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ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~コラボ版・第十二話

さん

スクエア・エニックスのRPGゲーム「ドラゴンクエストⅤ~天空の花嫁~」を独自設定の上、キャラクターを他の作品のキャラをコラボさせた話です。
それが駄目だという方にはお勧めできません。

コラボするキャラクター
リュカ=タダオ(GS美神・横島忠夫)

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2016-02-29 15:39:20 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:937   閲覧ユーザー数:930

第十二話「氷の館の対決」

 

鍵の技法を手に入れたタダオ達は雪の女王の城である氷の館へと辿り着き、今は閉ざされた扉の前に立っていた。

 

「では、タダオ殿」

「うん、“扉よ、開け”」

 

扉の錠に手を当て、そう念じると錠はカチリと音を立てて外れ、扉はゆっくりと開いて行く。

 

タダオ達は雪の女王との決戦の場へと一歩、足を踏み入れた。

扉を開き、館の中に入ると其処は一面の氷の床で出来ていた。

一歩進もうとするだけでツルツルと滑り、歩く事さえままならない。

 

何かを思い付いたのか、タダオは床に向けてバギを唱えると氷の床はたちまちひび割れて行き、歩く事に支障は無くなりザラザラになった氷の床を歩いて行く。

その間も魔物達は絶え間なく襲い掛かってくる。

 

「アルミラージ」の群れをセイは連撃の突きで倒して行き、空中を飛び回りながら飛びかかって来る「ドラキーマ」をタダオはバギで切り裂いて行く。

 

「カパーラナーガ」は“冷たい息”で攻撃をして来るが、タマモは逆に“火の息”を吐き、カパーラナーガはまるで溶ける様に消えて行った。

 

ピエールとスラリンもヒー達と見事な連係プレイを見せ、次々と敵を倒して行く。

そんな中、セイはふと疑問を感じた。

 

「う~む、妙ですな?」

「何がや、セイ姉ちゃん?」

「この氷の館は雪の女王の居城、なのに何故此処まで魔物共が跋扈(ばっこ)しておるのか。この内部の壮観さからしてどうにも腑に落ちぬのですよ」

 

タダオも言われてみればと思い、辺りを見回す。

丁度レヌール城がこんな感じだった、優雅さを思わせる城の中を魔物達が荒らし回っている様な。

 

「とにかく、先に進みましょう」

「うん」

 

魔物達と闘いながら先に進んでいると開けた部屋に出た。

部屋の中央にある豪華な椅子から此処が玉座の間だと言う事が分かり、さらに近づいて行くと其処に一人の少年が居た。

玉座の前に陣取り、こちらに気付くと斧を振りかざしながら威嚇して来た。

 

「お、お前はセイ!くそぉっ、春風のフルートを取り戻しに来たな」

「ザイルよ、もう止よせ!これ以上はガイル殿を悲しませるだけだぞ、今ならまだシオン様も許して下さる。さあ、我等と共に帰ろう」

「うるさい!黙れ黙れ黙れぇーーーっ!誰がお前達の言う事なんか聞くものかーーっ!」

 

ザイルは聞く耳持たないと喚きながら斬りかかって来た。

 

「くっ、この分からず屋が!」

 

ザイルの攻撃をセイは槍で受け止めながらかわして行く。

セイにとってはザイルの攻撃など取るに足らないものだが、本気を出せば傷つけ過ぎてしまう為、中々攻撃に出れないでいた。

 

「とりゃーーーっ!!」

 

「「「「やぁーーーーー!」」」」

 

タダオとヒー達はそんなザイルに飛び掛かって行き、驚いたザイルも後ずさりセイから離れて行く。

 

「お前、悪い奴」

「お前、敵」

「お前、嫌い」

「お前、やっつける」

 

「「「「やーーーーー!」」」」

 

「うわっ!な、何だお前達は!?」

「お前みたいなわからんちんはワイらが相手をしたる!」

「誰がわからんちんだ!お前の方こそこんなに大勢で来やがって。この卑怯者!」

「ワイはヒキョウ者とはちゃうわい!皆は手を出すなよ、男同士一対一の決闘や!」

「よく言った!行くぞぉーーっ!」

「来いやぁーーっ!」

 

ザイルは斧を振り下ろし、タダオは鉄の剣でそれを受け止める。

タダオが鉄の剣を横に薙ぎはらうと、ザイルは後ろに飛んでかわし、再びタダオに斬りかかる。

 

そんな一進一退の攻防を幾度か繰り返し、タダオもザイルも傷だらけになって行く。

タダオの剣がザイルの覆面を切り裂いたかと思うと、ザイルの斧にぬいぐるみの顔の部分が切り裂かれ、その頬に一筋の傷が刻まれる。

 

「コンッ!」(タダオッ!)

「ダメだよ、タマモ!」

「ピイッ!」

「「「「やっ!」」」」

 

堪らず駆け寄ろうとしたタマモをスラリンとピエール、ヒー達が押し留める。

 

「コォーーンッ!」(何故邪魔をするのよ!)

 

「タダオの邪魔をしちゃいけないよ。きっと怒られる」

「ピイピイ」

 

「タダオ、約束した」

「タダオ、一対一」

「タダオ、勝つ」

「タダオ、信じる」

 

「「「「やっ!」」」」

 

そんな皆の目を見てタマモは気付く。

彼等だってタダオを助けに行きたいのだ、でも男同士の決闘だから手を出せない、皆辛いのだと。

ふと横を見ると、セイも槍を握る手が震え、歯もギリギリと強く噛み締めている。

だったら自分も見守り信じよう、タダオが勝つ事を。

ジャキーンッ、キンッ、キィーーンッ!

 

何度目かの斬り結びの時、セイは気が付いた。

ザイルの目の色が変わって来ている事に。

赤く濁っていた目の色が何時の間にか青く澄んで来ているのだ。

 

「はあ、はあ、はあ…な、何でお前は俺の邪魔をするんだ!俺は爺ちゃんの為に妖精の村に復讐してやるんだ!」

「はあ、はあ…ワイはな、そのじいちゃんに頼まれたんや!お前を助けてくれってな!」

「爺ちゃんが?何で爺ちゃんがそんな事を……」

「アホーーッ!お前の事が心配やからにきまっとろーが!」

 

ガツンッ

 

「痛ぇーーっ!!」

 

タダオのゲンコツがザイルの頭に決まり、ザイルは頭を擦りながら涙目で蹲る。

 

「何しやがる!!」

「あんなええじいちゃんを泣かせるほど心配させたからや、もうちっと反省せんかい!」

「…爺ちゃんが…泣いてる?」

「そうや、ザイルはだまされとる、取り返しがつかなくなる前に助けてくれってな」

「俺が騙されてるだと?」

「お前、このまま春が来なかったらどうなると思うとるんや」

「どうなるって……、俺はただ爺ちゃんを追い出した妖精の村の奴らを困らせてやろうと…」

 

「困るだけでは済まぬのだよ」

 

タダオとザイルの勝負が止まった事を見計らい、セイはザイルへと話しかける。

 

「困るだけじゃないって…どう言う事だよ」

「このまま春の訪れが無いと自然界のバランスは崩れ、人間界も、そしてこの妖精界にも甚大な被害が及ぶ事になる」

「な、何だって!? そんな、雪の女王様はそんな事、少しも言わなかったぞ」

「だが事実だ。だからこそ頼む、春風のフルートを返してくれ。もはや一刻の猶予も無いのだ!」

 

「フルート、返す」

「フルート、無いと春来ない」

「フルート、必要」

「フルート、皆の物」

 

「「「「やっ!」」」」

 

セイのヒー達の嘆願にザイルは困惑し、そしてセイはザイルが素直に話を聞いてくれると確信していた。

ザイルの目は先程とは比べ物にならないほど落ち付いているのである。

タダオとの全力でのぶつかり合いが彼の体に纏わり憑いていた邪気を撃ち払ってしまったらしい。

セイは改めてこのタダオという少年の力に感心していた。

 

「どうするんや?まだやるんなら相手になるで」

「…いや、もう止める。まだ妖精達の言う事は信じられないけど、お前の言う事なら信じられる気がする」

 

そう言ってザイルは斧を下ろすと玉座の後ろに置いてある宝箱を開けた。

 

「ほら、これが春風のフルートだ。これを持って…」

『愚か者が』

「え、うわあああーーーーーーっ!!」

 

ザイルがフルートを手にした瞬間、何処からともなく声が響いて来て、ザイルは凍り付く様な冷たい風に吹き飛ばされた。

 

ザイルの手から零れたフルートは青白い姿の女性の手に握りしめられ、そのまま凍り付いてしまった。

 

『ふふふふ、これで私を倒さぬ限りは春風のフルートを手にする事は誰にも出来ぬ。つまりは不可能という訳です』

 

女性はそう笑いながら凍り付いたフルートを放り捨てる。

その笑みはまるで見る物すべてを凍らせる様な冷たい笑みだった。

 

 

=冒険の書に記録します=

《次回予告》

 

ザイルはわるい奴やなかった。

だまされとっただけやった。

悪いのは雪の女王、でも…でも…

そんな事言いよったらワイ、冬が嫌いになってしまうで!

 

次回・第十三話「悲しき、冬との闘い」

 

セイ姉ちゃん。ワイ、良い事したんかな?

(`・ω・)キラーパンサーって火の息吐けたっけ?などというツッコミは簡便してくだせえ。

タマモはキラーパンサーじゃなく、この話限定のモンスター、キラーフォックスだからという事で…。

 

Q:氷の館の鍵ですが、城門なのに単純な構造の鍵というのはおかしくないですか?

 

A:(`・ω・)それを言っちゃーおしまいよ。

 


 
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