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ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~コラボ版・第十九話

さん

スクエア・エニックスのRPGゲーム「ドラゴンクエストⅤ~天空の花嫁~」を独自設定の上、キャラクターを他の作品のキャラをコラボさせた話です。
それが駄目だという方にはお勧めできません。

コラボするキャラクター
リュカ=タダオ(GS美神・横島忠夫)

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2016-03-04 17:26:24 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:831   閲覧ユーザー数:820

番外編1《サンタローズの戦士達》

 

第十九話「目覚めし騎士(ナイト)、二人の誓い」

 

 

 

此処はサンタローズの村。

 

いや、だった所。

 

あの悪夢の日より、地図からも消された場所。

 

そして今、一人の騎士(ナイト)が目を覚ます。

「う、うう……」

 

ペリ。

 

ペリ、ペリ、ペリ。

 

暗闇の中、何かを剥がす様な音が響き、くすんだ青色の膜の様な物の中から一人の男が出て来る。

立ち上がった男の傍らには人が乗る事が出来そうなほどの大きさのスライムが眠っていたが、男の目覚めと共にそのスライムも目を覚ます。

 

彼の名はピエール。

そう、少年タダオの最初の仲間にして魔物では始めての友達、スライムのピエールである。

八年にも及ぶ進化の眠りから覚め、今こそ彼はスライムナイトとして目覚めたのだ。

その体はスライム独特のぷよぷよした体では無く、見た目も人間の身体その物であった。

ピエールは手を握ったり開いたりし、新たな足で歩き、走り、飛び跳ねたりしている。

 

「これが人の手足、これが人の身体。これでようやくタダオ殿の役に立てる。そうだ、タダオ殿は。我が主は何処に?」

 

人の身体を得た事によって、ピエールは言葉を流暢に話せる様になっていた。

尤も、ナイトに進化した為かその話し方は仰々しい物だが。

 

ピエールは目覚めた時の為にパパスが用意していた服を身に着けるとスライムの体と共に洞窟を出て行く。

友と呼んでくれた主、タダオや仲間のスラリンとタマモに会う為に。

 

だが、洞窟を抜けた先に広がっていたのは記憶にあるあの穏やかな風景では無く、荒れ果てた廃墟の村であった。

 

「………、な、何だ?何なんだこれはっ!?」

 

日の光を受けて煌いていた小川は黒く濁り、草花の茂っていた大地は地面が剥き出しで粗末な墓が幾つか立っていて、その面影はもはや何処にも無い。

人々が住んでいた家々は打ち壊され、掘っ立て小屋の様なみすぼらしい家が数軒あるだけで、村の中心にあった教会もかろうじて原型を留めているにすぎなかった。

呆然と村の中を歩いていると、何処からか叫び声が響いて来た。

 

「うわあーーーっ!た、助けて。誰か助けてくれぇーーーーっ!」

 

ピエールが声を頼りに駆け付けて見ると其処には一人の村人を襲う「さまよう鎧」がいた。

 

「おのれ!やらせぬぞっ!」

 

ピエールは足元に落ちていた枯れを枝を手に取ると、さまよう鎧に殴りかかる。

 

『ガッ!?』

 

元からボロボロだった枯れ枝はその一撃で砕け散ったが、さまよう鎧に出来た隙を突いてスライムの巨体が体当たりをする。

 

『ガアァッ!』

 

その勢いでさまよう鎧が持っていた剣がその手から零れて地面に突き立つと、ピエールはすぐさまその剣を掴んでさまよう鎧に斬りかかる。

 

「そりゃあぁぁっ!」

『ガァッ!ガガガ……』

 

ピエールの攻撃を受けて、さまよう鎧はふらつきながら二歩、三歩と下がって行く。

其処に……

 

「止めだぁーーーーーっ!」

 

銀色の小さな塊みたいな物が声を上げながらさまよう鎧に激突する。

 

『ギャガアァァッ!』

 

その勢いでさまよう鎧の体はバラバラになって飛び散り、最後に落ちた仮面からは赤い目の光が消えて行く。

 

「やったぁーーっ!ざまーみろ!」

 

それを見て銀色の塊みたいな物は飛び跳ねながら叫ぶ。

いや、みたいな物じゃなくそれは一体のメタルスライムであった。

 

「た、助かったよ。ありがとう、スラリン」

「どーーいたしまして」

「ス、スラリン?」

 

村人がメタルスライムをスラリンと呼んだ事にピエールは驚く。

当然だろう、彼の知っているスラリンはごく普通のスライムだったのだから。

 

「ああ、あんたもありがとうよ。ところであんたは旅人なのかい?」

「い、いや。私は…「ピエール?」…え?」

「ピエールなんだろ、僕だよ、スラリンだよ。やっとナイトへの進化が終ったんだね!」

「スラリン…なのか?その姿は……」

「うん、僕はメタルスライムに進化したんだ。スライムのままじゃ弱すぎてこの村を守り切れなかったから」

「そ、そうだ。この村は何故こんな風になってるんだ?あれから一体何が、タダオ殿は?」

 

ピエールは捲し立てる様に聞くが、スラリンは辛そうに目を閉じながら俯いている。

 

「そうか、あんたはあのスライムのピエールだったのか。立派になったなぁ」

「あ、はい。そう言えば貴方は武器屋の…」

「…ああ、あの頃は良かったなぁ…。村も平和で、皆で…笑いあって…。なのに、なのに……、ううう~~」

「おじさん、泣かないでよ…」

 

泣き崩れる男を宥めるスラリン。

そして彼はピエールに語って聞かせる。

あの日の惨劇を。

タダオとパパスがラインハットに行った後、バークは何か胸騒ぎがすると言って飛び出していった。

それからから数日後、突如城の兵士が押し寄せて来た。

彼はパパスが王子キョウヤを攫って何処かへと連れ去ったと言うのだ。

当然村人達はそんな言葉を信じなかったが兵士達は行き先を教えぬのならお前達も同罪だと村の中を荒らし回った。

 

スラリンは何も出来ずに怯えていたが、荒らし回っている兵士が人間では無く、擬態した魔物であるという事には気付いていた。

村中の家という家は焼かれ、川と井戸には毒が撒かれ、田畑も念入りに潰された後に塩を撒かれた。

 

その後、すっかりと寂びれたサンタローズには何時しか魔物が徘徊する様になり、生き延びた村人達も傷付いていった。

スラリンはそんな彼等を守る為に強靭な体を持つメタルスライムに進化する事を選んだ。

進化自体は数日で済み、何時か帰って来るであろうタダオとパパスを待ち続けていたのである。

 

 

「そうだったのか、私が眠りに付いていた間にそんな事が…」

「ピエールは悪くないよ!悪いのはラインハットを影で操っている奴等だ!」

 

拳を握り締めながら項垂れているピエールをスラリンは励ます。

そしてピエールは徐に立ち上がるとバラバラになったさまよう鎧の残骸を集めると武器屋だった男に頼み込む。

 

「な、なんだいピエール?」

「親父殿!この鎧、私に合わせて打ち直して貰えぬだろうか?」

「この鎧を?」

「ああ、私も闘う!本音を言えばこのままタダオ殿達を探す旅に出たいが村をこのままにはして行けぬ。私もこの村を守る為に闘う」

「ホント!? ホントにピエールも僕と一緒に闘ってくれるの?」

「もちろんだ、共に闘おう!何時か帰ってくるタダオ殿達を迎える為にも」

「うん!ありがとう、ピエール!」

「そう言う事なら任せときな!久々の仕事だ、腕が鳴るぜ!」

 

 

 

それから後、二人の活躍によってサンタローズでは魔物による被害は激減し、村人達にも僅かながらに笑顔が戻って来た。

彼等もまた待っているのだ、タダオ達が帰ってくる事を。

 

そして戦士達は今日も主の帰りを待っている。

廃屋と化した嘗ての家の横に咲き誇る、柔らかな匂いを放つ桜の木を見上げながら。

 

 

彼等の望みが適うまで、後二年………

 

 

=冒険の書に記録します=

《次回予告》

 

あの日から十年、時の流れは少年を青年へと成長させる。

苦しみを耐え忍ぶ彼等だが、その苦しみを和らげてくれる存在も居た。

その彼女達に牙が剥かれた時、彼等もまた彼女達を守る為に研ぎ澄ましていた牙を剥く。

 

新章・青年編前期

 

第二十話「闇の中より、希望への脱走」

 

勇気を導くのは最強の呪文

(`・ω・)と言う訳で、今回は外伝としてピエールとスラリンの話でした。

スラリンは最強スライムの成長させようと思ってましたが、さすがにスライムのままあの村で戦わせるには無理があると言う事でメタルスライムに進化しました。

メタルだとHPが低いだろと言われましたが、手っ取り早く強くなるにはメタルが一番早かったんですね。

見た目のイメージは「DQI秘伝 竜王バリバリ隊」の彼です。

 

ピエールですがスライムの体とナイトの身体に分かれたと言う事でナイトの方は人間そっくりにしました。

小説版ではスライムからナイトの体が生えているような感じだったから。

 

ピエールが身に着ける鎧はさまよう鎧からの流用品。

ちなみに、ピエールの体と身体を使い分けているのは仕様です。

 

そして次回からいよいよ青年編に突入です。

予告にもあった”彼女達”とはいかに?

それはまた次回の講釈で。

 


 
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