No.87790

[恋姫になれなかった英傑達  前編]

zanettaさん

始めまして、zanettaと申します。
このお話は

三国志演義の<黄巾党>の話を絡めた真・恋姫†無双~乙女繚乱☆三国志演義~の外伝SSです。
オリキャラ主人公です。

続きを表示

2009-08-02 15:15:31 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2650   閲覧ユーザー数:2321

 

[恋姫になれなかった英傑達  前編]

 

 

 

 

 

―――――正史―――――

 

黄巾の乱。

中国の古代王朝、後漢の領土の東半分を中心に発生した農民達の大反乱。

彼らは皆、黄色い頭巾を頭に巻いていたため「黄巾党」「黄巾賊」「黄魔」と呼ばれた。

合言葉は「蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉」「中! 黄! 太! 乙!」。

 

正史に刻まれる首謀者は、宗教「太平道」の教祖・張角、並びに兄弟の張宝、張梁。

 

●張角

天公将軍、大賢良師、太平道人、太平道教祖、黄巾党総帥

●張宝

地公将軍、黄巾党総帥代行

●張梁

人公将軍、冀州方面総司令官

 

 

しかし、この張三兄弟は拠点である冀州からほとんど動けずに居た。

では、何故「東半分」でこれ程の大反乱が起きたのか?。

それは、黄巾党でも中核をになった「渠帥」と「大方」によるものだ。

「渠帥」………黄巾党でも「指導者」と称される者。

「大方」………黄巾党の軍勢を束ねる権限を与えられた者。

 

その中でも、特に正史に刻まれる彼らの名は、以下の通り。

 

 

●馬元義

大方。

荊州・揚州方面の兵隊、合計すれば数万人規模の大軍勢を作り上げた者。

その後、帝都・洛陽へ向かい、当時権勢を奮っていた宦官たちでも最高位である「中常侍」の一部を内応させた謀略の将。

 

●張曼成

渠帥。

荊州の南陽黄巾軍総帥。

民衆扇動による挙兵後、南陽太守とその軍勢を攻め滅ぼした者。

南陽を拠点とした後、南方面から帝都・洛陽を脅(おびや)かした将。

自らを「神上使」と称した。

 

 

彼らは共に、帝都・洛陽の攻略を念頭に行動していた者達だ。

しかし、彼らが実際に帝都・洛陽へ軍事行動を起こす機会は無かった。

馬元義は、独自の軍勢を造り上げたが、黄巾党内の裏切り者の密告により、軍を動かす前に、車裂きの刑へ。

張曼成は、南陽を支配したものの、新たな南陽太守の軍勢の攻撃を受け、敗北し、処刑へ。

 

だが………たった1人だけ存在した。

 

帝都・洛陽のある司隷(司州)へ軍勢を向け、あと一歩の所で官軍に敗退した者が。

黄巾軍の中でも、洛陽侵攻を決断した唯一の将が、確かに居た。

 

 

此度の外史は、その者の一世一代の負け戦を、御覧頂こう―――――。

 

 

 

―――――外史―――――

 

 

赤い髪に、赤い目。

南の人間に多い、褐色の肌。

アタシは、まあ自分で言うのも変だけど、それなりに容姿は整っている。

で、そんなアタシが、クソでエロエロな役人に目を付けられた訳だ。

珍しくも何とも無い話だ。

アタシの村には、クソ役人が居た。

役人は、好き放題だった。

皆が必死こいて作った物を「税」と言う名目で奪いまくった。

そこらの盗賊の方がまだマシだ。

奴らは、端っから「奪う」を生業にしている。

そして…………自慢では無いが、アタシは我慢強くない。

 

?「おらぁッ!」

役人「ぎゃああああーーーーーーーーッッッ!!!」

 

アタシは、腕っ節には自信があるが、考えるのは苦手だ。

そんなアタシが、お偉い御立派な役人様の御威張り行為に、耐えられるはずも無かった。

まあ、そんなアタシと同じ考えで一緒に暴れてくれる奴が、他にも沢山居たが。

アタシの自慢の得物は「斧」。

女だけどさ、腕っ節は村一番。

なので、仕事は山で木を切り倒すのが主。

…………って言うのは、もう過去形だな。

たった今、役人を殺っちまった……ん?。

 

役人「き、きさ、きさまぁぁぁ……わ……わたし、に手を、だ、出して………」

?「へーえ、しぶといねー。いや、ぶくぶく太ったデブな腹のせいかい?」

 

ズンッ、とアタシは、うつ伏せにぶっ倒れた役人の背中に足を乗っけた。

痛みからか、クソ役人の悲鳴が木霊すが、問題は無い。

何故なら…………。

 

村人A「いい気味だぜ!」

村人B「こ、こいつ、よ、弱いだす。こんな奴に、う、ウチらはずっと……」

村人C「姐さん! やっちまえーーー!」

 

アタシの住む村の住人、その全てが今回の騒動に加担している。

 

?「はいはい、判ってるよ。でもお前ら、そろそろ逃げる準備しろよ?」

村人A「わかってるけどよー、せめてコイツの最期ぐらいは…………」

 

皆、覚悟の上だ。

これでアタシらは賊扱い。

バレたらすぐに手配される。

だから、せめて……コイツが苦しんで死ぬ様を焼き付ける。

 

役人「く、くぞぉ…………こ、こんな、げ、下民にぃぃぃ…………」

?「はッ! もう喋るなよッ!」

 

ブンッ、とアタシは斧を振り下ろした。

……グシャ、と、役人の頭を叩き割った。

 

 

 

 

 

 

 

後悔は、無かった。

 

 

 

 

 

でも…………世の中は酷い。

 

 

 

 

 

皆で逃げた、森の中を。

皆で逃げた、山の中を。

皆で逃げた、川の中を。

 

 

 

 

 

そして、皆、殺された。

アタシを、残して。

 

 

 

 

 

―――――それが、四年前のこと

 

 

 

 

 

 

 

張角「みんな大好きーーーーー」

ファン達「てんほーーーちゃーーーーん」

 

張宝「みんなの妹ーーーーー」

ファン達「ちーほーーーちゃーーーーん」

 

張梁「とってもかわいいーーーーー」

ファン達「れんほーーーちゃーーーーん」

 

 

 

?「…………なぜに???」

 

疑問符が多数浮かんだ。

いや、個人的に、張三姉妹の歌は好きだった。

あまり人気は無かったが、明るいし、身体を燃えさせるモノが歌の中にあったから、僅かな金を払ったりはしていた。

他に、娯楽もなかったしねー。

まあ、そんな訳での微妙な面識の元、腕っ節はあるし、同じ女だから、陳留への護衛を引き受けた。

暇だったし。

でも、陳留から移動した村から、急におかしくなった。

増えたのだ、一気に。

張三姉妹の追っかけと信望者が。

 

?「…………」

 

いや、理由は判る。

歌も、曲も、全体の流れも、さらに磨きがかかり、通りすぎる人々が足を止めて見入ってしまう魅了があった。

でも、思わず、頭を傾げて考えてしまう。

 

?「いきなりだもんな…………」

 

都会に出た途端、こうも変わるモノか?。

田舎育ちのアタシには判らない。

さらに、もう1つ判らない事がある。

 

ファン(親衛隊隊員A)「親衛隊長! 次の指示を!」

?「あ、ああ。えーと、そこの機材を第七班の連中と一緒に組み立ててくれ」

ファン(親衛隊隊員B)「親衛隊長! 荷物の搬入終わりました!」

?「うーーんと、それなら会場の警備にあたれ。右側の連中が暴走しそうだ」

ファン(親衛隊隊員C)「親衛隊長! 今回の売り上げ結果が出ました!」

?「そー……それなら、あとで張梁さまに報告すっから、竹簡にまとめたら、三姉妹の部屋の前に置いとけ。……部屋の中には入るなよ?」

ファン(親衛隊隊員D)「し、しん、親衛隊長! か、会場の、か、鏡設置、お、終わりました、つ、次は……?」

?「…………お前は休め」

 

そう、アタシは何時の間にか、張三姉妹親衛隊隊長になっていた。

いや、会場の用意とか、人和さんと一緒に会計の整理してただけなんだけどね?。

…………断れる機会が無かった訳じゃない。

アタシは追っかけでも、信望者でもない。

たまーに、聞いて、楽しむだけだ。

でも…………どうしても抜けられない理由がある。

それは…………。

 

 

 

 

ファン(親衛隊隊員E)「た、大変です! 「てんほーちゃんを崇拝する会」の「会長」張曼成さんが、騎馬隊を率いて来ました! 「突撃隊長」の趙弘さん、「斬り込み隊長」韓忠さん、「先駆け隊長」の孫夏さんも一緒です!」

?「何だとッ!?」

 

てんほーちゃんを崇拝する会「「「「「ほわああああああああああああーーーーーーーー!!!」」」」」

 

ファン(親衛隊隊員E)「も、申し上げます! 「ちーほー応援団」の「総団長」の卜已さんが、櫓に乗ってやって来ました! 「右団長」の張伯さん、「左団長」の梁仲寧さんも同乗してます!」

?「うぉいッ!!!」

 

ちーほー応援団「中! 黄! 太! 乙! 中! 黄! 太! 乙!」

 

ファン(親衛隊隊員F)「ほ、報告します! 「れんほーちゃんを見守る人々」の「首領」馬元義さんが、1万の軍勢率いて現れました!」

?「こらーーーーーーッッッ!!!」

 

れんほーちゃんを見守る組織「「「「「「蒼天已死! 黄天當立! 歳在甲子! 天下大吉!」」」」」

 

?「…………ていうか最後のが怖いよ! アタシらは淫祠邪教(いんしじゃきょう)じゃないぞ!!!???」

 

アタシの突っ込みは、信望者の大軍勢の前には何の役にも立たない。

 

?「どいつもこいつも! 彭脱! 彭脱は何をしている!」

彭脱「こ、ここですよ!」

 

見れば、同じく会場の暴徒止めに走っていた。

ぶっちゃけ、物凄く疲れてるみたい。

 

?「…………すまない、アンタは真面目だったね」

彭脱「いえ、それはともかく…………どうしますか? 波才さん」

?こと波才「…………」

 

彭脱の泣き掛けの質問に、アタシは決断した。

 

波才「親衛隊全兵に告げる! 会場外縁部分防衛作戦は失敗! 全隊員は現場を放棄後、速やかに会場の中央に集結! 張三姉妹を守る肉の壁となれッ!!!」

彭脱&親衛隊「「「「「応ッッッ!!!」」」」」

 

 

 

 

 

アタシの名は「波才」。

斧を振り回すしか脳の無い女。

 

 

 

 

 

でも、意地はある。

 

 

 

 

 

そして、未だに消えない憎悪も―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

※本SSのキャラ、正史における解説

 

 

●波才

渠帥。

豫州(予州)の潁川(許昌)方面黄巾軍総帥。

数多ある黄巾軍の中で、帝都・洛陽へ向けての遠征軍を率いた唯一の将。(正史に記録されている限りでは、だが)

皇甫崇軍が来る前に、朱儁軍を倒そうとするなど、各個撃破の必要性は理解していたらしく、本人にはそれなりの才があったと思われる。

しかし、率いていた軍勢がまともな訓練をしていない農民&山賊&野盗だった。

そのため、夜の休憩中の警戒が疎かになり、火攻めを受け、敗死。

 

 

 

後書き

 

と、言う訳で、三国志の序盤の黄巾党にスポットをあててみましたー。

…………この後、シリアスに持っていくつもりです。

一応、前編・中編・後編で、終わります。

恋姫になれなかった英傑<達>なので、皇甫崇とか、朱儁もちょろっと出ます。

 

拙い文章ですが、宜しくお願いしまーす。

 

 

 

 

 

 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
24
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択