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九番目の熾天使・外伝 ~ポケモン短編~

竜神丸さん

七夜の願い星 その10

2016-10-11 23:05:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3498   閲覧ユーザー数:1060

ヘルガーの繰り出す炎で重傷を負ったタブンネを治療する為、火傷状態を治せる木の実“チーゴの実”を採取しに向かう事になった一同。

 

早速、そのチーゴの実が生っているという森の中へ入った一同だったが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ザングッザングッザングッザングッ!!」」」」」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? あのザングース逹、めちゃくちゃ怒ってますよぉ!?」

 

「元はと言えば、こなたが昼寝してるザングースの尻尾を踏みやがったのが原因だろうがぁっ!!」

 

「私の所為!? いや確かに私の所為だけどさ、あんな場所でザングースが昼寝してるなんて気付かなかったんだから仕方ないじゃあん!!」

 

「喧嘩してる場合じゃありません、また『ブレイククロー』が飛んで来ますよ!?」

 

「キャアァァァァァァッ!?」

 

「にっげろー!」

 

『にっげろー!』

 

「チルチルゥ~!?」

 

…森に入って早々、マングースのような姿のポケモン―――ザングースの群れに追いかけ回されていた。原因はこなたが地上で昼寝していたザングースの尻尾を知らずに踏んでしまった事にあり、最初は襲って来るザングースが1体だけだったのが、気付けば仲間のザングースも集まって来てしまい、こうしてザングースの群れが一斉に襲い掛かって来る状況に陥ってしまった訳である。

 

「えぇっと、ザングースは確かノーマルタイプ……それならルカリオ、『きあいだま』!!」

 

「ワァ、オォンッ!!」

 

「ザングッ!?」

 

ザングースはノーマルタイプ、ならば格闘タイプのルカリオで追い払おうと考えたのだろう。ボールから繰り出されたルカリオがエネルギーを球状に収束して放った技『きあいだま』が1体のザングースに命中。しかしそれを見た他のザングース逹がバラバラに散らばり、その内の1体がルカリオに接近し、格闘技『インファイト』でルカリオを目に見えない速度で殴打し始めた。

 

「ザングザングザングザングザァァァァングゥッ!!」

 

「ワゥンッ!?」

 

「うぇぇぇぇぇぇっ!? ザングースって『インファイト』使えるんですかぁ!?」

 

「くそ……だったらムクホーク、こっちも『インファイト』だ!!」

 

「ゴ、ゴウカザルもよろしくぅ!!」

 

「ムックホォー!!」

 

「ウッキャアー!!」

 

ならば数で押すしかないと、ロキのムクホークとこなたのゴウカザルが共に『インファイト』を繰り出し、襲い来るザングース逹を蹴散らしていく。しかし2体の繰り出す『インファイト』で吹き飛ばされた1体のザングースが近くの木にぶつかり、その衝撃で木の上から別のポケモンがドサッと落ちて来た。

 

「ん? 何だ…」

 

「キシャアァ~ッ!!」

 

「ギャアァァァァァァァァァッ!? 今度はハブネークだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「ちょ、別のトラブル持ち込んでんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

「!? ザングゥゥゥゥゥ…!!」

 

木の上から落ちて来た蛇型ポケモン―――ハブネークは怒り狂った様子で鳴き声を上げ、こなたに向かって『ポイズンテール』で襲い掛かって来た。こなたが慌てて回避する中、ハブネークの存在に気付いたザングース逹は更に凶暴性が高まり…

 

「「「「「ザングゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」」」」」

 

「シャアァァァァァァァァァッ!!!」

 

「!? な、何だ…?」

 

「勝手に喧嘩し始めましたよ…?」

 

ディアーリーズ達を放置し、ハブネーク目掛けて一斉に襲い掛かったのだ。既に興奮状態なハブネークも上等だと言わんばかりにザングース逹に向かって攻撃し始める。

 

「チャンスです!! レイさんから聞いた話じゃ、ザングースとハブネークはお互いがライバル同士で、遭遇すると本能で戦いを挑んでいくらしい……逃げるなら今しかありません!!」

 

「確かにそうですね、ならば早く逃げまブフッ!?」

 

急いで逃げ出そうとする一同。しかし後ろへ振り返って逃げようとした朱雀は、そこにいた何かに顔面から激突してしまった。

 

「痛たた、一体何なんで、す……か…」

 

激突した“それ”を見て、朱雀は顔を青ざめた。何故なら…

 

「グルルルルルルル…!!」

 

ザングースとハブネークの騒ぎが原因で眠りを妨げられた、大きな熊のようなポケモン―――リングマがご機嫌斜めな様子で立っていたからだ。

 

「あ、あははははは……どうしよう」

 

「…グゥゥゥゥゥゥゥゥマァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

「「「「ギャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」」」

 

今の激突が引き鉄となったのか、怒りの爆発したリングマは口元にエネルギーを収束し、一同に向かって『はかいこうせん』を発射。一同は慌ててそれを回避し、その後方で争っていたハブネークやザングース逹すらも容赦なく吹き飛ばす。

 

「よし、ここは二手に別れて逃げるぞ!! ウル、こなた、お前等は向こうに逃げろ!! 残る俺達で何とか逃げ延びてみせっから!!」

 

「アタシ等を囮にする気かぁ!? それよりどうしよう、リングマが後ろから付いて来ちゃってるよぉ!?」

 

「はぁ、はぁ……は、蜂蜜で、大人しく…なりますか……!?」

 

「あの様子じゃたぶん無理だと思い……ちょ、また『はかいこうせん』撃って来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「チルルゥ~ッ!?」

 

「にっげろ~にっげろ~♪」

 

『にっげろ~にっげろ~♪』

 

「そして咲良とジラーチは何でそんなに楽しそうなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「グマァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

リングマに追いかけられる一同……そんな様子を、木の上から窺っているポケモンがいた。黄色くモフモフした毛を生やした蜘蛛型ポケモン―――デンチュラだ。

 

「…チュラァ」

 

デンチュラは「やれやれ」と言った様子で溜め息をつき、すぐにその場から姿を消すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、そんな状況になっているなど知る由も無い、残りのメンバー逹はと言うと…

 

 

 

 

 

「やれやれ、どうして無関係な私達も一緒に向かう羽目になったんでしょうかねぇ…?」

 

「仕方ないだろ? 気性の荒い虫ポケモン達なんぞに出くわしたら、いくらアイツ等でも流石に無傷じゃ済まねぇんだから。戦力は多いに越した事は無い」

 

結局、増援として支配人、刃、カガリ、竜神丸の4人もディアーリーズ達の後を追う事になっていた。元々そんなに関わりを持たない刃、ダークポケモンにさほど興味の無いカガリは当初、めんどくさそうな様子で支配人に抗議していたが、カガリに関しては支配人が「ウルの役に立てるぞ」と告げた瞬間に態度を変えて積極的に協力するようになっていた。ちなみに今回はokakaとげんぶ、ユイの3人が留守番である。

 

「それに俺からすりゃ、アルファが一緒に来てる事に一番驚きだ。今度は何を企んでやがる?」

 

「酷いですねぇ、もっとマシな言い方は無いんですか? こっちはただ、野生のポケモンを何体か捕まえておこうと考えてるだけですよ。今後の戦力強化の為にもね」

 

「あぁそうかい。それだけで済むならこっちも文句は無いんだが……おっ」

 

「チュラッ」

 

その時、支配人達の前にデンチュラが降り立って来た。それを見た刃とカガリがすぐ臨戦態勢に入るが、支配人がすぐに右手で制す。

 

「よぉ、デンチュラ。今日もエリアの警備お疲れさん」

 

「チュラッ!」

 

「? そのポケモン、レイさんの手持ちですか?」

 

「あぁ、デンチュラって名前のポケモンだ。仲間のデンチュラ逹と連携して、あちこちの森を警備して回っているのさ……なぁデンチュラ、ここらを少年少女の団体が通らなかったか?」

 

「チュラ! チュラチュラッチュラアッ!」

 

「…もしかして、もう通り過ぎちゃった後か?」

 

「チュラッ」

 

「…となるとマズいな。ここらの森に住んでる虫ポケモンって確か…」

 

「…アリアドスにコロトック、クヌギダマにミツハニー、ホイーガにビビヨンの群れもいた筈。それから…」

 

 

 

 

-ドガァァァァァァァァァァンッ!!-

 

 

 

 

「「「「……」」」」

 

突然響き渡る爆発音。

 

「…虫ポケモン以外にも、凶暴なポケモンがたくさんいる」

 

「くそ、ここじゃなくて別の森に入らせるべきだったか。まぁ今更言っても遅いだろうが……っと、伏せろ!」

 

「「ッ!!」」

 

「おっと」

 

何かの気配を察知した支配人の声に、刃とカガリは同時に伏せ、竜神丸も何かに気付いた様子でその場から僅かに右へ移動する。その瞬間、一同のすぐ傍に何本かの『どくばり』が突き刺さった。

 

「…レイさん、私達も既に囲まれているようですよ」

 

「あぁ、そのようだな…」

 

「「「「「キシャァァァァァァ…!!」」」」」

 

木の上や草むらの中から出て来たのは、黄色と紫の縞々模様がある赤いボディの蜘蛛型ポケモン―――アリアドスの群れだった。繁殖時期で興奮している為か、アリアドス逹は余所者である支配人逹を怖い形相で睨みつける。

 

「…見た感じ、口で言っても説得は無理そうですね」

 

「どうします? 纏めて焼き払いますか?」

 

「馬鹿言え、森が燃えるだろうが。軽く追い払う程度にしておけ」

 

「チュラァ…!!」

 

4人とデンチュラが戦闘態勢に入り、それを見たアリアドス逹は一斉に『どくばり』を繰り出そうとする。

 

「「「「「キシャアッ!!」」」」」

 

「デンチュラ、かわして『ねばねばネット』!!」

 

「チュラッ!!」

 

アリアドス逹の繰り出す『どくばり』を全て回避し、デンチュラは口から放つ蜘蛛の糸で『ねばねばネット』を瞬く間に形成し、アリアドス逹を蜘蛛の糸で纏めて拘束してみせた。これで半分以上のアリアドスが上手く身動きを取れない状態になったが、取り溢してしまったのか、一部のアリアドスがデンチュラを『いとをはく』で拘束しようとする。

 

「やれやれ、手間がかかりますねぇ……実験開始ですヘルガー、『かえんほうしゃ』」

 

「ヘルッガァ!!!」

 

「「「「「キシャァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」」」」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!? 炎技を使うんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

 

竜神丸が繰り出したヘルガーは、『ねばねばネット』で動けないアリアドスを『かえんほうしゃ』で容赦なく焼き払い始めた。この一撃でほとんどのアリアドスが遠くへ吹き飛ばされたが、かろうじて瀕死にならなかったアリアドスが竜神丸の前に立ちはだかる。

 

「ほぉ、今の一撃を受けて生き残りましたか……では、ちょっとばかり捕まえてみましょうかね」

 

「!? キシャ―――」

 

竜神丸によって軽く投げられたモンスターボールは、1体のアリアドスの頭部に当たった後、アリアドスを吸い込んでから地面に落ちる。モンスターボールは数回ほど揺れた後、カチッと音が鳴って揺れが収まった。

 

「おぉ、ゲットしましたね」

 

「…やり方がスマート」

 

「スマート……じゃねぇよ!? 森が燃えるから炎技はやめろって、さっき忠告したばっかだろうが!!」

 

「チュラッチュラアッ!!」

 

「燃えてないんだから良いでしょう? いちいちうるさい御方ですねぇ…」

 

支配人とデンチュラの怒る声も無視しながら、竜神丸は地面に落ちているモンスターボールを回収し、それを開いたポケモン図鑑でスキャン。ゲットしたアリアドスの能力を確認する。

 

(覚えている技は『どくばり』に『いとをはく』、それに『ナイトヘッド』のみ……能力も全体的に低く、新戦力に成り得るほどの強さは持ち合わせていない…)

 

「…使えませんね」

 

「え?」

 

「あなたに用はありません、失せなさい」

 

竜神丸はポケモン図鑑を収めた後、モンスターボールをその場に放り投げる。すると青色の光と共にアリアドスが飛び出し、竜神丸逹に見向きする事なく草むらの中へと消えていく。

 

「…って逃がすんかい!?」

 

「覚えている技が弱い上に、能力も全体的に貧弱でしたからねぇ。あの程度のアリアドスなら野生にいくらでもいますし、私の望む新戦力には到底成り得ない」

 

「お前なぁ……いや、もう良い。お前はもう突っ込むだけ無駄だ」

 

「おや、私の事をよく分かってるじゃないですか」

 

「分かりたくないけどな本当は!!」

 

支配人が竜神丸に対してギャーギャー言う中、刃とカガリは同じ事を考えていた。

 

((ウル達の事は良いんだろうか…?))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに数分後、ディアーリーズ達は何とかリングマを振り切る事に成功していた。最も、リングマを振り切るまでにかなりの体力を消耗してしまっていたが。

 

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……や、やっと逃げ切れましたね…」

 

「はぁ、はぁ……くっそ……森に入って早々、何でこんなに疲れなきゃならねぇんだ…!!」

 

「チ、チーゴの実を採りに行くだけで……大変な事になりましたね…」

 

「はぁ、はぁ……ご、ごめんなさい……私が、提案したから、こんな事に…」

 

「チ、チルゥゥゥ…」

 

「い、いや、美空ちゃんは悪くないって…」

 

「追いかけっこ、おもしろかったー♪」

 

『面白かった~!』

 

「…チルタリスですら疲れてんのに、何でそこの1人と1匹は未だに元気なんだろうか」

 

ディアーリーズ達が疲労で地面に座り込んでいるのに対し、咲良とジラーチだけは未だ元気であり、楽しそうな様子で遊んでいる。特にジラーチの様子は傍から見れば、悪の組織から狙われている幻ポケモンとは到底思えないくらいだ。

 

「と、とにかく、リングマからは逃げ切れたんだしさ。早いところチーゴの実を回収しようよ!」

 

「そうしたいところだけどな、もうちょい休んでからの方が…」

 

 

 

-ポンッ!!-

 

 

 

「スピスピッ!!」

 

「!? え、どうしたのスピアー!?」

 

突然、ディアーリーズのポケットに入っていたモンスターボールから、鋭い針や赤い複眼を持った凶悪そうなスズメバチ型ポケモン―――スピアーが飛び出して来た。突然の登場にディアーリーズが驚く中、スピアーはとある方向を睨みつけている。

 

「! 皆さん、アレ見て下さい」

 

「アレ…?」

 

「「「「「……」」」」」

 

朱雀が指差した方向を見ると、木の枝からぶら下がっているマツボックリやクヌギを模したポケモン―――クヌギダマの群れが、一同を見下ろしている光景が見えた。そんなクヌギダマの群れに対し、何故かスピアーは敵意を剥き出しにしている。

 

「スピィィィィ…!!」

 

「お前のスピアー、ヤケに敵意剥き出しだな…」

 

「あぁ、えっと……僕のスピアー、昔色々あった所為で虫ポケモンに憎悪を抱いてるらしくて…」

 

「それは別に良いが、あのクヌギダマ逹は何であんな光ってんだ?」

 

「「「え?」」」

 

ロキの発言で、ディアーリーズ達は再びクヌギダマの群れを見据える。よく見ると、クヌギダマの群れはどの個体も白く点滅し始めていた。

 

「…あれ、ちょっと待って!? クヌギダマって確か、自力で『じばく』や『だいばくはつ』を覚えられるポケモンだった気が…」

 

「「「え”っ”」」」

 

こなたがやっと気付いたが、もう遅い。

 

 

 

 

-チュドドドドドドドドォォォォォォォォォォォォンッ!!!-

 

 

 

 

「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!??」」」」

 

スピアーに睨まれたのが原因だろうか。こなたの予測通り、クヌギダマの群れは一斉に『じばく』を発動し、一同による本日二度目の大絶叫が森に響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「! レイさん、向こうから何やら爆発音が…」

 

「あぁ、アレたぶんクヌギダマが『じばく』か『だいばくはつ』でもしたんだろうな」

 

「…悲惨」

 

「流石クヌギダマ、文字通りのとんでもない爆発力ですねぇ。戦力ではなく、兵器として役立ちそうです」

 

「やったら怒るぞ?」

 

「嫌ですねぇ、ジョークに決まってるでしょう?」

 

「…チュララァ(信用出来ないなぁ)」

 

ちなみに、そのクヌギダマ逹の『じばく』を目印に支配人達が後を追いかけて来ている事を、ディアーリーズ達はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その後も一同の災難は続く…

 

 

 

 

 

 

-ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!-

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁホイーガの群れが転がって来ましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「おい、お前のスピアー何とかしろよ!? アイツがいちいち威嚇する所為で狙われてんだぞ俺達!!」

 

「そ、それは分かってるんですが、虫ポケモンがいる時だけは全然言う事を聞かなくて…!!」

 

「スッピィィィィィィィィィィィィィ!!!」

 

「…って言った傍から挑みに行くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

ある時は、真ん丸に丸まったムカデ型ポケモン―――ホイーガの群れが物凄いスピードで坂道を転がって来たり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~♪~~♪~♪♪~~♪~…」

 

「おい、耳を塞げ!! 『うたう』で眠らされ…zzz」

 

「ちょ、ロキさん寝ちゃ駄目で、す…zzz」

 

「スッピィィィィィィィィ!! …zzz」

 

「さ、流石にスピアーも『うたう』は無理でし、た…か……zzz」

 

「「「「『zzz…』」」」」

 

ある時は、バイオリンのような特徴を持った赤いコオロギ型ポケモン―――コロトックの『うたう』攻撃で全員が眠らされたり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ビビィィィィィィィィッ!!」」」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!? 何つう風の強さだ…!!」

 

「スッピィィィィィィィィィィィ……ッ…スピィィィィィィィィィィィィィッ!?」

 

「あぁ!? スピアーが吹き飛ばされた!?」

 

「チルゥゥゥゥゥゥゥッ!?」

 

「あ、チルタリスも…!?」

 

「あーれー!」

 

『あーれー!』

 

「え、ちょ、咲良ァーッ!? ジラーチィーッ!?」

 

ある時は、様々な模様を持った蝶型ポケモン―――ビビヨンの群れが発生させた『ぼうふう』でスピアー、チルタリス、咲良、ジラーチが纏めて吹き飛ばされてしまったり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グマァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁさっきのリングマがまた出て来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「くっそ、こんな時に限ってぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

「スピッ」

 

「おいスピアー、こんな時だけ『とんぼがえり』でボールに戻るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

ある時は、振り切ったと思っていたリングマに再び見つかって追いかけっこが再開したり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ今度はイワークがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「ていうか何でここにイワークがいるんですか!? 普通イワークって岩山に生息するポケモンですよね!?」

 

「俺が知るかそんな事!! おいウル、お前ちょっと囮になれ!! そして儚い犠牲になって来い!!」

 

「嫌ですよ!?」

 

岩石のように硬いボディを誇る巨大な岩蛇ポケモン―――イワークに追いかけられたりと、この一日だけで一同は何度も大変な目に遭わされていた。

 

「グォォォォォォォォォォ…!!」

 

「いぃ!? やっべぇ…『すてみタックル』が来るぞ!!」

 

「皆、左右に避けて下さい!!」

 

「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」

 

全身にエネルギーを収束させたイワークは『すてみタックル』を発動し、一同目掛けて物凄いスピードで突っ込んで来た。この時、一同はそれぞれ左右に飛んで『すてみタックル』をかわす事は出来たのだが…

 

「あ…キャアァァァァァァァッ!?」

 

「あ、みーちゃん!?」

 

『ミソラ!』

 

「チルゥ!?」

 

厄介な事に、美空が避けた先にはちょうど崖があり、美空は誤って足を踏み外してしまったのだ。それに気付いた咲良はジラーチと共に崖から飛び降り、チルタリスも慌てて彼女達を追いかけるように崖下へと飛び降りる。

 

「美空さん!! 咲良!! 早く助けなきゃ―――」

 

「待て、危ねぇぞ!!」

 

「グォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

ディアーリーズ達もその事に気付くが、襲って来るイワークに足止めされ、身動きが取れない。その間にも、美空達はどんどん落ちていってしまう。

 

「チルゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

「ジラーチ、おねがい! みーちゃんをたすけて!」

 

『分かった! ミソラ、助ける…!』

 

この時、咲良は咄嗟にジラーチに美空を助けるように頼み、ジラーチもそれを承諾。ジラーチの頭部の短冊が光り輝いた瞬間、美空、咲良、ジラーチ、チルタリスは一瞬でその場から姿を消してしまうのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――キャアッ!?」

 

「チルッ!?」

 

「うわぷっ!」

 

『おっと』

 

その後、ジラーチの願い事で何処かに『テレポート』してしまった2人と2体。いきなりの転移に驚いた美空は仰向けに地面に倒れ、咲良はチルタリスの羽毛に顔を突っ込む形で落ち、ジラーチは何事も無かったかのように浮遊しながら咲良の頭の上に乗る形で落ち着いた。

 

「ジラーチ……助けて、くれたの…?」

 

『サクラは頼んだ。ミソラを助けてってね』

 

「……あり、がとう。おかげで、助かった…」

 

『どういたしまして!』

 

「ぷはっ」

 

美空から礼を言われ、ジラーチはえへんと言いたげな表情を見せる。その横で、チルタリスの羽毛に頭を突っ込んでいた咲良はすぐさま顔を出し、周囲をキョロキョロ見渡す。

 

「あれ、ここどこ?」

 

「ここは…」

 

そこは森の最深部と言える場所だった。木々が生い茂っている為か、先程までいた地点よりも薄暗く、それだけで美空は思わず不安になるが、咲良は特に怖がる様子は見せない。

 

「ハニィ~」

 

「! あれは…」

 

「あ、ハチさんだ!」

 

そんな彼女達の頭上を、三つの顔を持ったミツバチ型ポケモン―――ミツハニーが飛び回っていた。可愛らしい容姿を持つミツハニーに咲良はジラーチを抱きかかえたまま楽しそうに追いかけ、美空とチルタリスもそれに続くように飛んで行くミツハニーを追いかける。そして後を追ってみると…

 

「「うわぁ…!」」

 

彼女達が辿り着いたのは、多くのミツハニーが飛び交う巨大樹だった。その巨大樹の内部では、ミツハニー逹がこれまでに貯蔵してきたと思われる大量の蜂蜜が黄金に光り輝く光景が映っている。

 

「綺麗…!」

 

「うわぁ~あまいにおいがする~!」

 

『すご~い!』

 

美空も咲良も、そしてジラーチも思わず見惚れてしまうほどで、彼女達は甘い匂いに誘われるように巨大樹の中を覗き込もうとした……しかし。

 

「! チル…?」

 

この時、チルタリスは気付いた。

 

「ハニィ~」

 

「ハニィ~」

 

「ハニィ~」

 

「ハニィ~」

 

「ハニィ~」

 

「ハニィ~」

 

いつの間にか、ミツハニーの数がどんどん増えて来ていた事に。

 

「! え、何…?」

 

流石に美空も気付いたようだが、そんな彼女の反応を無視して、ミツハニー逹は1匹、2匹、3匹と集まってはどんどん合体し、少しずつ巨大な蜂の巣のような塊として大きくなっていく。そして…

 

「「「「「「ハァニィ~~~~~~~~~ッ!!!」」」」」」

 

「ッ……キャアァッ!?」

 

「うわぁ~!?」

 

『うわわわわわ!?』

 

「チルゥッ!?」

 

100匹集まったミツハニー逹は、一斉に『かぜおこし』を発動。1匹では微力な『かぜおこし』でも100匹集まれば強力な風になるようで、美空達は一瞬で巨大樹の中まで吹き飛ばされ、そのまま蜂蜜のプールの中へと勢い良くダイブしてしまった。すぐさま彼女達は顔を出すが、その全身は蜂蜜まみれになってしまっている。

 

「うぅ……蜂蜜で、ベタベタ…!」

 

「うわ、あっま~い♪」

 

『うえぇ、僕にはちょっと甘過ぎるかな…』

 

「チルゥ~…」

 

その時だ。

 

-ザバァァァァァァ…-

 

「「「『!?』」」」」

 

彼女達と同じように、蜂蜜のプールの中から飛び出して来る存在がいた。

 

蜂のような上半身。

 

蜂の巣とドレスが組み合わさった下半身。

 

その上半身と下半身を繋ぐ細い腰。

 

まるで女王様を思わせる風貌を持った存在。

 

そう、その存在こそが……ミツハニー逹を統率する女王蜂だった。

 

「ヴヴヴヴヴヴ…!!」

 

女王蜂型のポケモン―――ビークインは、その赤い目をギラリと光らせ、細い腕を振るってミツハニー逹に何かしらの指示を下す。するとそれに応えるかのように、ミツハニー逹は一斉に両目をギラリと光らせ、蜂蜜のプールの中にいる美空達を取り囲んでいく。

 

「ひっ…!?」

 

「うわぁ~いっぱいいる~!」

 

『サ、サクラ、喜んでる場合じゃないよ…!?』

 

「チ、チルルゥ…!?」

 

「…ヴヴヴッ」

 

ミツハニーの群れに取り囲まれた事で、美空達は完全に逃げ場を失ってしまった。そんな彼女達を見てほくそ笑んだビークインは、再びミツハニー逹に指示を下す。

 

 

 

 

 

 

この時、ビークインの鳴き声を人間の言葉に訳せるとしたら、きっと彼女はこう言っていた事だろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“侵入者を生かして帰すな”……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『七夜の願い星 その11』に続く…

 


 
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