―― 「詠ちゃんも一緒にお休みしましょう」

 「え? いや、僕はまだ……」

 「詠ちゃんのほうが酷いお顔をしています。休息が必要なのは詠ちゃんも同じです」

 「でも、僕まで休んだら宮廷が回らないじゃない」

 「お願いだから身体を大事にして。今の詠ちゃんを見てるとわたしも耐えられません……えへへ」

 

 お返しとばかりに先ほどの言葉をそのまま返される。してやったりとばかりにペロっと舌を出す月に僕は――

 

 「――ふふっ! 降参よ。僕の負け……やっぱり月には敵わないな」

 「えへへ~……お互いさまだよ。今日は久しぶりに一緒に寝られるね」

 「うん。あ、でも、その前にお風呂に入ってきていい? 体中ベトベトだから」

 「じゃあ、一緒に入りましょう。わたしが全部洗ってあげるね」

 

 友情なのだろうか? それとも愛と呼ぶべきなのだろうか? どちらでもいいのか? ただ一つ言えることがあるとすれば、丞相と太尉。漢王朝の責ある二人が、久しぶりにただの少女たちに戻った瞬間だったのかもしれない。

 

 「へうう! そう言えば、詠ちゃんに言伝があるのをすっかり忘れていました」

 「な、ちょっといきなりどうしたのよ。言伝って誰からの?」

 「袁紹さんからですけど…………あれ? どうしたの」

 

 せっかく幸せな気分に成りかけてきたところで、昨晩の嫌な記憶が蘇ってくる。三公に対して妙なコンプレックスを抱いてそうな、あの袁紹からとは。どんな内容かを想像しただけで幸せな気分が一瞬で吹き飛びそうになる。

 

 「――? その、夜遅くまで漢王朝のために働いている事に対して深く感銘を受けた、と」

 「はあ?」

 「え、え~と……後は、詠ちゃんのお仕事の邪魔をしちゃったって謝ってたよ。後、ありがとうって……詠ちゃん?」

 「…………そう、まあいいわ。言伝はたしかに受け取ったから。それよりも早くお風呂に行きましょう。月の身体は僕が洗うんだからね」

 

 真・恋姫無双 新約・外史演義 第07話「虎銅鑼・前編」

 

 宿舎から飛び出した一刀は街をさまよい歩いていた。まだ朝食時なのか人影もまばらな街の外からは肌寒さを感じてしまう。

 そう言えば、今って何月ぐらいなんだろう?早朝とは言え、そこそこの冷気を感じるから夏季ではないようだが……。

 お昼までに正門前に集まるように曹操さんから伝えられたのが先ほどの事で今は朝だ。鄧艾ちゃんとの会話をごまかすために宿舎から出てきたのだが、さすがに早すぎるし…………何より寒い。身に着けている聖フランチェスカ学園の制服は、一応冬服仕様なのだが防寒着としての機能は備えていない。

 「さすがに早すぎるかな……」

 とは言え、いまさら戻るのも面倒くさいので集合場所の下見がてらに街を散策中。“こういう時に●クドがあればな~”と思いつつ歩いていると集合場所の正門に差し掛かる――あれ、もう人がいる?

 遠めに見える起伏に富んだシルエットは……一人の女性だった。その姿を見て“あれ、もう集合してるの?”と一瞬考える。だけど、さすがに時間が早すぎるんじゃあ……と考え直す一刀だった。

うーん……だけど――

 

 「もしかして、あの娘が曹純さん?」

 

 今更ながらだが、この世界の魏の武将たちが美少女になっているという事を考えるとありえるわけで。正門前で馬の手入れをしている人物は曹操さんたちが着ていた中華風の服を身につけているし…………何より美少女だし。

 少し悩むところだが、上官(上司?)に早めにコンタクトを取るのは悪くないのかもと意を決して声を掛ける。

 

 「あの、虎豹騎の方ですか」

 「え?」

 「曹操さんからお昼までに正門前に集まるようにと言われてるんだけど」

 「――まあ! では、貴方が北郷一刀さんですか」

 

 おお! どうやら当たりらしい。じゃあこの娘は――

 

 「華琳お姉さまからお話を伺っております。わたしが虎豹騎の隊長を任されている曹純子和です」

 「これはご丁寧にどうも。じゃあこっちも……本郷一刀です。どうか、よろしくお願いします」

 

 目の前の少女は虎豹騎の曹純さんで間違いないようだ。しかしながら、髭を蓄えた三国志武将が美少女って言うのには違和感がある。だってさあ――

 透き通るような白い肌に、ふわふわっとしたロングヘアーとクリッとしたパッチリ御目目だろ? むっちりとした御御足も素晴しいが、何よりも、けしからんサイズの女性の象徴……OPPAIとか! OPPAIとか! ああもう、非常にけしからん! いや本当に――「けしからんぞぉーーーー!」

 

 「っえ! あのぉ……北郷さん? わたしが何か……」

 「…………ふぇ? あ、あわわ! ち、違いますよ! 俺の勘違いと言うか……何でもないっすよ!」

 

 いけない! いつのまにか魂の声が現世に漏れ出していたらしい……まだまだ修行が足りないな。

 そんなこちらの苦しい言い訳に「はぁ……」と小さく相槌を打つ曹純さん。まあ、何にせよ美しい少女が上官というのは男の子としては嬉しい限りだ。しかも、ほわほわな癒し系美少女とか素晴しいではありませんか。曹操さんや夏侯惇はオラオラ系だから、魏の武将はみんなこんな感じなのかと思っていた所でこう来るとは。これは―― 「いい意味で予想を裏切られました」

 

 「あのぉ……北郷さん。いま……何と?」

 「は! は、はわわーーーーーー!」

 

 

 

 「……そうですか。まあ、北郷さんも男の子ですからね」

 「はい。スイマセンでした」

 「とは言え、ウチの部隊には女の子が多いですから、ある程度は自重していただかないと困りますよ」

 「はい。申し訳ありませんでした……今後はこの様な事がないように努力していく所存であります」

 

 豊満ボディを前におもわず漏れてしまった心の声。

 発言の内容を不審に思われたらしく、かなり警戒をされてしまい、このままではマズイと誤解を解くために政治家先生ばりの誠意を込めて謝罪と弁明する。まあ現在の状況を説明するとだ――

 

 「スイマセン! 曹純さんの……その……む、胸を見て驚いちゃって、思わず心の声が出てしまいました」

 

 ――と、犯行動機を本人の目の前で懇切丁寧に説明して謝罪するという羞恥プレイをしたわけでありまして。

 恥を忍んで告白した結果、納得してもらえたようだがその反面、距離がだいぶ開いてしまったようだ。(心理的にも物理的にも)

 鄧艾ちゃんの事といい、今回の曹純さんとの事といい、こっちの世界に来てから女性関連で失敗してばかりな気がするよ。元々、女の子とはあまり縁の無い人生だったから経験値が少ないのはしょうがないにしても、今後は十分気をつけよう。

 落ち込みながらも、心の中で猛省する一刀。少し離れた所その様子を見つめる曹純さんがふと何かを思い出したようで声を掛けてきた。

 

 「あら……そう言えば北郷さんはこんな時間にどうしてこちらに? 集合はお昼ですからまだ大分時間がありますけれど」

 そういえば…………すっかり忘れていたっけ。

 「ああ、事前の下見ってやつだよ。正門の場所は聞いていたけど、迷子にならないように一応ってやつ」

 正確に言えば、鄧艾ちゃんから逃げてきて、集合までの時間を持て余していたんだけどね。嘘は言っていない。

 「――まあ! それは仕事熱心でいらっしゃいますね」

 嘘は言ってないゾ! いや、本当に!

 「うふふ。わたしも北郷さんと同じです。新人の方が配属になると聞いていたので、新しい馬を早めに用意していたところです」

 

 事前の下見が好印象だったようで嬉しそうに微笑みを浮かべる曹純さん。OPAAI!発言でだいぶ引かれた距離だったが少しだけ戻ってきた様子。どうやら、こちらの言葉をポジティブに捉えてくれたようだった。彼女も俺と同じで早めに正門前に集まっていたそうで、そういう意味で仲間意識的な距離間が生まれたのはありがたいことだ。

 

 「さて。馬を用意しましたけど……そうだわ! せっかくの機会ですから見せていただけないでしょうか?」

 「へっ? 見せるって……」

 「どのくらいの腕前なのか、皆が集まる前に確認させていただけません?」

 

 

 

 「んぎゃああぁぁあああ! っ………痛てて!」

 「あらあら…………これは困りましたね。どうしましょう……」

 

 盛大な音と砂煙を撒き散らして落馬。

 曹純さんに腕前をぜひにと請われて人生初の騎乗に挑戦となった一刀だったが、あれから約一時間…………体中が擦り傷と土まみれとなり、たった今、本日十回目の落馬と相成っていた。別に特段自信があったわけじゃあないけどさ、TVとかで見た乗馬のイメージとだいぶ違うんですけど。

 騎乗経験が無いことを曹純さんにあらかじめ伝えたのだが――

 

 「え? それは……困りましたね」

 

 ―と、最初は困惑していたのだが。

 

 「だ、大丈夫ですよ! ちょっと練習すれば行軍速度ぐらいは出せるようになりますから。今から一緒にやりましょう」

 

 ―と、意気込みも十分な曹純先生と騎乗講座に突入した。だが、これが予想以上に難しい。乗るまでは何とかなるのだが走り出すとさあ大変。撃墜された戦闘機乗りよろしく仰向きになって空中に投げ出されるわ、開拓史映画のカウボーイよろしく手綱を持ったまま引きずり回されるわ、と戦闘速度は元より、常歩(なみあし) すらままならない始末…………あっ、十一回目。

 

 「ふんぎゃああぁぁああ!」

 「ああもう、どうしてお馬さんが暴れるのかしら? ああ……どうしましょう、どうしましょう、どうしましょう」(オロオロ)

 

 盛大な土煙を巻き上げる俺の姿に、曹純さんが教導用に用意した馬の上で困惑中。彼女の方は全くと言っていいほど騎乗には問題ない……あたりまえの事だが。いや、問題がないというよりも素晴しい騎乗っぷりだ。人馬一体のその姿はまさに後世にまで高名轟く虎豹騎の曹純子和と言うべきか。

 ただ、非常に残念なことに説明がかなり抽象的であり、こちらが馬に乗れない原因が分からない様子。出来る人には出来ない人が何故出来ないのかを理解できないという話を聞いた事があるが、彼女もそのタイプだったらしい。名選手が名監督にならず、名騎馬武将が名教導官にならずと……。

 まいっちんぐな展開に、これはさすがにマズイと焦り始めた一刀と曹純先生だったがそんな中――

 

 「何やってるんですか。全く……見てられませんね」

 「痛ちちち……――――って! その声は、鄧艾ちゃん!?」

 

 正門前に聞き覚えがある可愛らしい声が。地面の上に仰向けになっている一刀の上に小柄な少女のシルエットが掛かる。

 

 いや、たしか、もう一回、寝なおすって言ってたよね? なんでここに。

 「はい、鄧艾ちゃんですよ。騎乗訓練をしているみたいですけど、それが北郷さんの仕事ですか?」

 「ん、ああ。これが仕事と言うよりも馬に乗れないと洛陽まで出かけることが出来ないっていうね」

 まあ、騎乗できる目途がまったく立たずに困っているわけなんだけど……。

 「はあ……しかたがありませんね。北郷さん、少し前を開けてください」

 「え、前って?」

 「北郷さんと一緒に乗って直接教えてあげるってことですよ。分かったら早く前を開けてください」

 

 鄧艾ちゃんの言葉に従って、お尻を半分ほどずらしてスペースを開けると手綱の隙間から小柄な体が器用に割り込んでくる。本気で俺に騎乗を指導してくれるらしい。だけど、本当にこのじゃじゃ馬を乗りこなせるのだろうか? 正味十二回ほど振り落とされているわけで――

 

 「本当にこの子を乗りこなせるのか疑わしいな? ……みたいな事を考えていますよね」

 「うお! 何でそんなことまで読めるんだよ!?」

 「顔に出さないようにしないと女性に嫌われますよ。それと、あまり大声を出さないでください。馬というのはものすごく臆病な生き物ですから、仲良くなるまでは静かに優しく接するのが基本ですよ」

 いきなりのダメ出し! そんなに大声を出したつもりはないんだけど――

 「猫背はメッ!です。背筋をピンと伸ばしてください。わたしの腰に捕まって一緒に……ピン!です」

 なんか擬音が混じりだしてきたぞ。えっと、つまりは身体を馬と垂直にするって事か。

 

 それから、鄧艾ちゃん……改め、鄧艾先生の騎乗授業はお昼近くまで続いた。もう集合時間も近いのか、虎豹騎の他の隊員たちもぼちぼち集まって来ているようだ。擬音が時たま混ざるのが難ではあるが、教え方自体は論理的で非常に解りやすい。実際にこの短時間で完全な初心者を一人である程度は乗りこなせるようにしたのだから名コーチであるのは間違いないだろう。たまに「ケツが下がりすぎです! 重心を常に意識してクワッと!」と訳がわからない事や、可憐な乙女が口にしてはいけない単語を発するのは頂けないところだが……。

 兎にも角にも、艱難辛苦を乗り越え、北郷一刀騎手が―― 陳留にて爆誕!

 

 「ううぅぅ…………何でしょうか、この敗北感は」

 「あ、曹純さん! ずいぶんと手こずったけど何とか騎乗できるようになったみたいだ」

 

 だいぶ落ち込んだ様子で、こちらに声を掛けてきた曹純さん。いや、まあ気持ちは察するけれど……。

ただ、鄧艾ちゃんの教え方のほうがわかりやすかった訳で慰めようがないのだが。何にしてもお昼までに騎乗が出来るようになったのは本気で助かった。馬に乗れないから頼まれた仕事が出来ませんでした、なんて言った日には曹操さんに何をされるかわかったもんじゃないしね。

 

 「……ぐすん、ええっと……たしか、鄧艾ちゃんでしたっけ? 部下に対してのご指導、ありがとうございました」

 「え、いえ。ご指導なんて大したものじゃあありませんよ。どうかお気になさらずに」

 

 何とか気を持ち直した曹純さんが鄧艾ちゃんに対してお礼を申し上げる。それに対して大したことではないと謙遜する鄧艾ちゃんだったが、実際問題に任務が出来るかどうかの瀬戸際の状況を解決してくれたわけなので大したことではあると思うんだが。

 

 「いやいや、本当に助かったんだってば! ここは素直にお礼を受けてあげてよ」

 「え、はあ……いや、そういう事なら」

 やっぱりこの子は天然ちゃんなのかな? いや、だけど天然ちゃんにしたって――

 「それにしても、鄧艾ちゃんってスゴイよね。ここまで来るとさすがに尊敬の念を禁じえないって感じだよ!」

 「え、ふぇ?」

 「だって、賊を三人相手にしても圧倒できるぐらい強いし、あの曹操さんを相手にしても一歩も引かない胆力だろ!」

 そう、初めて出会った時には命を助けられた。八つ当たりぎみではあったが、あの曹孟徳や夏侯淵に怒気をぶつけるメンタル。

 「教養もあるみたいだし、数学も得意みたいだし、医学にも精通していて、俺に騎乗を……馬の乗り方を分かりやすく教えてくれたじゃん」

 昨夜の試験で見せた知識はもちろん、怪我を治してくれた鍼灸の実力…………いや、本当に助けられっぱなしだよな、俺。

 「え、ええ!? いや、そんなに手放しで褒められても!」

 先ほどまでの冷めた姿勢は何処へやら。怒涛の褒め殺しに対して慌ててドモりだす。

 「それに、なんと言っても可愛らしいじゃないか! 完璧超人だよな、鄧艾ちゃんって!」

 「――ふぁ! な、な、何を…………ん~~~~~~っ!」

 

 せっかくの機会だ、とばかりに感謝の意味を込めてここぞとばかりに褒め称える一刀。だが、その言葉にゆでダコのように耳まで真っ赤にした鄧艾ちゃんは――

 

 「%$#&@*+◇※▲∴÷;¥!”#$%&’()=◎~|▽♪>?+*‘P`={}_?>□●@――――――――――――――――……っ!」

 

 ――謎の言葉を発しながら、エコーと共に正門の中に逃げ出してしまった。

 

 「ありりゃ? やっぱり照れやさんだな~」

 

 

 

 【人物・用語・解説】

 

 【董卓仲穎】

 恋姫無双シリーズのヒロイン。へうぅ~……が口癖の小柄な儚げ系美少女。白ストとメイド服の組み合わせからの絶対領域&御御足は洒落にならない破壊力! 髭と巨漢(デブ)の暴虐王というイメージを180°ひっくり返すという三国志の概念に反逆する、ある意味禁断のTSキャラ。史実の再現率だけなら文句なしの最下位です。

 史実の董卓と言えば説明不要の悪人であり、三国志や演戯、その他、アニメや漫画などでも大体が豚髭男。まったく…………これをモデルに月を生み出すなんてけしからん!(月ちゃんマジかわいいよぉ~! 白くて細い太ももとかマジでごほうびなんですけどぉ~! ゆえたんマジprpr)

 

 【曹純子和】

 恋姫英雄譚2のヒロイン。おっとり系の清楚なお嬢様な外見と裏腹にけしからんOPPAI!がデンジャーな魏の虎豹騎隊長。姉さん大好きな、と言うよりも魏のみんなが大好きなマジ天使さん。ただ原作だとあまり見せ場がなくてSSを書く時には困る。

 史実の曹純は魏の初期メンバーであり、騎馬を使った用兵が優れていたことから曹操自慢の虎豹騎をあずかる。部下からの人望が厚く戦力の見極めや戦局の流れを読む力に優れており、一番派手な武功が南皮城攻略戦の怒涛の攻め! 緩急込みを織り込みながらの騎馬隊の用兵術はまさに大陸の武田騎馬隊と言うべきか。

 

 【司空】

 インフラの整備や城や砦などの重要拠点の建築など固定資産系の国富の管理を司る。日本で言えば国土交通省あたりかな?

 

 【司徒】

 政治部門の最高責任者。民政を司る。この役職って日本の大臣だと何に当たるんでしょうか?

 

 

 【じゃあ、一緒に入りましょう。わたしが全部洗ってあげるね】

 いやいや、いくら仲良しでもこれは無いんじゃないかな。家族感覚ならば? あるいは恋人感覚ならばアリという事も……っ!

 「もう~。詠ちゃん、あんまり隠さないで。洗いづらいよ~」

 「だって、さっきから僕の胸ばっかり//// あんっ! もう、月ったら大人しい顔していやらしいんだから」

 「へ、へうぅ~……////」

 うん、これはアリだな。良い子の皆は横山三国志の董卓や蒼天航路の董卓で想像しないように。(絶対に想像するな! 絶対だぞ!)

 

 【OPPAIとか!】

 一刀くんも健康な男子なんで、寛大な心で許してほしい。

  

 【なんか擬音が混じりだしてきたぞ】

 偉大な背番号3番のオマージュです。いわいる一つの。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
7
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択