No.860417

ALO~妖精郷の黄昏・UW決戦編~ 第38-17話 アバター戦 後編

本郷 刃さん

第17話目です。
今回でアバター戦は終了となります、最後の方々も存分に描かせていただきました。

では、どうぞ・・・。

2016-07-26 13:47:01 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:4642   閲覧ユーザー数:4194

 

 

 

 

第38-17話 アバター戦 後編

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

次々と不正アクセス軍(アクセス軍)を倒していくUWコンバート軍(コンバート軍)

中でも一部のプレイヤー達は群を抜いて個々の圧倒的な力を揮っていた。

勿論、個々の力だけではなく、仲間と連携して戦う者達も居り、その者達の活躍もあってコンバート軍は質で優勢を保つ。

そんな彼らに最後のスポットライトを当ててみよう。

 

 

 

青年の太刀と女性の短剣が振るわれ、周りの敵達は二人の猛攻撃により一人残らず倒され消滅していく。

二人の戦い方には意図的な無駄しかなく、攻撃そのものには少しの無駄もない。

現実のキリト達同様の達人クラスだと窺い知れる。

 

「幾らこちらの質の方が上と言っても、やはりこの数は侮れないな…」

「ええ。ですが、確実に数は減らせています。大魔法の類も発動しているようですし」

 

会話をしながらでも一切の隙が無い二人。

男性の方の種族は影妖精族(スプリガン)、名を『ガイ』という。

左右の腰部には太刀を据えており、左に据えている太刀の銘は『天羽々斬剣』、

右に据えている太刀の銘は『逆鱗』で現在その手に持っているのはこれだ。

また、現実世界の彼は《八葉一刀流》という流派を習得しており、その“皆伝者”で【風焔の剣聖】の称号を与えられている。

(容姿と服装は『英雄伝説 閃の軌跡Ⅱ』の『リィン・シュバルツァー』)

 

女性の種族は猫妖精族(ケットシー)で名前は『レイナ』である。

背負うのは『ゲイボルグ』という銘の槍、手には『麒麟』という銘の短剣を構えている。

彼女は現実世界にて神社の巫女を務めており、その神社に伝わる槍術の達人であることから【(かんなぎ)の槍聖】と謳われている。

(容姿は『ストライク・ザ・ブラッド』の『姫柊雪菜』を成長させた感じ)

 

地元が同じで恋人兼幼馴染の間柄である二人、お互いに武を学び切磋琢磨してきた。

この二人は『SAO生還者(サバイバー)』であり、その後にデータを引き継いでALOをプレイ、

そして今回の一件の経緯をALOでリズベット達から聞き、UWへコンバートしたのだ。

 

「また集まってきたか…行くぞ、レイナ!」

「はい、ガイ!」

 

敵を蹴散らしたのも束の間、再び集まってきたアクセス軍を打ち倒す為に武器を振るう。

ガイは逆鱗を、レイナは麒麟を振るって敵を斬り裂いていく。

現在ガイが振るっている太刀の逆鱗は普段愛用しているものだが彼の力を百%引き出せるものではなく、

レイナも前述の通り槍の使い手であり短剣は本来の得物ではない。

それでもさすが息の合った二人の戦闘、ガイの攻撃を主としてレイナが短剣に細かな動きと手数の多さで連携をこなす。

 

「この数が相手だとそろそろ逆鱗じゃ厳しいな。レイナ、使うぞ」

「ええ。私も使わなくてはならない時だと思います」

「そうだな……いくぞ、天羽々斬剣!」

「いきましょう、ゲイボルグ。我が槍術の一旦のお披露目です」

 

ガイは太刀を逆鱗から天羽々斬剣に変え、レイナも短剣の麒麟を鞘に納めると背負っていた槍のゲイボルグを両手で構える。

二人の達人が自身の本領である得物を振るい、蹂躙を始めた。

ゲームではない戦いにおいて、ガイもレイナも敵に容赦をすることはない。

両者の太刀と槍によって斬られるか貫かれるか抉られるか、現実と仮想の力を兼ね備える二人の戦いは凄まじい。

 

「八葉の技、お前達に見せてやる!」

 

強化魔法を使い自身の能力を上昇させたガイは天羽々斬剣を使い、八葉の技を使用する。

 

回転の動きを利用して強烈な一撃を放つ八葉一刀流・一の型《螺旋》。

高速移動から連続で斬撃を放つ二の型《疾風》と一度の斬撃の時に衝撃波を放ち追撃する《裏疾風》。

居合の構えから敵とのすれ違いざまに斬りつける抜刀術の四の型《紅葉斬り》。

同じく居合の構えから相手の攻撃にカウンター抜刀術の五の型《残月》と派生技の《桜花残月》。

敵とのすれ違いざまに斬り抜ける七の型《無想》。

空いている手による掌底の打撃格闘術の八の型《無手》。

八葉一刀流の基本である型、それを達人が使うと桁外れのものになる。

 

「八葉の真髄、その身で以て受けてみろ!」

 

そして、オリジナル・ソードスキル(OSS)に設定している奥義などを使う。

 

太刀に蒼焔を纏い斬る、物理四割と火炎六割の秘技《蒼焔ノ太刀》。

跳び上がり高速横回転を行う事で鳳凰を象った炎を纏って相手に突進し敵を粉砕する、物理三割と火炎七割の奥義《鳳凰烈波》。

超高速の斬撃を十回行って風を纏った強烈な一撃を与える、物理六割と風四割の奥義《風神烈破》。

瞬時に相手に近づき炎を纏う太刀で相手を三方向から斬り正面から六連続の攻撃を行う九連撃の技、物理七割と火炎三割の絶技《暁》。

 

その時ガイは何かを感じそれを解放した、それはキリトと同じ『覇気』で『覇王』の性質である。

覇気を解放した状態でガイは上空に跳び上がると相手に向かって突進しながら降下し、

地面に着地すると同時に強烈な風の一撃を与える、物理二割と風八割の技《黒皇》を使った。

OSSの技後硬直時間(スキルディレイ)の間はレイナがカバーしたことで両者に怪我はない。

ガイの圧倒的な戦闘能力は周囲の敵を悉く討ち倒した。

 

「いまの感覚は…あれがまさか、『覇気』なのか…?」

「ガイ、いまのはもしかして…」

「あぁ、至ったんだ……この感覚、忘れない内にもう一度掴まないと。行こう、レイナ」

「はい、貴方と共に何処までも」

 

二人の達人は未だ集団を成しているところへ向けて駆けだした。

ガイはこの戦いで完全に覇王の覇気に目覚め、黄昏に際してキリトと出会うことになるがそれは先の話だ。

【風焔の剣聖】と【巫の槍聖】、凄まじいまでの戦果から分かる、その称号に偽り無し。

 

 

 

 

その男性は僅かに小高い場所から戦場を見据えていた。

 

「味方・敵、共に戦場における状況を把握完了。僕の装備・道具、共に問題無しだね」

 

彼の名前は『ソウジ』、種族はスプリガンである。

その身は『霞之羽』という陰陽師のような着物に近い装備で統一しており、

防御力が1.8倍上昇、敏捷が1.5倍、技後硬直時間半減、自動微少回復の効果がある。

腰元には刀で古代級武器の『黒暁』が据えられており、刀身は黒一色で鞘も黒だが金色で霞と桜の装飾が施されていて、

耐久値が非常に高く伝説級武器にも匹敵するほどの耐久性能を誇る。

背中には同じく古代級武器の『ドレヴァス』を背負いシンプルなデザインの銀色の細槍であり、

防御力アップ・全デバフ無効・デバフランダム付与・デバフダメージアップの効果付きだ。

左右の腰部に短剣を一本ずつ差している。

(容姿は『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の『キラ・ヤマト』)

 

「まずは味方の援護に行こう」

 

ソウジは二本の短剣を鞘から引き抜き、全速力で味方と敵が戦っているところへ向かった。

最前線に到着した彼は二本の短剣による我流の二刀流戦闘を開始した。

ソウジのバトルスタイルはスピードタイプのものであり、一撃の威力よりも攻撃の手数や連撃に重きを置く。

相手からの攻撃を全て回避する、さらには相手の攻撃を読んでいたかのように先に攻撃をする。

自身の攻撃は的確に相手を斬り裂き、相手の攻撃は綺麗に受け流すか確実に避ける。

闇系の下級攻撃魔法を使い、複数の闇弾が弾幕となって相手を牽制するように降り注ぐ。

 

「(味方の戦況は良い感じだね。ここは敵陣に斬り込もう!)」

 

短剣を鞘に納めると腰元に据えていた黒暁を抜刀し、さらに鞘左手に持つことでもう一つの我流二刀流を行う。

短剣よりも強い一撃、刀の刃による斬撃と鞘による打撃、この二つが我流とはいえ舞うように敵へ襲いかかる。

短剣の時と同じようにソウジは相手の攻撃を受けず、全て回避するか受け流し、一人一人を確実に斬り倒していく。

敵の傍を回転しつつ斬りつけながら駆け抜け、アクセス軍のプレイヤー達は抵抗も空しく消えていく。

 

『これは現実なんだ。ゲームだと思っている限りキミ達が勝てるわけがないだろう?』

 

戦闘中、ソウジは敵に対して何度も英語で敵に対して挑発行為をする。

その言葉に敵軍は(こぞ)って彼に向かっていくが、逆に返り討ちに遭う。

ソウジはスピードで相手を翻弄するだけでなく、相手の行動・視線・呼吸を観察することで予測を立てており、

それ故に攻撃の被弾率が低く先読みの成功率も高いのだ。

特に挑発することで相手は読み易くなるし、自身の思考を隠すようにしている。

まぁ彼自身命を軽く見る者を嫌う傾向があるからそれもあってのことだろう。

 

「(中枢に斬り込めた、あとは倒すだけだ)」

 

黒暁を鞘に納めて腰元に戻すと今度は背負っていた細槍のドレヴァスを振り回してから両手で構えた。

ソウジはドレヴァスを振るい、刃の部分で斬りつけ、突き、抉り、大きく振った際に柄である棒の部分で数人を纏めて薙ぎ払う。

スピードタイプとはいえ上級のプレイヤーであり、パワーもそれなりであるからだ。

加えてドレヴァスの効果により、攻撃を受けた敵はランダムで発生したデバフにより倒れ、ダメージを受ける者もおり、

特に発生したデバフは細槍のデバフ効果上昇によりさらに敵へ猛威を振るう。

 

『守りたい世界があるんだ。例えゲームと言われても、命は何にだって一つだから!』

 

ソウジはドレヴァスを背負い、再び刀である黒暁を構える。

しかし、今度は刀と鞘による二刀流ではなく抜刀の構えであり、ソードスキル発動の発光が為された。

抜刀の構えから刀を抜かずに柄頭で相手を突き飛ばして高速で八度の攻撃を行い計九連撃となる、

物理四割と光三割と闇三割のOSS《千花烈撃》である。

数人がこの攻撃で倒された。

 

『キミ達がどれだけ命を吹き飛ばそうとしても、僕達は守り続ける…!』

 

それはソウジからの警告、彼は守るためならば嫌いな争いでも参加する。自分が守りたいと思ったモノの為に…。

 

 

 

 

一人の男がアクセス軍の敵から武器を奪い、それを使って相手を倒し、新たに標的を定めて同じ行動を繰り返す。

 

「はいはい、早くぶっ倒されてくれってハナシ!」

 

この男、種族は闇妖精族(インプ)、名前を『ゼウス』という。

左腰には『マハーカーラ』という全体が漆黒の、右腰には『チャンドラハース』という全体が月光のような白色の、

ククリ剣が据えられていてどちらもSAO武器で魔剣クラスの業物だ。

(容姿は『キングダムハーツシリーズ』の『シグバール』で傷ありの眼帯無し、服装もXIII機関のフード付きロングコート)

 

「これは戦争なんだ、ゲーム感覚でやってるんだったら早く散れってハナシ」

 

普段は気楽かつ陽気な性格でヘラヘラとしているのだがいまの彼は昔馴染みの戦場と空気、

敵軍のゲーム感覚での命の遣り取りに憤りを感じてなのかいつもの軽い雰囲気は薄い。

現在、ゼウスは相手から奪った武器を達人クラスに近いレベルで使用する《現地調達》という固有技術を用いることで戦っている。

また、五感を用いることで空気の流れを読み相手の居場所や行動を察知し、

相手からの攻撃・死角からの攻撃・目視が困難か不能な状態などで用いる固有技術、

《気流読法》を使うことで周囲からの攻撃全てに対応している。

これらは彼の現実世界での姿、元特殊部隊の一員としての技術から流用したものだ。

 

「じゃ、コイツらを使わせてもらうってハナシ」

 

ゼウスは敵から奪った武器を放り投げ、自身の二本のククリ剣を構え攻撃を開始する。

常にククリ剣を高速で回し、状況に応じて通常の持ち方から逆手持ちに変えるなど、

変幻自在の二刀流で敵を倒す、《グルカ刀剣術》というものだ。

本来は白兵戦よりも山岳地帯などで本領を発揮するが、

現実世界での経験とSAOで得たステータスとALOの魔法が加わることで強力な戦法が出来あがる。

幻惑系魔法による攪乱で相手に隙を作り、それをククリ剣によるグルカの技で叩き斬る。

 

「ここからは蹂躙ってハナシだ、悪いが死んでくれ……《ギア・ゼロ》」

 

その瞬間、ゼウスの雰囲気が一変する。無口であるかのように一言も喋らなくなり、

無表情と言えるようにその顔には表情はなく、無感情とも取れるように眉も瞳も動かさずに敵を斬り捨てる。

《ギア・ゼロ》、これはゼウスの本質、もう一人のゼウスを出すようなものであり、覚醒状態やトランス状態ともいう。

さらに、“気配がゼロになる”という状態ともとれるが実際には限りなく察知し難い状態であり、

視覚で捉えることは出来ても意識的に捉えることが出来難い。

この状態の彼は『ゼロ』と称されている。

 

作業を行うかのように次々と敵を斬り裂いていく。

圧倒的な行動能力と技術、捉えられることのない『ゼロ』という状態、

これによって敵の集団では大混乱が起こり激痛と恐怖により悲鳴が上がっていく。

肉体を斬られるか、四肢を斬り飛ばされるか、首を刎ねられるか、無残に斬り抉られるか、

どれであってもアクセス軍のプレイヤー達は散っていく。

幸いだったのは彼らが不完全なアバターの状態であったことかもしれない。

仮にコンバート軍のように完全なアバター状態であれば、それは惨たらしい光景だっただろう。

 

「……………」

 

語ることは何も無い。ゼウス、いやゼロは新たな標的である集団へ向かう為、戦場を跋扈する。

 

 

 

 

「中々の数だな、これは楽しませてくれそうだ」

 

戦闘開始直後、そう言葉を漏らした青年が居た。

妖精の姿であり種族は音楽妖精族(プーカ)、黒いシャツに青っぽいジーンズパンツを穿いて藍色のロングコート纏い、

顔にゴーグルに似た形状の仮面をつけた黒髪の男性、名前を『ベリル』。背中には両手剣の『ギガッシュ』がある。

 

「さぁて、パーティの始まりだ!」

 

ベリルはギガッシュを背中から抜き放ち構えると喜々しながら敵の集団に突っ込む。

本来、ALOであれば両手剣はシステムにより両手で扱うことが決められているが、ここはUWである。

両手剣を両手で扱わなければならないという道理はなく、ベリルは片手で振るう。

一人、また一人とギガッシュによって両断されていく敵。

柄を持っていない方から敵が攻撃を仕掛けてくるも、持ちかえてから反撃するなど即座に対応してみせる。

 

「良い子はお家に帰りな!悪い子にはいますぐお仕置きだぜ!」

 

ここでOSS、いや彼の技能が行使される、力を込めた刀身から放たれる衝撃波、《ブラスト》。

幾つも放たれていくがこれだけではない。

 

炎と熱風の衝撃波を放つ《ブラスト・プロミネンス》、氷と冷気の衝撃波を放つ《ブラスト・アイシクル》、

水圧と拡散する水の衝撃波を放つ《ブラスト・カタラクト》、雷の衝撃波を放ち麻痺を与える《ブラスト・ライトニング》、

切断性の強い風の刃と暴風の衝撃波を放つ《ブラスト・エアレイド》、聖なる光の衝撃波を放つ《ブラスト・イノセンス》、

闇と毒の衝撃波を放つ《ブラスト・パンデミオン》、以上の《ブラストシリーズ》を状況に合わせて放っていく。

 

「連続技も味わってもらおう」

 

《ブラストシリーズ》はそのモーションが同じであり、技の終わりのモーションも同じであるため、

剣技連携(スキルコネクト)》のように繋げることは彼の技能であれば容易である。

水を放った後の氷による広範囲の氷結、水の後の雷による感電、炎の後の風による炎の竜巻、

炎の火傷と毒によるデバフダメージなど、組み合わせは様々だ。

 

「大技で決めるか!」

 

ギガッシュが再び発光し、ソードスキルの発動を告げる。

システム、いや肉体の限界に近い速度で繰り出す、しかしあまりの速度で数十本の束に見える十連撃、OSS《センチュリオン》だ。

正面から攻撃を受けた敵は、《センチュリオン》を受ける時に数十本の剣の束を見た。

実際は十連撃なのだが、そのように錯覚してしまうほどに速い。

 

「はっ、まだまだ遊び足りないな……Next party time!」

 

ベリルは様々な《ブラスト》を放ち、戦場を荒らして敵を吹き飛ばしていく。

楽しむように、けれどその胸中には命を軽んじる者達への怒りを込めて。

 

 

 

 

味方と敵が入り乱れる最前線、そこでアクセス軍を相手に翻弄している者がいる。

 

「拙者も本気で戦うでゴザル」

 

黒の忍装束に身を包み同じく黒の布を覆面にして容姿の一切を隠している。

解るとすれば声から男性であること、服から出ている翅から妖精でスプリガンであること、その装束で忍者を自称していることだろう。

彼の名は『コウシ』という。武器は腰元に据えている短剣の一種である『忍者刀・龍刃』だ。

 

「では、参るでゴザル!」

 

龍刃を引き抜いたコウシは戦場を駆け回る。幻惑魔法で敵を撹乱し、その隙に次々と斬りつける。

速さと連撃、さらに龍刃にはある効果があり、龍刃で攻撃を行ってダメージを与える毎に“溜め(チャージ)”が発生し、

それを任意で解放することによる強烈な一撃を与える事ができ、その一撃を受けた相手は文字通り一撃必殺で消滅する。

 

「《忍法・分身の術》!」

『『『『『これがニッポンの伝統、NI・N・JAか!?』

 

《分身の術》という名の分身魔法を使い、連撃のために利用し、変わり身に使う。

その光景を見て日本の間違った知識を得ている一部の敵軍が感動しているが、容赦無く倒す。

実はコウシも熱烈な忍者・忍びのマニアなのだがこちらは正しい知識を持っていることを補足しておく。

 

「この一撃、受けてみるでゴザル!」

 

コウシは龍刃のチャージが限界値まで溜まったことを確認するとソードスキルを発動する。

それは本来、通常のソードスキルであるが発動されたのはそれよりも格段に速い、高速といえるものだった。

《高速連撃》、上記の通り元は通常のソードスキルであるものを同じ動作だが高速で行うことでOSSとして登録できたものである。

なお、他にもいくつか同様の手法で得ているOSSがある。

コウシのOSSにより、幾人もの敵が制圧されていった。

 

「卑怯とは言わせぬでゴザルよ、これが戦争でゴザルからな。しかし、アレ(・・・)はどうしたものでゴザルかぁ…」

 

彼が視線を向けた先、数十人の敵プレイヤーが吹き飛んで宙を舞っている。

 

 

 

一人の少女が悪鬼か、修羅か、般若のような、とにかく恐ろしい形相で戦斧を振り回して戦っている。

十人以上が軽々と宙を舞い、防御力や耐久値を無視するかのように防具ごと相手を倒していく。

 

「シャアァァァァァッ! 死になさい、このゴミクズ共がぁぁぁぁぁっ!」

 

青色の瞳と水色の髪を持ち髪型はアスナと同じだが長さはセミロング、その容姿から解る通り水妖精族(ウンディーネ)で名前を『ユカ』という。

ウンディーネという回復や補助、魔法を得意とする種族とは不釣り合いな武器、

戦斧を持っている上にこの『カース・アックス』は禍々しい形と装飾が施されている。

加えて、倒したプレイヤーやモンスターの数に比例して攻撃力が増すが、

攻撃力の上昇に比例して装備の防御力と耐久値にステータスを低下させMPが消費されていき最終的にはHPも奪う、

いわゆる“呪われた装備”なのだ。

 

「アスナ様に手を出そうとするゴミが、死に晒せぇぇぇぇぇっ!」

 

自身の敗北も痛みも顧みない戦斧による力任せな戦闘。

それは彼女がアスナを盲信し、狂信するからであり、彼女の愛するキリトへ対しての敵わぬ嫉妬からくる八つ当たりである。

何故ならユカは“真正のガチ百合”かつ“ヤンデレ”であり“サイコレズ”ともいえる領域にいる。

幸いにもアスナの幸福を第一に思い、キリトに軽くあしらわれるのが救いだ。

 

さて、暴走するかのように戦うユカなのだがポーションでMPを回復させ、

回復魔法と補助魔法でHPとステータスの回復も行っているため、思考を捨てているわけではない。

 

()ィィィィィッ! (オン)ンンンンンッ!」

 

狂うように攻撃をし、攻撃を受けても無視してOSSを発動するユカ。

強力な力任せの攻撃にみえるが確定で攻撃箇所を欠損状態にするOSS《断頭一撃》。

一撃死のスキルだが一撃死が発動しなくとも大ダメージを与える名の通り頭を潰すOSS《頭部破砕》。

一撃死効果を連撃にしたもので前者よりも威力は下がるが効果発動率は高めのOSS《鮮血の皆殺し》。

これらの凶悪なOSSが命中することにより、次々と敵はHPを失い消滅する。

 

「アスナ様の敵は滅尽滅相ぉぉぉぉぉっ!」

 

盲信者にして狂信者、ユカの八つ当たりは今日も一種の自然災害である。

 

なお、ユカが『キリアス親衛隊』・『キリアスファンクラブ』・『キリトさんを応援し隊』など、

キリアスやキリトのファンからはブラックリストに載る最重要警戒人物の一人とされているのは完全な余談か…。

 

 

 

 

「まさか『狂信(ユカ)』が来ているとは思わなかったな。どうする、コマンダー?」

「状況からしてキリトさんにちょっかいを掛けることはないと思うが、監視は付けておいた方がいいだろう。

 軍曹、各分隊から一人ずつを彼女の監視に付けるからメンバーを選出してくれ」

「了解であります、隊長!」

 

最初の男性はスポーツ刈りの紅髪に血色のテンガロハット、

金属製の胸当てに赤褐色のロングコートを纏い、丸縁の伊達眼鏡を装備する。

種族は火妖精族(サラマンダー)、名前は『リョウトウ』。

 

二番目の男性は肩まで伸びるスカイブルーの髪、額には生地は純白、文字は純黒で綴られている“愛”の文字が書かれた鉢巻をする。

種族はウンディーネで名前は『コマンダー』、愛称は“隊長”である。

 

そして最後の男性、紅葉のような黄色と紅色が混ざった短髪に丸渕眼鏡、

灰色の三角帽子に親衛隊カラーのローブと魔法使いの服装をしている。

種族はプーカで名前は『サージ』、愛称は“軍曹”だ。

 

彼らの大半がSAO生還者であり、キリトが容認しているギルド『キリアス親衛隊』のメンバーだ。

コマンダーが隊長(ギルマス)、リョウトウは突撃分隊長、サージは軍楽分隊長、他全分隊長と隊員も集結している。

親衛隊カラーは純黒の生地に純白のラインが走った模様となっており、基本的に全員がそのカラーの防具を何処かに装備している。

 

「総員、戦闘開始!」

「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」

 

コマンダーの言葉を受け、キリアス親衛隊が戦闘を開始する。

二百人を超えるギルドメンバー、ALOにおける最大規模のギルドにして親キリアス派の最大派閥でもある。

各分隊による戦闘、リョウトウ率いる突撃分隊や盾壁分隊に前衛分隊が敵軍に攻撃を開始。

コマンダーは総指揮を執りつつ中衛で戦闘を行う、

彼と共に魔法分隊が魔法を放ち、射撃分隊が弓やボウガンで矢を放って前衛を援護する。

そしてサージの居る後衛では高威力で長めの詠唱を行う魔砲分隊と強化魔法や補助魔法を主とする魔強分隊、

楽器を使う軍楽分隊が全体の援護を行う。

まるで一つの生き物のように鮮やかな動きで戦っている。

 

「射撃分隊、どんどん矢を撃って構わないぞ! 今回は敵を倒すことが重要だ! 魔法分隊、魔法一斉射!」

 

コマンダーの指示に従い、射撃分隊は動きを止めることなく次々と矢を放ち、コマンダー自身も魔法分隊と共に魔法を放つ。

様々な種族がいるため様々な属性の魔法が飛んでいく、ウンディーネのコマンダーは水や氷の魔法を撃っている。

彼も前衛を務めることはあるがいまはその時ではないと判断している、集団戦なのでまずは味方の指示が最優先だと。

 

「演奏を続けろ! どんどん強化していくぞ!」

 

サージもまた分隊の仲間達に言葉を掛け、自身も演奏を再開していく。

後衛だけでなく、中衛と前衛にも強化の音楽魔法を掛けていき、それを受けた味方達は強化された攻撃や魔法で応戦の波を強くする。

MPが尽きればポーションで回復し、再び行動する。

とにかく味方を助け続けるべく音楽を奏で続ける。

 

「攻撃を絶やすなよ! ふぅっ、うおぉぉぉぉぉっ!」

 

リョウトウは武器である両手剣の『ツヴァイハンダー・インフェルノ』で敵を斬っては薙ぎ払っていく。

その全てが一撃で決まり、自身が攻撃を受けても味方と連携を取ることでそれを補っていく。

彼の武器には攻撃に炎属性が100%付加され、HPを消費して攻撃値を上げる能力もある。

それを利用し、ソードスキルが発動される。

荒ぶる炎を纏い、斬撃で相手を斬り刻む七連撃、物理七割と火炎三割のOSS《ブレイズ・シュナイダー》だ。

武器の効果も上乗せしているため、その威力は数人を巻きこむほどだった。

 

「総員全力を揮うぞ! 我らが覇王陛下(キリト)覇王妃様(アスナ)の為に!」

「「「「「「「「「「陛下と妃様の為に!」」」」」」」」」」

 

キリアス親衛隊は今日もシリアスブレイカーです!

 

 

 

各々の思いや目的で集まり、戦うことを決めた様々なゲームのプレイヤー達。

彼ら彼女らの力は確かにキリト達の力となり、この戦いの大きな力となった。

今後も皆の武運を祈る。

 

No Side Out

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

あとがき

 

二日も遅れてしまい本当に申し訳ないです。

言い訳をするならば投稿するはずだった日・月を鼻炎で台無しにされたことでしょうか、今も辛い…。

 

まぁそんなことは書き終わった今は関係ない、そういうわけで今回でアバター戦は終わりとなりました。

 

多分アバター情報を送ってくださった方、参加すると言ってくださった方々は全員書けたはず。

送ってきた時にすぐにメモしているからアバターデータはちゃんと保存していますし。

 

そして一部キャラのスキルなどはこちらで矛盾のないように調整しています、

性格や言葉遣いの設定が特に無かったアバターは容姿キャラなどのセリフを言ってもらったり…w

 

それにしても大変でしたがなんとかアバター戦が終われてホッとしています。

 

次回からは原作組に戻ります、とはいえ次回もアバター戦のような戦闘の様子になるかもです。

 

とにかく頑張って書きます、それでは次話で!

 

 

 

 


 
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