No.832418

ゆり式8~唯xゆずこ

初音軍さん

大人になった二人が部屋借りて生活しているお話。ゆずこさんは真面目にやったら何でもできそうなんで逆に安心という・・・。書いていて縁もいれて3人百合にしたら面白そうだなぁとは思いました(書ける腕はない)

2016-02-21 21:29:20 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:589   閲覧ユーザー数:589

ゆり式8

 

【唯】

 

 3人ではしゃいで騒いで楽しかった日が卒業という形で終わり、それぞれ連絡を

取りながらも忙しい日々に追われ数年があっという間に経過した。

 時々会うことがあってもガッツリ遊ぶ時間はほとんどなく一年くらい全く会えない

状況になった…。

 

 それから新年を少し過ぎた頃。私はゆずこに呼び出された先で告白された。

いつもの冗談かと思ったけど、その時のゆずこから本気の気持ちが伝わってきて

感情を揺さぶられた。

 

 こんなに気持ちが揺らいだのは初めて縁と会って過ごした時以来だったから。

 

『いいよ』

 

 熱くなる顔を隠しながらゆずこに返事をした。

 

 そんなことを思い出しながら私は仕事を終え帰宅している途中だった。

ゆずこと一緒に暮らしているアパートまでもう少しで着く。

 

 近づいていくごとに新婚のように少しそわそわするようなくすぐったい気持ちになる。

そう考えてる内に扉の前に立って取ってに手をかけると鍵を閉めていったのに開いていた。

普段はゆずこの方が仕事が遅くなるのに…開いているということに少し不安を覚えた

私は恐る恐る中を見る。その途中ドアが内から一気に開かれて驚いた私に抱きついてきた。

 

「おっかえり~、ゆーいちゃんっ」

「ゆずこ!?」

 

「おっ、なんだね。彼女に抱きつかれて嬉しくないのかね?」

「そういう問題じゃない。いきなり過ぎて心臓止まるかとおもたわ!」

 

 本当にびっくりして色々やばかったけど、ゆずこの温もりと柔らかさに少しずつ

落ち着いていく。

 

「今日は随分と早いな。何かあったか?」

「べつに? 有給を取っただけだよ」

 

 玄関に入り廊下を歩く途中で私はゆずこに訊ねるとゆずこは本当に何ともなさそうに

鼻歌混じりで先頭を歩いていた。

 

 早いとはいってももう外は暗くなっているから私の聞き方は適当ではなかったのだけど。

私がバイトをしているからその基準で考えてしまうのだろう。

 

 何せ、ゆずこはすごく良いとこの企業でそれなりの成績を維持し続けているのだから

ゆずこのスケジュールを知ることはないだろう。向こうから言わない限りは。

 

「たまには休みを取らないとね、でもいきなり休みを取ってもすることなくて

少し前まで縁ちゃんに来てもらって遊んでたよ」

「そうだったのか、いいなぁ。たまには縁とも会いたいよ」

 

「むむっ、唯ちゃん浮気発言?」

「何でそうなる」

 

 ちょっと不満そうに口を尖らせるゆずこを見て、めんどくさいなぁと思うのと同時に

可愛いと思えたのだった。

 

「いつも帰りの早い唯ちゃんにばかり作らせちゃってたから今日は私が作ったのだよ」

「えっ、ゆずこ料理できんの?」

 

「え、レシピ通りに作れば失敗しようがないっしょ?」

「…それもそうだな」

 

 変なアレンジさえしなければな。とツッコミを心の中で呟いた。

 

「何と今日は肉じゃがを作りました~。これで彼氏の胃袋を鷲づかみ!」

「フレーズ古いわ、彼氏じゃなくて彼女だわ!」

 

「ナイスツッコミ~」

 

 嬉しそうに笑うゆずこを見て少しドキッとしつつ、普段通りにテレビをBGM代わりに

今日あったことを話しながら夜のごはんを二人で食べた。縁と遊んだことを聞いてると

相変わらず天然っぷりがすごいそうだ。

 

「私たちのこと話したら縁ちゃんすごく羨ましがってたよ、私も混ぜて~って」

「3Pか!」

 

「…それも悪くないな」

「なんでだよ!」

 

「あははっ」

 

 昔みたいにツッコミを考えて言ってゆずこの笑う顔を見て私も和やかになれる。

お互いに仕事の疲れが取れればという気持ちもあるのだろう。

楽しく過ごせる時間というのは一人だった時には全く味わえないものだった。

 

「あー、しあわせだなぁ」

「ん?」

 

「唯ちゃんとこうしていられるって幸せだよ」

「まぁな…私もそう思う」

 

「でしょ」

 

 時折、テレビのお笑い番組を見て笑えるのも隣にゆずこがいるだけで随分と違う。

何だか場が明るい、空気が明るい。大切に思える人が傍にいるだけでこんなにも違うのか。

そんな幸せにしてくれたゆずこに感謝はしていたが口には出さなかった。

言うときっと…調子に乗るだろうから。

 

 

***

 

 ご飯の後は別々に風呂に入って、一緒のベッドに潜る。本当は別々でもよかったけど

ここは譲れないとゆずこの熱心な説得によってこういう状況になったのだった。

 

「唯ちゃんの匂い~」

「おいっ」

 

「抱き心地もさいこう~~」

「しかたないな…」

 

 何だかんだ言ってもこうやってゆずことくっついているのは心地良かった。

高校生の頃はそういうの照れくさくて嫌がっていたけど、今思うともう少し

近づいてもよかったかもしれなかった。

 

 先に寝たゆずこを見て私は呟いた。

 

「ありがとうな…ゆずこ」

 

 色々言いたいことはあったけど、結局はその言葉しかでてこなかった。

そんな私の言葉に反応したゆずこがちょっと恥ずかしそうに顔を布団に潜らせながら

返してきた。

 

「わ、私も唯ちゃんにありがとう…かな…」

「ゆ、ゆずこ。お前寝てたんじゃ…」

 

「寝てたフリでした~」

「ゆずこおおお」

 

 布団の中でもぞもぞと攻防を繰り広げたけれど、最後は私がゆずこの口を塞いで

終わらせた。私の唇にゆずこの柔らかくて弾力のある唇が重なる。

 

 ゆずこの色っぽい声と共に私の唇に軽く吐息がかかる。甘い気分に浸りながら

しばらく私とゆずこは互いの指を絡めながら、その甘い時間に身も心も委ねて

キスを繰り返した。

それからいつの間には二人はキスした後に眠りに就いていたのだった。

 

 大人になってからは大変で学生の方がよかったって思うことが多くあるけれど

こうしてゆずこと関係を持てたことは学生の頃じゃ味わえなかっただろう。

またあの時とは別の幸せが私の支えになってくれている。

 

「じゃあ、行ってくるね~」

「あぁ、気をつけて行ってこいよ」

 

 朝早く出るゆずこを見送って私も自分の仕度をする。

学生の頃には考えなかった道を歩んでいるけれど、それでも私は今の人生に対して

何の気負いも後悔もなく進んでいけるだろう。隣にゆずこがいてくれれば…。

 

「よし、行ってきます」

 

 準備を終えた私は玄関から中に向けて一言そう告げてから外に出た。

外に出ると眩しい光が目に入ってきて少し目を細くしてゆっくりと歩き出す。

こうしてまたいつもの日常が始まるのだった。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択