No.852149

艦隊 真・恋姫無双 113話目

いたさん

一応、華琳と桂花の件は終わりますが、理由の説明にまだ掛かります。

2016-06-08 15:52:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1259   閲覧ユーザー数:1155

【 華琳の誘い の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

華琳「……………一刀を………北郷一刀を忘れなさい! 貴女の真名と私の真名に誓ってでも───」

 

桂花「…………ふにゃ………か、一刀~?」

 

ーー

 

華琳の恐るべき手管によって絶頂を味わい、力なく床に腰を落とし女の子座りをする桂花。 

 

顔も首すじも、肌が露出している場所は朱色に染まり、目も虚ろで視線も定まらず。 快楽に惚けている様子が手に取るように理解できる。 この様子では、正確な思考や受け答えが出来るとは──全く思えない。

 

だが、華琳は目に力を込めて真摯に桂花へ問うのだ。 

 

ーー

 

華琳「そうよ、桂花。 貴女ほどの有能な人材が、こんなに想いを寄せているのに関わらず、他の女達を大事にするような男なんて、何がいいの?」

 

桂花「…………………」ボー

 

華琳「あんな男より、私と過ごした方が遥かに充実しているわ! 私は貴女と──何十年の間、一緒に過ごしてきたと思ってるの? 一刀は………一年も経たずに天の国へ戻ってしまったのよ!」

 

桂花「……………………」ボー

 

華琳「…………桂花。 貴女は私の臣下であるけど……それだけじゃない。 春蘭や秋蘭のように『家族』とも違う。 貴女は、私にとって『親友』なのよ。 孤独な私を支えてくれた……親しい友達なんだから──!!」

 

桂花「───ぅん? ん……んんっ! ──ん! うっ、う! うぅん!! ────ん、んっ………………あぁあああっ!!」

 

華琳「あらっ………ふふふ。 このくらいで迎えるなんてねぇ? 桂花ったら、可愛い子。 ────んっ」

 

桂花「───!」

 

ーー

 

華琳は、桂花の顔に両手を添えると……顔を傾け、その唇を奪う。 桂花の快楽に溺れる目が一段と大きく開き、淫靡な音が何度も小さく響いた。 そして、その内に桂花の身体が再度小刻みに動き出し、その後大きく跳ね上がる!

 

その様子に満足した華琳は、名残り惜し気に桂花から離れると、再度に一度だけ強く接吻し、今度こそ距離を置いて桂花の表情を愛おしげに眺めた。 

 

執拗な華琳の攻めより自由になった桂花だが、未だに意識は快楽の波に漂い続け、その身を預ける術しかない。 

 

目に光は宿らず、だらしなく口を開いた表情のまま首を傾け、荒い呼吸を何度も繰り返し、急速に無くした酸素を注入する。 そして、口元からは《赤色》の液体が一筋の道を作りつつ、滴り落ちた。

 

ーー

 

桂花「……………はぁ、はぁ………うぅん、はぁはぁはぁ───」

 

華琳「その感度、昔と全然変わってないわ。 もしかして………一人が寂しい時の相手は、私を添え物にしたのかしら? ならば……嬉しいのだけど………」

 

桂花「…………………」

 

華琳「……………もしかして、一刀を……?」

 

桂花「……………」ビクッ

 

華琳「(……………………本当に、あの種馬は……!!)」イラッ!

 

ーー

 

桂花の予想外の反応に苛立ちを覚えたが、そこは表面上華麗にスルーし、逆に笑みを深めて桂花に言葉を紡ぐ。

 

『これで決めるっ!』と──言わんばかりに。

 

ーー

 

華琳「貴女は………皆や私が亡き後、最後まで一刀の帰還を信じ待っていてくれた。 そして、今も………その想いに縛られたまま。 でも、もういいのよ、もういいの。 この地には、全員──舞い降りて来れたのだから!」

 

桂花「……………………」

 

華琳「この事は『胡蝶之夢』で終わるのかもしれない。 『黄粱の一炊』の如く私が目覚めれば、何かも夢で済んでしまうかもしれない。 だけど……私は哀しいの。 桂花が……何時までも私の命令を受け入れている事に………」

 

桂花「……………………」

 

華琳「だから、貴女が一刀を想っている事は知っているわ。 だけど……その想いの半分は、私の命令に従っているだけなのよ。 貴女が後悔して自害を止める為には、私が命令を下す事が、一番確実であり束縛できたから!」

 

桂花「…………………」

 

華琳「だから………もう『一刀が大嫌いだった元の桂花』に戻って。 私だけを慕い愛してくれた……私の子房に戻りなさい! 桂花!!」

 

ーー

 

そう桂花に語ると、両腕を広げ桂花を抱きしめる。 

 

二度と離さないと言わんばかりに────

 

 

 

◆◇◆

 

【 蚊帳の外の人達 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

左慈「────おいっ! 少しの間、この場所を離れさせて貰うぞ!?」

 

華陀「こんな大事な時に一刀から離れるのか! はっ!? ───まさか、新しい患者か! それなら全力で救いに──いや、この場所には一刀が残ってぇ! く、くそぉおおおっ! 俺の力がぁ未熟なばっかりにぃぃぃっ!!」

 

卑弥呼「だぁ、だぁりんの心痛に苦しむ顔が! 普段の熱血漢の表情も滾るが……この庇護欲が湧き立つ姿も──儂の鳩胸をムネムネさせるのだぁ!」 

 

左慈「黙れぇ! 人の話を最後まで聞けぇ!!」

 

ーー

 

こちらは、既に忘れられた存在となっている華陀達である。

 

一刀の身体を甦らせる為、最終奥義を放とうとしていた三人だったが、突如、疾風のように話を割り込ませてきた艦娘の提案に、他の女の子達が支持してしまったのだ。 いや、完全に無視されている。 

 

早い話、男の子の浪漫より女の子の恋物語の方が、需要過多だった訳だ。 

 

ーー

 

左慈「俺はなぁ! 北郷を殺害されないよう赴いただけであって、断じて、こんな百合百合しい行為を見物する為に来たんじゃないんだぞ!? 用が無ければ直ぐにでも──こんな場所から離れたいんだっ!」

 

華陀「む、そういう事か。 確かに………生産的行為としては非現実だ。 だが、精神的沈静化を促進させる行為なら許容範囲と認めるぞ? 精神的病に罹病し、病状が進んでしまう前に予防できれば、それに勝る物は無い!」 

 

左慈「誰が医学的根拠を語れと言った!? 俺は、このような行為が嫌いなんだ!!」

 

華陀「それなら心配ない。 生産的行為は一刀が居る限り万事解決だ!」

 

左慈「だから、医学的解決を求めている訳でもないんだ! いい加減に覚えやがれ!」

 

ーー

 

華陀が医学的見解で語るのだが、左慈の求める回答と食い違うのは仕方あるまい。 左慈が青筋を立てて怒るので、華陀も腕を組み新たに思案を始める。

 

左慈も、そろそろブチギレそうだった……そんな時、助手として助け船を出したのが卑弥呼だった。

 

ーー 

 

卑弥呼「だぁりんよ、この左慈が直ぐに怒鳴りたくなるのは……カルシウム不足と見たぞ! カルシウムという栄養素が不足すると、誰でも短気になると天の国では証明されているのだ!!」

 

華陀「────!? な、何だと! そんな知識があるなんて……」

 

左慈「ちょっと待てぇ! 俺の怒りと全然関係ない理由を持ち出すな!」

 

卑弥呼「それに……このカルシウムの摂取を怠ると、骨が脆くなると──」

 

華陀「そうか! 是非、その知識を教えて貰いたい! 一刀の容態も………うん、今のところは心配は無いな。 俺の力が必要なければ、自分の力を高める努力をしなければ、一刀が目覚めた時に笑われてしまう!」

 

卑弥呼「うむ、その向上心は何時見ても惚れ惚れする。 ならば、この儂の持てる知識をだぁりんに教えよう。 む、無論……医学的知識ゆえ……だぁりんの身体を触りまくる事も…………」

 

華陀「何を恥ずかしがる必要がある? 当然じゃないか! 人体の構造を教えるのなら、部位を確認する為の触診は重要だ。 遠慮なんか要らないぜ!」

 

卑弥呼「だぁ、だぁりんの………純真無垢な目が───ぬぅおおおっ!!」

 

左慈「───馬鹿らしい、俺は離れるぞ! 貴様等のような相手をやってやるだけ無駄だ! じゃあな!!」

 

ーー

 

左慈、まさかの御乱心である。 

 

『何故、俺の周りの奴等は実力があるのに………なぜ、常識がないのか?』

 

左慈の悲しき心の言葉は、その場から消え去る前に小さく語られたのだが、誰の耳にも入る事なく、主と共に虚空へと消えたのである。

 

 

◆◇◆

 

【 春蘭の助け……の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

華琳は、抱き寄せた桂花の表情をチラリと見た。

 

そして……二重、三重と自分の持てる閨房術、様々な話術を使用した結果を確認したくなったのだ。 春蘭なら最初辺りで、秋蘭なら少しは耐えて見せるかも……と思う程のレベルである。 

 

実際、抱きしめた桂花の身体は弛緩して、手足に力が入っていないのは丸分かりだ。 たまに、小声で呟くのを除けば……表情も快楽で惚けてきり、華琳が声を掛ければ、直ぐにでも命令を承知してくれる状態だ。

 

ーー

 

華琳「桂花、こんな事をしたのは………貴女が愛しいの。 貴女が一番、一刀に翻弄された人生を送った筈よ。 だから──誓いなさい。 一刀の事を忘れると───」

 

??「───お、お待ち下さい! 華琳様!!」

 

ーー

 

華琳が、最後の言葉を桂花の耳元に囁(ささや)いていると、勢いよく入り口から飛び込んで来た女傑が居た。

 

夏侯元譲──春蘭が顔を真っ赤にさせて、転がり込んで来たのだ!

 

周りに居た恋姫達が春蘭を確認してから、入ってきた扉を見ると──

 

ーー

 

季衣「…………………スゴい………」ゴクリ

 

流琉「………はわ、はわわわわっ!」パタパタ

 

瑞穂「───あ、あのような破廉恥な…………………へっ? み、見ていませんっ! 見ていませんったら……見ていないんですぅ!!」

 

鳳翔「うふふふ………」

 

ーー

 

季衣と流琉が顔を唐辛子のように紅く染め、その後ろには──顔を覆う艦娘『瑞穂』、面白そうに瑞穂を見る艦娘『鳳翔』が並び立っていた。

 

春蘭は、事情を知る鳳翔達と合流して、この部屋に戻って来たようだが、先程からの華琳と桂花の様子に、我を忘れて魅入いっていたようだ。

 

そんな中で春蘭だけは、華琳の命令する内容を正確に把握して、華琳から抱きしめる桂花を奪い取って離れる。 そして、桂花の両肩に手を乗せて思いっきり揺さぶりながら声を掛けたのだ。

 

ーー

 

春蘭「け、桂花! 桂花っ! しっかりしろ、私だ、春蘭だ!!」

 

桂花「ん、んあぁぁぁ────っ!」

 

春蘭「────なっ!?」

 

ーー

 

桂花の喘ぎ声を耳にして、思わず驚愕の表情を浮かべる春蘭!

 

そして、桂花の後ろからは──華琳が口を弧月の如く描きながら、春蘭に静かに語る。 何時もの敬愛する君主とは違う、一人の寂しがり屋の少女して。

 

ーー

 

華琳「春蘭………貴女は私の邪魔をするの? 私が《欲しかった者》を……再度手放なせるつもり?」

 

春蘭「華琳様、桂花を──貴女を心底敬愛していた臣下に何故このような真似を!? 桂花、気をしっかり持てぇ! 私と対等に口喧嘩できる文官など、三国広きと言えど、貴様しかおらん! このくらいで───」

 

華琳「このくらい? このくらいねぇ………ふふふ。 春蘭なら直ぐに《お代り》を要求する程の慰撫よ? 勿論、秋蘭だってね。 ここまで耐えれたのは、桂花の意思の強さと思って間違いないわ……本当に弄りがいがある子……」

 

ーー

 

春蘭は、華琳の物言いを慎重に探るが、どこにも不自然さが無い。 もし、操られているのなら、何かしら動きの細分、言動の言い淀みがあるのだが、それが全くと言って良いほど──無いのだ。

 

つまり、これは──華琳本心で行っている事!

 

様々な疑問が浮かんでは消えて、春蘭は悩みそうになるが、そこは脳筋の誇りを掛けて真っ二つにした。 別名『先送り』『棚上げ』『保留』ともいう。

 

取り合えず、最優先事項である『桂花を目覚めさせよう』を行ったのだ。

 

ーー

 

春蘭「───ぐぅ! 桂花、しっかりしろ!」

 

華琳「桂花はね──後一歩で私の術中に入り、私と自分の真名に誓って……一刀を忘れるの。 そして、私の物として何時までも何時までも………傍に居て貰うのよ。 ────昔の桂花に戻ってね?」

 

春蘭「───華琳様、目を覚まして下さい! 何故、このような事を──」

 

華琳「春蘭に語って、私の気持ちを察する事ができる? 私の言葉を受ければ、例え過ちと言えども素直に従い、疑う素振りもなかった………貴女に?」

 

春蘭「────ガ、ガッフゥ!?」

 

ーー

 

春蘭はエア吐血して床に手を付ける。 そう、肉体には何にも支障は無いのだが、精神的な何かが大ダメージを喰らった。 本人的には、もう立ち直れないかも知れない衝撃かも知れないが……周りの視線は何故か生温かった。

 

華琳は、春蘭の様子を哀しげに眺めた後、桂花に近寄り例の命令を命じる為、桂花の後ろに廻り込み、優しく抱きしめる。

 

邪魔する者は──誰も居ない。

 

華琳は桂花の耳元で息を吹き掛け、反応を楽しんだ後、言葉を紡ぎ出す。

 

ーー

 

華琳「──北郷一刀の事は忘れなさい。 私と桂花の真名に誓いながら……」

 

桂花「わ、私は………華琳様と……私の真名に誓い………か、一刀を、北郷一刀を────」

 

 

 

 

 

 

 

桂花「────決して、忘れません。 我が身に幾星霜の時の流れがあろうとも、我が身に艱難辛苦が降り掛かろうとも。 華琳様達と共に──忘れません!」

 

「「「 ─────!? 」」」

 

華琳「け、桂花──!?」

 

ーー

 

そこには、華琳の顔を振り返って見ている──目に正常な光を宿す桂花が、頬笑みながら華琳の驚いた顔を凝視していたのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 解説役 登場 の件】

 

 

桂花は、自分の汗で張り付いた髪を鬱陶しげに払い、服の小物入れに入っている布を取りだして、顔を拭く。 そして、大きく深呼吸をしてから、華琳に顔を向けて、再度の誓いを語る。

 

ーー

 

桂花「私は……一刀を忘れません。 もう、二度と………あの苦しみを味わおうとも思いません。 華琳様達と共に記憶を留めます!」

 

華琳「───私は言った筈よ。 あの時、桂花の自害を止める為の命令だったと。 だから、その命令は取り消すわ! 」

 

桂花「『落花流水』……男が真摯に女を想うのならば、女は男の想いに心を寄せる。 あの頃の私は……一刀への想いに気付きながら、華琳様への愛を楯に抑えて一刀へ辛く当たった馬鹿な女。 華琳様の命令が無くても、私は既に己の恋心に気付いていたんです。 御命令が無くても……変わりはしません!」

 

華琳「今見ている世界が──『胡蝶之夢』であり『黄粱の一炊』だったら?」

 

桂花「『水天彷彿』……遠き天と海の境界がはっきりしないのに、これが夢であるか現実なのか思案するなど、些細な事です。 一刀が居る、華琳様が、春蘭が、そして皆が! この世界を天が赦すまで楽しまなくては、どうされるというのでしょう!!」

 

華琳「私は………貴女を親友と………」

 

桂花「一刀が言ってました。 『天の国では強敵と書いて《とも》と呼ぶ』と。 華琳様と私は───すでに《とも》です。 それは、親友とも強敵とも呼べる事になりますね。 今の華琳様と私の関係は……つまり、そんな所です」

 

ーー

 

華琳と桂花のやり取りに、口をあんぐりと開けた春蘭が、正気に戻り二人の間に割り込んだ。 そして、華琳を背中側で守るように見せ掛け、桂花と対面する格好に持ち込み、問い質した。 

 

春蘭は理解していた。 自分の主から放たれる『四十八の必殺技』は、どれも的確に弱点を突き、同衾した者を快楽の海で溺れさせらる物。 何故なら、春蘭も寝台というと戦場で、何度も轟沈させられていたのだから。

 

それなのに、溺れていた少女が、急に正気に戻る訳は無い。 何かしらの予防策を取っていた。 そう見れば間違いないだろう。 

 

だから、理由を問い質した訳である。

 

ーー

 

春蘭「桂花っ! き、貴様──どうやって!?」

 

桂花「…………華琳様が、何時か『この手』を使ってくる事は判っていたわ。 だから──私はね? 舌を少し強めに……噛んだのよ」

 

春蘭「な、なんだ───うおっ!?」

 

ーー

 

春蘭の質問を応えた後、桂花は持参していた布で口を拭う。 

 

───拭った後には、真っ赤な血の痕跡。 

 

華琳の快楽から逃れる為、舌を噛んで傷の痛みで耐えていたようだ。

 

ーー

 

桂花「でも、ギリギリ………だったわ。 本当は太股に護身用の剣を刺そうと思ったんだけど………華琳様が隙を見せてくれなくて……実行出来なかった……」

 

華琳「そう………口から流れた液体が……いやに赤いと思ったけど……そんな理由で…………」

 

ーー

 

華琳の恐るべき手管の数々を乗り切った桂花。 だが、その快楽から逃れる為の代償は、決して軽い物ではなかった。 桂花の華奢な身体が左右に揺れる。

 

肉体的、精神的にも限界だったのだ。

 

ーー

 

春蘭「か、華琳様! いったい、これは──どのような意味を持っているのです!? 華琳様が北郷の事を桂花に忘れさせるを願い、あの桂花が強硬な反抗してまで不定する! 私には、何がなんだか────」

 

??「───やっと、終わったようだな。 どうなる事かと心配したが、これで私達も納得して、桂花に一番槍を任せられる!」

 

春蘭「────冥琳!?」

 

ーー

 

春蘭が倒れそうな桂花を抱きしめつ支え、華琳に向かい疑問を呈するのだが、その前に、この異様な戦いの意味を知る者が、声を掛けて来た。

 

孫呉に仕えし──キング・オブ・眼鏡軍師『周公瑾』──冥琳である。

 

 

◆◇◆

 

【 冥琳の推理 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

冥琳「春蘭、当事者の二人が疲労困憊なのだぞ? それに、彼処で固まっている艦娘や季衣、流琉達も集めなければならない。 幸い、此処には名医と言われる華陀が居る。 二人に治療を受けさせ、私達は準備を整えようじゃないか!」

 

春蘭「わ、分かった! おおぉ──ぃ」

 

ーー

 

瑞穂「み、瑞穂もですか………?」

 

鳳翔「そうですね、私達も行きましょう。 ですが、話に加わらない方針で行きますよ? あくまで、私達は傍観者。 どのような意見を交わすのかは、あの方達の力次第ですから。 それに、見る事も勉強ですよ?」

 

瑞穂「はい、承知致しました」

 

ーー

 

そんなこんなで、事を終え集まった者達が一刀を中心に集まる。

 

勿論、一刀に意識など無く、華陀と卑弥呼が様子を見てくれている。

 

艦娘側は、別に何かしら用事があるらしく瑞穂が代表して加わり、鳳翔は距離を開いて保護者役として見学している。

 

春蘭達は、華琳と桂花達のやり取りの理由が分からずの状態。 秋蘭は理由を察しているようだが、憶測は憚れると見て皆に告げていない。

 

そして、当時者たる二人は、治療を受けた後に集まった者達から、好奇心と困惑が混じった視線に晒された。 

 

ーーー

 

冥琳「さて、役者も揃った所だ。 皆も華琳と桂花が、何故このような事をする事になったのか知りたいと思う。 ただ、先程の行為を行っていた二人に、思惑を語らすのは、あまりに酷だ。 ───そうは思わないか?」

 

「「「 ………………… 」」」

 

冥琳「…………賛同した、と見ておこう。 その代わりに、私の得た推論を話させて貰うぞ。 まあ……推論と言っても、華琳達から間違えと分かれば訂正が入るようにしているから、あながち推論でもないのだがな……」

 

華琳「………ええ、その時は……ね。 さて、赤壁で私を窮地に追い込ませた周公瑾の推論、しっかり拝聴させて貰うわ!」

 

桂花「……………」

 

ーー

 

冥琳は、華琳の言葉に頷くと、己の考えを披露して行く。

 

ーー

 

冥琳「さて、まず結論から早々に言わせて貰うと……華琳が行った件は『納得させる』為に、だ。 だから、天の御遣いから桂花が選ばれた時、あのような手段を使った。 ────私には、そう思えたのだよ!」

 

 

ねね「……………ふふん、そう来ましたか。 しかし、ねねには関係無い事……ですぞ! 恋殿一筋のねねには──」

 

恋「……………嘘は………駄目」

 

ねね「───れ、恋殿っ!?」

 

 

詠「………ふん、そういう考えってわけね……」

 

月「───うふふ。 詠ちゃん、可愛い………」

 

詠「な、何よ──! 月、その微笑みは!? ボ、ボクは関係無い、関係ないんだからっ!?」

 

ーー

 

冥琳が『納得させる』という答えを出すのだが、理解できたのは一部の者だけ。

 

他の者達は『!?』と──その内容が分からない。 それは、『誰』を『どう納得させる為なのか?』という新たな疑問点に要約される。

 

ーー

 

瑞穂「………あ、あの、瑞穂には………言っているお話が……よく分からないのですが………?」

 

春蘭「私も分からん! そんな勿体ぶった話を出すより、ハッキリと答えを出して教えろ!!」

 

翠「その通り! あたしらにも解りやすい話にしてくれぇ!」

 

ーー

 

他の者も理解が出来ないと、冥琳に問い詰める。 

 

しかし、冥琳は───

 

ーー

 

冥琳「すまんな。 私も正確に言葉で表すと……自覚してしまうのだよ。 何故、桂花なのだ……と。 ふふふ………どうだ? この言葉だけで意味が分かるだろう? ──即ち『誰』を示し『納得させる』のかを………」

 

ーー

 

流琉「───あぁっ!? わ、わかりました………!」

 

季衣「……………うん。 ボクが兄ちゃんの事、どう思ってるか………」

 

秋蘭「───フッ。 私が華琳様や姉者以外に、このような感情を持っていたとはな?」

 

ーー

 

冥琳が言いたかった『誰か』を『納得させる為』とは──『一刀と関係を持ち、今も慕う恋姫達』を『納得させる為』だったのである。 

 

確かに、この世界には『北郷一刀』は存在している。 だが、その人物は残念ながら彼女達の知る彼では無い。 異世界より現れて、提督、司令官と呼ばれる艦娘達の中心人物だ。 

 

同時に、この世界の北郷一刀としての役割りがあるようだが、彼には恋姫達の記憶が殆ど無い。 そのため、彼は自分に従う艦娘達を信頼している。

 

しかし、彼女達には遅かれ早かれ──理解ができた。 肩書きや年齢、現れた世界が違っていても、自分達の愛した北郷一刀という事を。 

 

この後に、冥琳の説明は続く。 

 

ーー

 

冥琳「これで、『誰』とは分かったと思う。 しかし、まだ『納得させる事象』に気付かぬ者も居るようだな。 無意識に理解している筈だが………」

 

「「「 …………………… 」」」

 

ーー

 

納得させる──これは何なのか?

 

冥琳は明確な答えを一言で表した。

 

それは───『嫉妬』

 

ーー

 

春蘭「わ、私は………べ、別に………桂花を羨ましいとも……何とも………」

 

蒲公英「だって、そうだよね~? あの桂花が、ご主人様の相手なんて……ものすご~く納得できないっ! あんなに悪口やら態度で、ご主人様の優しさに付け上がって散々酷いこと行ったのにぃ! あったまきちゃう!!」

 

ーー

 

一刀が敵の攻撃に倒れたが、命の別状は幸い無い。 だが、意識が戻らない状態が続いている。 そこへ──赤城から提案された、摩訶不思議な方法。 

 

───『寝ている一刀に口付けを交わせば、目覚める』と。

 

しかも、『桂花』という名指し入りで。

 

 

前に好きな人を散々酷い事した相手が、心変わりをしたとして、好きな人と結ばれる様子を見て、手放しで祝福できるだろうか?

 

その後、無事に覚醒した際に、一刀と桂花、この二人が喜び合う様子を眺めて、笑顔で接する事ができるだろうか?

 

桂花と………今まで同様に、付き合えれるだろうか?

 

ーー

 

恋「………………うん……狡い……」

 

翠「…………そりゃ……な」

 

ーー

 

月「………私も………どうして桂花さんなのか……納得できませんでした。 私も……詠ちゃんも、ご主人様に献身的にお仕えしたというのに………」

 

詠「月はそうだろうけど、ボクは───」

 

月「ご主人様の為、一生懸命お茶を入れる練習をしたのに?」

 

詠「……………」

 

ーー

 

何も語らない者も………その顔の表情で判断できる。

 

『 (*≧д≦) 』

 

『 (゚∩゚*) 』

 

『 (◎-◎;) 』

 

何らかの問題が起こる事───請合いである。 誰とは言わない、誰とは問わない。 ただ、考えれば直ぐに浮かぶ方々。

 

ーー

 

冥琳「───実は、かく言う私も……だ……」 

 

「「「 ………………… 」」」

 

冥琳「そ、それにだ。 各国でも、この事を知らせると困ると思い当たる人物が居るだろう? 例えば───我が国の王の親族とか」

 

詠「……………黒髪の嫉妬神に………知られると……ね」

 

恋「……………?」

 

春蘭「わ、私達……は……」

 

秋蘭「…………御本人が当事者の一人だ。 今更知られたところで、何にも変わらないさ!」

 

ーー

 

其々の意見が出て話が脱線しようになり、冥琳が咳払いをしてから説明する。

 

ーー

 

冥琳「──そんな者達を納得させる為、華琳は桂花に苦難を与えた。 前の桂花が『御褒美』とまで放言していた華琳の手荒な扱い。 今の桂花に耐えられるのか………と」

 

「「「 ──────!? 」」」

 

ーー

 

冥琳は言う。 

 

華琳は敢えて桂花に無理難題を吹っ掛けて、桂花を苛めたのは理由がある。 桂花も、その意味を明確に察し、抗い屈服せずに耐え抜き、華琳から逃れてみせた。

 

『あの華琳の試練に耐えてまで一刀を慕う桂花なら、仕方が無いから認めよう』という───『免罪符』を獲得する為に。

 

 

つまり───『桂花に文句があるなら、私(華琳)に言え!』

 

どこぞの大陸で戦い抜いた○王じゃなく、元三国の魏王様に苦情を申告しろと。 申告したら桂花のように耐えれるか、相手をしてあげるからと。

 

そんな状況になれば、華琳は手をワキワキしながら舌舐めずりして、その挑戦者を相手するだろう。 特に黒髪の嫉妬神は大好物だ。

 

無論、今居る者では──実質、文句など言う者は居ない。

 

華琳が怖い───じゃなく、桂花の頑張りを直に見ていたのだから。 先程の不満は、ちょとした負惜しみみたいなもの。

 

全員が全員、桂花を認めると──そうなっていたのである。

 

ーー

 

冥琳「───こんな具合いだ。 どうだ、私の推論だが……これで間違いないと思うのだがな。 全く、私や他の者達にも気取られないように、そんな策を張り巡らすとは………」

 

詠「…………いつの間に、二人で示し合わせていたのか知りたいけど……」

 

ねね「ね、ねねにも、これぐらいの策! やれば出来るのです!!」

 

春蘭「華琳様ぁぁぁ! そのような策があるとは知らず、申し訳ありません!!」

 

ーー

 

皆、冥琳の推論に賞賛の言葉を送る。 どこにも隙は無い考えであり的も確かに得ているのだ。 誰もが正解だと思った。

 

 

────しかし、

 

 

ーー

 

華琳「……………冥琳、貴女の考え………確かに素晴らしいわ。 でもね、その考えでは真実は導けない。 だって、二つも前提が違っているもの………」

 

冥琳「────何ぃ!?」

 

「「「 ─────!?!? 」」」

 

ーー

 

冥琳の完璧とも思える推論が、華琳の一笑で脆くも崩れた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

推敲に推敲を重ねていたら、一万文字突破したので、ここで切って投稿しました。 次作は、まだ数日かかりますので、気長にお待ち下さい。

 


 
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