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外史を駆ける鬼・春恋*乙女編 第04話

どうも皆さん。
今回は少しギャグを書いてみました。上手くできたかな……。
三国回は今結構なシリアスな展開なので、ギャグが書けないですが、学園物語だったら、ギャグって結構書きやすいですね。
ただ、シリアスが余り浮かばないですww

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2016-03-06 02:25:29 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1059   閲覧ユーザー数:1021

外史を駆ける鬼・春恋*乙女編 第04話「ほどほどに……」

「……以上が、来月から進めるべき案件っとなっています」

フランチェスカ学園の校舎の一室、生徒会室にて、現在生徒会メンバーの話し合いが進められていた。一刀が生徒会メンバーから見えるような位置にてホワイトボード使い説明を行ない、残りのメンバーは黙って彼の話を聞いていた。

「続いて、生徒会メンバーを新たに補充する件に関してですが、どなたか意見はありませんか?」

一刀が場にいる生徒会のメンバーに対して意見を求める。現在生徒会のメンバーは庶務である一刀、会長である不動如耶(きさや)の他に書記の鳳、副会長の松原の四人である。

「それなら私から意見があるのだが……」

一人の人物が高々と手を上げるのだが、その人物が手をあげた時に、一刀は少し渋る表情をする。

「……それより、なんで、風紀委員である昌人さんがいることに疑問を投げかけたいのですが?」

一刀の思考が正常であれば、本来生徒会メンバーではない昌人が何故こんなところにいるかが不思議でならなかった。

「いやなあに、先輩達が辞めて、人数が少なくなった生徒会に何か新しい意見が欲しい吹き込んで欲しいってレイちゃんに言われたので、こうしてやってきたというわけだが」

彼がそういうと、一刀はレイちゃんと言われた者の顔を見ると、その肝心のレイちゃんはケタケタと笑っていた。

レイちゃんとは、会計である松原麗架のことである。麗架は昌人と同じ三年で一刀の先輩に当たる。肩まで伸びた銀髪に、スタイルは良く、174cmと女性としてはかなりの高身長である。水泳部の部長でもあり、学園の女生徒からも人気は高く、『お姉さまにしたいお姉さまランキング』では如耶に次ぐ堂々の二位である。ちなみに三位は少し間が空いて愛紗らしい。

「そうなんだよね。先輩も辞めちゃって、空いた特別枠副会長と会計の空席をどうにかしなければならないし、私達たちだけで考えるだけならこころもたないから、昌人に声をかけたのだよ。この学園で一番中立の立場だからね。いい意見を出してくれると思うよ」

「あのねぇ麗架、何も北郷君は昌人君を会議に参加させたことを問題視している訳ではないのよ」

麗架の意見に食いつく様に、丸い眼鏡をかけた腰まで伸びるエバー・グリーン(少し明るい黒めの緑)の髪の女性が発言をする。彼女は鳳皐月。美術部の副部長で生徒会書記。

「昌人君を連れてくることを、事前に連絡を入れて欲しかったんじゃないの」

「またまた皐月ったら、畏まって『昌人君』なんて呼ばずに、昔のように『マーちゃん』って呼べばいいのに」

皐月の食いつきにケタケタ笑うように答える麗架に対し、皐月は顔を赤くして「ななななな」っと狼狽している。

「……お主達、じゃれあうのは結構でござるが、そろそろ話し合いを始めぬか?」

会長である如耶がため息を漏らしながら軽く注意すると、彼女達は言い争うのを止めて議題に集中した。

「………ま、まぁ、昌人さんがいるわけはわかりましたので、議題に戻ります。昌人さん、貴方の意見とはなんですか?」

「うん。今回の選抜あえて一年より選べばいいんじゃないかと思ってね」

「い、一年ですか?」

昌人の意見に、全員顔が渋る。

「ま、昌人殿。いくらなんでも一年から選抜するのは無謀であると思うのでござるが?」

「そうだね。いくらなんでも一年から選抜するのは……」

「まだ入学して間もない一年生を、いきなり生徒会に加えるのもねぇ」

彼の意見に皆が否定的であった。基本フランチェスカの生徒会戦は二回行なわれる。役員への進出はどれだけ早くとも一年生の後半よりからである。だが昌人はこれに言葉を付け加える。

「……如耶ちゃん。君は一年時に優良枠で生徒会副会長に就任したけど、それは何故だ?」

「むぅ。それは皆の薦めと、自らの可能性に挑戦してみたい欲求の為であるが」

「レイちゃん。君は二年時に選挙に出馬したが、なんで出馬したんだ?」

「ん?私も水泳部の後輩達に薦められてだけど」

「さっちゃん。さっちゃんも私に薦められて出馬したんだよね?」

「………そうね。昌人君だけに限らず、彩夏にも薦められたわ」

「そう。ここにいるメンバーは皆に薦められて、自らの可能性を開けるため、自ら望んでここにいる。……逆に聞くけど、皆はこの生徒会でやってきたことが無駄だと思った事はあるか?」

暫しの沈黙の後に、皆節々に言い始めた。「そんなことはない」と。

「それに……ここにいる大半は三年だ。生徒の支持の過半数を越えている生徒会役員は、選挙戦の際、継続か辞任、どちらか選べるが、このメンバーで卒業まで辞任する者なんていないだろう。だったら早めに一年を取り込んでその一年にノウハウを叩き込んで、伝える事を伝えて私達は悠々と卒業すればいい。それに……伸び代ある若き中学生の力を舐めていると、私達が逆に喰われかねないかもな」

彼の意見に、未だ四人はうんとも言わない。

「なればこうしよう。今回は会計を二年以下より選出。特別枠より二年を招き入れよう」

「……昌人殿、会計とはこの生徒会の予算を一手に背負う者。それを一年に任せるのは少々酷過ぎるのではござらぬか?」

「いや、最も重要なポジションだからこそ任せるのだよ。もしかしたらいずれこの学園の長になるかもしれないのだからね。……まぁ、もっとも、次の学園の長はもう決まりなのかもしれないかもな」

そう言いながら、昌人は一刀の方に視線を向け、他の生徒会メンバーも何かを悟ったかのように頷いていた。

「………まぁ、意見も出払いましたことですし、それでは次の生徒会前半選挙についてはそれでいいですね?」

一刀の言葉に皆合意し、生徒会メンバーは次の議題にシフトを移した。

「そういえば昌人さん。風紀委員は募集しないのですか?」

議題を次々とこなしていった時、一刀がおもむろに話す。

「ん、私?私は別にいいさ。フランチェスカはお嬢様学校だからな。実際、風紀委員はあっても無くても同じ様な物だし。事実今もこうして生徒会のお手伝いに来ているだけの現状だしね」

「お手伝い?とんでもない。如耶が剣道の試合でいないときは、代理で昌人に来てもらって、本当に助かっているよ」

「そうよ昌人君。そもそも私達が苦無く生徒会メンバーとして居られるのも、昌人君がいてくれたからこそなのよ」

麗架の意見に、皐月も一緒になって乗っかる。実を言うと、昌人と麗架と皐月は幼馴染な間柄であり、水泳部の部長、美術部の副部長と暇ではない彼女達が生徒会に入った決め手は昌人の口添えだという。

「うむ。拙者も昌人殿がいてくれて本当に助かってくれているでござる。本来であれば、会長の席は拙者では無く昌人殿が座るべきであると考えているのだが……」

「いやぁ、私は別にいいよ。皆に注目されるのはどうも好きではないからね。ひっそり仕事をするのが合っているよ」

【その割には皆が発言しない空気の際に、よく高々と手を挙げて発言したものだな】っと心の中で呟く一刀であった。

やがて雑談を挟んだ生徒会の会議は終了し、生徒会メンバーがそれぞれ自身の部活に向かおうとする際に、昌人が一刀に話しかけた。

「そういえば一刀君。君に渡す物があったんだった」

「はい?」

昌人は鞄からタバコぐらいの大きさの箱を3つ程取り出し、一刀に渡した。その箱のパッケージを見た瞬間、一刀は顔を赤らめて昌人に突き返した。

「どうしたんだ?君には絶対必要なものだろう。学園滞在中に問題でも起こされれば、君を生徒会に薦めた私の沽券にも関わるんだが……」

「そういう意味ではなくて、なんでこんなものを今ここで渡すのですか!?」

飄々としている昌人に対し、一刀は未だ顔が赤いまま小さな声で昌人に箱を突き返そうとする。その異様な行動に興味を持ったのか、部活に向かおうとしていた残りの生徒会メンバーは、二人の方向に集まってきた。

「昌人殿、北郷殿、お主達一体何をしているのだ?」

「うん?いやなに。一刀君にとって一番大事な物を渡そうとしているのだが、どうも受け取ってくれなくてね」

「いやいや、何を言っているんですか昌人さん!?」

「だって、未だ未成年の君にとって、これはとても重要な物だろう?何故素直に受け取らない?」

「だから受け取る受け取らない以前に、何故この場で出すんですか!!」

言い争っている一刀と昌人の様子に何か気付いたのか、麗架が皐月に告げ口をする。

「ねぇ皐月、ちょっと何をしているか聞いてきてよ?」

「………なんで私が」

麗架は自分の顔を皐月の耳元に寄せると、「ここで華麗にことを収めれば、昌人君からの評価も上がるわよ」とこっそり言うと、皐月は小さく鼻で笑った。

「下らないこと言ってないで、貴女も部活に行きなさい。どっちにしても生徒会役員として、ゴタゴタは収めるつもりよ」

そう言って一刀と昌人の所に向かった皐月の頬は、僅かに綻んでいたことに麗架は気付くと、自身のことは成功したことに彼女はニヤリした。

「ちょっと北郷君。マーちゃんと一体何のことで揉めているの!?」

先程まで麗架に煽られても言わぬと誓っていた昌人の呼称を皐月が呼ぶ辺り、皐月自身も頭に血が昇っている証拠であろう。

「わ、わわ、な、なんでもないんです。なんでも……」

「なんでもないんなら、何でそんなに動揺しているの!!」

そう言いながら一刀を軽く突いた際に、一刀の手元からポロリと持っていた箱が零れ落ちる。皐月は何かと思い手に取ると……

「こんどー……む?」

その箱を拾い上げた瞬間、一刀の血の気が一気に引いていった。

「若い一刀君のことだ。我が妹とのまぐわいは箱三個では足りないかもしれないが、しかし在学中に妊娠でもされれば風紀委員としての私の面目と、一刀君を生徒会に薦めた私の沽券にも関わる。なればこそ、ことを安全に済ませ、高校在学の間はこれを重宝するべきであt――ぶべらっ!!」

人差し指と中指の輪に親指を入れてグーサインをしながら力説する昌人を、皐月は勢い良く裏拳で殴り飛ばし、彼は床に転がりこんだ。

「あ、あの……鳳……先輩?」

彼女の長い髪は逆立ち、呼吸音はいつの間にやらフシューフシューと機械的な音に変わり、眼鏡も光の反射により完全に曇ってしまっている。

「ナルホド、サスガニッポンノケンコウダンジ(なるほど、流石日本の健康男子)。ヨルノイトナミもイチニンマエトイウワケデスカ(夜の営みも一人前という事ですか)」

「あ、あの、鳳さん?鳳先輩?皐月先輩?」

「……死にさらせーーー!!」

「何で俺g――べぶりゃひゃ!!」

一刀も自分の意見を言い終えるまえに皐月の(ナックル)により吹き飛ばされる。

彼女は地団駄踏むように部屋を出て行き、麗架はそんな二人を見ながらケラケラ笑い、如耶はまた一つため息を吐いた。

「いたたた。まだ痛いよ。ホントに俺は被害者なのに……」

剣道部の更衣室にて、一刀は先程皐月に殴られた箇所を自分の手で撫でていた。そこに男子更衣室の扉が開いて、一刀の他の少なき男子剣道部員が入ってくる。

「オッス一刀……どうしたんだ?その顔の腫れは?」

「あぁ……聞いてくれよ、あきちゃん。実は……」

入ってきたのは一刀の悪友の一人である章仁であり、それから一刀は先程の生徒会室で起こった出来事を洗いざらい話した。

「………そりゃまた贅沢な話でござんしたな」

「何処が贅沢だ!!俺は被害者だぞ!!」

「だってそうだろ。これだけ女子がいるお嬢様学校なのに、数少ない男子の中でも浮いた話が一つもないんだぞ。そういう意味ではお前は恵まれているよ。重田さんの様な綺麗な女性(ひと)と付き合っているって」

「………そうなの?」

「そうだよ。俺も及川も他の男子もそういう話は一つも無いんだぞ。それに比べてお前はまるで小説の中から出てきたような絶世の美少女を射止めて、これの何処が贅沢じゃないと言える!!」

「まぁ、実際にとある物語から出てきたんだけどなぁ」っという言葉を吞み込みながら一刀は黙って聞くが、彼はそこで一つの疑問を思い浮かんだ。

「ん?そういうお前こそそういう話は無いのか?織戸さんや芹沢さんといっつも話しているじゃないのか?」

「……莉流はどっちかというより喧嘩友達だし、結衣佳も只の幼馴染だ。それに莉流はどちらかというと俺らみたいな男より女の子の方が好きだぞ」

章仁の話を聞き、一刀はそうだったのかと初めて察した。だが一刀の目から見て、莉流は少なくとも章仁のことは嫌っていない。少なくとも好意的な節は見て取れる。確かに彼の言うように喧嘩仲間と聞けばそれに同意できるし、異性として見ても嫌っていないのではないのかと思う。また結衣佳に関しても、どんな理由かあるかは知らないが、彼女は確実に章仁に好意を抱いているはずだ。何故この二人が恋人にまで発展しないかが謎である。そんなことを考えていると、一刀は一つ含み笑いを溢す。

「……一刀、何を笑っているんだ?」

「いや、別に――」

外史で彼は種馬だけに限らず唐変僕とも言われたのを思い出した。そして実際に第三者の目線から見てこういうのが唐変僕なのかと思うと、つい含み笑いを溢してしまう。

「それより章仁、早く着替えないと主将にどやされるぞ」

いつの間にか剣道着に着替えていた一刀は更衣室の扉を開いてそのまま出て行き、それに気付いた章仁は急いで着替えにかかるが、躓いて転んでしまい結局練習に遅れて説教を受けることとなった。

 

「はあぁ!!ふっ!!せいっ!!」

章仁が説教を受け終えた後、準備運動と基本トレーニングを終えて、部員は各個人で相手を見つけて打ち合いを始めた。

といっても、章仁の相手はこの部に自分を入れて二人しかいない男子の一刀であるが……

「どぉおおぉっ!!」

先程より一刀に対して打ち込んでいた章仁であるが、そのこと如くを彼に()なされ、大きく振り上げて渾身の面打ちを放つが、その軌道を読まれ、彼の剣筋は左に流され、そのがら空きとなった彼の右脇に一刀は胴打ちを放つ。章仁は竹刀を杖代わりにしてバランスを整え、受けた右脇を左手で押さえるが、その感に一刀は既に向き直っていた。

「ちょ、章仁、大丈夫か!?」

「だ、大丈、夫じゃ、な、ない……凄く……痛い……」

その瞬間、章仁はそのまま倒れこんで、剣道場は騒然となった。

 

「……はい、とりあえず氷を用意したから。今日はこのまま見学していてね。それと、冷やす時は低体温症を防ぐ為にある程度時間差を置いたりしながら冷ましてね」

救急箱を持ち、白衣を着た童顔の少年が章仁に注意を促した。

「ありがとうございます。竜禅寺先生」

章仁を診察したのは、フランチェスカ学園の校医で、剣道部の顧問と黎明館の臨時オーナーも兼任している竜禅寺徹哉。その硬派な名とは裏腹に、童顔で背は低く外見はまるで十代の少年であり、よく学園に通う生徒の弟と外部の人に勘違いされるが、れっきとした教員である。ただし、過去に柔道をしており、かなりの実力で有段者である為に、怒らせるとかなり恐いらしく、有段者という響き通り、投げられる。

「北郷君も、少しは加減をしないと。そのうち早坂君の体、壊れちゃうよ」

竜禅寺は少し困ったように笑いながら言い、一刀も申し訳なさそうに頭を下げるが、それを章仁が否定する。

「いや先生、一刀が悪いわけじゃないんです。俺が一刀に手加減なしに打ってくるように言っているだけなんです」

「……まぁ、青春することに対して僕は余り口出ししないけど、何ごとも程ほどにね……」

竜禅寺はクスリと一つ笑うと、救急箱を持って去っていった。

「早坂殿、大丈夫でござるか?」

「……先輩」

竜禅寺が去った後に、剣道着の面だけを外して脇に持ち、いつもの頭に布を巻いた如耶が立っていた。いつもの長い髪は布に収められている為に、顔の輪郭がはっきりと分かり、また練習の為か頬に汗が伝い、いつもの彼女とは違う魅力が醸し出されていた。

「全く、不甲斐無くて申し訳ないです」

「何を言うでござるか。早坂殿はブランクがあるとはいえ、実力は着実に取り戻しているでござる。むしろ、今の早坂殿でござれば、次の大会でも好成績を残せるでござる」

「……不動先輩にそう言ってもらえるのは有難いです。……しかし俺がやらなければ一刀も打ち合いが――」

そう言いながら章仁は立ち上がろうとするが、途端に体勢を崩し一刀に支えられ座らされた。

「章仁、無理はするな。別に打ち合いだけが練習じゃない。打ち合いが出来なくとも俺には別のメニューも用意してあるから」

「む、北郷殿。打ち合いなれば拙者が相手を致すが――」

「主将は皆の練習も見ないといけないでしょ。俺のことは本当に大丈夫だから、章仁は休め。主将も皆のことを気にかけてやって、それでも余裕が出来ればお願いします」

「う、うむぅ」

如耶は(いぶか)しげな表情をし、章仁を一刀に任せて練習に戻っていった。

「それじゃあ章仁、暫くやすんで、痛みが治まって、練習に参加出来そうなら今日は軽めにしとけよ」

そう言い一刀は章仁の隣から去り、道場の隅に向かうと、そのまま床に手を置いた後に逆立ちを始めた。それから一刀は多少ふらつきながらも、部活の時間が終わるまでずっと逆立ちで居続けた。

やがて如耶が本日の解散を宣言すると、一刀は逆立ちのまままだ残る様言い、如耶は道場の鍵だけは閉める様にと、彼の前に鍵を置いて部員は一刀を残して道場を後にした。

 

【……あぁ、不味いな。腕の限界が来た……よし後10分耐えよう】

さらにその10分後。

【………だんだん腕が麻痺してきたような………仕方ない。今日は後10分で終わろう】

さらにさらにその10分後。

【お?おぉぉぉっ!?なんか腕に感覚が戻ってきたぞ!!これなら後もう少しいけるかな】

こんな感じで一刀は自身を追い込んでいき、ずっと諦めることなく続けており、気付いた時には今の状況に陥った。だがそれも長くは続かなかった。

「………ご~しゅ~じ~ん~さ~ま~~――」

「【うん。愛紗の今日のパンツは水色か。いいね………って、うん?】あ、あいs、ぐぼあ」

気付いた時、目の前に仁王立ちで腕組みをした愛紗がそこに立っており、一刀は直ぐに集中力が切れて手を滑らせて転んでしまった。

「あ、あててて。急に愛紗が登場してびっくりしたけど……うん?なんか目の前がくらいけど」

「…ひゃっ」

「うん?でも愛紗の声が聞こえるけど?」

「あ、ひゃわわ、ご、ご主人様ぁ、あぁ、そ、そんなにぃ…う、動かないで下さい」

一刀は視界が暗くなったことに加えて、自分が何かに埋もれてしまっていることに気付いて頭の辺りを触ると、途端に何か膨らんだ桃のような物を掴み、しかも何処と無く良い匂いがしていた。

【なんか布の様なものが頭に……】

彼は頭に乗っている何かを退けてみると、視界が鮮明になり光が差し込んでくるが、その時の自分の状況は、片手で愛紗の尻を掴んで、片手で彼女のスカートを捲り、そして彼女の頭が自身の股間の所にあるという形であった。この様なラッキー展開なればこそ一刀の性欲は沸々と沸き立ち、彼の男を主張する部分も高らかにナニかを宣言するが、だが対する愛紗は、羞恥心が圧倒的に勝り、自身の置かれている状況下を認識した時には、怒りに任せて一刀を蹴り上げており、今度一刀は天井に張り付く羽目になった。

 


 
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