No.859606

九番目の熾天使・外伝 = 蒼の章 = 夏篇

Blazさん

夏ということで思い切って書いてみました。
なのはシリーズは久しぶりなので上手く書けるかは不安だけど、ま、そこはご愛敬で。
というわけで今回も夏の番外編始まるよ。
…無事に夏の間に終わるだろうか…(汗

2016-07-21 09:46:39 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:950   閲覧ユーザー数:900

「Let's GO! 海とプールとリゾートと」

 

 

 

 

 

 

 

じわりじわりと熱が伝わり、暑さに参る季節、夏。

今年もやってきたその季節に、人々は対策を余儀なくされる。

暑い夏の日には涼しい冷房、冷たい冷水に限る。

 

当然、例によって旅団の面々も類に漏れず……なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――結論から言いましょう。空調は明日まで修理できません」

 

 

と。結果を率直に伝えた竜神丸。隣には手伝いに駆り出された支配人とディアーリーズ、そしてaws、kaitoといった面々が居る。

いずれも竜神丸を除けばどこか焦げたように黒いホコリがついて口からも焦げ臭いニオイが出てしまっている。

そんな彼らに目を向けていた団長ことクライシスは一拍置くと頬づえをついていた顔を元に戻し、指示を飛ばす。

 

「……仕方あるまい。空調修理に全力で対応してくれ。こちらから人員は回す。それとUnknownに連絡。楽園の周辺次元空間に艦隊を配置しろ。対したトラブルでもないが、このままでは攻撃を受ける可能性も高い」

 

「了解しました」

 

「あと、支配人」

 

「ういっす?」

 

「一応長時間の修理になると思う。水分などは多めに調達しておけ」

 

「あー…買い出しね。了解…」

 

 

 

 

 

―――――斯くして。旅団の楽園では本来絶対に起きる筈のない空調修理が行われることとなり、しばらくの間ナンバーズの中で数名に休暇が出されることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――でさ。結局空調の不調ってなんでだ?」

 

「なんでも、誰かが暴れてシステムに異常が起こったとか…」

 

「…その時点で誰がやったのか絞れてきたのは俺だけか」

 

 

旅団至上初めての大規模な空調修理ということで、邪魔になるからと追い出された一部ナンバーズたち。

その中の一人であるキリヤは、詳しい事情を聴いてなかったからか隣でくつろいでいた刃に訊ね、刃もうる覚えながらも原因を思い出していた。

刃の言う通り誰か四人(・・)が暴れたらしく、その所為で空調が故障、一部破壊ということになったらしく、その後普通なら数か月かかる空調修理を大急ぎで修理するという事態になったのだという。

 

「ですが…私たちがここでこうしてていいんですかね?」

 

「なにが?」

 

「いや何がって…」

 

そんな話題を出したせいで変な罪悪感を感じてしまっていた刃に漫画雑誌を読んでいたBlazが頭を上下反対に向けたまま返答する。ソファに寝転がりながら読んでいた彼は息をつくと漫画雑誌を音を立てて閉じ、ソファに座り直す。

 

「別にいいんだよ。どうせ、俺たちだってこれから仕事なんだしよ」

 

「仕事……仕事…なんですかね、コレって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空調修理ということで二分されたナンバーズ。その内、追い出された面々はクライシスからある任務を受けていた。

 

 

場所は自然生い茂る世界「フィオナ」。裏腹に傷跡を残すこの世界にある情報が伝えられる。

中立地帯であるフィオナを時空管理局が一部占領したのだ。

ただその占領地域に怪しい施設を作るかと言われればそうではなく、彼らはそこに大規模なリゾート地を作り上げたのだと言う。自然環境から考え、別に不思議ではないと思っていたが、問題はその背景にあった。

フィオナのリゾート地へは陸海空と別れているのだが、その内の海路で質量兵器などの軍事兵器の密入があると言われているのだ。

質量兵器を使わないことを原則としている彼らがどうしてそんな事をしているのか。どうやって密輸入しているのか。どこへと運ばれるのかを調べてくること。

これが彼らの任務だというが…

 

 

 

「ついでのバカンスだと思って楽しんでくるといい」

 

 

 

と。いうオマケもあったので一部サポートメンバーたちも呼ばれ、大人数でのバカンスとなってしまった。

 

「…団長。最後思い切りバカンスって言ってましたけど…」

 

「気にするなよ。どうせ、楽しんでる暇なんざねぇと思うからよ」

 

あまりのんびりと出来ないと思ったBlazはソファに深く腰を掛ける。今はどこを通っているだろうかと思い、脳裏で現在潜航航行中のクロガネの様子を考え、空調が効いて涼しくなっているラウンジでくつろいでいた。

今回の密輸入の話では、どうやらクロガネを使う機会があるかもしれないということから彼らは乗船しており艦内では既に楽園から搬入された機体の調整も始まっている。

流石にやり過ぎなのではと思いもするが、それにはしっかりとした理由があった。

そしてブリッジでは艦長であり実質的指揮官であるレーツェルがクライシスと通信を行っていた。

 

『今回はすまんかったな、レーツェル。急な事とはいえ機体を君の艦に預けてしまって』

 

「こちらは構わない。それに、クロガネの状態ならさほど問題にもならない。問題は…」

 

『………。』

 

口を噤み、黙り込むクライシスは言えないのではなくレーツェルからの切り出しを待っていた。話の内容から、重く受け止めているのはどちらかと言えば彼だからだ。

そしてレーツェルは意を決してクライシスに問いただした。

 

「…本当に、間違いはないのだな?」

 

『ああ。誤認はない』

 

「……そうか。わかった。この作戦、場合によっては我らも参加するが、いいか?」

 

『構わない。君たちが迷惑でなければ…いや。それは無粋か』

 

 

 

 

 

 

 

 

今回、この任務に参加するナンバーズは上位からキリヤ、蒼崎、okaka、ガルム、げんぶ、ルカ、Blaz、刃、朱雀の計八名。しかしそこに更にサポートメンバーも加わるので実際は住人を軽く上回っているという規模だ。

その為、普通の来客であれば不審がられるということで今回はある根回しを行い、設定(・・)を付けられねことになった。

 

「で。今回のその設定は……?」

 

「つまり―――」

 

okakaの企業の社員となり、その社員旅行としてリゾートに来たというのが大まかな設定の概要で、ナンバーズメンバーは全員が社員、そして彼らのサポートメンバーたちがその親族や友人。という内容である。

その為、ナンバーズは基本okakaへの呼び方は様付け敬語で敬う必要があるという徹底したものになっている。

 

「―――ちゅーわけだ」

 

「…釈然としないな」

 

「逆に考えろよ、げんぶ。okakaが団長に利用されたって」

 

「お前ら、それ次言ったらタダじゃおかねぇからな」

 

Blazとげんぶの小声での話に変身しようとしていたokaka。当の本人もそれは思っていたが、あくまで形式としてなので気にはしていないと自分に言い聞かせていた。

企業体として持っているのは基本彼一人だけなので、使われることは分からなくもなかったが、仮にもCEOというだけあって彼らを採用するか否かと言われれば真っ先に不採用を言い渡すと断言する。

 

「まったく…」

 

 

「でも、こうした大義名分があるってだけでも潜入には幾分か楽になるでしょうね」

 

「…ま、ウチは仮にも実在する企業だからな。架空企業だって言われても向こうにはそう思える要素もない」

 

朱雀のフォローに多少は機嫌を取り戻したのか、軽く息を吐いてぼやく。

okakaの企業「グランダーI.G」は彼らの居る世界でも有数の企業で実績も確かなものが報告されている。医療、サイバネティクス、重機などACを元に応用された技術を使い、それを販売している。性能、効果なども有効であることも同じく、管理外の世界でも彼の企業のロゴマークを見ないところは少ない。

 

「それに、ミッドの連中やそこに本社置いてる奴らには目の敵にしている相手だ。しかも大々的にこっちは手を出しているし、案山子だと思われる理由もない」

 

「改めて聞けば凄いですよね…」

 

「ちなみに、今なおも企業としては勢力拡大中だ……重機以外はな」

 

「えっ? それって…」

 

 

曰く。最近になって重機の業界で新しい企業が頭角を現し、老舗企業を軽々と追い越しているのだと言う。当然、同業界に居るokakaの企業とも現在売上での競争を続けており、一進一退の攻防を続けて勢力拡大を阻まれているという状態らしい。

経営戦略に問題はなく、予定ではかなり拡大されていたはずの勢力が予想よりも大きく下回っていることに、okakaも経営陣も不振に思っていたらしく、考えられる可能性として一番あり得ないことが浮上する。

 

「―――考えたくないが、誰かがウチの情報をリークしてるって可能性が高いんだよな」

 

「ッ……」

 

okakaの企業にも当然査察部などといった調査部門は存在する。現在、その部署を動かして調査を続けているらしいが、どうにも相手は足跡を消すのが得意らしく未だ特定には至っていないと言う。

 

「しかも、相手の素性とかが分からないとなると、その範囲は企業全体にまで及ぶ…この分だと何時分かることやら…」

 

「そんな……」

 

「あり得ないとは思うが、事実だ」

 

 

 

―――今回の一件でわかるだろうか

 

期待にも似た感情を胸にしまい込んだokakaは、今回の任務と自分の企業の出来事が関連しているのではないかという可能性に不安もよぎらせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= フィオナ ミッド管轄地区 リゾート「アトランティス」 =

 

 

 

「―――アトランティス。かつて大西洋に存在したと言われる大陸で、神ゼウスの怒りに触れたこの大陸と国家は海に沈んだとされている…」

 

「が。連中はその中から楽園としてよみがえった…ってワケでこのネーミングにしたんだとよ」

 

クロガネをリゾートなどの管轄地区から離し、陸路のバスで一時間ほど。整備された道路を走っていると、そこにはリゾートというより軍事要塞のような壁に守られた場所があった。その中で、厳重な警備をしているゲートのアーチにはこう書かれていた。

 

 

―――ようこそ! 楽園の地「アトランティス」へ!!

 

 

 

「未だに管理局の連中がここにリゾートを作った意図がわからねぇな」

 

「カモフラージュ……にしては怪しすぎる」

 

窓からアーチとその向こう側を眺めるBlazとげんぶは、警備の状況などを見ながら車内でぼやく。重装備の魔導師が数名、検問のように立ちふさがっているが、その向こう側には確かに彼らの言う楽園が存在するのだろう。

アナウンスや笑い声が聞こえ、見るからに楽しそうではある。

だが、裏事情を知る彼らにとっては怪しいものでしかなく、Blazは腰からリボルバーを取り出して弾の確認を行った。

 

「まさか、マジでリゾートを作りたかった…とかじゃねぇよな?」

 

「……あり得なくもないぞ」

 

「そういえば、最近管理局も運営資金が赤字続きだって言ってましたし、ここ等で資金源となるものを作って稼ぎたいんでしょうね」

 

適当に端末を操作し、情報を確認する刃。彼の持つ端末の画面には確かに近年管理局の資金が赤字続きの借金だらけだとゴシップでも取り上げられているようだというニュースが表示されていた。

そもそも運営自体やっとのことだった彼らが、ここまで失墜したのも旅団のお陰であり原因でもある。汚職や違法行為などで荒稼ぎし、それを高官クラスが着服、更には無断使用など資金難になる理由はゴマンとあった。

 

「なるほど。腐敗し過ぎたがゆえに、ここで合法的な資金獲得をしたい…と」

 

「けど、ここにリゾートを建設すること自体、違法行為だろ」

 

Blazの後ろで寝転がっていたアルトが話に加わり、彼らのいう合法を鼻で笑う。実際、彼女の言う通り、フィオナはかつての旅団と管理局との戦いから中立宣言が成され、それは管理局の言う管理外を統治する管理組織、そして管理局でも同意したことだった。

だが、クライシスからの情報では中立地帯とていうことで許可を取ってリゾートを建設したかと言われれば、地元の自警団などからは首を横に振られた。

 

「恐らく、このフィオナ近隣の管理組織に根回しして黙らせてるんだろうが…ま、確かに違法だわな」

 

「双剣の騎士団、そしてアヴァロンの魔術協会。いずれも今回のリゾート建設は違法だって言って抗議はしてるが、相手が管理外だからって向こうも舐め腐ってるな」

 

「やれやれ……中身は兎も角、金の掛けられようは目に見えてるな」

 

「お前ら、その辺にしておけ。そろそろ検問ラインだ」

 

 

ぼやく二人に、前に座っていたokakaが言ったことでナンバーズたちは脱力した声で返事をする。

そして、彼らの乗ったバスは検問を難なくクリアしリゾートへと入っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて。無事についた所で、このリゾート地「アトランティス」の説明を軽く行うよ」

 

ミィナはそう言い、腕輪型の携帯端末を使い投影式の画面とキーボードを出現させる。そして手早いキータッチで次々とデータを表示していき、説明を始めた。

 

「ここアトランティスは近年、ミッドチルダの大手リゾート企業が建設、開発した新リゾート地区。大きさはメガフロート三つ分で、さながら小さな街ね。商業、フードコート、娯楽にスポーツ。関係のないものも含めるとますます都市って感じ。オマケに警察として局員が居るって話もある。

 で。交通手段は管理局が管理する転送ポートや次元航行艦。陸海空とご丁寧に三つ全てを抑えていて、そこから毎日数十万の管理世界の人間がやって来てる。年装やターゲットは主に家族連れ、カップル、バカな高官等々…中には単身や組織ぐるみでの旅行ってケースもあるみたい。

 設備は充実していて、巨大プールエリアが一つ。アトラクションパークがその隣。カントリーパークが今バスで入って来た近く。結界張ってるみたいね。あとはなんでかサーキットもあるって話も。可笑しいって話じゃ済まないわね。

 そして。今回泊まりますホテルは、和・洋・南国と種類が充実。しかもVIP様もあって馬鹿みたいな大金を払うと多数のサービス込みで利用できるってわけ」

 

 

夏用に変えた半袖の上着とシャツを着て、相変わらずの短いパンツを履くミィナは腰に手を当てて子供に言い聞かせるように話し、耳から入っては直ぐに出ていきそうな説明を終える。

その結果、ナンバーズの中で若干数名は口から魂を出し、黙って聞いているかと思えば耳から言葉をトンネルのように流している者も居た。

 

「………。ま、簡潔に言えばすっごく馬鹿みたいに金をかけて作った贅沢の限りを尽くし集めたリゾートってワケ」

 

「お、おお…」

 

「色々な意味で凄すぎて頭が痛い…」

 

頭を抱えたりする面々に仕方ないとため息をつく。一度に大量の情報というより特徴を説明したので、あまり興味のない彼らには頭を痛める頭痛の元にしかならなかったようだ。

 

「そりゃね。贅沢なもの集めればいいってワケでもないし…」

 

「オマケにそれを加えた裏事情…頭が痛すぎてかなわねぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――でしょうね。ですから、今は楽しんで、またその時に仕事としましょう」

 

 

 

 

刹那。後ろから聞こえる声にナンバーズたちは全員ほぼ同時に振り返る。

もしその声と喋り方が正しければ、という不安とまさかという感情を胸に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやっ、どうかしましたか、皆さん?」

 

今は目の前で平然と夏服姿でいる竜神丸とイーリス、そして何やら危ない目で弟を見つめるキーラの姿があった。ちなみにキーラはこの直後にタイラントに蹴り飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

何故、竜神丸がリゾートに来ているか。

それは―――

 

 

「サボりました」

 

「サボったのか!?」

 

「嘘ですよ」

 

「どっちじゃいッ!!!」

 

どうやらクライシスから増援に行くようにと言われたらしく、リゾートでの休暇も兼ねてということでイーリスも連れて来たのだと言う。ただ、連れてくるのはイーリスだけのハズだったが、どうやらどこかで聞きつけたのか姉のキーラまで来たらしく、追い返しても直ぐに戻ってくることから追い返すのを諦めて痛ぶることにしていたと言う。

 

「…そんな理由であの人(キーラ)連れて来たのかよ」

 

「連れて来た…というより諦めたのですよ。凍結しようが溶解させようが時間旅行しようが戻ってきますし」

 

「嘘だろ…」

 

「ホントですよ、キリヤさん。そろそろあの人を本当に化け物だと認識せざるえなくなりましたし」

 

「お前のねぇちゃんどうなってんだよ…」

 

それは自分も知りたいところだと、Blazの言葉に目を逸らす竜神丸。彼にとっても、それだけの事を行ってしまう彼女に恐怖すら感じ始めているのだと言う。

当人は彼の気配を感じるのであれば、どこへだって行けるし戻ってこれると正気の沙汰すら疑ってしまうレベルの発言をしてくる始末。しかもそれで戻ってくるのだから戦慄しか覚えない。

 

「―――肝心なところで邪魔にならなければいいんですがね」

 

「全くその通りですよ」

 

今回ばかりはと朱雀の言葉に同意するのには、その場にいたナンバーズ全員が首を縦に振る。しかし竜神丸が作戦に加わるというのは大きく、彼らにとっても幸運ではあった。

情報戦などでいえば彼も上位に入り、それだけの実力を持ち合わせ信頼されている。

 

「けど、竜神丸が入ったのはデカいな。お陰で背中は安心できそうだ」

 

「…私、基本後方だって言ってませんけど」

 

「興味ない限り前に出ないヤツが言うか、ソレ」

 

 

―――斯くして、竜神丸たち一行を加えた旅団メンバーは調査を始める…が、折角リゾートに来たということで仕事を後回しにしてまずは骨休めを始めた。

 

 

 

 

 

「せっかくのリゾートだし、それに楽しんでないと怪しまれるからな。各自自由行動だが、連絡とGPSは付けとけよ」

 

と、okakaからの注意事項を聞いた面々は早速各自バラバラになって移動するが、結局のところ最初は夏ということで彼らの行先は一つ。

去年は海に行ったということで今回はプールに行くらしく、連れて来た幼子たちは既に入る前から楽しみで仕方がないという笑顔を見せていた。

 

 

 

「プールだぁ♪」

 

「わぁい!!」

 

ニューと蓮が嬉しそうにゲートをくぐりエリア内へと走っていく。その姿に微笑ましく思っていた保護者面々だが、矢張り見失いたくないということと危ないからか直ぐに歩くようにと注意をする。

 

「お前ら走り過ぎて迷子になんなよー」

 

「二人が迷子になったら洒落にならんからな…」

 

白蓮の言う通り、以前のアヴァロンでの夏祭りでの一件もあるので子どもたちから目を離さないというのが彼らの中で共通した注意事項になっていた。別段彼女たちが迷子になっても困るのは親である本郷夫妻とBlaz一味だけだが、トラブルの元であることも考えると余計なことで正体をばらされたくないということで、暗黙の了解のような感覚で全員了解していたのだ。

 

「ったく…子どもは元気でいいよな…」

 

「そうは言わずに。私たちも一応はバカンスなんですから」

 

深いため息をつくBlazに気遣う刃は自分の必要品が入ったバッグを肩にかけて、横に並んで歩く。中には非常時の為のベルトなども入れられており、更には改良されてチャック部分に指紋認証のシステムが付けられ、盗難防止のために盗まれた時には数百万ボルトの伝記が流れる仕組みになっている。

 

「バカンスつっても、仕事だってことを知ってるからな、休めるに休めねぇっての」

 

「それでも休めるときは休む、ですよね?」

 

「…ま。そうだな。俺たちの休暇は大抵そんなものだ」

 

長い戦いを経験しているからこそ、げんぶも休めるときに休むべきという刃の意見に賛成する。それはBlazであっても同じ、元軍人であるからこそ休める時間というのは貴重なものだ。

 

「…へーへー贅沢言ってた俺が悪かったよ…」

 

「そうは言わないが、前向きに捉えとけということだ」

 

 

三人がそう言って会話をしていると更衣室にたどり着き、他のメンバーが集まるのを待って入っていく。蓮やニューたちのことを白蓮などの女性陣に任せて、男しか居ないナンバーズのほぼ全員は水着と上着に着替える。

尚、プールに来なかったのはokakaと朱雀で、別件があって朱雀を連れて行ったらしく、彼の後ろ姿がどことなく残念そうだったのは幼子たちも勘付けたほど。okakaもそれは承知で、後でフォローはしておくと言っていた。

そこをokakaに任せることにした彼らは、一先ずはリゾートの目玉の一つであるプールへと足を踏み入れた。

 

 

「…しかし、蒼崎が女子更衣室に行かなかったのは意外だな」

 

「ああ。俺もてっきり姿隠して行くと―――」

 

「おう、Blaz、キリヤ、それはどういう意味だ」

 

青筋を浮かべる蒼崎は拳を握って怒りを見せる。どうやら他のナンバーズたちには蒼崎は「そういう」人間であると認識されており、当人から怒りの苦情を受けた時には全員不思議そうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え。だって蒼崎さん三十人ほどのお嫁さん居ますし」

 

「いや、そりゃ居るけどさ」

 

刃の言葉に軽く返す。

 

「それにここに来るまでに何度か綺麗な女性をガン見してたし」

 

「うん。否定はしないよ」

 

ルカの攻撃を防ぐ。

 

「パンフレットの水着の女のも結構見てたな」

 

「そりゃ仕方ない。男だから」

 

ガルムの細かいことに、よく知ってるなと驚く。

 

「部屋に女性用の水着の雑誌あったし」

 

「オイ、なんで知ってる。っていうか入ったのか」

 

キリヤのセリフに思わず食い掛かる。

 

「フェンスから奥のプール覗こうとしてましたし」

 

「嘘つけ!! 流石にそこまではしてないわ!! 堂々入れるから!!」

 

竜神丸の嘘にツッコミ。

 

「蓮に手を出したら容赦せんぞ」

 

「誰が出すか、誰が」

 

げんぶの威嚇に興味はないと返す。そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え。ロリコンじゃねぇの?」

 

「テメェが言うか、このロリコン野郎ッ!!!!!」

 

Blazの意外そうな言葉に遂にキレて肩を揺さぶった。

 

 

 

「ぜー…ぜー…」

 

「ま、まぁ蒼崎さんがそういうイメージだったというだけで、入らなかったからある程度は見方も改めますよ…」

 

「改める以前の問題だろうが! お前ら俺をなんだと思ってる!!」

 

 

すると、その言葉に全員が後ろを向いて目を逸らした。

 

 

「テメェら今すぐぶち殺すぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一…俺にはちゃんと仲間だって居るしお嫁さんたち養うって義務がだなぁ…」

 

「はいはい。分かった分かった」

 

「言いたいことは分かったから落ち着いてください…」

 

ぶつぶつと言う蒼崎をなだめるBlazと刃。一応彼にもサポートメンバーも居れば言った通り妻も居るので、そう簡単に女に手を出す気はないと言う。だが敵であっても手を出すこともあるのでそこが中々信じてもらえない原因の一つだとキリヤが言う。

 

「烈火の将に手を出すし、お前女性に対して見境がないってイメージもたれてんだよ」

 

「うっ…」

 

それには蒼崎もぐうの音が出ず、否定もできなかった。

 

「この分じゃ、あの六課メンバーの大半に声かけてそうだな」

 

「他のヤツから話を聞けば、多分ゴロゴロと―――」

 

「失敬な…あのスターズだがなんだかのエースたちには手を出してないっての」

 

「スターズ…? 確かあそこのエースは…」

 

はて誰だったかなとど忘れしたBlazに蒼崎は頭を掻いて面倒そうに説明をする。といっても見た目がかなりシンプルなので説明して直ぐに思い出せるかは分からなかったが、多分攻撃方法で思い出すだろうと、特徴を並べていく。

 

「ほら、栗色の髪してツインの」

 

「えーっと…あー…」

 

「あとなんか少し幼い顔っていえばいいのかな。とにかく、大人っていうより大学生とかぐらいの顔」

 

「あー…なんか思い出した。あいつ(・・・)みたいなだろ?」

 

「そうそう。丁度あの娘と瓜二つ(・・・)………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瓜……二つ………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてどうしてなのだろう。

蒼崎とBlazが指さした先。そこには、敵であるエース・オブ・エースの高町なのはが確かに居たのだった。

それも水着姿で子どもと仲間を連れて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「―――――――――――――――――え??」」

 

 

 


 
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