No.837028

九番目の熾天使・外伝 ~短編27~

竜神丸さん

okaka、惑星にやって来るの巻 その2

2016-03-13 01:02:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6871   閲覧ユーザー数:1506

「―――ん? ここは…」

 

「お、気が付いたか?」

 

長時間に渡って意識を失っていたokaka。そんな彼が、目を覚ました際に視界に映ったのは……自身の顔を間近で見ている、金髪の青年の顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉあだぁっ!?」

 

「痛ってぇ!?」

 

驚いたokakaは絶叫しながら起き上がろうとして、金髪の青年と思いきり頭をぶつける羽目になってしまった。ゴチィンと盛大な音が鳴り、二人は互いにぶつけた額を押さえながら地面を転がり回る。

 

「ッ~~~~……す、すまん、大丈夫か…」

 

「あ、あぁ、俺は大丈夫……いや、俺こそ悪いな。急に驚かせちまって」

 

「あぁいや、こっちこそすまん。急に起き上がった俺が悪いからな…………ん、日本語…?」

 

互いに謝り合う二人だったが、ここでokakaは気付いた。

 

 

 

今、目の前にいる人物は日本人なのか?

 

 

 

明らかに日本人とは言えない恰好と髪型なのに?

 

 

 

そういえば、よく見ると日本人っぽい顔つきのような…。

 

 

 

そんな事を考えたokakaは名刺を取り出しつつ、まずは目の前の青年に素性を聞く事にした。

 

「…ひとまず、互いに自己紹介と行こうか。俺は岡島一城だ、よろしく……あ、これ名刺な」

 

「あ、どうもご丁寧に……俺は葛葉紘汰だ、よろしくな。紘汰で良いぜ」

 

「そうか、じゃあ俺も一城で構わない。それじゃあ紘汰、まずは色々と聞きたい事があるんだが…」

 

「あぁ待ってくれ。俺もお前に聞きたい事があるし、お前に返さなきゃいけない物がある」

 

okakaの質問を遮り、金髪の青年―――葛葉紘汰(かずらばこうた)は取り出したプロトディケイドライバーとライドブッカーを差し出す。

 

「これ、お前が付けてたライダーシステムなんだろ?」

 

「お、サンキュー……って、何でこれがライダーシステムだって分かった?」

 

「あぁ、分かるさ。お前もディケイド(・・・・・・・・)なんだろ?」

 

「!?」

 

その一言に目を見開くokaka。そこへ追い打ちをかけるかの如く、紘汰は更に取り出した一枚のライダーカードを彼に返す。未だブランク状態な鎧武のカードだ。

 

「…お前、どうしてその名を? それにこのタイミングでこのカードを俺に差し出すって事は……もしかして、お前が鎧武…?」

 

「あぁ、そうだ……俺が仮面ライダー鎧武だ」

 

「…そうか、お前が…」

 

「あ、目が覚めたんだ」

 

そこにちょうど、いくつかの木の実を腕に抱えた金髪の少女が、草木の中から出て来る形で二人の前に現れる。それに気付いた紘汰は「お、ちょうど良い」と言いたげな表情を向ける。

 

「舞、こいつは岡島一城。俺と同じ仮面ライダーなんだってさ」

 

「へぇ、紘汰と同じだね。私は高司舞、よろしく」

 

「あぁ、よろしくな」

 

金髪の少女―――高司舞(たかつかさまい)とokakaが握手するのを見て、紘汰は「うし!」と声を出しながら両手を叩く。

 

「それじゃ舞も良いタイミングで戻って来た事だし、まずは色々話をしようぜ。一城も色々聞きたそうだしな」

 

「…あぁ、そうだな。まずは紘汰逹の話を聞いてみたいところだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地方都市の沢芽市……ビートライダーズ……大企業ユグドラシル・コーポレーション……アーマードライダー……ヘルヘイムの森……オーバーロードインベス……そして知恵の実……なるほどな」

 

数十分後。紘汰と舞から話を聞き続けていたokakaは、ワームホールから取り出したノートパソコンを使い、それらの話をデータとして記録していた。

 

更にokakaも、二人に自身の素性を一通り明かしていた。自分がOTAKU旅団という組織に所属している事、そこで様々な任務をこなしながら人助けもしている事、自身がプロトディケイドである事、自身がこれまで出会って来た仮面ライダーの事など、話せる事は一通り話を終えている。

 

「なるほどな、ディケイドの存在を知ってる理由も納得がいった。まさか士に会っていたなんてな」

 

「他にもいろんなライダーに会ったぜ? ファイズやウィザード、それから1号にもな」

 

「1号……まさか、本郷猛か!?」

 

「いやぁ~それがさ…『お前みたいなひよっこを、ライダーとは認めん!!』…なんて、1号から色々と厳しい事を言われちゃったんだよなぁ。まぁ確かに思い返してみると、あの時の俺はまだまだ甘いところもあったから、今は普通に納得してるけど」

 

「1号もそうだけど、ディケイドも本当に不思議だったよね。いきなり自分の事を世界の破壊者なんて言うもんだから、私もびっくりしちゃった」

 

「おいおい、相変わらずだな士の奴…」

 

某通りすがりの仮面ライダーの姿が脳内に浮かび上がり、思わず苦笑いを浮かべるokaka……しかし、彼の眼は見逃さなかった。話をしている時の紘汰の顔にある、ほんの少しの陰りを。

 

「…知恵の実を巡る戦い」

 

「?」

 

「これだけ大きな惑星を開拓してしまうくらいの力だ。知恵の実を手にする事は決して簡単ではない……犠牲者もたくさん出た筈だ」

 

「「!」」

 

okakaの告げる言葉に、紘汰と舞の表情から笑みが消える。

 

「…相当、辛かったんじゃないのか?」

 

「…まぁな。辛くないって言えば嘘になる。救いたくても救えなかった命もあるし……俺の手で、奪ってしまった命も数え切れないくらいある」

 

インベスの攻撃を受けた所為で、ヘルヘイムの植物に侵されてしまった人達。

 

アーマードライダーの力を失って自暴自棄になり、インベスとしてユグドラシルに処分されてしまった青年。

 

かつて所属していたダンスチームのリーダーで、インベス化していると知らずに葬ってしまった青年。

 

知恵の実を巡って決戦を繰り広げ、最後は自らの手で刺し殺してしまった青年。

 

救えなかった者達、自らの手で殺めてしまった者達の姿が紘汰の脳内に浮かび上がる。

 

「…でも、俺は前に進むと決めた。どれだけ辛くても、苦しくても、泣きながらでも前に進む……アイツとの決着をつけた時に、そう決めたんだ」

 

「アイツ……それって確か、二人が言ってた駆も―――」

 

その時だった。

 

-ガチャッ-

 

「―――!?」

 

okakaが手に持っていたライドブッカーが突然開き、そこから一枚のブランクカードが飛び出した。okakaは慌ててそのブランクカードを手に取り、カードに書かれているライダーの名前を見据える。

 

「仮面ライダー、バロン……男爵の事か…?」

 

「! それ、もしかして戒斗のカードなんじゃ…」

 

「戒斗……なるほどな。これがその駆紋戒斗(くもんかいと)って奴の変身したアーマードライダー……いや、“仮面ライダー”って事か」

 

バロンと鎧武のブランクカード。okakaはその二枚を手に取って眺めている内に、更に興味が湧いてきた。プロトディケイドの更なる戦力を手にする為……という当初の目的よりも、今は純粋に紘汰逹のいた世界の事を知りたいという感情の方が優先度は上だった。

 

「…紘汰、舞。もしお前達が良ければ、もっと話を聞かせて欲しい。その駆紋戒斗という男だけでなく、お前達が一緒に戦って来た仲間達の事も」

 

「…あぁ、良いぜ! 俺も一城がいる旅団の事、もっと知りたいしな」

 

「おし、決まりだな」

 

その言葉に紘汰は爽やかな笑みを浮かべ、舞も同じく笑顔を見せる。二人の笑顔を見ていたokakaは、自分も無意識の内に笑顔を浮かべていた事には気付かなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そういえばさ。二人は始まりの男と始まりの女、つまりアダムとイブってところなんだよな」

 

「「へ?」」

 

「それってつまり……二人は新婚さんって訳か?」

 

「「んなぁっ!!?」」

 

「ん、違うのか?」

 

「「ち、違う、違うって!? 俺(私)達は、ただ…」」

 

「ただ、何だ?」

 

「「……えっと…」」

 

「…新婚さんみたいなもんなんだな?」

 

「「…はい」」

 

「…はっはっは、これは良い話を聞かせて貰った! 俺には結婚なんて一生縁が無ぇからな!」

 

okakaから告げられた爆弾発言に、紘汰と舞は顔を赤くしたまま肯定する事しか出来ず、okakaはそんな二人を見て面白げに高笑いしてみせるのだった。

 

 

 

 

 

 

…後々、自分の子供達が未来からやって来る事になろうなど、この時のokakaは知る由も無かった訳だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日…

 

 

 

 

 

 

「―――さて。何時になったら、皆は迎えに来るのやら」

 

昨日の夜まで、紘汰や舞と一緒に楽しく語り合い続けたokaka。結局、昨日は旅団からの迎えが来るような気配は全くと言って良いほど無かった為、okakaは仕方なく紘汰と舞に頼んで寝床を作って貰い、翌日の朝まで気持ち良く眠り続けていた。ちなみに作って貰った寝床は植物で出来ており、フサフサでなかなか温かい。

 

「大変なんだなぁ、一城の方も」

 

「まぁな。基本的にフリーダムな連中ばっかりだよ、うちの旅団は」

 

「ねぇ、本当に大丈夫なの? 私達が一城のいた世界まで送る事も出来るけど…」

 

「気持ちだけ受け取っておくよ。まぁ、もう少しだけ待ってみるさ」

 

そして現在、okakaは紘汰や舞と一緒に森の中で朝食タイム中である。okakaは紘汰と舞に生成して貰った果物を焚火で焼く事で食しており、紘汰と舞は生やしたヘルヘイムの植物に成っている果実をもぎ取って食している。

 

「見た感じ、やっぱりヘルヘイムの果実しか食べれないみたいだな」

 

「まぁね。一城の分は普通の果物を作れたけど、私達が食べても味を感じないから」

 

「食事は簡単で良いけどさ。時々、沢芽市にいた頃が恋しくなるんだよなぁ~……あ~あ、姉ちゃんの手料理もっと食べておくべきだった」

 

「ならせめて、会いに行く事は出来ないのか? ミッチ……呉島光実って奴には一度会いに行ったんだろ?」

 

「いやぁ、流石にそう何度も行き来する訳にはいかないな。前に会いに行ったのだって、やり残した事をやり遂げる為に行っただけだから。人間でなくなった以上、いつまでも地球に長居は出来ない」

 

「まぁ、そんなもんなのかねぇ…(一応、旅団にもヘルヘイム並にヤバい奴はいるけどな)」

 

okakaの脳内に思い浮かぶは、敵を“餌”と称して喰い荒らす凶獣の姿。その高笑いする光景まで容易に脳内で思い浮かんでしまい、okakaは苦笑いしか出来ない。

 

「そういえば一城って、ヘルヘイムの森について詳しいよね」

 

「ん、まぁ実際にこれ持ってるしな」

 

「お? へぇ~知恵の実を持ってんのか、道理でやたら詳しいわ、け…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「―――知恵の実ぃっ!!?」」

 

「あ、そういやこれについて話しておくの忘れてたな」

 

機械で出来た球体“PoE”をokakaがひょいと取り出したのを見て、ワンテンポ遅れてから同時に驚きの反応を見せる紘汰と舞。okakaはそんな二人の反応を面白いと思いつつ、PoEを片手でポンポン投げながら告げる。

 

「知恵の実っつっても、俺の遥か昔の先祖が機械化した代物だ。通常の知恵の実ほどの力は無いし、使うと体力を大幅に消費しちまうからな、必要な時以外は使わないようにしてる」

 

「な、なるほど……コイツみたいなものか」

 

納得した紘汰は懐からある物を取り出す。それは表面に複数のフルーツが描かれた、黄金に輝く“鍵”のような形状をした(きわみ)ロックシードだった。それを取り出した途端、okakaの手に握られていたPoEが若干だが輝きが増し始めた。

 

「! 共鳴している……なるほど、それも知恵の実の一部か」

 

「あぁ。俺も最初は知らなかったけどさ、ロシュオっていうオーバーロードから教えられて初めて知ったんだ」

 

「知恵の実の一部を使って出来た、新しい力か……俺の先祖以外にも、そういう事をする奴がいるとはな。これがもし他の世界の人間達にでも知られるような事になったら、割とヤバい事になっちまうんだろうなぁ?」

 

「ちょ、怖い事言わないでよ!?」

 

「ははは、冗談だ」

 

「もう…!」

 

「大丈夫だって舞。俺もそう簡単にやられはしないからさ」

 

怒って頬を膨らませる舞を紘汰が宥め、okakaはやはり面白そうに笑みを浮かべていた……その時だ。

 

「…!」

 

楽しく笑っていた紘汰の表情が、一瞬にして真剣な表情に切り替わる。

 

「ん、どうしたの紘汰」

 

「…あれは何だ?」

 

「!」

 

 

 

 

 

 

-ゴゴゴゴゴゴ…-

 

 

 

 

 

 

紘汰の見ている方角を見て、okakaもすぐに表情から笑みが消える。三人が見据える方角……その上空から、謎の巨大戦艦がゆっくり降下して来ていた。いくつもの大砲が見えるその戦艦には、右目に眼帯を付けた髑髏の紋章がデカデカと描かれている。

 

「戦艦…?」

 

「…碌な輩ではなさそうだな」

 

もしもの事態に備え、okakaがプロトディケイドライバーを腰に装着しようとしたその時…

 

「―――ッ!? キャアッ!!」

 

「!? 舞っ!!」

 

「何…!?」

 

別方向から伸びて来た蛸足らしき触手が舞の腹部と首元に巻きつき、舞を森の外へと連れ去ってしまった。不意を突かれた紘汰とokakaがすぐに森の外へ飛び出して行くと…

 

「念願の、始まりの女を捕らえたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「「「「「ヒャッハァァァァァァァァァァァァッ!!!」」」」」

 

「ッ……離し、て…!!」

 

その先に待ち構えていたのは、海賊のような風貌をした凶暴そうな怪人達だった。シュモクザメやダイオウイカ、イソギンチャクやウツボ、ハリセンボンやミノカサゴなど、どの個体も海洋生物の特徴を持った者達ばかりだ。その集団の先頭に立っている船長は、右目に眼帯を付けた人間の男性としての姿をしており、その船長の左腕には先程連れ去られた舞が捕らえられていた。

 

「何なんだお前達は…!!」

 

「あぁん? あぁ、始まりの男かぁ……俺達は泣く子も黙る宇宙海賊オクタヴィア!! 始まりの女は俺達が預かったぜぇ…!!」

 

「宇宙海賊オクタヴィア、ねぇ……つまり一番先頭に立っているお前が、かの有名なマッド・フランソワ・ジョーンズ船長って訳か」

 

「ほほぉ? 俺の事を知っているのか、実に光栄だなぁ…!!」

 

「あぁ、よぉ~く知ってるぜ? お前は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「懸賞金がしょっぱ過ぎて、誰も追いかけない事で有名な賞金首だからなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ズコォーッ!!-

 

「…はい?」

 

okakaのその一言に、船長のジョーンズを含めオクタヴィア船員達が一斉にズッコケてしまった。これには捕まっていた舞や、okakaの隣に立っている紘汰も思わず呆気に取られた。するとすぐに体勢を立て直したジョーンズがokakaに向かって怒鳴り散らす。

 

「キッサマァ!! よくも人が気にしてる事をそんな堂々とぉっ!!」

 

((あ、気にしてたんだ!?))

 

「だってそうだろう? お前あの黒ひげ(ルイス・カトラー)よりも懸賞金低いんだもん。お前倒したところで次元航行船の一隻も碌に買えやしねぇし」

 

「えぇい黙れ!! 俺を馬鹿にするなら容赦はせんぞぉ!!」

 

「喧しい!! さっさと失せろ中古エンジン一機分!!」

 

「中古エンジン!? 俺はその程度の価値しか無いとでも言いたいのかぁ!!」

 

「お前の懸賞金で買える上限はなぁ、小型船の中古エンジン一機分程度しか無ぇんだよ!! こちとら毎日市場調査してんだぞ、社長舐めんな安物船長!!」

 

「安物って言うなぁ!! 何処までも人の傷口を抉りおって、それでも貴様は人間かぁ!!」

 

「賞金首なテメェ等に言われたかねぇんだよボケェ!! 悔しかったら自首して更生して、惑星一つに綺麗でドデカい花畑でも何でも作ってみろやこの保障切れエンジン!!!」

 

「保障切れエンジン!? どんどんランクダウンしていってるではないか!! 貴様、この俺を侮辱するのもいい加減にしろぉっ!!!」

 

(((((…何だろう、この状況)))))

 

okakaとジョーンズの二人で、ギャアギャアと不毛な言い争いが始まってしまった。紘汰と舞どころか、ジョーンズの手下であるオクタヴィア船員達までもが置いてけぼりにされてしまう始末である。流石に言い争いが長続きするのもマズいと判断したのか、一人のオクタヴィア船員が声をかける。

 

「せ、船長、まずは用件を伝えた方が…」

 

「ん!? お、おぉ、そうだった、つい熱くなってしまったわ」

 

手下の声でようやく我に返ったのか、ジョーンズはゴホンと小さく咳き込んでから改めてokaka逹と対峙する。

 

「この俺を何時までも小物だと思ってくれるなよ? 何故なら我々オクタヴィアは、とある世界で新たな力を手に入れたのだからなぁっ!!!」

 

「「!?」」

 

ジョーンズが右腕を高く掲げたその瞬間、ジョーンズの全身がヘルヘイムの植物に包まれ、一瞬で異形の姿へと変貌してみせる。その姿は、眼帯を付けた鮫のような青い頭部、フジツボや珊瑚のような意匠のある赤い上半身、両腕に生えている蛸足のような触手、髑髏マーク付きの前垂れがある黒い下半身などが特徴の姿だ。

 

「お前等、オーバーロードに覚醒しているのか…!!」

 

「チッ! やっすい癖に面倒な力を手にしてやがるな……やっすい癖に!!」

 

「やっすいやっすい喧しいわ!! とにかく、俺達が用があるのは貴様だ……始まりの男!!」

 

「!?」

 

okakaが繰り返す安物発言に苛立ちを抑えつつ、ジョーンズは紘汰をビシッと指差す。

 

「貴様が持っているその禁断の果実の一部!! それとこの始まりの女を交換だ!!」

 

「!? コレとだと…?」

 

ジョーンズの目的、それは紘汰の所有している極ロックシードだった。ジョーンズは醜悪な笑みを浮かべつつ、左腕に捕らえている舞の首元に、ノコギリザメの頭部を模した長剣を向ける。

 

「ッ…!!」

 

「あぁそうそう、取引をするのはここではない。この女を取り返したければ、我々オクタヴィアの戦艦フライングダッチマン号まで、そこのお前が一人で持って来い!!」

 

「へぇ、俺をご指名か。随分と余裕だな」

 

「ふん、オーバーロードにも覚醒していない貴様など我々の敵ではないわ」

 

「…ふぅん?」

 

ジョーンズの言葉に、okakaの目付きが変わる。

 

「この取引、我々の痺れが切れる前に来る事をオススメしておこう……行くぞ野郎共!!」

 

「「「「「ヒャハハハハハハハ!!」」」」」

 

「ッ…紘汰、一城!!」

 

「待て、行かせるか!!」

 

「!? 紘汰、ストップだ!!」

 

 

 

-ドズゥンッ!!-

 

 

 

「ッ!?」

 

「グルルルルルルル…!!」

 

巨大戦艦フライングダッチマン号まで、舞を強引に連れて立ち去ろうとするオクタヴィア。その後を追おうとした紘汰だったが、okakaの声を聞いて立ち止まると同時に、紘汰とokakaの目の前に巨大な赤いクラーケンが落下する形で出現した。

 

「ッ…コイツもオクタヴィアの一員か!!」

 

「おいおい、何が取引だよ? やってる事が何もかもド三流じゃねぇか……だから懸賞金が上がろうにも上がらねぇんだよ、この不良品エンジン!!」

 

「遂に不良品扱い!? えぇい、いつまでもその挑発には乗らんぞ……やれ、クラーケン!!」

 

「グルルルルッ!!」

 

「ッ…チィ!!」

 

ジョーンズの命令を受けて、クラーケンの太く長い蛸足が紘汰とokakaに襲い掛かる。その間にジョーンズ率いるオクタヴィアは、フライングダッチマン号まであっという間に立ち去って行ってしまった。

 

(やれやれ、面倒な事になってきたね…)

 

そのオクタヴィア船員の中に、妙な形状の拳銃を持っている者がいる事には、まだ誰も気付かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はん……奴等、小賢しい事をしてくれる…!!」

 

散々ジョーンズに舐められたからか、okakaは軽く笑みを浮かべつつも、その眼は全くと言って良いほど笑ってはいない。そんなokakaの隣に紘汰が並び立つ。

 

「一城、やれるか!?」

 

「当たり前だ、行くぞ紘汰…!!」

 

「あぁ、絶対に舞を助け出す…!!」

 

okakaは腰にプロトディケイドライバーを装着し、バックル部分を展開。プロトディケイドのカードをバックル部分に装填する。

 

一方で白いマントを華麗に靡かせた紘汰、はその腰に戦極ドライバーを自動で出現させる。そして『KLS-01』と書かれた特殊な錠前―――カチドキロックシードを装填してカッティングブレードを倒し、更に極ロックシードを開錠する。すると紘汰の頭上に複数のクラックが開き、そこから複数のアームズが一斉に降下して出現する。

 

≪カメンライド…≫

 

≪フルーツバスケット!≫

 

「「変身ッ!!」」

 

≪ディケイド!≫

 

≪ロック・オープン!≫

 

okakaはプロトディケイドライバーのバックル部分を閉じ、紘汰は開錠した極ロックシードを戦極ドライバーの左横から装填。それによりokakaがプロトディケイドに変身する中、降下した複数のアームズが紘汰の周囲で回転し始める。

 

≪極アームズ! 大・大・大・大・大将軍!≫

 

複数のアームズが同時に紘汰と融合。銀色の鎧、黒いマント、虹色の複眼が特徴的な戦士―――仮面ライダー鎧武・極アームズへの変身が完了された。鎧武は左手で極ロックシードを一回捻り、オレンジの断面を模した片刃剣型アームズウェポン―――大橙丸(だいだいまる)を出現させる。

 

≪大橙丸!≫

 

「行くぞ、一城…!!」

 

「あぁ…!!」

 

≪カメンライド・アギト!≫

 

プロトディケイドはアギトのカードを装填し、PDアギトに変身。そこから変身ベルト・オルタリングの右側スイッチを押し、PDアギト・フレイムフォームとなり、長剣フレイムセイバーを構える。

 

「グルルルルルルルルァッ!!!」

 

「「さぁ、来い!!」」

 

鎧武とPDアギトに、クラーケンの蛸足が再び襲い掛かる。二人は襲い来る蛸足を回避して高く跳躍し、クラーケン目掛けてその剣を振り下ろすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、フライングダッチマン号…

 

 

 

 

 

「ほら、大人しくしてろ!!」

 

「痛ッ…!!」

 

人質として捕らえられた舞は、戦艦内の牢獄に収容される事になった。二人のオクタヴィア船員が舞を乱暴に牢屋へと押し込み、床に座り込まされた舞は船員達をキッと睨みつける。

 

「あなた達……こんな事して、紘汰逹が黙ってないわよ…!!」

 

「へへへ、いつまでそんな事を言ってられるかなぁ?」

 

「そうそう。向こうもオーバーロードだが、それはこっちも同じ事だ。いくら奴でもクラーケンには敵うまい」

 

二人の船員はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる。その様子から紘汰はともかく、okakaの事は眼中にも入っていない事は舞にも分かった。

 

「まぁそんな事より……今は自分の心配をした方が良いぜ? 始まりの女」

 

「え…?」

 

舞は船員達が何を言っているのか分からなかった。そんな彼女を見下ろしながら、二人の船員はジュルリと舌舐めずりをする。

 

「人質は人質でもよぉ……命さえ無事なら、何しても構わない(・・・・・・・・)よなぁ…?」

 

「あぁ……それにこの女、結構可愛い顔してるじゃねぇか…」

 

「…ッ!!」

 

それらの言葉に、舞はその背筋に寒気が走った。船員達は醜悪な笑みを浮かべながら、床に座り込んでいる舞に接近し始める。

 

「い、嫌…やめて、来ないで…!!」

 

「おいおい、釣れない事言うなよぉ? せっかくだ、気持ちの良い事をしようじゃねぇか…」

 

「安心しろぉ……時間をかけて、たっぷり可愛がってやる。痛くもしないぜぇ?」

 

「ん、んんんん…!?」

 

舞は口元にガムテープを貼られ、そのまま床に仰向けの状態で押し倒されてしまう。一人の船員が舞の両腕を力ずくで押さえつけ、もう一人の船員が舞の両足の膝を掴んで開こうとする。

 

(い、嫌だ……助けて!! 紘汰―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、その辺にしたまえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

その一言に、船員達はピタリと動きが止まる。彼等が振り返った先には、謎の拳銃を持った船員が、牢屋の入り口の壁に寄り掛かっている姿があった。

 

「おい、何してやがるテメェ?」

 

「この女の見張りは俺達だ、テメェの仕事じゃ―――」

 

「邪魔」

 

「「ほばぁっ!!?」」

 

一瞬だった。拳銃を持った船員が躊躇なく発砲し、その銃弾から具現化した巨大なネットが二人の船員を壁に叩きつけるような形で捕縛したのだ。一瞬の出来事だった為に、二人の船員は何が起こったのかも分からず、壁に叩きつけられた衝撃ですぐに意識を失ってしまった。

 

「さて」

 

拳銃を持った船員は、頭に被っていた蟹のようなマスクを床に放り捨て、人間の青年としての素顔を見せる。そのまま彼は床に倒れている舞を起こし、彼女の口元に貼られているガムテープを優しく剥がす。

 

「大丈夫かい? 始まりの女……いや、イブとでも言うべきかな?」

 

「あ、ありがとう…………あなた、誰なの?」

 

「ん、僕かい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「通りすがりの仮面ライダーってところさ。覚えておくと良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青年―――海東大樹(かいとうだいき)は、指で銃を撃つポーズを取りながら、舞に対して笑顔でそう答えてみせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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