No.856723

九番目の熾天使・外伝 ~ポケモン短編~

竜神丸さん

七夜の願い星 その1

2016-07-04 01:25:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1623   閲覧ユーザー数:818

千年彗星が現れし時

 

七夜の願い星

 

地上にその姿を現さん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バシャーモ、『とびひざげり』!!」

 

「バッシャア!!」

 

「スカァッ!?」

 

「な、グラエナ!?」

 

ポケモン世界、ホウエン地方のとある山岳地帯。そこでディアーリーズは、エリートトレーナーと思われる青年とポケモンバトルを繰り広げていた。ディアーリーズの手持ちである赤い軍鶏型ポケモン―――バシャーモの繰り出した『とびひざげり』が、黒と灰色のハイエナ型ポケモン―――グラエナに命中。グラエナが目を回して戦闘不能になった事で、バトルはディアーリーズの勝利に終わった。

 

「よし! バシャーモ、ご苦労様!」

 

「シャモ!」

 

エリートトレーナーとのバトルに勝利したディアーリーズはバシャーモに駆け寄り、バシャーモは「当然だ!」と言わんばかりにディアーリーズと喜びの拳を交わす。そんなディアーリーズとバシャーモの前に咲良、美空、こなた、そしてヴァニシュの四人が歩み寄る。

 

「うわー、ばーくんつよーい!」

 

「かっこいい…!」

 

「流石ウル、ポケモンバトルもかなり上達してきたよ」

 

「トレーナーに成り立ての頃は連敗続きじゃったがの。しかし儂から見れば、今のディア殿はまだまだひよっこに等しいわい。連勝中だからとて調子に乗るでないぞ」

 

「うぐ……分かってますよ、ヴァニシュさん(本当、師父みたいな事を言うなぁこの人も)」

 

ヴァニシュからクドクド言われる中、ディアーリーズはある事に気付いた。美空が胸の中に抱き締めている、白い綿毛のようなフワフワした羽根を持ったポケモンに。

 

「チルタリス……でしたっけ? 美空さん、いつの間にチルタリスを?」

 

「支配人さん、から……貰った。モフモフして、可愛い……モフモフ…」

 

「チルチル~♪」

 

「チルタリスも美空ちゃんに懐いちゃってさ。支配人さんから譲って貰ったんだって」

 

「モフモフ…!」

 

「まぁ、美空殿もチルタリスもお互いを気に入っているようじゃし、問題は無かろうて」

 

「そうですか。良かったですね、美空さん」

 

「はい……嬉しいですモフ…!」

 

「語尾にモフが付いちゃってる!?」

 

チルタリスのモフモフ具合にスッカリ夢中になってしまったのか、語尾に「モフ」が付き始めた美空。そんな様子を見て一同が楽しげに話していたその時…

 

「…バシャッ!」

 

「ムマ!」

 

突然、バシャーモがある方向を見て警戒し始めた。それと同時にディアーリーズのミニバックに入っていたモンスターボールから魔法使いのような紫色のポケモン―――ムウマージが飛び出し、バシャーモと同じようにある方向を警戒する。

 

「バシャーモ? それにムウマージまで飛び出して、一体どうし…」

 

「! 何か来るぞ」

 

ヴァニシュの言葉に、ディアーリーズ達も一斉にバシャーモ逹の向いている方向に目を向ける。数秒間の静寂が続いた後、突然風の流れが変わり…

 

「―――ラァーティーーーーーーーーーーッ♪」

 

「「「「「!?」」」」」

 

赤と白を基調とした戦闘機のようなシルエットのポケモンが、木々の間を擦り抜けながら猛スピードで飛び出して来た。そして…

 

 

 

 

-ゴッチーン!!-

 

 

 

 

「バシャッ!?」

 

「ムマァッ!?」

 

「ラティイッ!?」

 

スピードを出し過ぎていた所為でそのポケモンはすぐには止まれず、バシャーモやムウマージと盛大にぶつかるという大事故をやらかしてしまった。バシャーモは吹っ飛びながらも華麗に体勢を立て直したが、ムウマージと謎のポケモンはクルクル回転しながら近くの木々にガツンとぶつかり、フラフラと地面に落下してしまった。

 

「バシャーモ!? ムウマージ!? 大丈夫!?」

 

「なななな何なのさいきなり!?」

 

「わ、分かりませんモフ…!」

 

「ごっつんこ~!」

 

「! …今のポケモンは…」

 

ディアーリーズ達は慌ててバシャーモとムウマージに駆け寄り、ヴァニシュは突然現れた謎のポケモンを見て興味深そうに見据える。

 

「シャモ…!」

 

「ムゥゥゥマァァァ…!!」

 

「ラティ~……ラティ? ラティ!? ラティラティ!!」

 

バシャーモは「大丈夫だ」といった表情でディアーリーズに応えるが、ムウマージは怒った様子で謎のポケモンを睨みつけている。謎のポケモンは頭をブンブン振って痛みを和らげた後、バシャーモとムウマージに対して慌てて謝罪するかのように何度も頭を下げ始める。そんな可愛らしい様子を見せる謎のポケモンに、咲良と美空は一瞬でハートを射抜かれてしまった。

 

「ふわぁ~かわいい~♪」

 

「モフモフ……モフモフが、もう一匹…!」

 

「あぁ!? 咲良ちゃんだけでなく、美空ちゃんまでモフモフに染まりかけてる!?」

 

「それはともかく……ヴァニシュさん、このポケモンは一体…?」

 

「…図鑑で調べてみぃ。それで分かる筈じゃ」

 

ヴァニシュに言われた通り、ディアーリーズは赤色の小型装置―――ポケモン図鑑を取り出し、それを開いて謎のポケモンに向ける。

 

『ラティアス むげんポケモン 知能が高く、人の言葉を理解する。ガラスのような羽毛で身体を包み、光を屈折させて姿を変える』

 

「…え!? ラティアスって確か…」

 

「そう、伝説のポケモンの一種じゃ」

 

「「…うっそぉ!?」」

 

謎のポケモン―――ラティアスの正体を知って驚くディアーリーズとこなた。二人が驚いている理由が分からないラティアスは「?」と首を傾げ、ヴァニシュは木の実袋から取り出した木の実―――オボンの実をディアーリーズに投げ渡す。

 

「ほれ、オボンの実を与えてやれぃ。何時までも痛いままではラティアスも嫌じゃろ」

 

「あ、そうですね……えっと、ラティアス。これ食べますか?」

 

「…ラティ♪」

 

ラティアスはディアーリーズからオボンの実を受け取り、美味しそうに頬張り始めた。そしてあっという間にオボンの実を完食し、回復したラティアスはディアーリーズ達の周囲を楽しそうな表情で飛び回り始めた。

 

「ま、まさか伝説のポケモンと出くわすとは…」

 

「驚きだねぇ~…」

 

「ふむ……このラティアス、あまり人間を恐れてはいないようじゃな。普通ならば、人間を警戒してすぐに逃げ出す筈なんじゃが…」

 

「…もしかしてウル、ラティアスまで落としたんじゃ?」

 

「え!?」

 

「お前さんはポケモンすら落とすというのか…」

 

「すいませんヴァニシュさん、あらぬ疑いをかけるのはやめてくれませんかねぇ!?」

 

ヴァニシュの発言に突っ込みを入れつつ、ディアーリーズはラティアスの方へと振り向く。それに気付いたラティアスは興味深そうにディアーリーズを見つめる。

 

「ねぇラティアス。もし良かったら、僕達と一緒に来ないかい? もし不安なら、バトルして力量を確かめてくれても良いけど……どうかな?」

 

「ラティ~…」

 

そう言われたラティアスは、少し考える仕種をした後…

 

「…ラティ!」

 

ディアーリーズから少し距離を取り、戦闘態勢に入った。ディアーリーズの提案を聞き入れたようだ。

 

「力量を確かめたいって事か……分かったよラティアス。それじゃムウマージ、君に決めた!」

 

「ムゥマァァァ…!」

 

ディアーリーズはムウマージを前に出し、ラティアスとムウマージが向き合った状態でバトルを開始する。ムウマージは「さっきの仕返しをしてやる」といった表情でまだラティアスを睨んでいるようだが。

 

「面白い事になったのぉ…」

 

「ウル兄ちゃんがんばれ~!」

 

「モフ、モッフモフ…!(ウルさん、頑張って…!)」

 

「遂にモフモフだけで意思疎通するようになっちゃった!? 頑張って欲しいのは同意だけど!!」

 

ヴァニシュ、咲良、美空、こなたが離れた位置からバトルを見学する事に。そんな中、まずはラティアスが『ミストボール』を生成し、ムウマージ目掛けて発射した。

 

「ラァーティーッ!!」

 

「ムウマージ、上に飛んで『おにび』を振り撒いて!!」

 

「ムゥーッ!!」

 

真上に飛ぶ事で『ミストボール』を回避したムウマージは、青白い炎から『おにび』を生成。それをラティアスがいる方向へと振り撒くが、ラティアスは自身の目を青く光らせ、振り撒かれた『おにび』がラティアスに当たる直前で空中に制止してしまう。

 

「!! 『サイコキネシス』か…!!」

 

「ラティーッ!!」

 

「ムウマージ、『シャドーボール』で迎撃!!」

 

「ムゥゥゥゥゥゥ…マァッ!!」

 

ラティアスは『サイコキネシス』の力を使い、『おにび』を一斉に跳ね返す。それに対し、ムウマージは黒いエネルギーから生成した無数の『シャドーボール』で、跳ね返って来た『おにび』を全て相殺する。しかし、ラティアスはそこへ更なる追撃をかけてきた。

 

「ラァァァァ…ティィィィィィィッ!!」

 

「ムゥッ!?」

 

「!? ムウマージ!!」

 

「ふむ、『りゅうのはどう』か。なかなか強力じゃのう」

 

ラティアスの繰り出したエネルギー光線『りゅうのはどう』が、飛んで来る『シャドーボール』を粉砕し、そのままムウマージに直撃。ヴァニシュが感心した様子で見る中、大ダメージを受けたムウマージはフラフラながらも空中で何とか体勢を立て直す。

 

「いや、でもチャンスだ……ムウマージ、『いたみわけ』!」

 

「ムゥマッ!!」

 

「!? ラ、ティ…ッ!!」

 

ムウマージが『いたみわけ』を発動した瞬間、空中を飛んでいたラティアスは突然フラつき始め、苦しそうな様子で地面に着地する。『いたみわけ』の効果によって、ラティアスとムウマージの体力が同じ量になったのだ。

 

「ラァァァァァァ…」

 

このままでは分が悪いと判断したのか、ラティアスの目が今度は赤く光らせる。するとディアーリーズ達が少しずつ暗くなっていく。

 

「!? 何だ!?」

 

「急に暗く…」

 

「…まさか」

 

「ティィィィィィィィィィィィィィッ!!!」

 

ヴァニシュが危惧する中、ラティアスは上空に向かって高い声で鳴き出した。すると…

 

「…へ?」

 

無数の隕石が、遥か上空から地上に向かって降り注いできた。ラティアスはドラゴンタイプのポケモンだけが繰り出せる大技『りゅうせいぐん』を発動させたのだ。

 

「え、ちょ…うぇええええええええええええええええええっ!?」

 

「わーい、お星さまだー☆」

 

「むぅ、『りゅうせいぐん』か!? あのラティアス、相当な実力を持っているようじゃの…!!」

 

「モ、モフモッフゥ…!(お、お星様がいっぱい…!)」

 

「あのぉ美空ちゃん、そろそろ普通の日本語で喋ろうか!?」

 

「く…ムウマージ、『シャドーボール』で当たりそうな隕石を撃ち落として!!」

 

「ム、ムゥゥゥゥゥッ!!」

 

ムウマージが『シャドーボール』でいくつかの隕石を撃墜するも、『りゅうせいぐん』で引き寄せられた隕石は山岳地帯のあちこちに降り注いでいく。そんな時、一つの隕石が近くの岩壁を木端微塵に粉砕する。

 

「…あれ?」

 

岩壁が粉々に砕かれるだけ……という訳ではなかった。崩れた岩壁の中からは謎の洞窟の入り口が出現し、それに気付いたのは今のところ咲良だけだった。

 

「何だろう…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムウマージ、もう一度『おにび』だ!!」

 

「ムゥマッ!!」

 

「!? ラ、ラティ…!!」

 

そんな中、ムウマージは再び『おにび』を発動。先程の『いたみわけ』が効いたのか、避け切れなかったラティアスは『おにび』を受け、その身に『やけど』を負ってしまった。

 

「ムウマージ、『シャドーボール』連打!!」

 

「ムゥゥゥゥゥマァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「ラァティィィィィィィィィィッ!!!」

 

ムウマージが『シャドーボール』を連射し、ラティアスも負けじと『りゅうのはどう』を発動する。しかし先程繰り出した『りゅうせいぐん』のデメリットで特攻技の能力が下がってしまった為か、ラティアスの『りゅうのはどう』はムウマージの『シャドーボール』を全弾相殺する事が出来ず…

 

「ラティーッ!?」

 

数発の『シャドーボール』がラティアスに命中した。ドラゴンタイプにエスパータイプを併せ持ったラティアスには効果抜群である為、ラティアスはフラフラと地面に落ちそうになる。その瞬間をディアーリーズは見逃さなかった。

 

「今だ、モンスターボール!!」

 

「!? ラティ―――」

 

ラティアスが気付くがもう遅い。ディアーリーズの投げたモンスターボールはラティアスの胴体に当たり、その身を内部へと吸い込み、閉じてから地面へと落下する。

 

「……」

 

内部でラティアスが抵抗しているからか、地面に落ちてからも左右に揺れ続けるモンスターボール。捕まるか、捕まらないか、ディアーリーズだけでなくこなたや美空達も緊張の空気に包まれる。

 

そして10秒ほど経過し…

 

-カチッ-

 

「…よし!」

 

その音と共に、モンスターボールの揺れが止まった。無事にゲットが完了できたと分かり、ディアーリーズはガッツポーズを取ってからモンスターボールを拾い上げる。

 

「伝説ポケモンのラティアス、ゲット!!」

 

「ムゥマー♪」

 

ディアーリーズはモンスターボールを高く掲げ、ムウマージも嬉しそうに鳴き声を上げる。それを見たこなた逹も嬉しそうな表情で駆け寄って行き、ヴァニシュも無言ではあったが、ディアーリーズ達を見て微笑ましい表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってホウエン地方、ある森の中の無人施設…

 

 

 

 

 

 

「ダイル、『ハイドロポンプ』だ!!」

 

「オォォォォォ…ダァァァァァァァァァァァァァァイッ!!!」

 

「ゴ、ゴロォォォォォォォォォッ!?」

 

「な、何…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

その無人施設に潜入していたokakaは、ワニのような特徴を持った青いポケモン―――オーダイルに指示し、オーダイルは強力な高圧水流『ハイドロポンプ』を発動。岩のような丸いボディを持ったポケモン―――ゴローニャを吹き飛ばすだけでなく、その先にいた密猟団の構成員まで纏めて吹き飛ばした。それを見た他の構成員達は慌てたように逃げ出す。

 

「に、逃げるぞ!! あんなの勝てる訳ねぇ!!」

 

「くそ、どういう事だ、何でこの場所が奴等に付き止められたんだ…!?」

 

「俺が知るかそんな事!? とにかく出口まで逃げるぞ、ここで捕まる訳にはいかねぇんだ!!」

 

逃げ出した構成員達は皆、施設の出口を通じて外へ飛び出していくが…

 

「メタグロス、『サイコキネシス』!!」

 

「メェタッ!!」

 

「「「な…ぐえぇっ!?」」」

 

外へ飛び出したのが彼等の失敗だった。鋼のボディを持った四本足のポケモン―――銀色のメタグロスによる『サイコキネシス』で動きを止められ、構成員達は纏めて地面に押さえつけられてしまった。

 

「ご苦労様、メタグロス」

 

「メタッ」

 

そんな銀色のメタグロスに指示を出したのは、銀髪の青年―――ツワブキ・ダイゴだ。構成員達がメタグロスの四本足で押さえつけられるのを見ながら、ダイゴは取り出した通信機を通じてokakaに連絡を入れる。

 

「こちらダイゴ、逃げようとした構成員達は無事に捕縛完了。施設の内部には捕まった野生ポケモン達がいる筈だから、保護は任せたよ」

 

『了解。そうなると、後は手下共を見捨てて真っ先に逃げ出したリーダーだけか……ま、彼女が向かってるから問題は無さそうだな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ、まさかホウエンのリーグチャンピオンまで出向いて来るとはな…!!」

 

その密猟団のリーダーと思われる迷彩服の男性―――ディーマは巨大な鉄蛇型のポケモン―――ハガネールの頭の上に乗り込み、無人施設のある森から逃げている真っ最中だった。okakaとダイゴ、たった二人のトレーナーに攻め込まれた事で構成員達は全員捕まり、捕縛した野生ポケモン達も保護されてしまった。こうなれば自分だけでも逃げるしかない。

 

(くそ、計画が狂っちまった……まだ例のポケモン(・・・・・・)の居場所だって掴めてねぇのに…!!)

 

しかし、そんなディーマの逃走劇もここまでだった。

 

「待ちなさい」

 

「ッ!?」

 

ひたすら森の中を移動し続けていたハガネールの前に、鮫のような特徴を持った二足歩行型のポケモン―――ガブリアスが着地。そのガブリアスの背中に乗っているのは黒いコートを身に纏った金髪の女性。その女性の素顔を見たディーマは青ざめた表情になる。

 

「ば、馬鹿な………シンオウのリーグチャンピオンまで、何故…!?」

 

「ポケモン密猟団リーダー、ディーマで間違いないわね。大人しく捕まって貰うわよ?」

 

「ぐ……まだだ、まだ終わってたまるか!! ブーバーン、シザリガー、やっちまえ!!」

 

「ブゥバァッ!!」

 

「シザッ!!」

 

ディーマはモンスターボールを投げ、両手が大砲になっている炎のポケモン―――ブーバーンと、ザリガニのような姿のポケモン―――シザリガーの二体を召喚。ブーバーンは右手で『ほのおのパンチ』を、シザリガーは右手の鋏で『クラブハンマー』を発動しながら、金髪の女性―――シロナへと迫っていくが…

 

「ガブリアス、『きりさく』よ」

 

「ガァブッ!!」

 

「ブゥバァァァァァッ!?」

 

「シッザァァァァァッ!?」

 

ガブリアスの両腕のヒレから繰り出された『きりさく』攻撃で、ブーバーンとシザリガーが二体纏めて返り討ちにされる。よほど強力だったのか、ブーバーンとシザリガーはどちらも一撃で戦闘不能になってしまった。

 

「まだ戦る気かしら?」

 

「ぐ、く……ハガネール、『アイアンテール』だぁ!!」

 

「ハガッネェェェェェェェェェルッ!!」

 

ディーマが地面に降りると同時に、ハガネールはその長い尻尾を振り上げ、『アイアンテール』の一撃をガブリアス目掛けて振り下ろす。ガブリアスはその場から動く様子は無く、ハガネールの『アイアンテール』がガブリアスに炸裂し、その衝撃で土煙が舞い上がる。

 

「へ、へへ、どうだ…!!」

 

土煙が晴れていく。そこには…

 

「…ガァブ」

 

「!? ば、馬鹿な…!?」

 

ハガネールの『アイアンテール』を、両腕のヒレでガードしているガブリアスの姿があった。ハガネールがどれだけパワーを強めてもガブリアスはビクともせず、シロナは小さく笑みを浮かべる。

 

「ガブリアス、『かわらわり』よ♪」

 

「ガブッ!!」

 

ガブリアスはハガネールの『アイアンテール』を両腕のヒレで弾き返し、真上にジャンプ。そのままハガネールの頭上目掛けて落下していき…

 

「ガァァァァァァァァァァァァァ…ブゥッ!!!」

 

「ハ、ガァァァァァァァァァッ!?」

 

ガブリアスの右腕のヒレから繰り出された『かわらわり』が、ハガネールの頭部に直撃。その一撃はハガネールの巨体をいとも簡単に押さえつけ、容赦なく地面に叩きつけて沈めてみせた。

 

「ハ、ガ……ネェ…」

 

「く、くそ…!?」

 

切り札だったハガネールまで戦闘不能に追い込まれた事で、戦えるポケモンを全て失ったディーマ。往生際の悪い彼はその場から走って逃げようとするが…

 

「ルカリオ、『はどうだん』!!」

 

「ワォン!!」

 

「ひっ……どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

犬のような特徴を持った人型ポケモン―――ルカリオは『はどうだん』を連続で繰り出し、ディーマがいる足元の地面を次々と抉って吹き飛ばす。その衝撃で吹き飛ばされたディーマは、マッハの速度で吹き飛ぶ方向まで先回りしていたガブリアスによって、呆気なく確保されてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダイゴさん、シロナさん、カズキさん、ご協力感謝します!」

 

「いえいえ」

 

その後、ディーマ率いるポケモン密猟団は全員が逮捕され、警察であるジュンサー逹によって署まで連行される事になった。その一方で、okakaの連れていたオーダイルは檻の鍵を噛み砕いて回り、檻の中に閉じ込められていた野生ポケモン達が次々と解放されていく。

 

「よ~しよし、もう大丈夫だ。早く自分達の住処に帰りな」

 

okakaの言葉を聞いて、野生ポケモン達が次々と森の中へと帰っていく。そしてオーダイルが最後の檻を破壊した事で、無事に全ての野生ポケモン達の解放も完了した……かに思われていたのだが。

 

「…ん?」

 

檻から解放されたにも関わらず、その場に残っているポケモンが一体だけ存在していた。青と白を基調とした戦闘機のようなシルエットのそのポケモンは、okakaの事をジィッと見つめたまま動こうとしない。

 

「どうした? 自由になれたんだ、住処に帰って良いんだぞ?」

 

「……」

 

okakaがそう言っても、そのポケモンは無口のまま全く動く気配が無い。どうしたものかとokakaが困りかけたその時、ジュンサー逹に話をつけてきたシロナとダイゴが戻って来た。

 

「カズ君、密猟団の連中は全員引き渡したわ……って、あら?」

 

「! へぇ、珍しい。ラティオスじゃないか」

 

「ラティオス?」

 

ダイゴの言葉を聞いて、okakaは目の前にいるポケモンの正体がラティオスだと分かり、青いポケモン図鑑を開いて確認する。

 

『ラティオス むげんポケモン 見た物や考えたイメージを、相手に映像として見せる能力を持つ。人間の言葉を理解し、悪い心を持った人間には決して懐かない』

 

「ラティオスか……って、まさか伝説のポケモンか?」

 

「そういう事よ。それにしても、ダイゴの言う通り珍しいわね。野生のラティオスなら、警戒して人間には近付かないと思っていたけれど…」

 

「う~ん……恐らくだけど、カズ君に懐いてるんじゃないかな?」

 

「俺に?」

 

「うん。君が野生のポケモン達を解放した事で、ラティオスは君に恩返しをしたがってるのかも知れない」

 

「いやぁ、解放したのはオーダイルであって、俺が直接解放した訳じゃないんだけどな…」

 

「そのオーダイルを従わせられるほどの力量を、カズ君が持っている。ラティオスは君の事をそう判断したんだと思うよ」

 

「カズ君。あなたはラティオスをどうしたい? このまま野生に逃がしてバイバイするか、ラティオスの意志に応えてゲットしてあげるか、選択肢は二つよ」

 

「…恩返し、ねぇ」

 

ダイゴとシロナの言葉に、okakaはラティオスの方に振り返る。ラティオスは未だ無口のまま、okakaをジッと見つめ続けている。

 

「まぁ、決めるのはラティオス、お前自身だ。このまま野生に帰るなら、それでサヨナラして終わり。俺に付いて来たいのなら、このモンスターボールのボタンに触れる事だ。さぁ、お前はどっちの選択肢を選ぶ?」

 

okakaが目の前に突き出したモンスターボールを、ラティオスは無言のまま見つめる。そして数秒間の沈黙が続いた後…

 

「……」

 

ラティアスが頭を突き出してモンスターボールのボタンに触れた瞬間、開いたモンスターボールはラティオスを吸い込んで再び閉じた。その状態からモンスターボールが左右に揺れ始めるが、10秒も経過しない内にその揺れも収まった。

 

「…ラティオス、ゲット」

 

「おめでとう、カズ君」

 

ラティオスをゲットする事となったokaka。ダイゴとシロナが笑顔で祝福する中、okakaは再びモンスターボールからラティオスを召喚する。

 

「ラティオスだから……“ティオス”、お前の名前はティオスだ」

 

「……」

 

okakaから命名され、ラティオス―――改めティオスはやはり無言のままコクリと頷き、okakaに忠誠を誓うかのような様子でokakaの前に頭を下げてみせる。

 

「さて、カズ君。本当は伝説ポケモンのゲットを祝ってあげたいところなんだけど……その前に、見て欲しい物があるの」

 

「ん、見せたい物?」

 

「シロナ君曰く、密猟団リーダーのディーマが隠し持っていた物らしい。ジュンサーさん達と話し合って、僕達の方で引き取る事になったんだ」

 

シロナが取り出したのは、古文書と思われる一枚の紙切れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その中には、ある“星型のポケモン”の姿が小さく描かれていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『七夜の願い星 その2』に続く…

 


 
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