No.84534

真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに 第11話

ささっとさん

再会した風にすべてを打ち明け、本当の意味でのパートナーを得た一刀。
そんな彼らが偶然出会うこととなったのは、そこにいるはずのない彼女たちだった……

2009-07-15 19:47:13 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:38772   閲覧ユーザー数:26463

多勢に無勢の状況を見かねて助っ人に入った俺だが、そこで驚くべき人物を目にする事となる。

 

 

(凪?!)

 

 

四方から襲い掛かる野盗相手に派手な大立ち回りを演じていたのはなんと凪。

 

さらにそのすぐ傍にはドリルを構えた真桜と双剣を振るう沙和の姿まである。

 

かなり消耗している様子は見られるものの、間違いなく彼女達だった。

 

 

(何で凪達がこんなところに?)

 

 

この頃の3人は華琳に仕えていないどころか義勇軍として挙兵すらしていない。

 

だからこそ自由な立場であるのは理解できるんだけど、だからってどうしてこんな所にいるんだろう。

 

凪達の住んでいる村はここからだとかなり離れたところにある。

 

竹かごを売りに来たのだとしても、陳留に行く以上の遠出だぞ?

 

 

(まぁ、詳しい話はこいつら片付けてから聞けばいいか)

 

「ん? 何だテメェは…ぐはっ?!」

 

 

野盗のリーダー格らしき男を殴り飛ばし、そのまま凪達の前に躍り出た。

 

さすがにこの大人数が相手では彼女達でも息が上がるのは当然か。

 

 

「何者っ?!」

 

「ただの通りすがりの旅人さ。見るに見かねた状況だったんで、助太刀させてもらおうと思ってね」

 

 

いきなり表れた俺に敵意を向けてくる凪に構わず、俺は言うだけ言って再び敵に突撃。

 

この程度の連中なら軽く瞬殺だ。

 

 

「この野郎、いきなり出てきて俺達を馬鹿に…げふっ?!」

 

「雑魚がいきがってんじゃねぇ!!!」

 

 

そこから俺は凪達と協力…もとい凪達を置き去りにして野盗をほとんど一人で倒してしまった。

 

まぁ、途中で俺が天の御遣いだってバレたせいで半分くらいは戦わずに逃げたんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野盗共を追い払った後、俺と風は凪達と共に近くの町へと向かう。

 

そこで食事をしながらお互いの事を話し合うことになった。

 

 

「なるほど、そうだったのか…」

 

 

凪達の話によると、彼女達は大陸を回る商隊の用心棒として雇われていたらしい。

 

しかしこの町に来る途中で大規模な野盗の集団に襲われてしまい、商隊は彼女達を残して壊滅。

 

なんとか生き残り一旦は戦場を離れた凪達も、追撃してきた連中に追いつかれたためやむを得ず応戦。

 

個々の力では完全の上回っているものの、初戦の疲れと敵の多さに押され……という危機的状況に。

 

つまり、俺が野盗どもを偶然見つけて助太刀に入らなければ、凪達はやられていたかもしれなかったのだ。

 

そこまで切羽詰まっていたとは考えもしていなかったが、結果的に無事で良かった。

 

ちなみに凪達の住んでいた村は彼女達が行商に出ている間に野盗に襲われ、既に壊滅しているという。

 

話している最中で思い出したのか、凪達の顔が苦痛と後悔に歪む………

 

 

「お兄さん……」

 

「……大丈夫だよ、風」

 

 

思わず暗くなりかけた俺だが、悲しそうな表情でこちらを気遣ってくれる風を見てすぐに持ち直す。

 

凪達の村が滅んだのはループしている俺の所為だ、なんて考えるのはただの思い上がりだ。

 

一人で勝手に落ち込んで悲劇のヒーロー気取っている場合じゃない。

 

 

「それにしても、まさかこうして天の御遣い様と天女様御本人に出会えるとは思いも寄りませんでした」

 

「ホントだよね~。沙和もビックリしちゃった」

 

「えらい大層な噂や思とったけど、実物は噂以上に凄いんやもんなぁ」

 

 

凪達の話が一区切りつき、今度は一転して俺と風の話になった。

 

これがなんというか、話の最中はずっと微妙な気分だった。

 

確かに最近は行く先々でこんな風に持て囃されたりしているものの、

(今のところ一方的な)自分の知り合いに言われると何だ妙に気恥かしく感じてしまう。

 

特に凪なんか、まるでテレビの特撮ヒーローを初めて目にした子供のように目を輝かせてるし。

 

 

「なにしろお兄さんは一騎当千、万夫不当の言葉すら超越した文字通り最強の武人ですからね~」

 

 

そんな俺の心情を察したのか、すかさず茶化しを入れてくる風。

 

この辺の読みはさすがだと言いたいが、褒める気には全くならない。

 

前にも言ったが、そもそもこんなに騒がれる原因になったのは風の所為だからだ。

 

別に悪いことという訳ではないので怒ったりもしないが。

 

 

「ところで、君達はこれからどうするんだい?」

 

 

そんな感じに双方の話がひと段落したところで、俺はこれからの事を凪達に聞いてみた。

 

 

「「「………………」」」

 

「?」

 

 

しかし、俺の言葉を受けた3人は何やら深刻そうな表情で押し黙る。

 

そして少しの沈黙の後、今度は申し訳なさそうな表情で口を開いた。

 

 

「非常に心苦しくはあるのですが、その事でお願いがありまして……」

 

「お願い?」

 

「実は沙和達、逃げてくる途中で武器以外の荷物とか全部置いてきちゃってて~……」

 

「ふむふむ」

 

「今日泊まる宿代どころか、今食べてる飯代もないねん」

 

「それは大へ………ん?」

 

「「「………………」」」

 

 

ふと見ると、懇願するというか捨てられた子犬というかともかくその系統の瞳で俺を見つめている3人。

 

それが意味するのはつまり………風?

 

 

「別に構いませんよ。でも、もし風を差し置いてそういう雰囲気になったら………解ってますよね?」

 

「………………はい」

 

 

こうして俺と風の2人旅に新たな同行者達が加わったのだった。

 

 

 

 

 

恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

 

第11話  21週目 その3

 

 

凪達が旅に加わってから数ヶ月。

 

あまりにも平穏とはほど遠くなってしまった現状に俺はプチ絶望状態へと陥っていた。

 

 

『一刀様、この先にここら一帯を荒らしまわっている山賊のアジトがあるそうです!』

 

 

例えば凪。

 

彼女は俺…というか『天の御遣い』という存在に強い憧れを抱いているようで、

行く先々で野盗やら山賊やらを積極的に成敗しようとする。

 

しかしハッキリ言っておくと、俺は別に世直しの旅をしている訳ではない。

 

もちろん目の前で困っている人がいれば助けはするが、

路銀が底を突きそうな時以外は静かにしていたいというのが俺の本音だ。

 

しかも凪の場合、野盗を倒した後は連中のお宝を被害に遭っていた村に全部返してしまう。

 

おかげでどれだけ倒しても路銀がちっとも潤わない。

 

かといって凪が悪い事をしている訳でもないため、甘んじて受け入れるしかなかった。

 

 

『あーーー! 新作の化粧品が発売されてるのーーー!!!……一刀さ~ん♪』

 

 

例えば沙和。

 

彼女は行く先々の町で物欲を発揮し服や装飾品を買い漁る。

 

そもそも路銀がないので俺達に同行しているという立場を完全に忘れているようで、

彼女の買い物の費用はかなり頭の痛い問題となっている。

 

野盗退治による路銀収入が断たれているので本当に笑えない。

 

まぁ、そんな状態にもかかわらず彼女のおねだりに屈し続けている俺も俺なんだが。

 

 

『一刀はん。こんなの作ってみたんやけど、どうやろ?』

 

 

例えば真桜。

 

彼女は暇さえあれば機械いじりに勤しんでおり、かなりの頻度で奇妙奇天烈なものを発明していた。

 

その発明に掛かる材料費ももちろん問題なのだが、それ以上にヤバいのが完成品の出来。

 

火薬を用いている訳でもないのに、何故か唐突に爆発してしまうのである。

 

以前『芸術は爆発だ』なんて言葉を聞いたことがあるが、物事には限度がある

 

実際に爆発の被害を直接被っている身としていい加減に勘弁していただきたい。

 

 

『………………お兄さん』

 

 

そして極め付けなのが風である。

 

 

『最近凪ちゃん達に構ってばかりですよね。風はほんのちょっとだけ寂しいのですよ~…グスンッ』

(最近ちょっと調子に乗りすぎじゃないですか? 何なら風が頭を冷やしてあげてもいいですよ~…ウフフッ)

 

 

最近風の声を聞くたびに脳内で響く副音声。

 

今の彼女はこれまでの長い付き合いの中でも一、二を争うほど危険な状態にあった。

 

詳しい説明なんかいりません。

 

洒落にならないくらい怖いのです、ハイ。

 

緊急時などの時は一応自重してくれるのがせめてもの救いです。

 

 

「はぁ………ん、ようやく次の街が見えてきたか」

 

 

そんな心労がたたって胃潰瘍にでもなるんじゃないかと思っていた頃、俺達は次の街に到着した。

 

 

 

 

街に着いた俺達は適当な宿を確保して荷物を預けると、早速資金調達に乗り出す。

 

今までのような野盗狩りでほとんど稼げなくなってしまったので、普通の労働が必要になったのだ。

 

ちなみに天の御遣いだとバレると面倒なので、この時はいつも目立たない服に着替えていたりする。

 

 

「それじゃあいつものようにいくか」

 

「「「「おー」」」」

 

 

人通りの多い広場に移動した後、持ってきた荷物をテキパキと組み上げる。

 

俺が真桜に頼んで作ってもらった数少ない、そして俺達の路銀稼ぎの要とも言える重要アイテム。

 

 

「さぁ、いらっしゃいいらっしゃい。美味しい美味しい焼きそばだよー!!!」

 

 

その名も『組み立て式簡易屋台 やきそば君』ある。

 

ネーミングセンスに関してはスルーしてくれるとありがたい。

 

ちなみに屋台の種類を変えられるように様々なオプションパーツが作成されており、

他に『たこ焼き君』『クレープ君』『ドネルケバブ君』のバリエーションが存在していた。

 

入手できた材料と店を開く土地によって売る物を変えられるのが強みである。

 

 

「なんだなんだ?」

 

「やきそば? 聞いた事の無い料理だな?」

 

 

ここから呼び込みや接客は風、真桜、沙和に交代。

 

聞き慣れない料理名に通行人の足が止まったのを見計らい、俺は凪とともに調理を開始する。

 

油を引いたアツアツの鉄板の上で野菜や肉を炒め、さらにそばを絡めて手早くかき混ぜる。

 

そして切り札とも言うべき秘伝…というほど熟成していないが、自作のソースを投入。

 

昼時の空腹時に焦げるソースの香ばしい匂いを嗅いで耐えられる者など存在しない!

 

 

「ほい、完成。さぁお客さん、焼きそばは出来たてが一番だよ!」

 

「すげぇイイ匂いだ……兄ちゃん、一つおくれ!」

 

「ウマそう……じゅる……俺にもくれ!」

 

 

案の定、客の食いつきは上々だった。

 

最初の数皿が売れてしまえばこっちのもの。

 

あとは物珍しさと口コミの勢いに乗ってガンガン売れていく。

 

これならキッチリ完売できそうだ。

 

しかし……

 

 

(なんで紙皿とか割り箸とかが普通にリーズナブルな値段で売ってるんだろうな?)

 

 

焼きそばを盛りつけながら、俺は今更過ぎる疑問に首をかしげていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで日中は焼きそばを売り続け、日が落ちる前には本日分を無事完売する事が出来た。

 

しかし心地よい疲労感に浸りながら屋台を片づけていた矢先、

とんでもない知らせが俺達の元に舞い込んできた。

 

 

「盗賊が襲ってきたぞ! それも、今までに見た事がないくらいの凄い数だ!!!」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

 

どうやら悠長にしていられる余裕はないらしい。

 

俺は念のために持ってきておいたいつもの服を羽織る。

 

やはり戦う時はこの服でないとな。

 

 

「風、沙和、真桜。俺と凪が突っ込んでかく乱するから、その間に街の防備と住民の避難を頼む」

 

「解りました~」

 

「解ったなの~」

 

「解ったで~」

 

「あくまでも人命優先かつ可能な範囲でいいからな。凪、そういう訳だから付き合ってくれ」

 

「もちろんです、一刀様!」

 

 

簡単な打ち合わせを済ませ、俺達は即座に行動を開始。

 

凪と共に逃げ惑う人々の流れに逆らって走り続け、街の外へ出る。

 

そこにいたのは、黄色い布の大軍だった。

 

 

「そうか、もうそんな時期か」

 

「どうかなさいましたか?」

 

「……いや。それよりざっと見ただけでも2000人はいそうだな」

 

「この程度の数など、私と一刀様ならば問題ではありません!」

 

「ふふっ、普通だったらね」

 

 

確かに時間はかかるものの、殲滅戦なら決して相手にできない数ではない。

 

それが防衛戦、ましてキチンとした防備の整っていない街が舞台となれば話は別だ。

 

その辺りは風達に任せてあると言っても、所詮付け焼刃でしかない。

 

街に入られたら被害が出るのは確実だ。

 

 

「またあの手でいくか」

 

「一刀様?」

 

「直接向けるわけじゃないから大丈夫だとは思うけど、一応気をしっかり持っててくれ、凪」

 

「え?」

 

 

あんな恥ずかしい名乗りはもうコリゴリなんだが、仕方ないよな?

 

 

 

 

『我が名は北郷 一刀! 大いなる天の意思を受け、この地に降臨せし者なり!』

 

 

届くはずの無いその声が聞こえた瞬間、風は辺りの空気が変わったのを感じました。

 

それでもそこに不快なものは一切なく、ただお兄さんに護られているんだという安心感だけ。

 

それが風達を優しく包み込んでくれているのです。

 

 

「皆さん、心配する必要はありませんよ」

 

 

野盗の襲撃で混乱していた住民の人達も、お兄さんの覇気に触れて少し落ち着いたようです。

 

この隙に説得を済ませてしまうとしましょうか。

 

 

「大陸に平和をもたらす為にこの地に降り立った天の御遣い。

 その加護を受けた今、賊がこの街を襲うことなど出来ません」

 

 

「天の御遣いっ?! まさか、さっきの白い服着て走ってった兄ちゃんが?!」

 

「じ、じゃあアンタは……」

 

「うふふっ。そして天の御遣いを支えるのは天女の役目。

 お兄さんに後方の憂いなく戦ってもらえるよう、全力を尽くすだけです」

 

 

もっとも、お兄さんが本気を出したのならそれも必要ない事でしょうけど。

 

でも、そう考えると少し残念ですね。

 

本気のお兄さんを間近で見られる機会なんて滅多にないのに………凪ちゃんが羨ましいです。

 

それに真桜ちゃんや沙和ちゃんもこの覇気に触れてるでしょうし、少し面倒かもしれません。

 

 

(3人とも、変な気を起したら容赦しませんからね?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大陸中に知れ渡っている噂に違わぬ…否、噂以上の力を誇る無双の武人。

 

一刀様と初めて出会ってから今日この日に至るまでで、私は一刀様の強さを知ったつもりだった。

 

それが見当外れの思い込みでしかない事を、私は身をもって思い知らされた。

 

 

『天の意思に逆らわんとする愚かな者達よ! その罪の大きさ……己が身をもって知るがよい!!!』

 

 

本来ならば目に見えない不明確な存在であるはずなのに、一刀様の纏うそれは確かに見えている。

 

それは私の氣などとは比べ物にならぬほど濃密で、既に戦場における全てを支配していた。

 

これが本物の覇気というものなんだろうと私は本能的に理解する。

 

そして同時に、温かな光にでも包まれているかのような心地良さを感じていた。

 

 

(………………風様、今日より貴女とは敵同士です!)

 

 

思えばこの時、私は本当の意味で初めて一刀様に触れたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同じ頃、別の場所でそれぞれの仕事をこなしていた2人も同じような事を考えていた。

 

 

(風ちゃんには悪いけど、沙和本気でいっちゃうの~)

 

(うちかて引く気はないで、風。覚悟しときや)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾクッ……!!!

 

 

「な、なんだ? 急に悪寒が……」

 

 

 

 

あとがき

 

 

どうも、『ささっと』です。

 

三羽烏登場と相成った11話。

 

最後まで季衣・流琉の妹コンビとどっちを出そうか悩んでいたのですが、

作者の独断と偏見によって凪達になりました。(胸的な意……げふん、げふん)

 

一応次回で華琳様達と合流になりますが、その前に日常ネタを挟みます。

 

風VS三羽烏の激闘?に御期待下さい

 

 

コメント、および支援ありがとうございました。

 

次回もよろしくお願いいたします。

 

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PS.一刀に対する呼称は、凪:一刀様 沙和:一刀さん(時折かずぴー) 真桜:一刀はん です。

 


 
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